ステーブルコインの中で最も安定しているステーブルコインとは

ステーブルコインの中で最も安定しているステーブルコインとは

昨今ではステーブルコイン戦争が始まるとすら囁かれるほど、異なるプロトコルや異なる発行体の元で多種多様なステーブルコインがローンチされてきています。

どのステーブルコインにも一長一短があるかと思いますが、今回はステーブルコインをステーブルコイン足らしめている、ステーブル力なるものを数値的に測定していきます。

この記事を読んでいただければ、似通ったように見えるステーブルコインの特徴が見えてきます。

分析対象となるステーブルコイン

本記事の分析は、対象ステーブルコインを2018年12月4日から2019年11月25日までの4つのステーブルコイン:PAX、 USDT、TrueUSD、DAIに絞ります。

以下に4つのステーブルコインのチャートを用意しました。上からPAX、 USDT、TrueUSD、DAIのチャートとなっています。

(図1)

そもそもステーブルコインというのは、法定通貨、殆どはUSDにペグされた暗号資産です。つまり米ドルと同じような動きをします。

1米ドルに対して1暗号資産が標準的な交換レートですから、完全にペグされている本来ならば、1.00で水平的に推移しているのが正しい動きとなります。

そのため、ステーブルコインの視点から言うと、上下にぶれることはあまりよくないことです。以下は各ステーブルコインの変化率(前期比)を表したチャートになります。

この変化率も、完全に米ドルと同じ動きをしているならば0.00で一直線に推移すべきであると言えます。

(図2)

よって、本記事で定義するステーブルコインのステーブル力とは、各ステーブルコインのボラティリティーとします。

つまり1.00に対してどれだけ変動しているかということでそれぞれのステーブルコインがどれほど米ドルの動きに追随しているかの度合いを数値化することができます。

図2のチャートを観察すると数値化しなくてもUSDTのボラティリティーが低そうということがわかります。逆に、DAIの変動率が大きいこともチャートからわかりますね。

各ステーブルコインのステーブル力結果

ボラティリティー(ステーブル力)(%)
PAX0.6482787
USDT0.3596986
TUSD0.544181
DAI0.7016679

分析によりダントツでUSDTが一番ステーブル力を有しているステーブルコインであるという結果になりました。

USDTと対比すれば、DAIやPAXは2倍もステーブル力が弱いことも分析からわかります。

つまり、DAIやPAXはUSDTより米ドルから離れた動きを取る確率が高いのです。これは(現時点では)ステーブルコインとしての機能が劣っているという解釈もできます。本来はステーブルコインとはステーブルな値動きでなければ本来の役割を果たせないからです。

もちろん、各通貨はそれぞれUSDTとはステーブル力以外にも様々な違いがあるかと思います。出来高や発行年数、発行主体など、USDTの方がより成熟しているからこのような差が生まれるとも言えます。

ですが、今回の分析により実際に差があることが実証的に理解されます。

各ステーブルコインの相関分析

分析を進めていく間に、各ステーブルコイン同士の相関性が気になり始めました。

赤く囲った2019年4月から6月頃にかけて、全ステーブルコインが大きな変動を見せています。

変動は何かのマクロ的な事象で引き起こされたのかもしれませんが、PAX、TUSD、DAIが1ドルに対して価格上昇を見せているにも関わらず、USDTだけ反対方向に変動を見せています。

この変動の仕方がステーブルコイン間でも逆相関が見られる可能性を示唆していますので、4つのコインに相関分析をして見ました。

結果は、DAIとPAXの間の弱い相関(0.32)以外、ほとんど大きな相関が見られませんでした。

USDTと他のステーブルコインの間でも、認められるほど大きな逆相関ではありませんでした(10%の有意水準)。

しかし符号に着目すると、マイナスの値が算出されていますので、やはりUSDTは他のステーブルコインと反対に動く傾向があるようです。

これは、USDTを発行しているTether社による問題などが考えられます。

PAXUSDTTUSDDAI
PAX1-0.0908524230.1293005530.321580595
USDT-0.0908524231-0.003814789-0.001001951
TUSD0.129300553-0.0038147891-0.028985259
DAI0.321580595-0.001001951-0.0289852591

まとめ

本記事では4つのステーブルコインに分析対象を絞り、それぞれのステーブル力を評価しました。

米ドルにペグされていて同じように見えるステーブルコインでも、1ドルに対する値動きの激しさには2倍以上もの大きな違いがあることがわかります。

加えてステーブルコイン同士の相関分析を行った結果、各ステーブルコインの動きにも少々の違いがあることを理解していただけたかと思います。

ペグのされ方(プロトコル)の違いなどによってこのような値動きの違いが生まれるのだろうと思います。

今後のステーブルコイン戦争でより多くのステーブルコインが誕生すると思いますが、これら分析結果を念頭におきながらニュースに注目してみてください。

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