【今週の半導体】TSMC熊本第2工場が国内初の3nm量産へ、ラピダスへの公的資金は6500億円に

2026/10/25・

よきょい

【今週の半導体】TSMC熊本第2工場が国内初の3nm量産へ、ラピダスへの公的資金は6500億円に

今週の半導体業界では国内の先端半導体の生産体制をめぐる動きが相次ぎました。経済産業省はTSMCが熊本県菊陽町に建設中の第2工場について、回路線幅3ナノメートルの半導体を生産する計画変更を認定しました。19日にはラピダスに対し2027〜2029年度で計4000億円を出資する方針を示し、実現すれば公的資金は累計6500億円に達します。

共通しているのは、AI向け需要の拡大を背景に先端半導体への巨額投資を誰がどう担うかが問われている点です。一方で、熊本第2工場の生産規模やラピダスへの追加出資は政府支援や予算編成に左右され、現時点で確定したものではありません。来年度予算の審議が本格化するなか、公的資金に見合う成果を示せるかが焦点になりつつあります。

本記事では、今週の動きをTSMC熊本の先端化・ラピダスへの公的資金・ソニーの半導体戦略の3つに分けて整理します。

1. TSMC熊本第2工場、国内初の3nm量産へ──最大助成は1兆円超の見通し

経済産業省は10月16日、TSMCが熊本県菊陽町に建設中の第2工場について、3nmの先端半導体を生産するための計画変更を認定しました。従来は6nm、12nm、40nmの生産を計画していましたが、変更後は3nmに専念します。実現すれば、国内で初めて3nm級の先端ロジック半導体が量産されることになります。

現時点の生産枚数は月6000枚の計画で、今後は日本政府の支援を前提に具体的な数量を検討するとしています。経産省は来年度予算で支援資金を要求しており、すでに稼働している第1工場を含む最大助成額は1兆円を超える見通しです。第1工場は12〜28nm相当の半導体を生産し、2024年12月に量産を始めています。

3nmへの切り替えは、2026年2月に魏哲家会長兼CEOが高市早苗首相を訪問した際に表明されました。台湾の経済部は3月31日に計画変更を承認し、2028年に製造装置の搬入と量産を開始するとしていました。その際の生産能力は月1万5000枚と示されており、今回の月6000枚とは開きがあります。

熊本は成熟工程の拠点から先端工程の拠点へと位置付けが変わりつつあります。ただし、最終的な生産規模は政府支援の内容に左右される状況で、1兆円超の助成と生産枚数の釣り合いが今後問われることになりそうです。

2. ラピダスへの公的資金、累計6500億円に──経産省が4000億円を追加要求

経済産業省は10月19日、財務省の財政制度等審議会の分科会で、ラピダスに対し2027〜2029年度の3年間で計4000億円の出資を求める方針を示しました。政府保有株の配当金などを元手にする「産業投資」の枠組みを使い、情報処理推進機構(IPA)を通じて出資する計画です。年度別では2027年度と2028年度に各1500億円、2029年度に1000億円を見込んでいます。

政府はすでに2025〜2026年度に計2500億円を出資しており、計画が実現すれば累計で6500億円に達します。ラピダスは2027年度後半に北海道千歳市の工場で2nm世代の半導体を量産する計画で、民間金融機関から計2兆円の融資を調達するとしています。経産省は融資を受けるには一定の自己資本比率の維持が必要だと説明し、事業の進展でリターンの見通しが相対的に高まっているとしました。

ただし、追加出資は各年度の予算編成で財政投融資の要求が認められる必要があり、確定したものではありません。財政制度等審議会は収益性の継続的な検証が重要だと指摘し、委員からは毎年度出資の是非を議論すべきだとの意見も出ました。民間からの2兆円の融資も、2025年に意向表明書が出されたものの法的拘束力はなく、実行に向けた調整が続いています。

ラピダスは2031年度ごろの新規株式公開(IPO)も視野に入れています。量産開始まで約1年となるなか、国の出資が民間資金の呼び水になるかが事業の行方を大きく左右しそうです。

3. ソニー、半導体事業「分離する計画はない」──TSMCとの合弁で成長図る

ソニーグループの十時裕樹社長兼CEOは10月20日(米東部時間)、米ニューヨーク市で開かれたメディア業界のイベント「ペイリー・インターナショナル・カウンシル・サミット」に登壇し、半導体事業について「分離する計画はない」と述べました。半導体と映画、ゲーム、アニメといったエンターテインメント事業との相乗効果を重視する姿勢を示しています。

同社の半導体事業の中心は、スマートフォンのカメラなどに使われるCMOSイメージセンサーです。2026年6月にはTSMCと次世代画像センサーを開発・生産する合弁会社を設立する方針を示しました。十時氏は2025年5月の経営方針説明会でも、他社との共同投資や生産委託を選択肢として検討する考えを示していました。

ソニーの半導体事業をめぐっては、2019年に米投資ファンドのサード・ポイントが分離・上場を求めましたが、同社は保有の継続を決めた経緯があります。2025年4月にスピンオフ検討の観測が浮上した際も具体的な計画はないとしていました。一方で、金融事業は2025年に部分的に分離し、再上場させています。

今回の発言は、事業の切り出しによる企業価値向上を求める声に対し、グループ一体での成長を優先する方針を改めて示したものと受け止められます。ただし、巨額の設備投資が必要な半導体事業を、TSMCとの提携を活用しながらどう伸ばしていくかは引き続き課題として残ります。

先端半導体への巨額の公的支援と、その収益性をめぐる慎重な見方との温度差がどう埋まるかが、来週以降も市場の関心を集めそうです。

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