Scroll徹底解説|他zk系レイヤー2との比較からコントラクトのデプロイまで

2023/11/05・

Crypto Troll

Scroll徹底解説|他zk系レイヤー2との比較からコントラクトのデプロイまで

10月17日、イーサリアムレイヤー2「Scroll」のメインネットが正式にローンチされました。

イーサリアムレイヤー2として、ArbitrumやOptimismやBaseなどが既に有名ですが、Scrollはそれらとは用いている技術が異なっています。

Scrollは、ゼロ知識技術を採用した、EVMと互換性のある仮想マシン「zkEVM」を搭載していることが特徴です。

今回の記事では、Scrollの概要から、現在公式が行なっているScroll Origins NFTを例に挙げながら、実際のScrollまでの触り方までを紹介します。

注目を集めるScroll

イーサリアムを取り巻くレイヤー2チェーン開発は数多くされていますが、何故こんなにもScrollが注目を集めるのでしょうか?

Scrollの詳細に踏み込む前に、まずは周辺情報を見ていきます。

テストネットの段階から多くの注目を集めており、多くの監査やレビューも

Scrollは、メインネットの公開前からその開発に多くの関心が寄せられてきました。

2022年8月に開始されたプレアルファテストネットの段階で、1500万件以上のトランザクション処理や、180万以上のブロック証明を完了しています。

他にも、メインネット公開までに3つのテストネットを実施してきましたが、合計で45万回以上のスマートコントラクトのデプロイや、9000万回以上のトランザクション、900万以上のブロック生成が行われました。

また、新興のプロジェクトには、セキュリティが十分かどうかといった不安がつきまといますが、Scrollはこれらにも配慮しています。

Scrollは、OpenZeppelinやZelicによって監査がされています。また、zkEVMに関しては、Trail of BitsやKALOSからレビューをされています。また、ノードのコードについてはTrail of Bitsから分析をされています。

Scrollの開発自体は、2021年から行われてきましたが、今回のメインネットの公開まで2年かかったのは、上述の通りテストネットや監査を十分に行うというように、セキュリティを優先していたのが理由です。

大規模な資金調達を達成済み

Scrollは今年3月に、5000万ドルという大規模な資金調達を行なっており、Polychain Capital、Sequoia China、Bain Capital Crypto、Moore Capital Managementといったベンチャーキャピタルが参加していました。

ここ最近ではビットコインの値段も3万5千ドルに復帰するなど、クリプト業界が復調の傾向にありますが、資金調達が行われた3月上旬時点では、2万ドル台前半という厳しい状況にありました。

そうした中での5000万ドルという資金調達は、Scrollへ非常に大きな期待が寄せられていたことの証左と言えるでしょう。

TVLが右肩上がりに増加傾向

Srollのメインネットがローンチされてから、およそ1ヶ月弱ではありますが、そのTVLは右肩上がりに増加傾向にあります。

これは、多くの開発者やベンチャーキャピタルから支持を得ているだけでなく、一般ユーザーからの注目も高く、多くの資金が流入していることを示しています。

このように、Scrollを取り巻く環境は非常に充実していると言っていいでしょう。

次の章からは、より具体的なScrollの概要を解説していきます。

Scrollの概要

Scrollのビジョンは、イーサリアムの高額なガス代や混雑、アクセシビリティの改善です。

高額なガス代は少額しか資金を持たない一般ユーザーにとって敷居を高くしてしまいます。これは、新たなアプリケーション開発やユーザーの障害となってしまいます。

イーサリアム開発陣もそれは感知していたものの、技術的な問題により、なかなか実現がされてきませんでした。PoSへの移行などなど多くの取り組みがされてきていますが、未だ多くのソリューションが求められています。

そこで、Scrollはゼロ知識証明(ZKP:Zero-Knowledge Proof)システムを採用することで、上記の問題に対応しています。

zkEVMを搭載したレイヤー2ソリューション

イーサリアムのスケーリング問題に対するソリューションはいくつかありますが、Scrollはその中でもゼロ知識ロールアップ(zkRollup)を採用していることが特徴です。

