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2023/08/147月29日、30日に福岡市で開催された「FUKUOKA DAO CAMP」の潜入レポート(2日目)
7月29日、30日の2日間にかけて、DAOを集中的に学ぶイベント「FUKUOKA DAO CAMP」が、Fukuoka Growth Next(https://growth-next.com/)にて開催されました。 このイベントは福岡市からの委託を受けたFracton Ventures株式会社(https://fracton.ventures/)によって開催され、「福岡におけるWeb3.0の機運の醸成及びプレイヤーの創出」を目的として行われました。 1日目(7月29日)は、Web3.0とDAOの概要のレクチャーが行われるインプットの日でした。また、午後からはAstar Networkの渡辺創太氏の登壇もあり、質疑応答に花が咲きました。 2日目(7月30日)は、実際に様々なDAOツールを使いながら、実際にDAOを立ち上げるところまでを行うアウトプットの日でした。 この記事は、筆者が当イベントに参加した際のレポであり、2日目(30日)のものとなります。2日目からは一参加者としてグループワークにも参加しましたので、私の体感もお伝え出来ればと思います。 また、当イベントレポートは私の主観で書かれたものであること、引用している登壇者の文言や言い回しに関しては、必ずしも厳密に文字起こししたものではないことをあらかじめご承知おき下さい。 最初の挨拶 [caption id="attachment_96609" align="aligncenter" width="800"] 提供:Fracton Ventures[/caption] まず初めに、Fractonの亀井聡彦氏から、2日目の挨拶がされました。 「みなさま本日は体調などは大丈夫ですか? 日曜日の時間にお集まりいただいてありがとうございます。本日は結構手を動かして、アウトプットをしていきます。冒頭は、昨日の続きでアイデアの解像度を高めることを意識しながら、グループワークにつなげていけたらと思います。今回の取り組み自体が、みなさまが福岡で活躍していく土台になっていけたらと思います。私たちもサポートさせていただきますので、何かればお気軽にお尋ねください。本日も一日長丁場になりますが、よろしくお願いいたします。本日は幾つかワークショップを行いますが、最終的にはDAOでどのようなことをやりたいかを考えられたらと思います」 この後、昨日の最後に決めたグループごとにワークショップが始まりました。 ワークショップ②:DAOの方向性を決めてみる 参加者によるグループテーマは全部で四つあり、「社会課題」「キャリア・人生」、「ローカル」、「Web3.0×ビジネス」とそれぞれテーマが分かれました。となりました。私は「キャリア・人生」に所属をしており、話し合いの結果、より具体的に「学生支援DAO」という形で纏まりました。 DAOの考え方:プロトコルの裏側をDAOで支える ワークショップの話し合いの中で、うまくまとめられるか不安だったのですが、Fractonの方々が定期的にテーブルを回って下さったこともあって、方向性に関して迷うことがなかったのはとても良かったです。 Fractonの方々のアドバイスの中で、非常に参考になった部分を幾つか書いてみようと思います。 私のグループは「学生支援」をどのようにしていくのかという議論をし、支援を具体的にどうするかについて悩んでいました。そうした中で鈴木氏からのアドバイスで、「報酬を渡す形式として、特定のタイミングで、初期から貢献していた人をブロックチェーン上の記録を使って特定し、報酬を渡すというのも出来るのではないか。普段からの生活において、貢献をしている人はあまり顕在化しないけれども、ブロックチェーンであることを活かして、うまくやれる方法もあるのではないだろうか」とのアドバイスは、ブロックチェーンを活用した良いアドバイスと思いました。 また、DAOに関する捉え方を見直す良い機会にもなりました。 例えば、大学でよく行われている企画系のワークショップでは、まずは仕組みや形から考えたりしますが、今回のイベントでは、あえて形からではなく、DAO(スマートコントラクト)を使ってどのような仕組みを構築できるのかというシステムの部分から考えるというのが、非常に新鮮でした。 その中での亀井氏のアドバイスとして、「プロトコルの裏側をDAOで支えるという仕組みがあるので、プロトコルへと昇華できるような(参考になる)既存の仕組みを考えるのも、思考の助けになるのではないか。DAOという仕組みからだけでなく、プロトコルへの思考というのも、今後の議論の中で考えておくと良いのではないでしょうか。」という指摘が非常に参考になりました。 こうしたFractonの方々の助けもあったおかげで、何とか時間以内にまとめることが出来ました。 DAO Toolsの紹介:登壇者・naka氏 この回では、Fractonのnaka氏(https://twitter.com/cyaneq)が登壇されました。 内容は、DAOを成立させているツールについての紹介でした。 どうして、Frameworkが必要なのか [caption id="attachment_96542" align="aligncenter" width="800"] 提供:Fracton Ventures[/caption] DAOはオンチェーンを活用したものであり、特定のツールを使うことで、コマンドやコードを使わないで操作や実装ができるようになtたり、視覚的な操作が可能になる。機能を0から作らなくて済みます。 ツールは様々あり、用途ごとに多種多様ですが、DAOを成立させるための最小限の要件として五つあります。 Treasury Membership Voting Proposal Execute(スマーとコントラクトを介した実行) そして、そうしたDAOに役立つツールとして、「Aragon」、「OpenZeppelin Governor」、「Moloch」の三つが詳しく紹介されました。 OpenZeppelin Governorは、投票追跡や投票カウントやタイムロックの機能があり、Contract Wizardを使用して簡単にコントラクトを作成することが可能です。 Aragonは多くの機能を有しており、資金調達、財務の管理、貢献者への報酬を提供、投票の作成も可能です。Aragon自身も、ANDAOとして、ガバナンストークンANT保有者によって運営されていることも特徴の一つです。 Molochは、グループを作った時にAdmin権限を7段階で選べることが特徴です。これによって、スマートコントラクトという扱いにくいものに、柔軟性を持たせることが出来ます。 そして、実際にAragonとOpenZeppelinのそれぞれで実際にDAOをデプロイしました。 実際にDAOを立ち上げてみよう:登壇者・naka氏 この回では、前回に引き続きFractonのnaka氏(https://twitter.com/cyaneq)が登壇されました。 内容は、実際にDAOをテストネットで立ち上げてみようというものでした。また、セッションの途中、このイベントにいる参加者たちで本物のDAOを立ち上げるということで、ウォレットアドレスの提供が参加者たちからされました。 ここからは、DAO立ち上げを行いました。細かい操作などについては省いて、私が感じた所感を書かせて頂きます。 Aragonでのデプロイ [caption id="attachment_96543" align="aligncenter" width="800"] 提供:Fracton Ventures[/caption] まずは、AragonでDAOをデプロイしました。その手順の紹介は省略しますが、非常に驚いたのが、この立ち上げにおいて一切コードを読む必要がなかったことです。 メタマスクを繋いで、DAOの名前や説明文を入力し、投票において必要な賛成の割合などを設定すれば、クリックをするだけで完了しました。 また、実際にDAOのデプロイをして分かったことは、意外とガス代がかかるということでした。今回は、Goerliテストネットで行ったので、一切金銭は発生しなかったのですが、Fractonの方曰く、仮にメインネットでデプロイをしようとすれば、イーサリアムの場合0.04ETh(およそ75$)ほどかかるとのことでした。ちなみに、Polygonであれば1$もかからないとのことです。 また、投票をするのにもガス代がかかります。DAOの運営形態として、あくまでも投票は最後に行なって、それに至るまでの議論などはDiscordといったフォーラムで行うというのが常です。こうしなければ、ガス代がかなりかかってしまうので、経済合理性から見ても、含めたDAOの運営形態にオフチェーンでの活動が含まれるのも納得がいきました。 とはいえ、投票にガス代がかかるというのは決して悪いことばかりではく、金銭の支払いが発生することで、悪い人を弾くことが出来るというメリットもあります。 これらDAOに関する説明だけでなく、ETHとERC-20は違うことや、投票に際してトークンを使用しますが、それは消費されているという訳ではないことなど、DAO周辺の細かい説明も行われました。 私は、一切コードに触れてきてはいないのですが、そんな私でもDAOの立ち上げを行うことが出来ました。目的にあったツール選定が重要であることや、触って確かめて初めて分かることなど数多くありました。 質疑応答 Q. NFTをガバナンストークンに出来ますか? A. Aragonでは(現時点では)出来ないけれども、他のツール次第では可能です。ガバナンストークンというのは手段であって、ガバナンストークンという規格がある訳ではありません。例えば、STEPNには二つのトークンがありますが、これらはユーティリティとガバナンストークンというように性質が違います。 Q. トークンを一定数持っていないと提案は起こせないのですか? A. 設定をすることで、トークン保持の度合いで提案を起こせるようにも起こせないようにもすることも可能です。 Tally × Open Zeppelinでのデプロイ [caption id="attachment_96544" align="aligncenter" width="800"] 提供:Fracton Ventures[/caption] 次に触ったのは、Open Zeppelinでした。クリプトの世界はコードで成り立っていますが、今回は裏側で走っているコードを見ながら触れながらの、DAOのデプロイとなりました。 ここでもDAOデプロイの詳細な立ち上げ手順は省略しますが、所感としては、初心者には非常に難しいものに思えました。 [caption id="attachment_96545" align="aligncenter" width="800"] 提供:Fracton Ventures[/caption] Open Zeppelinはコントラクトを提供する一方で、TallyはコントラクトのみのDAOに対して、ブラウザで操作可能なフロントエンドを提供するツールです。投票権の委任、資金の使用、プロトコル管理などオンチェーンで実現することが出来ます。これ以外にも、REMIXも使用しました。 DAOをデプロイするにあたって、まずOpen Zeppelinでコントラクトを作成しなければならないのですが、書かれているコードの内容は私には理解出来ず、手順をなぞることでなんとかデプロイまで持ち込みました。 しかしながら、分からないながらも、実際にコードを触ってみると、DAOの裏側の仕組みを意識することが出来たので、単に知識として理解するだけでなく、実際に体感するのがやはり重要であると思いました。 二つのツールを触りましたが、両方において大切なのは、やはりDAOで何を取り扱うかが肝心なのだと思います。あくまでもDAOは箱でありツールであるので、DAOそれ自体を目的にするのではなく、自分たちにとって最も適した形を求めた結果DAOに至り、それゆえにDAOをデプロイするというのが、健全な順番なのかと考えました。 質疑応答 Q. AragonのDAOと、Tally × Open ZeppelinのDAOは別々のDAOですか? A. それぞれ別のDAOです。Aragonの方はコードが不要である一方で、Tally × Open Zeppelinの方はコードが関わってきて大変です。