【今週の半導体】TSMC純利益7割増も株安、日本マネー最大210億ドルで米新工場

2026/10/18・

よきょい

【今週の半導体】TSMC純利益7割増も株安、日本マネー最大210億ドルで米新工場

今週の半導体業界ではAI需要の強さを示す決算が相次ぐ一方で、株価は大きく揺れました。TSMCは10月15日、7〜9月期の純利益が前年同期比68.7%増の7630億台湾ドルになったと発表しました。前日14日にはASMLも純利益が約2.3倍となる決算を発表しています。米グローバルファウンドリーズは同じ14日、日米間の投資枠組みのもとで最大210億ドルを投じる米国の新工場2棟の運営者に選ばれました。

共通しているのは、AI向けの需要が2027年以降も供給を上回るとの見方が、主要企業の間で一段と強まっている点です。一方で、好決算にもかかわらず株価は売られる場面が目立ち、日経平均は15日に過去3番目の下げ幅を記録しました。米国の利上げ観測や中国メモリー勢の技術進展も重なり、AI投資の持続性を見極める動きが続いています。

本記事では、今週の動きを決算が示した需要の強さ・日米投資による米国の供給網強化・株価の乱高下と懸念材料の3つに分けて整理します。

1. TSMCとASMLが好決算、それでも株価は売られる

TSMCの7〜9月期の売上高は1兆4942億台湾ドルで、前年同期比50.9%増となりました。米ドル建てでは467億2000万ドルと、会社予想の上限である458億ドルを上回っています。一方で、粗利益率は66.4%と会社予想(65〜67%)の範囲内にとどまりました。

10〜12月期の売上高は523億〜543億ドルを見込み、中央値で前年同期比58%増に相当します。2026年通期の売上高も米ドル建てで約44%増と見通しました。設備投資は600億〜640億ドルを据え置いたうえで、2026〜2028年の投資額は過去3年を大幅に上回るとしています。2ナノ品の売上比率も前四半期の3%から8%へ高まりました。

ただし市場の反応は冷ややかでした。15日の米国市場でTSMCのADRは3.4%安の430ドルで取引を終えています。好決算よりも、設備投資の膨張や利益率の伸び悩みが意識された形です。決算後、ゴールドマン・サックスなどは2027年の設備投資を850億ドル規模と予想しています。

ASMLの7〜9月期は、売上高が116億6200万ユーロと四半期として過去最高で、純利益は49億6000万ユーロとなりました。クリストフ・フーケCEOは2027年と2028年も顧客の需要を満たしきれないとの認識を示しています。それでも売上高が予想をわずかに下回り、通期見通しの上限も据え置かれたことで材料出尽くしと受け止められました。14日の東京市場では東京エレクトロンが2.73%安となるなど、装置株が午後に失速しています。

2. 日米投資で米国に新工場──グローバルファウンドリーズに最大210億ドル

グローバルファウンドリーズは10月14日、ニューヨーク州マルタに建設される新工場2棟の技術提供者兼運営者に選ばれたと発表しました。資金は最大210億ドルで、日本側が拠出します。1棟目には約100億ドルを投じて300mmウエハー対応の工場を建設し、2029年の稼働を見込んでいます。完全稼働時には年間約90万枚の生産能力を米国に追加する計画です。

背景には2025年の日米貿易合意に基づく5500億ドルの対米投資があります。これまでの第1・第2弾の計1090億ドルはエネルギーや鉱物、発電などに充てられており、半導体工場が対象となるのは今回が初めてと見られています。東京エレクトロンは同工場について装置面で協力する姿勢を示しており、日本の装置メーカーにとっても中長期の受注機会となる可能性があります。

同社は10月8日にも、TSMCの先端パッケージング技術「CoWoS」向けにシリコンインターポーザーを供給する20億ドル規模の契約を結んだばかりです。量産は2028年前半の予定で、マルタ拠点は米国の先端製造と後工程を担う拠点として存在感を高めつつあります。一方で、新工場の生産能力をどの顧客に割り当てるかや、日本側の投資がどう回収されるかは示されていません。

3. 日経平均は過去3番目の下げ幅、中国メモリー勢の進展も重荷

株式市場では、半導体株を中心に値動きの荒い一週間となりました。13日には中国の長鑫存儲技術(CXMT)が次世代DRAMの設計で進展を発表し、キオクシアが13%超下落しています。15日には9月の米消費者物価指数が予想を上回って利上げ観測が強まり、日経平均は3318円34銭安の6万4425円95銭と6日続落しました。1日の下げ幅としては過去3番目の大きさです。

16日の日経平均は898円34銭高の6万5324円29銭と、7営業日ぶりに反発しました。東京エレクトロンは265円高の1万630円(2.56%高)で、1銘柄で指数を約134円押し上げています。アドバンテストも190円高の3万4530円で取引を終え、キオクシアやレーザーテック、ディスコなども上昇しました。

もっとも、16日の上げ幅は前日の下げ幅の3割程度にとどまります。日経平均は15日までの6営業日で6000円強下落しており、値ごろ感からの買い戻しの側面が強いと見られます。AI関連企業の投資回収をめぐる警戒感は根強く、本格的な反転を見極めるにはなお時間がかかりそうです。

当面の焦点は4つに整理できます。TSMCが示す2027年の設備投資がどこまで膨らみ装置メーカーの受注に波及するか、値上げや先端品の比率上昇で利益率を保てるか、日米投資による新工場の生産能力配分と投資回収がどう設計されるか、そして米国の物価・金利動向と中国メモリー勢の量産が株価の重荷となり続けるかです。

AI需要の強さを示す数字と株価の反応との温度差がどう埋まるかが、来週以降も市場の関心を集めそうです。

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