ゼロ知識技術の特徴として、証明者が生成した証明に対して、検証者がより詳細な情報を得ることなく証明を検証することが挙げられます。

特徴はいくつかありますが、「完全性」と「正当性」に関する性質を応用することで、計算を圧縮し、検証のコストを削減していることが挙げられます。

これにより、「素早いアセットの移動」、「ガス代の削減」を実現することが可能となっています。

また、Scrollは、ゼロ知識技術を活用する中で、EVM(イーサリアム仮想マシン)との互換性を有する「zkEVM」を搭載していることが特徴です。

これまでのzkRollupは、EVMと互換性がないアルゴリズムを採用していたため、開発者にとって新たな開発言語を学ばなければならないなど技術的な難易度が高く、有用ではあるけれども多くの面でコストが高くつくものでした。

しかし、EVMとの互換性を有することで、アプリ開発者はイーサリアム上でのdAppsを簡単にScroll上へとデプロイすることが可能になっています。

Vitalik氏によると、長期的には全てのユースケースでzkRollupが勝るとの予想

既に存在するイーサリアムレイヤー2の多くは、Optimistic Rollupを採用しています。

zkRollupとOptimistic Rollupのどちらのレイヤー2が、将来的に勝者となるかに注目が集まりますが、イーサリアム開発者であるVitalik氏は、2021年の段階で、zkRollupとOptimistic Rollupの比較をし、以下のように述べています。

一般的に、私自身の見解としては、短期的には、汎用のEVM計算ではOptimistic ロールアップが、単純な決済や交換、その他のアプリケーション固有のユースケースではZK-ロールアップが勝つ可能性が高いが、中長期的には、ZK-SNARK技術の向上により、すべてのユースケースでZK-ロールアップが勝つだろう。

(引用元:https://vitalik.ca/general/2021/01/05/rollup.html

このようにVitalik氏の分析によれば、zkRollupの方が長期的には勝つと予測されています。しかしながら、現在は、Optimistic Rollupを採用したレイヤー2の方が優勢となっています。それは何故なのでしょうか?

何故、これまでOP系レイヤー2が勢力を増してきたのか?

イーサリアムのレイヤー2といえば、Arbitrum、Optimism、Baseが有名です。

これらは、Optimistic RollupというOP系の技術を採用したものです。上記の画像を参照していただければ、OP系統のレイヤー2が大きなシェアを有していることが分かります。

そして、エアドロ関連を含めて話題となっているzkSyncやStarknet、そして今回取り上げているScrollは、zkRollupというゼロ知識技術を採用したレイヤー2となっています。

これまでOptimistic Rollupのレイヤー2が盛んに開発されてきた背景として、zkRollupの技術的な問題がありました。

既に述べたように、zkRollupに使用される技術は複雑であり、またEVMとの互換性を有しておらず、その分開発コストが高くついてしまいます。こうした事情から、zk系のレイヤー2の開発は、OP系の後ろを走っていました。

しかしながら、処理性能やガス代の観点からすれば、zkRollupの方がOptimistic Rollupよりも優れています。

例えば、Optimistic Rollupの処理速度が500TPSなのに対して、zkRollupの場合は2000TPS以上となっています。他にも、zkRollupの方が出金に際して必要な期間が短いというメリットがあります。

以下の図に、両者の比較が簡潔にまとめられています。

zkEVMの開発など、zkRollupを取り巻く技術改善は日々進んでおり、zkSyncやStarknetの発展からも分かるように、多くのdAppsが開発・構築されています。zk系レイヤー2のTVLも増加傾向にあります。

Scrollはまだメインネットが公開されて1ヶ月経っていませんが、こうしたzk系のレイヤー2の代表として、将来的にScrollの名前が挙げられる日が来るかもしれません。

Scrollの設計思想

Scrollは、イーサリアムをzkRollupでスケーリングするためのプロジェクトです。以下、主要なScrollの設計思想を紹介します。

  1. ユーザーセキュリティの確保:Scrollは、レイヤー1の完全なセキュリティを レイヤー2における取引においても利用できるように設計されています。
  2. EVMとの互換性の維持:Scrollは、ユーザーや開発者が既存のdAppsからシームレスに移行できるようにするために、EVMとの互換性を重視しています。
  3. 効率性:トランザクション手数料を安くすることで、ユーザーがより良いレイヤー2体験を享受できるようにします。
  4. コミュニティの全レイヤーにわたる分散化:Scrollは、検閲や組織的攻撃に対する弾力性を確保するために、ノードオペレーター、開発者、ユーザーといった多くの面で分散化を確保することにコミットしています。