しかし、前者は簡単であれどカスタマイズ性が低い一方で、後者はカスタマイズもあってかなり柔軟なものとなっています。その差異を体験して欲しかったので、DAOを二つ作りました。ここからFUKUOKAコミュニティ用のDAOを作っていこうと思いますので、その後も皆様で活性化していただければなと思います。 ワークショップ③:DAOの内容を具体的にまとめてみる [caption id="attachment_96622" align="aligncenter" width="800"] 提供:Fracton Ventures[/caption] ここからは、一番最初にまとめたDAOの方向性をもとに、具体的な案としてグループごとに発表内容をまとめていきました。そして、それぞれのグループで10分ほどの制限時間の中で発表をしました。 私のグループは最終的に、「一芸に秀でているけれども、支援を受けられない人向けに少額から広く支援をしていくDAOにする」という内容に纏まりました。 発表内容をまとめるにあたって、一番難しかったのが、資金をどこから捻出するかということでした。支援範囲を広くするのではなく、地域の学生を支援という文脈にし市単位でのDAOにし、一つが軌道に乗れば、他の市でもDAOを立ち上げていき、最終的にいくつかのDAOが集まるより大きなDAOを構築出来れば、というような内容に収まりました。 議論の際、Fractonの方々のアドバイスがやはり非常に役に立ちました。ビニール氏によって、DAOのエコシステムを考えるにあたっての重要な事項が提示されたので、迷走することなく発表を成り立たせることが出来ました。 発表も無事に行われ、質疑応答やアドバイスの際には、鈴木氏からも類似例として、Dream DAO(https://twitter.com/DreamDAO_)というWeb3.0に興味ある若い人たちに対して三ヶ月ほどのプログラムを提供するDAOや、PadawanDAO(https://twitter.com/PadawanDAO)というWeb3.0への志を持っているものの交通費がないために現地の人と交流することが難しい若い人たちに対して支援をするDAOの紹介がされました。 他の3グループも無事発表が終わり、全体として、白熱した議論がありながらも、各々の意見が反映された良いワークショップとなりました。 閉会の挨拶 [caption id="attachment_96611" align="aligncenter" width="800"] 提供:Fracton Ventures[/caption] 最後、鈴木氏から、最後の挨拶がされました。 "「「Web3.0 Town Hall」から参加されている方もいますが、改めてどういう形でこの二つのイベントが行われたのかを振り返ろうと思います。最初、7月20日に「Web3.0 Town Hall」が開かれました。ここから、DAOの世界に一気にダイブするというのをしました。昨日はかなりの数のインプットが行われ、2日目が出来るかなと心配をしていました。OpenZepperinまで触ることは通常ではしませんし、ここまで皆様がついてきたというのは非常に素晴らしいことでした。最初、インターネットの話をしましたが、インターネットの急速な変化とWeb3.0の変化は被りますし、初めの講義の中で人間を介したという部分に注目をしましたが、DAOを通じてご理解していただけるかなと思います。 こちらとしても、これで終わらせるのも勿体無いので、みなさんはAragonのテストネットで(DAOのデプロイを)やりましたが、今からPolygon上でのメインネットで、「福岡市のコミュニティを盛り上げるDAO」を立ち上げたいと思います。ぜひ、この場で一緒にデプロイをしたいなと思います。皆様から頂いたウォレットアドレスがあります(※テストネットでDAOを作った際に、今回のイベントのDAOを作るということで参加者から同意の上でウォレットアドレスを集めていました)。ここにいる25人の皆様がこのDAOの管理者となります。テストネットで遊ぶというのも大事なのですが、実際のブロックチェーンに乗せるというのもハードルが高いと思いますし、福岡のコミュニティを走らせる中でここで皆様の提案としてこのDAOを走らせたいなと思っています。 メタマスクから、Polygon Networkを開いて下さい。皆様のウォレットに10円分のMATICを入れています。これは15回分の投票ができるくらい(のMATIC)です。では、テープカット並びにローンチのクリックを岩崎さんよろしくお願いいたします。」" [caption id="attachment_96546" align="aligncenter" width="800"] 提供:Fracton Ventures[/caption] ここで、福岡市創業支援課の岩崎氏が登壇し、DAOデプロイのクリックをしました。その後、岩崎氏は「これ(DAOのデプロイ)は昼に雄大(鈴木氏)さんからご提案いただきました。福岡に住んでいる者としても、これからWeb3.0を盛り上げていければなと思っています」と述べられました。 そして、最後に鈴木氏からの締めの言葉がありました。 "「我々としても盛り上げていけたらと思います。今回のイベントは普及系のコミュニティDAO CAMPです。我々も福岡市が大好きですし、是非これからも呼んで頂きたいと思っていますし、ビジネスだからという訳でなく、DAOを広めていけたらと思っています。それこそ、福岡市がWeb3.0やDAOの最先端になってもらえたらと思っています。皆様、本当に2日間お疲れ様でした。ありがとうございました。"」 その後、アンケート回答や、FUKUOKA DAO CAMPのPOAPのミントなどが行われ、最後の交流会では皆楽しく会話が弾みました。 イベント全体の感想 [caption id="attachment_96612" align="aligncenter" width="800"] 提供:Fracton Ventures[/caption] FUKUOKA DAO CAMPは、2日間、朝10時から夕方17時まで行われました。 1日目はインプット、2日目はアウトプットという形で、両日ともに非常に濃厚なイベントでした。 先日の「Web3.0 Town Hall」(7月20日)のイベントに続けて行われたということもあり、参加者の方々には、基本的にはWeb3.0やブロックチェーンのことに関して基礎的な知識がある方が多いように見受けられました。しかしながら、そうした方々にとっても、ディープな内容であったことは間違いなく、Fractonの方々の準備の徹底さや、グループワークの際の細やかな気配りなど、非常に素晴らしいものでした。 また、福岡市職員の方々の尽力も凄まじく、開催された場所も「Fukuoka Growth Next」という福岡のスタートアップを支援する施設であることもあり、福岡からWeb3.0をどんどん盛り上げていこうという気概が非常に強く感じられました。 行政と主催企業のコミュニケーションも素晴らしかったために、私自身一参加者として、一切の不便なくイベントを楽しむことが出来ました。Web3.0をしっかりと学べる良い2日間でした。 今回のイベント記事を書くにあたって、3万字ほどを費やしました。しかし、これでもまだ魅力を伝えきれてはいません。やはり実際に参加して体験するのが一番ですし、もし仮に、Fractonの方々が主催となっていたり、福岡市主導でこうしたイベントがある際には、参加することを強くお勧め致します。 非常に長いレポとなりましたが、読んで下さりありがとうございました! (謝辞) 今回のイベントを主催するにあたって尽力して下さった福岡市職員の皆様。私の突然の取材を快く受け入れて下さるだけでなく写真提供もして下さったFracton Venturesの皆様。興味深いお話をして下さった登壇者の皆様。イベントに来て下さった来場者の皆様。その他全ての方々に、この場を借りて改めてお礼を述べさせて頂きます。ありがとうございました。
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2023/08/147月29日、30日に福岡市で開催された「FUKUOKA DAO CAMP」の潜入レポート(1日目)
7月29日、30日の2日間にかけて、DAOを集中的に学ぶイベント「FUKUOKA DAO CAMP」が、Fukuoka Growth Next(https://growth-next.com/)にて開催されました。 このイベントは福岡市からの委託を受けたFracton Ventures株式会社(https://fracton.ventures/)によって開催され、「福岡におけるWeb3.0の機運の醸成及びプレイヤーの創出」を目的として行われました。 1日目(7月29日)は、Web3.0とDAOの概要のレクチャーが行われるインプットの日でした。また、午後からはAstar Networkの渡辺創太氏の登壇もあり、質疑応答に花が咲きました。 2日目(7月30日)は、実際に様々なDAOツールを使いながら、実際にDAOを立ち上げるところまでを行うアウトプットの日でした。 この記事は、筆者が当イベントに参加した際のレポであり、1日目(29日)のものとなります。2日目からは一参加者としてグループワークにも参加しましたので、私の体感もお伝え出来ればと思います。 また、当イベントレポートは私の主観で書かれたものであること、引用している登壇者の文言や言い回しに関しては、必ずしも厳密に文字起こししたものではないことをあらかじめご承知おき下さい。 開会の挨拶 [caption id="attachment_96594" align="aligncenter" width="800"] 提供:Fracton Ventures[/caption] まず初めに、Fractonの亀井聡彦氏から、開会の挨拶がされました。 「おはようございます。亀井です。Fractonはエコシステムを盛り上げるために活動しており、インキュベーションをメインに行なっています。今回のイベントは福岡市と一緒に取り組んでいます。過去には19社ともインキュベーションを行なっており、ハッカソンも行なっています。我々はDAO関連に可能性を感じており、最近では、DAO TOKOYO 2023を開催しました。インプットもアウトプットも多い2日間になるかと思います。レベル感も探りながらになるかと思いますが、DAOやWeb3.0全般の話をしながら、細かいツールの話にも関わっていければと思います。朝早いですが、皆様で盛り上がっていけたらと思います」 次に、福岡市創業支援課の紫垣氏から、挨拶がされました。 「おはようございます。創業支援課の志垣です。今日、我々が期待していることとしまして、Web3.0には福岡市も力を入れており、この施設は創業(支援)施設なのですが、来年スタートアップの支援をさせて頂ける人が、この中から出てきて貰えればと思います。今日は渡辺創太さんも来られますが、そのような方を超えてくる方が出てきてくれればなと思っています。市としても、地域の課題を解決というように、幅広く活躍される方が出てきれくれればと思います。今日はよろしくお願いいたします」 その後、1日目のタイムテーブルの説明がされました。 DAOとはある種の箱であり、それをうまく活用するためには、DAOの目的や活用方法や実際の取り組みを理解することが重要です。 この日(1日目)は、DAOの具体的な話となる前に、Web3.0とは何かという根本の話から始まりました。 Webの歴史:登壇者・鈴木雄大氏 この回では、Fractonの鈴木雄大氏(https://twitter.com/9dai_5)が登壇されました。 内容は、Webとはそもそも何なのか、どのようなWebの歴史の延長線上に今の我々が触っているWebが作られており、それらを踏まえてこれからのWebの可能性についての話がされました。 インターネット史 インターネットの歴史を振り返る際の主要なマイルストーンとして、以下の事例が挙げられました。 [caption id="attachment_96297" align="aligncenter" width="800"] 提供:Fracton Ventures[/caption] インターネットの前身となったのが、1969年の「ARPANET」です。初期のネットワークノードは、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)、SRIインターナショナル、カリフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB)、ユタ大学の4箇所で稼働されました。それぞれのローカルの環境を繋げることが出来たことに意義がありました。 そして何より重要なのが、1990年の「WWWの誕生」です。1989年にCERNに勤務していたTim Berners-Lee氏によって開発され、これは当初は科学者間の自動情報共有を目的としていたのですが、パブリックドメインにし、オープンライセンスでリリースすることで、現在にまで至るWebの繁栄をもたらしました。 現在のインターネットの原型が形作られたのは1990年であり、インターネットの歴史は実はかなり浅いことが窺えます。しかしながら、インターネットはもはや社会インフラとして非常に重要なものになっています。 [caption id="attachment_96299" align="aligncenter" width="800"] 提供:Fracton Ventures[/caption] 鈴木氏は、Web1.0はいわば、ウェブ上のショーケースを可能にしたものであると述べます。そしてWeb2.0は、Tim O'Reilly氏とDale Dougherty氏によって提唱されましたが、これは、明確にWeb2.0という区切りがある訳ではなく、Web3.0が出てきたから遡及的に定義された面もあります。 Web2.0の特徴として、ユーザー生成コンテンツ、参加型ソーシャルウェブといった、ソーシャルメディアの中で互いの交流やコラボレーションを可能にするものであり、基本的にWeb2.0はWeb1.0の強化版であると言えます。これによりユーザーが自発的に発信していく世の中になっていきました。 Web1.0の特徴を「テキストを発信」、Web2.0の特徴を「みんなで交流」であるとするならば、この二つは地続きのものと捉えることが出来ます。こうした流れを踏まえていれば、Web3.0の方向性やその流れを掴むことが出来るのではないでしょうか。 鈴木氏は、Web1.0の始まりを1990年ごろ。Web2.0の始まりを2010年ごろからと考えれば、今の我々は未だWeb3.0の枠組みの頭に入っている頃なのかもしれないと述べました。 今回のイベントはDAOに焦点を当てたものです。しかしながら、こうしたインターネットの文脈を分かった上での方が、多くの情報が流れてくる中で自身が真に重要だと思える情報を質よくキャッチアップ出来ると思いました。 Web3.0の概要と思想:登壇者・ビニール氏 [caption id="attachment_96595" align="aligncenter" width="800"] 提供:Fracton Ventures[/caption] この回では、Fractonのビニール氏(https://twitter.com/vvinyll)が登壇されました。 内容は、ブロックチェーンの基礎知識に焦点を当てたものであり、Web3.0とは何なのか、またその具体的なユースケース(NFT、Defi、Refiなど)が述べられました。 その昔(といっても数年前ほどですが)には、Web3.0という言葉はありませんでした。その為、時たまWeb3.0はブロックチェーンや仮想通貨のリブランディングであると揶揄的に言われますが、それは違うとビニール氏は述べました。 そもそも、Web3.0とは何を指すのか、というのは人によって意見の違いがあるかもしれません。ここで、ビニール氏は「ブロックチェーンを使っているかどうか」であると述べ、より具体的に「スマートコントラクトを分散で運用しているかどうか」と表現しました。 (余談ですが、ビットコインにはスマートコントラクトが含まれていないので、ビットコインはWeb3.0ではないと主張する人もいます) 誤解されがちで且つ難解なブロックチェーンですが、段階を踏みながらの解説がされました。 ブロックチェーンの意義 [caption id="attachment_96300" align="aligncenter" width="800"] 提供:Fracton Ventures[/caption] ビニール氏は、ブロックチェーンの意義として幾つかの例を挙げましたが、重要なのは大きく二つ「インターネットにユニバーサルステートレイヤーが出現したこと」と「データに秩序がもたらされたこと」でした。 ユニバーサルステートレイヤーが登場することによって、特定のデータセンターが攻撃されても、他のデータセンターが無事であれば、永久的にデータが失われることはありません。また、ブロックチェーンによって、データに順番や正しさが生まれました。 また、ビットコインやイーサリアムが誕生した経緯にも言及されました。ビットコインは2008年に誕生しましたが、当時はリーマンショックが発生しており中央通貨に対する不安が出てくる中で登場しました。 ビットコインが送金目的な一方で、イーサリアムは汎用的なコンピューターのためのデータベースとしてのブロックチェーンとして誕生しました。クリプト技術の中には、スマートコントラクトという、仲介を必要とすることなく自動履行されるプログラムがありますが、これは後々に説明するようにDAOに欠かせないものとなっています。 ブロックチェーンに対する誤解 暗号資産はやはり、一般世間から怪しいものという評価を受けているのは間違いありません。しかし、誤解されている部分も多いとビニール氏は指摘します。 ビットコインなどの暗号資産が詐欺の手口に使われているのは事実であるものの、ビットコインはブロックチェーンの一種類に過ぎないことや、マウントゴックスやコインチェックで過去あったようなハッキング事件はあるものの、これはブロックチェーンがハッキングされたのではなく、取引所のシステムがハッキングされたということが説明されました。 中間を排除し、P2Pへ 次に、個人間のやり取りへと話は移りました。 Web3.0の特徴は、仲介を排除して個人間の直接的なやり取りを実現するという部分です。例えば、不用品を売るのであっても、中古ショップで売るのと、フリマサイトで売るのとでは、引き取りの際の金額と店頭での売価の開きという点では、後者の方が少なくなります(即ち、手元により多くのお金が残ります) このように、中間(ミドルマン)を排除することで、自由な個人間のやり取りが成立し、それは個人により多くの力を与えることに繋がるとのことです。 また、それを実現する際には、情報の自己管理も欠かせません。Web1.0ではユーザーネームとパスワードが必要ですが、全てを管理するのは面倒です。Web2.0では、GoogleやFacebook(Meta)やtwitter(X)といったような大企業のアカウントを使ってログインします。後者は便利ですが、個人情報が一企業に一元管理されており、いざ乗っ取られてしまうと大問題となります。そこで、メタマスクなどを活用することで、規格の統一化且つ、匿名化が実現されます。 つまりは、Web1.0はサーバー単位で、Web2.0はプラットフォーマー単位で中央集権的である一方、Web3.0は分散的という決定的な違いがあります。 そして、そうした非中央集権の中で信頼できるものが、スマートコントラクトであり、コードが法律(Code is law)となるのです。また、ブロックチェーンによる検証可能性があることで、情報の透明性が確保されると説明がされました。 歴史的な「信頼」の変化 先ほど、スマートコントラクトを信頼できるものとして挙げましたが、これは信頼の形が変化しているものと考えられます。つまりは、政府といった社会制度への信頼から、FacebookやAirbnbといったプラットフォームへの信頼へ移り、プロトコルへの信頼というような変化です。 [caption id="attachment_96301" align="aligncenter" width="800"] 提供:Fracton Ventures[/caption] ビニール氏はここまでWeb3.0について述べてきましたが、必ずしもWeb2.0から完全な移行がされるということはないし、恐らくはWeb2.0とWeb3.0が共存する形に収まるだろうと補足しました。 個人的には、プラットフォームへの信頼により、企業価値とサービスの価値が入れ替わるという指摘が非常に興味深かったです。 これまでは企業が上にあってその下に自社プロダクトがあるという形でサービスが提供されてきましたが、Web3.0においては、パブリックプロトコルがまずあって、その下に多くの企業がいる形となっています。 これによって、企業が顧客やユーザーデータを囲い合い、企業間連携があまりないという現在の形から、企業はパブリックスペースにアクセスし、データを参照し、サービス間でデータの受け渡しが容易というように変化するというのが、非常に革新的な変化ではないかと思いました。 その一つの形態は、NFTでしょう。NFTという形態をとることで、デジタルでも供給量の制限をしレアリティの設計が可能になり、追跡可能且つ容易に二次販売が可能になり、作者へのロイヤリティが入ってきます。 これまで企業及びその会社が提供するサービスはイコールで考えられてきましたが、そうした前提がWeb3.0の中でひっくり返ることがあるのかもしれないと思いました。 Refi(Regenerative Finance)とは? [caption id="attachment_96303" align="aligncenter" width="800"] 提供:Fracton Ventures[/caption] このセクションの中で、初耳で面白いと思ったのは、「ReFi」という試みでした。 これは “Regenerative Finance” の略称であり、ブロックチェーン技術を用いて、長期的に環境問題や社会問題を解決しようとするアプローチです。 重要なのは、維持ではなく再生という部分で、ブロックチェーンを利用してトークン化し、アクセス可能で透明性を確保することで、現在の経済システムでアプローチできなかった領域にアプローチするというものです。地域社会単位で地域経済の再生にコミットすることが可能になるとのことです。 Web2.0 & Web3.0 [caption id="attachment_96304" align="aligncenter" width="800"] 提供:Fracton Ventures[/caption] ここまでのセクションでは、Web2.0とWeb3.0への流れや、Web3.0の試みについて語られてきましたが、重要なのは、Web3.0は単純なWeb2.0の進化系という訳ではなく、組織のあり方や課題解決方法など、社会全てを変えていくパラダイムシフトであるということでしょう。 Web3.0において重要なのは、やはりスマートコントラクトです。フロントエンドは一見シンプルに見えても、その裏にはスマートコントラクトがあり、そこに価値があります。またプロトコル層は社会インフラになるので自社で抱える必要はないというのも魅力的でした。 もしこのままWeb3.0の流れが進んでいけば、既存の社会システムは、ユーザーが気づかないままにプロトコル層からコードに置き換えられていくのかもしれません。 質疑応答 Q. DAOはどのように資金調達をしているのですか? A. まず前提として、DAOは決して高尚なものではありません。例えば、一番綺麗なDAOと聞かれた時、多くの人はビットコインと答えたりします。その上で話せば、普通にVCから資金調達したり、自分たちでトレジャリーをNFTで出したりしてお金集めたりしています。まだ、DAOを綺麗に分散化しているところ(事例)はあまりないように思われます。 Q. Refiをしようとした時、資金調達などかなりの規模が必要になると思いますが、その辺りはどのようにしているのですか? A. 今あるものでも小規模であったり、持続可能なものであるのはまだないように思います。資金調達という部分では、自分たちのトークンを発行してユースケースを作って、ユーティリティを作ってトークンの価値を担保するとかしかないかもしれません。マネタイズできるかと言えば、現状かなり難しいです。また、環境に携わっている人たちは、自分の身を削りがちな傾向にあります。まだマーケットが出来ていない事もありますし、今後とも模索していく必要があります。地方都組んで地方創生の文脈でやっていって、スケーリングをしていくというのが今現在のアプローチになっているのではないでしょうか。 