Scrollと他zkEVMとの比較

ここまで、Scrollの主要な要素であるzkEVMについて、既に大きなシェアを誇っているOptimistic Rollup系のレイヤー2に言及しながら述べてきました。

ここからは、zkEVMに注目しながら、Scrollと他zk系レイヤー2(zkSyncやStarknetなど)との違いを分析していきます。

VitalikによるzkEVMの四つの分類:Scrollは(現在は)Type-3に分類される

 

zkEVMは、実は大きく四種類に分類されます。

Vitalik氏は、EVMとの互換性とパフォーマンスの二つの観点から、それぞれをType-1からType-4に分類しています。

以下それぞれの特徴を挙げていきます。

  • Type-1:完全にイーサリアムと同等。しかし、検証時間(prover time)が長い。
  • Type-2:完全にEVMと同等(イーサリアムと同等ではない)。改善されているものの、依然として検証時間が長い。
  • Type-3:ビルドが容易であり、検証時間が短縮可能。しかし、EVMとの非互換性が高くなる。
  • Type-4:検証時間が非常に早い。しかし、EVMとの非互換性がより高くなる。※高水準言語相当。

このようなzkEVMのTypeは、プロジェクトの開発によって変化する可能性があることには注意が必要です。例えば、今回取り上げているScrollは、Type-3に分類されますが、将来的にはType-2やType-1を目指して開発が進められています。

他にも、ゼロ知識証明の技術として、ZK-SNARKかZK-SHARKのどちらかを使用しているかなどの細かい要素がありますが、大きくは上記のTypeによる分類が分かりやすいかと思います。

zk系レイヤー2の比較

ここからはより具体的な、zkEVMのレイヤー2の比較をしていきます。

zkSync

・互換性はType-4。(言語レベルのEVM互換性)

・ゼロ知識技術として、SNARKを活用。

・現在、zk系のレイヤー2の中では最大のシェアを有する。

Starknet

・互換性はType-4。(言語レベルのEVM互換性)

・ゼロ知識技術として、STARKを活用。(技術的にはSNARKよりも安全ではあるものの、検証に時間がかかり、ガス代もかかる)

・言語として、CairoとSolidityをサポート。

・zkSyncと並んで、zk系のレイヤー2として注目を集める。

Scroll

・互換性はType-3であるものの、Type-2(Bytecodeレベルの互換性)を目指して開発中。最終的には、イーサリアム財団と協力し、Type-1に限りなく近づけることも目標に。

・ゼロ知識技術として、SNARKを活用。

・10月にメインネットが公開。

Polygon zkEVM

・互換性はType-3であるものの、Type-2(Bytecodeレベルの互換性)を目指して開発中。

・ゼロ知識技術として、SNARKとSHARKの両方を活用。

・Polygonのイーサリアムスケーリングソリューションには他にも、Polygon Edge、Polygon Zero、Polygon PoSなどが存在。

実際にScrollを触ってみる

ここからは実際にScrollを触るための方法や、Scroll Origins NFTに向けての準備も紹介していきます。

イーサリアムメインネットからScrollへブリッジ

Scrollは、イーサリアムのレイヤー2であるため、ブリッジをしてトークンを移す必要があります。

ブリッジに関しては、公式によってサービスが提供されているため、こちらを利用することができます。

Bridge:https://scroll.io/bridge

もし、ブリッジにかかる時間が気になるということであれば、代替のサービスを利用してブリッジすることも可能です。

以下、主要なものを二つ紹介致します。

orbiter:https://www.orbiter.finance/

rhino.fi:https://rhino.fi/

Scroll Origins NFTのキャンペーンが実施中:12月14日にclaimが可能に

Scrollでは既に多くのdAppsが登場しており、スワップは勿論、流動性の提供も可能となっています。どれからさわればいいか迷うかもしれませんが、まずは最初にScroll公式が発表している「Scroll Origins NFT」を試してみてはどうでしょうか?

Scroll Origins NFTは、Scrollのアーリービルダーがミント可能なNFTです。

Scroll Origins NFTは三種類あり、ジェネシス・ブロックを基準として、それぞれScrollメインネットにスマートコントラクトのデプロイをいつまでに行ったかで、どの種類のNFTをもらえるかが決まります。

以下、それぞれのNFTを紹介致します。

  • 「Quintic」:2023年11月9日10:59PM (GMT)までに、デプロイした人が対象。※ジェネシスブロックから30日以内。
  • 「Quartic」:2023年11月24日10:59PM(GMT)までに、デプロイした人が対象。※ジェネシスブロックから30~45日目。
  • 「Cubic」:2023年12月9日10:59PM(GMT)までに、デプロイした人が対象。※ジェネシスブロックから45~60日以内。

該当NFTのclaimは、2023年12月14日10:00PM(GMT)から可能になるとのことです。

コントラクトに対して、特別なサプライズがあることが告知されていますので、報酬も兼ねてScrollを触ってみてはいかがでしょうか?

※NFTはソウルバウンド(譲渡不可)となっていますので、適切なウォレットでclaimをしなければならいことには注意が必要です。

Owltoを使えば即座にデプロイが可能

恐らく、スマートコントラクトのデプロイをしたことがない方にとっては、Scroll Origins NFTの条件を満たすのは難しいかもしれません

しかしながら、Owltoを使うことで、ウォレットを接続するだけで、デプロイをすることが可能となっていますので、新規ユーザーの方でも問題なくNFTの適格となることが可能です。

Owlto:https://owlto.finance/deploy

実際に、自分でScrollにスマートコントラクトをデプロイしてみたい方向け

先ほどOwltoを使用したデプロイ方法を紹介しましたが、今回を機に試しに自分で直接デプロイをしてみたいという方もいるかもしれません。

そういった方向けに、筆者が実際に行ったRemixを使用してのデプロイ方法を紹介致します。

※今回のデプロイ方法は、X上にてDe.Fi 2.0が紹介していた方法をもとにしています。(https://x.com/DeDotFi/status/1640356084106813441?s=20

まず、Remixを開きます。

Remix:https://remix.ethereum.org/#lang=en&optimize=false&runs=200&evmVersion=null&version=soljson-v0.8.18+commit.87f61d96.js

  1. ①をクリックします。
  2. ②の箇所に、「EtherWallet.sol」を打ち込みます。
  3. ③の箇所に、以下のGithubのコードを貼り付けます。(https://github.com/whonion/EtherSmartWallet/blob/main/EtherWallet.sol
  4. ④のSOLIDITY COMPILERをクリックします。

  1. ①をクリックし、「0.7.4」のバージョンを選びます。
  2. ②をクリックし、コンパイルします。
  3. ③をクリックし、「Deploy & Run Transaction」へと移動します。

  1. ①をクリックし、「Injected Provider – Metamask」を選択します。
  2. ②をクリックし、ウォレットの確認画面が出ますので、確認をしブロック表示が出れば完了です。

NFT配布対象かどうかは公式サイトで確認可能

実際にスマートコントラクトをデプロイしてみたものの、それが正常に行われておりNFTの配布対象となっているのかどうか気になるかもしれません。

その場合は、以下のURLでウォレットを接続し、「Check eligibility」をクリックすることで、適格かどうかを確認することができます。

Scroll Check eligibility:https://scroll.io/developer-nft/check-eligibility

おわりに

ここまでメインネットが公開されたScrollを紹介してきました。

既にzkRollupを採用したイーサリアムレイヤー2として、zkSyncやStarknetがありますが、Scrollも注目を集めるzk系レイヤー2です。

他のレイヤー2と比べ、まだメインネットが公開されて日が浅いこともあり、アーリーユーザーとなることも可能です。

今回の記事ではScrollの概要だけではなく、スマートコントラクトのデプロイも紹介してきました。Scroll上では既に多くのdAppsの開発も進んでいるため、これを機にScrollエコシステムの探検をしてみてはいかがでしょうか。

 

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