DAO入門:登壇者・寺本氏 [caption id="attachment_96596" align="aligncenter" width="800"] 提供:Fracton Ventures[/caption] この回では、Fractonの寺本氏(https://twitter.com/salmon_crypto)が登壇されました。 内容は、より深くDAOの歴史を概観した上で、DAOをより具体的に見ていくといったものでした。 DAOとDAC まず、DAOの前に、DAC(Decentralized Autonomous Corporation)が提唱されていたことが説明されました。 DACはDaniel Larimer氏によって2013年に提唱された、「価値を単一の個人、企業、組織に依存せずに社会に商品やサービスを提供する分散型システム」のことです。これは分散型システムであるものの、あくまでも企業の一つの形であり、基本として利益の追及があります。 一方で、2014年にVitalik Buterin氏によって提唱されたのが、DAO(Decentralized Autonomous Organization)です。DAOはスマートコントラクトという、プログラム化されたルールによって管理される組織です。従来の組織では、CEOがいてそこから階層的に組織が作られますが、DAOであれば、ユーザーやデベロッパーやマイナーや取引所が、網の目のように繋がります。あらゆる参加者が合議で決めるため、階層構造がないですし、必要がありません。 寺本氏は、重要なのは、従来型の組織とDAOのどちらかが優れているということではなく、意思決定の速度や質を鑑みながら、どちらが良いかを考えないといけないと指摘しました。 DAOは新しいコラボレーションの形である DAOはブロックチェーンの登場のよって可能になった新しいコラボレーションの形であり、ブロックチェーンの利用を前提としています。 また、平等なあり方を実現するために、インセンティブのあり方が重要になってきます。従来の組織であれば、上にいけいくほど責任も大きくなり、報酬も大きくなります。しかしDAOでは全員が平等なので、積極性が損なわれる恐れがあります。そこで、積極的に動かせるためのインセンティブが必要になってきます。 様々なタイプのトークンを利用して、参加者のインセンティブを調整し、組織(コミュニティ)に貢献すればするほど個人も報われる仕組みになっています。これによって、いろいろな立場の人や組織がおそれぞれの立場から貢献できるフラットな構造となっています。 他にも、DAOは匿名経済が成り立ち、(身分や地域に関係なく)自身の能力によって働けるので、それもDAOのメリットの一つです。 DAOはどのように運用されているのか [caption id="attachment_96307" align="aligncenter" width="800"] 提供:Fracton Ventures[/caption] DAOの運用内容は、大きくオンチェーン上のものか、オフチェーンで行われているかに大別され、その両方が活用されます。 オンチェーン(ブロックチェーン内で実行)では、スマートコントラクトによって自動化され、議決権としてガナバンストークンが利用されます。 オフチェーン(ブロックチェーン外で実行)では、Discordといった場所でコミュニティが形成され、フォーラムで議論されたりしています。 この形態をとる理由として、ブロックチェーン上で動かす以上のコストがかかるため、投票はオンチェーンでするけれども、それに至るまでの議論は別のところでするとのことでした。また、オンチェーン投票のメリットとして、議決の反映はスマートコントラクトが自動でしてくれるため、手作業故の意図的な変更や、ヒューマンエラーが発生することがないことが挙げられるとのことでした。 様々なDAOの形と具体例 次に、DAOには大きく8つの形があることが説明されました。まずはそれらを箇条書きであげてみます。 Protocol DAO:プロトコルを管理するためのDAO。ERC-20トークンをガバナンスに使う発想の原点。コアチーム主導の運営から徐々にコミュニティドリブンにシフトしていくのが一般的。(例:Compound、Curveなど) Grant DAO:助成金をプロジェクトに提供する。資金はDAOメンバーを含むコミュニティが寄付。資金の配分はコミュニティが決定。(例:AAVE Grantなど) Philanthropy DAO:社会的責任への貢献。実世界との強い繋がりを持つ傾向。基本的には慈善活動。(例:BIG GREEN DAOなど) Social DAO:メンバーは共通の価値観・関心を持つ。その証明のため参加には、メンバーからの招待、NFTの保有といった条件がつく。(例:FWB、PazzaDAO、APE、など) Collector DAO:何かを収集するためのDAO。収集対象が一つだけの場合、それに失敗した・失われた場合には解散も。(例:Flamingo DAO、Constitution DAOなど) Investment DAO / Venture DAO:VCのようにアーリーステージの企業に投資したり、実世界の資産を共同所有したりする。投資状況を常にブロックチェーン上で監視できる。(例:MetaCartet Venturesなど) Media DAO:メディアをDAOとして運営する。コンテンツの受け手は一般の人々であることもあればDAOのメンバーであることも。広告に対するスタンスや編集方針など、DAOとしての特色は様々。(例:Decryptoなど) Servise DAO:特定のスキルを持つ人が集まり、1つのDAOとしてサービスを提供するDAO。提要するサービスは開発やデザインなどが考えられる。顧客は基本的にwe3業界。(例:Developer DAOなど) そして、具体的なDAOの解説もされました。その中で個人的に興味を引いたものをいくつか紹介しようと思います。 Links DAO [caption id="attachment_96526" align="aligncenter" width="800"] Twitterヘッダーより引用。[/caption] 一つは「Links DAO」(https://linksdao.io/)です。これはゴルファーたちによるDAOであり、各地でメンバーによるイベントが開催されていたりしますが、何より注目を集めたのは、今年2月にスコットランドでゴルフコースを購入したことでしょう。これは投票による決定に基づいて行われました。 Pudgy Penguin [caption id="attachment_96527" align="aligncenter" width="800"] 公式サイトから引用。[/caption] 他には、「Pudgy Penguin DAO」(https://pudgypenguins.com/)です。これはふっくらとした体型のペンギンのNFTを販売するDAOなのですが、実は現在の経営チームは同NFTのホルダーによって構成されており、元の経営チームからプロジェクトを買収する形で誕生したことが背景としてあります。オンチェーン投票は行われず、経営チームを中心にコミュニティの声を取り入れながら運営されていることが特徴です。 このコミュニティは非常に商売が活発です。買収した人はおもちゃ屋さんの経歴を有しているのですが、このNFTのデザインと元にしたおもちゃを販売し、その収益が同じ柄のNFTホルダーに入るといった形でエコシステムを構築しています。 この他にも、米国憲法を集めるDAO(Constitution DAO)や、町おこしの一環で運営されているDAO(山古志村DAO)などあり、非常に興味深いコミュニティが数多く構築されていることが紹介されました。 DAOの探し方 DAO紹介の最後、具体的なDAOを探す方法が紹介されました。例えば、データプロバイダーとしてダッシュボードを提供している「Messari」では、々のDAOの構造などに関するリーサーチ記事も公開されていることや、DAOのためのデータ分析サイトとして「DeepDAO」があり、メンバーシップや管理下にある資産などのいくつかの主要な指標を使用したDAOのランク付けがされていることなども紹介されました。 また、補助ツールとして、DeepL(翻訳ツール)やCoinGenko(トークン情報のダッシュボード)を参照するのも非常に有用との解説がされました。 DAOのこれから:登壇者・亀井氏 この回では、Fractonの亀井氏(https://twitter.com/tolehicoJP)が登壇されました。 内容は、これまでのDAOの解説を踏まえて、これからのDAOの将来と社会との有り様を考察するという内容でした。 社会はこれからどこへ変化しようとしているのか [caption id="attachment_96528" align="aligncenter" width="800"] 提供:Fracton Ventures[/caption] まず、マクロ単位での問題として、社会がどこに向かっているのかの疑問があると問いかけがありました。経済成長の限界と、持続可能性の理論があり、資本主義の先を見据えて、社会のあり方を見直す必要がある時期に来ていると述べられました。 そして、その中で以下の二つの指摘がされました。 社会の流れの作り方:「競争・独占」から「共創・コラボレーション」へ。 アウトプットの方式:「事業・プロダクト・サービス」から「コモンズ」へ。 Web3.oにおける活動のあり方はSNS上で数多く語られていますが、あまり具体的な部分にまで且つ、質良く掘り下げたものはあまりありません。このセクションではそうした話を具体的に論じたものであり、個人的に非常に新鮮な内容でした。 また、「信頼」の方式が変化していると指摘もあり、 法や制度をトラスト プラットフォームをトラスト プロトコルをトラスト この段階で変化しているとも述べられました。 他にも、トークンが発明されることで様々な形の資本が登場していること、例えば、Stepnは、物理的な努力/経済資本をトークン化しているとし、トークンは通貨的であるだけでなく、資産的でも会員的でもあり、様々な性質があることが述べられました。 Web3.0の本質:「コラボレーション / コーディネーション」と「コモンズ」 [caption id="attachment_96529" align="aligncenter" width="800"] 提供:Fracton Ventures[/caption] 亀井氏は、Web3.0の本質は、「コラボレーション / コーディネーション」であり、それはオープンソース×インセンティブ設計であると述べました。こうしたコラボレーションの新しい形として「DAO」があり、そこから、 “Company” ではなく、 “Human Coordination” の新しい形式が発生するとのことです。 次に、Webの歴史への言及がされました。その上で、コーディネーションの歴史として捉え直してみることが大事だと、亀井氏は述べます。 [caption id="attachment_96530" align="aligncenter" width="800"] 提供:Fracton Ventures[/caption] Webの歴史が「Web1.0→Web2.0→Web3.0」とすれば、コーディネーションの歴史は「部族→国家→市場→ネットワーク→ブロックチェーン」であり、この流れをWebの歴史に当てはめるのならば、以下のような仕組みになっているとのことです。 Web1.0(部族→国家→市場)→Web2.0(インターネット)→Web3.0(ブロックチェーン) また、「市場・国家」の枠組みで、ビジネスや経済合理性や再分配や税金がある一方で、「コモンズ」の枠組みでコミュニティやSNSやブロックチェーンがあるとの説明もされました。 Web3.0ではP2Pを重視しており、個人間の結びつきがWeb2.0以上に重要であると言われます。しかし、それがいったいどのような思想や世界観を背景として語られているのかはあまり明瞭にはなっていないですし、それを語れる方も少ない印象です。それもあり、この亀井氏の論は非常に新鮮に思えました。 公共へのアプローチ 話はビットコインに進み、ビットコインは通貨でもデジタルゴールドでもなく、「誰も止めることができない世界の公共財」であると語れられました。 そして、公共的なインフラとしての革命として、以下のことを特徴として挙げました。 止められない:プロトコルは誰にも止められない。基盤となるブロックチェーンが存在する限り実行される 無料:基本的にプロトコル全体の手数料は0%。ガス代のみで動く。 価値がある:所持者がアクセス可能で実行可能な価値を得ることが出来る。 拡張性:プロトコル参加者へのインセンティブが組み込まれている。 パーミションレス:検閲に強い。仕組みやプロトコルのルールを無断で独断で解除や変更することが出来ない。 プラスサム:同じインフラ利用によるwinwinの環境を作り出す。 信頼のできる中立性:プロトコルはユーザーに依存しない。ユーザーはコードの前に平等。 クリプトは思想的であるとよく言われますが、これらのことを前提とすればそれも納得です。 公共財の視点 次に公共財の視点の重要性を亀井氏は指摘しました。 財にはいくつかの種類があります。まずは、競合性と非競合性という視点から分類が出来ます。 競合性とは、消費するとマイナスになる性質を持っています。 非競合性は「消費してもマイナスにならない性質を持っており、例えばネットフリックスのようなものは、いくら観てもコンテンツそれ自体が減る訳ではないので、非競合性に分類されます。 そして、もう一つの軸として、排除性と非排除性という視点からも分類が出来ます。 排除性とは、特定の消費者を消費から排除する性質のことです。例えば、ネットフリックスはお金を払わないと消費できないので、排除性を有しています。 非排除性は、常に誰でも利用可能ということであり、空気などがこれに分類されます。 これらによって四つの種類に分類がされますが、これらに対するアプローチがDAOによって変わるのではないかとのことです。 [caption id="attachment_96531" align="aligncenter" width="800"] 提供:Fracton Ventures[/caption] 例えば、「クラブ財」(非競合性×排除性)や「共有財」(競合性×非排除性)に対するアプローチが変わることが挙げられます。そして何より重要なのは「公共財」(非競合性×非排除性)に対するアプローチです。 「公共財」という領域にはこれまで行政くらいしかアプローチすることが出来ませんでした。そうした領域にDAOはアプローチ出来るとのことです。 これまで、公共財を供給するには、市場や国家の観点からしても、独占や非効率的といった短所がありました。しかし、コモンズという形態をとることによって、コミュニティが決定したインセンティブを実装できたり、迅速で柔軟な対応が可能になっていくと亀井氏は述べます。 従来型組織とDAO:どのようにしてDAOになっていくか 次にプロトコルを支えるという視点から、従来型組織とDAOの比較がされました。それぞれのメリットやデメリットの比較がされましたが、全体的な傾向として組織はよりオープン化していくのではとのことです。 [caption id="attachment_96532" align="aligncenter" width="800"] 提供:Fracton Ventures[/caption] 大抵の場合、初めからDAOという訳ではなく、法人からDAOベースのコミュニティに段階的に分散化していきます。 通常、普通の株式の上場はスタートアップから7年ほどかかります。しかしながら、クリプトの業界であれば3年で上場したりすることも珍しくありません。ここでいう上場とは、トークン発行などの取引所への上場のことを指します。このようにトークン発行という形態がクリプト業界にはあるため、初めは企業やチームであっても、徐々に管理されたネットワークで運用したり、最終的にトークンで分散化をするといったような段階を踏むことが多いとのことでした。 株式の形態との違いとして、ステークホルダーが同じ方向を向くということにも注目です。株式会社であれば、課題解決を求めるユーザーと、成長や売上を求める企業と、LPへのリターンを求めるVCや株主の間で、方向性がそれぞれ違うことは珍しくありません。しかし、Web3.0の世界では目的がコモンズで統一されているため、ユーザーとプロジェクトと投資家が繋がることが出来、同じ方向性を向くことが出来るのです。 DAOは未だ成長途中。DAOで働く醍醐味。 DAOは今現在、その規模をどんどん大きく伸ばしています。 現在の、DAOのトレジャリーは225億ドルにも上り、セキュリティやトレジャリーマネジメントといったDAOを対象としたプロジェクトも数を増やしています。 その他にもDAOで働くことのアンケートも公表され、「実生活ではお互いにあったことのない人たちが一緒に仕事すること」や「クリプト分野における最先端にアクセス出来る」といったメリットや、「より多くの特権的な情報を持っているメンバーが決定においてより大きな影響力を持っている」や「もう少し構造が必要」といった不満の声も紹介されました。 質疑応答 Q. DAOで働く際、給料はどうなるのか? A. DAOによって給与提携は異なります。こうした働きをするとこういったトークンがもらえるということが明記されているところもあれば、プロポーザルで「こうしたことをした人間はこうした収益をもらうべき」というような案を出すことも出来ます。 また、給与水準がグローバル水準になるので、その人の国ではもらえないような高い水準の給料をもらうことも可能になります。 Q. 最終的には、DAOはフラットな会議体になるのでは? A. 特定の組織の中であったり、DAOそれ自体が会社となるのではなく、会社でも関われる個人でも関われるといった大きな輪っかをDAOと言っていいのでは。後ろに会社がいるとなると、実質的に入社や副業という形になってしまいます。(そのように)がっちり固めてしまうと、良い人材を逃してしまう可能性もありますし、ゆったりとした枠組みにする方が、いい人材も入ってきてくれるのではないでしょうか。 他にも、最初は開発会社だったけれども、トークンを配った結果、DAO的になる可能性もありえます。DAOが特定の会社としてではなく、いくつかの会社がDAO的な繋がりを持つということも出来ます。しかし、法律的には、会社法をどうするかといった話にもなりますし、その在り方は結構考えないといけません。ある種のノリが大事であって、イノベーションをやる側はグレーも重要という考えもあるのではないでしょうか。合法か脱法かではなくて、一緒にルールを作っていくという意識でもいいのではないかと思います。 Q. 企業の話として、メンバーシップに加入しているお客様とDAOが出来るのではみたいな話がありますが、企業の下でDAO(という形態)は出来ますか? A. Uniswapみたいな感じのDAOの形態はありますが、日本でとなるとちょっと分かりません。ただ、ガイアックスさんのところでは「美しい村DAO」があります。見た目上そうなっているだけかもしれませんが、ガイアックスさんの方も現在、進められている最中です。プロジェクトレベルで立ち上がっている例もあります。こちらとしても会社が持つDAOというのを調べないといけませんが、会社を持たないことをDAOの良さの一つとしてこちらは考えている部分もありますし、色んなあり方もあるのではないかと思います。 「Mass Adoption After the Bear Market」:特別ゲスト・渡辺創太氏による講演 [caption id="attachment_96533" align="aligncenter" width="800"] 提供:Fracton Ventures[/caption] 渡辺創太氏は、日本初のブロックチェーンとしてAstar Networkを立ち上げ、Startale Labsにも尽力しており、最近ではSonyとの協業を発表しています。今回は「Mass Adoption After the Bear Market」との題名で発表をされ、渡辺創太氏のビジョンについて語られました。 以下、講演部分及び質疑応答の部分は、書き起こしの形で記載していきます。*以下敬称略 Astar Networkのビジョン 渡辺:Astar Networkのエコシステムとして、Astar財団とStartale Labsの2つがあります。Astar財団では、トークンの管理や非営利的な活動をしています。Startaleの方は営利企業なので、Astarではないプロトコルもどんどんやっていきます。Startaleは1月に設立し、6月から活動しています。Sonyとの資本提携や日本銀行の実証実験の取り組みにも参加企業に選ばれています。 [caption id="attachment_96598" align="aligncenter" width="800"] 提供:Fracton Ventures[/caption] 渡辺:Startaleのミッションは、 “Web3 for Billions” 。暗号資産の世界のデイリーアクティブユーザーは極めて少ないのが現状です。そうした中で、(今の状況は)Web2.0で使っているようなAmazonだとかTwitterといったような企業が、出てくるタイミングではないかと考えています。 何故このようなことを考えているかというと、今はチャンスの時期だと考えているからです。 [caption id="attachment_96534" align="aligncenter" width="800"] 渡辺氏のTwitterより引用(https://twitter.com/Sota_Web3/status/1680813443463663616?s=20)[/caption] 渡辺:現在、新しいスタートアップ企業の設立数はかなり落ち込んでいます。Astarが創業したのは、2019年で、(2018年の暗号資産)バブルが終わった頃です。その後、DeFiの夏が来たりしましたが、今はご存知の通り冬の時期ですね。とはいえ、2015年とか2016年とかと比べれば暖冬ですけれども。 2019年で事業を作ったことの良い面として、その後の盛り上がりで、波に乗ることが出来たことです。また、マーケットに注目されていないこともあって、きちんと開発することも出来ました。今の設立数は、実は2011年とか2012年と同じ水準であってチャンスな時期です。やはりタイミングが一番大事です。Startaleも今の時期に設立したので、次の良い波が来たら1兆円に行きたいなと考えています。 何故、キラーユースケースがないのか 渡辺:現在の問題として、メタマスクでネットワークの設定を変えないとトークンが表示されないといった問題があります。ちょっと勉強すればできますが、そこら辺の子供やお爺ちゃんやお婆ちゃんは出来ません。一方で、インターネットは誰もが使えています。というのも裏側のプロトコルを意識しなくていいからです。 (インターネットの)プロトコル層やインフラの話題なんて、お爺ちゃんやお婆ちゃんから出てきません。となれば、今後ともレイヤー1とか2とかを意識していかなくてもいいのではないでしょうか。将来的にインフラではなくて、その上のアプリで競争するようになるのではないかと考えています。 現状、イーサリアムだとかのレベルで価値が生み出されているのであって、アプリそのものでサスティナブルに価値を生み出しているものはないのではないでしょうか。 まだ “Billion” に開かれていないのは、まず使い勝手の悪さと、キラーユースケースがないからでしょう。後者の仮説として二つあります。一つは「垂直分業しているから」。一般ユーザーが使うのはアプリですが、ユーザーだけだとブロックチェーンにアクセス出来ません。ウォレットなどを介して、接続しています。(アプリの)開発をするにあたって、ウォレットやindexerとかノードマネジメントなどが壁になります。 [caption id="attachment_96535" align="aligncenter" width="800"] 渡辺氏のNoteより引用(https://note.com/sota_watanabe/n/n49002a4c2a74)[/caption] 渡辺:キラーユースケースが出ていないのは、最も上の層であるアプリを、ユーザーが使うのに、(ユーザに合わせるのではなく)ブロックチェーンに合わせてアプリを開発しているからです。本来はユーザーからの要望に合わせて、アプリの方の開発をするべきです。車で例えると、エンジンやボンネットを作るプロフェッショナルはいても「車」を作る人がいない、垂直に統合してくれる人がいないという感じです。 [caption id="attachment_96536" align="aligncenter" width="800"] 渡辺氏のNoteより引用(https://note.com/sota_watanabe/n/n49002a4c2a74)[/caption] 渡辺:もう一つは、リアルアセットとオンチェーンのブリッジの不足です。そもそも、現在、Web3.0のマーケットキャプと、既存金融のマーケットキャプの規模は全く違います。Startaleとしては、将来的には前者が膨れて、後者から(資本が)流れてくるはずなので、そのブリッジをしていきたいと考えていますし、Sonyとはグローバルなインフラストラクチャーを作る予定です。将来的に、Startaleのサービスのクラウドを作っていきたいですね。 垂直統合によってより優れたアプリを開発 [caption id="attachment_96537" align="aligncenter" width="800"] 渡辺氏のNoteより引用(https://note.com/sota_watanabe/n/n49002a4c2a74)[/caption] 渡辺:Startaleは先ほどのレイヤーを垂直に繋げたいと考えています。ブロックチェーン上のデータをすぐに参照できるようにしたいです。ノードを持っていないとトランザクションをしたりすることができないので、今はそれを作っています。 「App」、「Wallet」、「Indexer」、「Node Manegement」、「Blockchain」という上から下への層があります。今現在、(Astarは)IndexerとかNodeを作っていないので、情報を手に入れようと思ったら六ヶ月くらいかかってしまいます。それを自分で作ることで、ユーザビリティを改善していきたいですね。 分散や分権で何をするのかが大事 渡辺:分散や分権は勿論大事です。でもそれは状態の名前であって、分散していることによって何が嬉しいのかが大事でしょう。個人的には、分散することによって、選択肢(権限)が増えることが良いことであると考えています。集権的ではなく自分でデータをコントロールする。仮にコントロールすることが面倒だとかでしたくなかったら、Amazonみたいな感じで(企業に)情報を渡せばいい。 Web2.0の上にWeb3.0のレイヤーができる感じであって、その方が、上手くいくのではないでしょうか。データのプライバシーに気にかけない人もいるし、人それぞれが好きな方を選べばいいと思います。 プロジェクト実装事例 渡辺:現在のプロジェクトの紹介をしていきます。まずは、Sushi Top Marketing社の実装事例です。セブン銀行ATMでのNFT募金キャンペーンですね。 これは単発では意味がありません。革新的なのは、募金したことがあるという履歴によって、オンチェーン上のアクティビティによって、フォロワーさんの数云々ではない形で、その人物が評価されるというのが良いのではないでしょうか。 他だと、JR九州NFTマーケットプレイスですね。まだ構想があるわけではないのですが、例えば、Suicaだとかと連携して、特定の駅を通過したらNFTが貰えたり、それによって何らかのディスカウントが貰えるとかいいんじゃないでしょうか。 Startaleの計画 [caption id="attachment_96538" align="aligncenter" width="800"] 渡辺氏のNoteより引用(https://note.com/sota_watanabe/n/n49002a4c2a74)[/caption] 渡辺:Startaleのゴールとして「1年以内に日本を代表する大企業に」、「2年以内にブロックチェーンのソリューションを垂直統合」、「4年以内に、伝統金融とWeb3.0のブリッジ」、「5年後にキラーユースケースを作り上げる」ということを計画しています。 Astar2.0でトークンエコノミクスの変更したり、Supernovaという新しい試みが9月に発表予定ですので、注目して頂けたらと思います。 質疑応答 Q. Astarは様々な取り組みをしていますが、どうしてプラットフォームを作ったのですか? A. 前提として、プラットフォームは作っていません。ジェネラルな話をすると、AmazonとかAppleといった巨大な企業はいますが、そうしたところではNFTのプラットフォームはやりにくいという現状があるのではないかと思います。Web3.0 Appの最大の障壁は、Appleだったりします。なぜなら、Appleの収益として、30%の手数料を取っているので、AppにDEXを乗っけると(Appleの)収益が出ません。なので、Web2.0ビジネスと対立してしまうからですね。 Q. 手数料といった障壁がなくなれば、Web2.0からWeb3.0に動けるようなUXが作れると思いますか? A. そうは思いますが、手数料をなくすとかはしないと思います。 Q. アプリケーションを開発しています。垂直的な開発という話やキラーユースケースの話があり、共感していました。どういった部分がキラーユースケースになると思いますか? A. 垂直統合の話となると、iOSとAndroidの違いが挙げられるかと思います。最近だとチップまでもAppleは作っていますし、開発だけでなく実店舗もあるなど、垂直統合型のエクスペリエンスがあります。一方で、Androidは、チップもいろいろなところが提供したり、いろんな会社がスマホを作ったり実店舗も違っていたりします。最近だと、テスラですかね。ここは車だけでなく電気の充電の規格まで開発してます。 こちらとしては、既存金融をWeb3.0をこちらに持ってくるというのが強みかもしれません。債権だとかの取引をDEX上で出来るようになると、平日だけでなくて24時間365日間いつでも取引することが出来ます。NFTの例だと、カルビーのものでは、商品をスキャンすればするほどNFTが大きくなっていきます。しかし、カルビー側は「0x〜」といったアドレスしか分かりません。しかし、情報を渡せば新商品といった特典をもらえるというような仕組みに出来るかもしれません。 Q. 垂直統合に取り組まれているとのことでしたが、アバランチ(Avalanche)やSuiなどと競合しているのでしょうか? それとも他の方向を向いているでしょうか? 今の立ち位置を教えて下さい。 A. アバランチだとかが伸びた理由はイーサリアムが高いからだと考えます。アバランチやソラナやポリゴンが発展することで、イーサリアムに恩恵を生み出します。 とはいえ、1円のトランザクションを0.1円にすることに意味はあまりないように思います。これからはユーザビリティの問題ではないでしょうか。それら(手数料といったコスト削減)は勝手にやらせればいいし、チェーンがどのように使われるかは、キラーアプリケーションがあるかどうかによると思います。 今年の1月まではチェーンの強さで勝負してきましたが、今はアプリケーションの世界で勝負していこうとしています。 Q. それは、将来的にはどこかのチェーンが覇権を握るという事ですか? A. そうですね。そんなに何個も残るということはないと思います。 [caption id="attachment_96599" align="aligncenter" width="800"] 提供:Fracton Ventures[/caption] Q. メンタル的な話になるかもしれないのですが、既存のWeb2.0はアメリカに取られたから自分はWeb3.0を取りに行こうとしているとのことでしたが、そのメンタル(マインド)はどこからきていますか? 日本のWeb3.0で覇権をとれたら次はどこに行きたいと考えていますか? A. Web3.0をする際、思想家的にどうかということと、起業家的にどうかということ、この2つが考えられると思います。まずは思想家的な返答をしてきます。 思想家的に考えると国籍とかはどうでもいいことです。自分のメンバーも何カ国もの人たちで構成されていますし、日本がどうこうとかはヨーロッパの人たちからすればどうでもいい事ではあります。パーミッションレスとか検証可能性といった、Web3.0でないと出来ないこと、これまで出来なかったことをどうにかするといった方が良いのではないでしょうか。 とはいえ、起業家としては日本人の端くれですし、失われた30年というものが僕らにもありますので、僕らの世代でなんとかしないと、子供や孫の世代が大変なことになってしまいます。GDPもどんどん下がってしまいます。そうした中で、Web3.0はチャンスの領域ではないでしょうか。例えばAI分野ではデータ量の勝負になります。これはかなりの額の投資が必要ですし、そんなことができる日本企業はありません。しかしWeb3.0は0円からできる。政府がWeb3.0に力を注ぐのもそうしたことが理由だったりします。 モチベーション的な話をしましょう。私はこれから海外に行くのですが、世界のどこにいてもトヨタやソニーがあります。シンガポールにいてもドンキホーテがあります。そうした景色は戦後の日本人が頑張ったからこその景色であって、そうした積み重ねがあるからこそ(現地の人たちは)日本人であるというだけでリスペクトをしてくれます。孫の代になったときに、ソニーってものがあったんだという風に、過去形で言われたくはありません。 Astarは自律分散的に何とかなるようにしていきたいです。Startaleは令和のソニーやトヨタといった企業にしたいです。死んだようなプロジェクトを、DAOにしたとか言いたくはありません。本当のDAOはビットコインやイーサリアムといったものであって、かなりの規模が必要になるでしょう。 Q. 先日、セブンのNFTを利用しました。ウォレットを持っていない前提でやってみたのですが、非常にスムーズでした、一般の人も出来るのではないかと思っていて、先ほどのロードマップなどありましたが、その中に60歳代の人たちでも使えることを、今後5年間のロードマップに含めていますか? A. 一言で言うと、僕でも分かりません。でも、予想するとマーケットの開拓も含めて3年くらいかなと。メディアに聞かれたときに答えるところとしては、「僕らみたいなプレイヤーにかかっています」と言います。というのも、使う側ではなく、作る側にまわっていますからね。例えば、PS5にウォレットが配られれば数億人にウォレットが行き渡るのですが、それをするだけの難易度の調整とか、実績を作るのが難しいかなとも思っています。 Q. ブロックチェーンを使うことによって、会社がこれまでデータを持っていたけれども、これからはデータの個人管理の時代になっていくのかなと思うのですけど、データのポータビリティの問題が出てくると思います。その点も含めたエコシステムの問題もあると思うのですが、どうなったらいいだとか、どうしていったらいいというのはありますか? A. 二つあって、一つには市場原理ですね。みんなが使うから使うと言うようなネットワークですね。しかしそれは閾値が必要で、それはビットコインやイーサリアムですら達成していません。恐らく、数十億人がイーサリアムを使っていれば、みんなイーサリアムを使いますよね。Twitterだって数億人いるから面白い。そういった閾値をとりにいくのが重要だと思います。 もう一つは、きちんとインフラ側で組むということです。Googleとアップルが、AndroidとiOSとを合流させるといった、そんなムーブをビジネス側で出来るかどうかでしょう。今、日本では5Gにおいて色んな企業が(パイを)取り合っていて、その結果ファーウェイに負けてしまっています。だからこそ、6Gこそはきちんとしていかないとねという流れがあります。それを踏まえると、せめて日本国内ではきちんと統一していきたいですね。 Q. 先ほどの垂直統合についてもですが、そういったところも含めて期待しています。 A. 競争領域があるかなと思っていて、例えばindexerやブロックチェーンとかは統合していって、その上に乗っているDapps とか取引所とかはどんどん競争していけばいいんじゃないかなと思っています。 Q . 起業するなら今がチャンスと(講演の中で)仰っていました。(中でも)下の基盤系を繋げようという話を重点的にしていたように思うのですが、上の方のユーザー側に対して(サービスを)提供する人たちにも共通して言えることだと思いますか? A. ユーザビリティと分散性のトレードがありますが、分散性は一定数あればユーザービリティを実現できるのではないかと思います。そういった程度を見ながら、開発すればまだ良いのではないでしょうか。アカウントアブストラクションといった新しい技術が出てくれば、上の方も変わっていきますし、将来の方向を考えながら上の方を作っていれば、かなり良いと思います。 僕はレイヤー1を作ってきましたが、当時はWeb3.0なんて言葉はなくて、(今のような状況は)たまたまといった感じです。僕としては、仕掛けて待っていた感じですね。そういったムーブも必要ではないかと思います。 [ここで、質疑応答の時間が終わり、渡辺氏の講演は盛況のうちに終了しました] ワークショップ①:明日へ備えてのDAOの案出し [caption id="attachment_96601" align="aligncenter" width="800"] 提供:Fracton Ventures[/caption] 渡辺氏の講演が終わった後、1日目の最後の試みとして、明日からのグループワークに備えて、参加者各自でこれまでのインプットを踏まえた上でDAOで解決したい課題のアウトプットを行いました。 各人二つほど意見を持ち寄り、全体の案の分類分けがされ、最終的に4個のグループに分けられました。 1日目を振り返って [caption id="attachment_96742" align="aligncenter" width="800"] 提供:Fracton Ventures[/caption] 1日目はインプットの日ということもあり、Web3.0やDAOの紹介が多い日でした。単純な業界知識の紹介であれば、専門書を読んだり検索をすれば出てくると思います。しかし、それらの質はあまり良いものばかりとは言えません。今回のイベントは、より正しい情報を大量にインプットするには、非常に良い機会となりました。 また、全体の印象として、Webの歴史やDAOの紹介にとどまるのではなくて、それら背景となっている概念や思想まで掘り下げていることが非常に印象に残りました。クリプトは思想であると度々言われますが、ここまで詳細に丁寧に述べてくれている書籍やサイトも数が少ないですし、その所以が分かったのは個人的に大きな収穫でした。 恐らく、キーワードとなるのは「ヒューマンコーディネーション」と「公共財」になるかと思います。現状、暗号資産及びその業界は、金銭と紐づけられている投資対象として主に考えられています。しかし、それらがより大きな価値を持つのは、金銭ではなく、人との結びつきや公共の福祉に活用される時なのかもしれません。 2日目は、実際にDAO関連のツールを触ってDAOの立ち上げを行うという、アウトプットを行いました。 その模様は、また次の記事で紹介いたしますので、そちらも是非ご覧下さい!
レポート
2023/07/267月20日に福岡市で開催された「Web3.0 Town Hall」の潜入レポート
7月20日17時から福岡市エンジニアカフェ(https://engineercafe.jp/ja/)にて「Web3.0 Town Hall」が行われました。 このイベントは福岡市からの委託を受けたFracton Ventures株式会社(https://fracton.ventures/)によって開催され、「福岡におけるWeb3の機運の醸成及びプレイヤーの創出」を目的として行われました。 この記事は、筆者が当イベントに参加した際のレポとなります。セッションの要約と実際の対談を織り交ぜながら、紹介していきます。(対談形式で引用している登壇者の文言や言い回しに関しては、必ずしも厳密に文字起こししたものではないことをあらかじめご承知おき下さい) ※使用しているイベント会場の写真は全てFracton Venturesからの提供です。快く提供をして下さったこと、この場を借りてお礼申し上げます。 ※登壇者及び関係者に対する敬称は、対談形式の部分では付けず、それ以外では氏をつけさせて頂いています。 高島宗一郎福岡市長からの挨拶 「Web3.0 Town Hall」は特別ゲスト・高島宗一郎福岡市長の直々の挨拶から始まりました。 「Web3.0 Town Hallにようこそおいでくださいました。先着順での申し込みでしたが、速攻で満席になったということでした。最初、Web3が出来た時には、日本は世界的にも注目がされたものの、投機的な目的の人たちも多く入って来ました。しかし、ChatGPTが盛り上がっていく中で、最近Web3に対する投機的な目的の方達が落ち着いてきたように思えます。今後、Web3が世界をどのように作っていくのか、そうした可能性に興味ある皆様が活動出来るようなタイミングになってきたのかなと思います。また、この一年間で、政府の方も平さん(※自民党衆議院議員・平将明氏)を中心にレギュレーションの整備などもして頂いたので、逆に一周回って日本の方がやりやすい良いタイミングになってきたのかなと。そうした時、感度高く(こうしたイベントに)集まってきて下さっている皆様が、まさしくフロンティアの皆様だと思っています。今回色々な実装の事例や、実際に企業の中で世界観を切り開いていく中で見えてくる景色や課題を共有していって、こうした初期の段階で、皆様で一緒に可能性をどう広げていくのかを話せたらいいなと思っています。 週末にはDAO CAMPもあります。いずれにしても、新しい世界を切り開くというのはバズる前は大変ですが、その先にはそれにチャレンジした人にこそ、新しい広い可能性の世界が待っているのだと思います。なので皆様で力を合わせて、行政としても福岡市からも後押ししていきたいと思っていますので、ぜひ一緒になって新しいチャレンジを、皆様が世界のリーダー的存在として世界を切り開いていくような人材になってほしいなと思います。 そのためにも個人個人ではなくて、福岡にはこうしたエンジニアカフェがあって、この秘密基地の中で、我々一緒にどんどん成長していきましょう。ということで、本日はよろしくお願いいたします。」 挨拶が終わった後、市長は業務の都合で退席されました。そして、早速セッション1「ユースケースから学ぶ~Web3.0×JR 九州/アビスパ~」が始まりました。 セッション1「ユースケースから学ぶ~Web3.0×JR 九州/アビスパ~」 [caption id="attachment_95608" align="aligncenter" width="800"] (左から)田中隆一氏、牛島卓二氏、Nanami氏[/caption] 登壇者紹介(敬称略) 田中隆一(https://twitter.com/ryu1):株式会社フィナンシェ 取締役COO 牛島卓二:九州旅客鉄道株式会社 事業開発本部デジタル事業創造部(デジタル・データ分析) 副課長 Nanami(https://twitter.com/grow_mercury):Astar Network CEO Assistant & Marketing Team このセッションでは、Web3を身近に触れてもらうために、福岡でのユースケースの紹介及びその取り組みの背景やビジョンが語られました。 それぞれの取り組みについて まず初めに、それぞれの取り組みについて語られました。そのいずれもが、コミュニティや人とのつながりを重視するものでした。 フィナンシェ フィナンシェの福岡県内における取り組みとして、スポーツと地域創生を挙げました。自分たちの業種を「Web2.5」と称しており、各分野の橋渡しになれればととのことです。フィナンシェは、自身でも暗号資産を発行しており、コインチェックIEO第二弾として、フィナンシェトークン(FNCT)を発行しています。 また、スポーツに対する取り組みとして、スポーツチーム5つと一緒に活動していること、今回のイベントではその中でもアビスパとの協業について語られました。コミュニティ作りに寄与しており、アビスパを応援するファンだけでなく、アビスパ自身もコミュニティ作りに対して一緒に頑張っているとのことでした。トークン保有者は1000人を超えており、その中にはサポーターもいれば、福岡県外の人もいるとのことで、コミュニティから新しいプロジェクトを生み出していくとのことです。 その他フィナンシェの取り組みとして、50ほどのプロジェクトが進んでおり、静岡県のウイスキーや熊本の和牛業者などクラウドファンディングに近いコミュニティを有しています。福岡ではFFGとの資本業務提携を行っており、福岡での地域コミュニティ作りに注力しています。 JR九州 牛島氏は、JR九州の中でも、関連事業や駅ビルなどを取り扱う業種に従事しており、その一環でNFTを取り扱うマーケットプレイスを始めたと語りました。コロナがきっかけで、移動を伴う業務である鉄道業界は打撃を受けましたが、そこでリアルの移動に拘らなくてよく且つ、移動にも繋げることができるリスクヘッジ的な候補として、NFTが挙がったとのことでした。 お客様との繋がりを再構築すること、また、移動に繋げるためにどうすればいいかを考え、それらを達成するために、POAP(Proof of Attendance Protocol)という「実際に行ったことが記録になり、記憶になり、記念になる」という形を選んだとのことでした。昔から記念として切符を保管するなどありますが、切符は感熱紙なのでどうしても薄れていってしまうという問題があり、そこでNFTを活用する方向へ進みました。 これらを背景として、 「配布」という形が重要 そこからのインセンティブ そこからのコミュニティ構築 というようにそれぞれの段階を考え、こうした世界観を実現したいという背景で、NFTの取り組みを開始したとのことです。 [caption id="attachment_95611" align="aligncenter" width="750"] イベントの際に特別に開かれたJR九州NFTのWebページ[/caption] イベントの際、JR九州NFTのサイトはエラーが出てしまっており閉じている状態だったとのことでしたが、特別にこのイベントの一時間半だけ開けてもらったとのことで、来場者たち皆でサイトの見学をしていました。 Aster Network Aster Networkの実際のユースケースが語られ、多くの業務提携やハッカソンを行うなどで、各種分野のサポートに着手していることが紹介されました。 ターゲット層は? 話は次の話題へと移り、フィナンシェ及びJR九州の主要なターゲット層に質問が進みました。 フィナンシェの場合は、基本的には以下の三つの段階があるとのことでした。 基本はコアなファン。そこから広げていく。 サービスを受けるだけでなく、過程を楽しんでいきたい人が入ってくる。 トークンの価値が上がるかもしれないという期待。 投機的というより、長期的な視野で応援してくれている人を見据えているとのことです。 JR九州の場合は、始まり自体はコアなファンからではあるものの、配布となるとライトユーザーが大事であり、NFTということを意識させず、スタンプラリー的にハードルをいかに下げることが出来るかを意識していると述べました。 どうしてWeb3に着目したのか? まずは牛島氏からの説明がされ、「そこにいった証明というのが、現地でQRコードを読み取るだけでなく、実感を持った証明を持たせられるというのがWeb3の魅力であり、そこに着目した」とのことでした。 次に田中氏の場合は、「BTCが流行り始めた時に、海外送金は手数料で20%とかかかっていたりしたのですが、しかし、BTCの価値の交換性に注目しました。また、インセンティブ作りとしてのツールとしても見ています」と語られました。 また、ここでNanami氏から「ブロックチェーンはあくまでも管理方法であって、サービスの提供する道筋作りが大事」との言及がされました。 この道筋づくりに対しては、田中氏も牛島氏も両社同意するところで、両社以下のように語りました。 田中:日本の法律的な話もあるけれども、技術の一つとしてはオープンなインセンティブを作れるということで、プロジェクトを立ち上げてトークンを発行したり、他のトークンを保有することで価値貢献をしていく二つの方法があるのではないか。自分たちのリソースによって最適な方法を選べるというのが良い。エンジニアはエンジニアリング、ファンベースがあるところはそれを活かすなどして、それぞれで価値貢献をしていくことが出来るのではないか。 牛島:すべての駅でNFTを取得できるネットワークを作りたい。鉄道網をもとにした楽しみ方が出来ると、駅は目的地ではなくて経由地でもあるので、そこから観光地だとか自治体と連携して、コラボレーションによる発展をすることが出来るのではないか。 あくまでもWeb3というのは道筋であり、何かしらの目的を実現するための手段であって、目的それ自体ではないという話が印象に残りました。 Web3を導入するまでの過程・経緯 まず最初に、JR九州におけるNFT導入の経緯について牛島氏からの解説がされました。 牛島:デジタルデータ分析に携わってきたのは私だけであり、NFTというのが何かを勉強し始めて、そこからローンチまで一年でした。事業者と話をしてみても、エアドロすら分かりませんでした。そこから一年で事業化へと進んだ感じです。周りがついてこないことをいいことに自分で進んだという感じですね。たまたまNFTでブロックチェーンなだけなのですが、しかしNFTを持つ持たないは財政の話にもなるので、そこには気を付けながらも、ただの通販サイトであると社内を説得しました。 また、プロジェクトの期間についての言及もあり、これに対して田中氏は以下のように答えました。 田中:目指すところが大事ですが、自分たちのプラットフォームで発行するトークンとの兼ね合いを考えながらリリースしていきます。その中で徐々にトークンを持っていただいた人たちが、他のプロジェクトを立ち上げるときに支援していただくというのがWeb3的ではないでしょうか? 最終的には個人の何かをやりたいと実現するかのようなプラットフォームを作りたいですね。 次に、Nanami氏から、「これからWeb3で何かをしたいという抽象的な願望が(多くの企業で)あるが、企業のニーズの焦点はどこに当たっていますか?」という問いが挙げられました。 田中氏は「まだ漠然としたワードであって、とりあえず試してみたいという人がほとんどではないか。その中で、今までだと、何かを渡して収益を上げていたところから、今後一緒に成長していくというように、外部の人たちも巻き込んでという形になっていくのではないでしょうか」と回答しました。 これからの事業者に対するアドバイス 次に、事業者へのアドバイスが語られました。 牛島:DXと同様に、Web3をやりたいというのが目的になっていて、適切な実現ができているかは微妙です。何をするための手段なのかということは間違わないようにしないといけません。そうでないと、何のためにやったんだということになってしまいます。 また、「どういう依頼であれば動きやすいか?」という問いに対しては、田中氏から「クラウドファンディングとかとどう違うかとよく言われるが、(まずは)場を作るということではないか。そうした考え方に腹落ちしていただければ、早めに色々提案することが出来るのではないかと思います」と語られました。 その他、「web3にはどういった企業が参加できるのか、しやすいのか? して欲しいのか?」という質問がNanami氏からされましたが、それぞれ以下のような返答がされました。 田中:いろんな業種が考えられます。テックだけでなく金融など。Web3でもNFTやDEXというようなトレンドがありますし、新しく作っていくのかそれとも既にあるものに乗っかっていくのかをイメージするのが大事ではないでしょうか。 牛島:ファンとの距離を縮めたいと思っている事業者さんは、囲い込み的な意味でも親和性が高いのではないか。 そして最後にNanami氏からの、「どんな業種でも出来るでしょうし、ここにいる色々な事業者さんとも一緒にやっていけたらと思います」とのまとめの言葉で締め括られセッション1が終わり、質疑応答へと移りました。 質疑応答 以下、質疑応答の内容を、箇条書き形式で記述していきます。 Q. 自分はエンジニアであり、最近色々とやり始めたが、ウォレットを使ったりなどやはり難しい。マスアダプションという形でいろんな人に使って欲しい、Web3を意識しないで使って欲しいということであったが、見た目は普通のWebアプリだけど、裏側でブロックチェーンを動かすみたいになるのでしょうか? 田中:そうしていかないと一般の人が使ってくれないものになってしまいます。しかし、UI的なサービスであればWeb2.5的に入って行きやすいですし、セキュリティであればもっと先端に入っていけるのではないでしょうか。 Q. アビスパDAOでもそうですが、(ユーザー)自身がウォレットを持っているということですが、例えば秘密鍵をユーザーが触れるようになっているのですか? 牛島:(Web)2.5よりであり、とはいえweb3に長けた人からの流入ができない。なので、パブリックでAsterを使っています。裏側はWeb3ですが、メタマスクだけだと厳しいので、極力簡単なウォレットを用意しておいて、どちらでも選べるように設定しています。 Q コミュニティやDAOに興味があるのですが、モデレーターでもそうですが、コミニティを自走させるのは難しいのではないですか? (この質問に対しては、実際のアビスパのモデレーターの方が答えられました):クラブとモデレーターだけだと形の上では、今までのファンクラブと近しい形になる。人が増えれば触れるほど自立型になっていくのではないでしょうか。コミュニティの展望はやはり考えなければならないところだと思います。 牛島:ファンがある程度の規模になっていくと、コミュニティの中で色々と案が出てきて、自分たち(事業者)がそれを実現していってというように出来るのではないでしょうか。まだ構想ですが考えてはいます。しかし、それがDAOという形でできるかは分かりません。Discordなどでやっていく形になるかもしれません。いずれにしても、モデレーターの役割は極めて重要ではないでしょうか。 セッション2「Web3.0 にキャリアチェンジした理由と始め方」 [caption id="attachment_95615" align="aligncenter" width="800"] (左から)Crypto Baby氏、ビニール氏。[/caption] 登壇者紹介(敬称略) Crypto Baby(https://twitter.com/crypto___baby):Mask Network Ecosystem Manager、KudasaiJP Head of Growth ビニール(https://twitter.com/vvinyll):Fracton Ventures Operation Lead このセッションでは、異業種からWeb3業界へとキャリアチェンジした経緯について語られました。 Crypto Baby氏は元美容師、ビニール氏は元教師という経歴を有しており、異業種からの転身理由や、転身するとして何から始めたらいいのか、実体験を通して語られました。 前職及びWeb3業界に入った理由 ビニール氏を司会として、話が進められました。まず最初に、それぞれの前職についての話となりました。 ここからは主に対談形式で紹介いたします。 Crypto Baby:(前職は)美容師をしていました。ITでも金融でもなかったので、この業界(Web3)にはどこからでも来れると思います。 ビニール:昨年の3月までは教師をしており、昨年の4月でFractonに入りました。 また、この業界に入った時の話へと移り、その時はまだweb3という言葉ではなく仮想通貨という言葉が使われていたとのことでした。Crypto Baby氏の場合は早めにWeb3という言葉が入ってきていたものの、ビニール氏が業界に入った2017年には仮想通貨という名称だったとのことです。 次に、話は業界に入った理由へと移りました。 Crypto Baby:お金を増やしたかったからこの業界に入ったのが、正直な理由ですね。とはいえ、ちょうどちょうどその頃にコロナが流行り始めた時で、陰謀論だとか色々な話が出てくる中で、(クリプトの)既存金融から離れようだとか、管理者がいない新しい資本主義的なものといったところに対して面白いなとは思いました。 ビニール:自分もお金が欲しいと思ったからですね。副業というわけではないですが、自分の使えるお金が増えると嬉しいなと。でも、株は難しい。ちょうど仮想通貨のCMがあって、CoincheckかbitFlyerあたりで購入したと思います。そこから今に至ります。別にお金増やしたいという気持ちで入ってくるのはまぁおかしくはないかなと。 Crypto Baby:別に恥ずかしがらなくても良いですよね。 仕事を辞めるきっかけは? Crypto Baby:自分は運が良くて。この前のバブルの前から投資始めたので、これくらいお金があれば自分のやりたいことに挑戦できるというくらいにお金が増えたからですね。もし、失敗してたらきっとこの業界には来ていなかったと思います。 ビニール:余剰資金が増えるというのは良いことですが、決断をするというのは結構大きくはありませんでした? 美容師の免許を取るまでの投資を考えると、それを超えてキャリアチェンジをするというのは大きな決断だと思います。 Crypto Baby:2、3年くらいは大丈夫だろうと思いましたし、失敗しても美容師に戻れるという保険はありましたね。 ビニール:それは自分も同じで、6年くらい教師をしていましたが、資格があるから最悪教師に戻れるという思いがありました。そこでリスクヘッジできるというのがありましたね。それに、リスクヘッジ以外にも、それだけこの業界が魅力的に見えました。 現在、どの分野に注目している? ビニール:技術的な部分の話となりますが、人生をベットできるくらいの面白い部分などありましたか? Crypto Baby:全てが自分にとって新しいことだったので、面白かったです。技術の種類もありますし、興味がある部分を一つ見つけてそれを追っていくというのが良いかなと。 ビニール:現在、どういった部分に注目していますか? Crypto Baby:ソーシャルネットワークの変化ですね。 ビニール:どうなったらいいなの未来などありますか? Crypto Baby:最近だとTwitterに対する不満などありますし、慣れ親しんだプラットフォームが中央集権的に変わるなど色々あるのではないでしょうか。自分の言いたいことが制限されるというのもあるし、個人の意見がディスカッション出来るというのはいいかもしれません。 ビニール:デジタルアーティストがこれまで収益化できなかったことがNFTなどで収益化できたりするといったことが出来ます。Web3というのは、自分みたいな自己評価が低い人間でも、これでもいいと肯定的に思わせてくれますね。 異業種からの転身について;個人の発信力やコミュニティの重要性 またここから、異業種の人間がWeb3に来ることへの、きっかけや活動しやすくするための話もされました。 重要なのは「発信力」とのことでした。 ビニール:異業種の人間であっても、web3で何かしらはできる。少なくともこうして登壇して話すことが出来ますよね。 Crypto Baby:個人で発信力を持つというのは人生を変えますね。 ビニール:最初はYouTubeからでしたっけ? Crypto Baby:YouTubeもtwitterも両方やっていますね。 ビニール:具体的にMaskでもKudasaiでも、楽しいことや困ったことなどありますか? まずは面白かったことなど。 Crypto Baby:トレンドの中心地が海外ということもあり、一年のうち半年くらいを海外で過ごしていて、いろんな人たちに会えて意見交換ができるというのは嬉しいし、楽しいですね。 ビニール:私も学校の先生をしていたこともあって、狭いエコシステムの中で動いていました。だからこそ、異業種の人と話すのがとても楽しいです。美容師時代はお客様と色んな話をされてました? Crypto Baby:昔住んでいたのは名古屋で、大企業の方々と話す機会などあり、テンションは上がっていましたね。 ビニール:自分もそうした社長たちとWeb3の話をする時などは非常に楽しいですね。この業界だと大企業のお偉いさんとも親しくなれる。そうした距離の近さっていうのも常に感じていて、日々楽しい。では、困ったところなどはありますか? Crypto Baby:いい点でもあり困った点でもあるのですが、言葉の壁は感じます。プロジェクトの紹介をしたりする時など翻訳が必要ですし、言葉が通じないと心の距離もできるので、そこをどう埋めて相手を理解していくのかで躓いてしまいます。 ビニール:自分も英語はやらないといけないし、会社に入る時もやりますと言っていたのですが、結局出来ていないですね。こないだのIVS京都でも英語で話すとなると困ったりしました。昔、学校にいたこともあり、ビジネス的な話にも苦労してしまいます。 Crypto Baby:自分も苦労しています。交渉ごとなどで胃がキリキリしますが、自分の方が強くなれば相手の方から来てくれるので、そこがアドバンテージかなと。 ビニール:Twitter頑張りましょうってことですよね。 Crypto Baby:いろんな媒体で影響力があると、良いことがありますね。 ビニール:DAOまではいかないかもしれませんが、徐々に交流が広がっていて良いコミュニティが生まれているように思います。 Crypto Baby:福岡でもこうして色んな人が集まっているし、福岡でもコミュニティの拡大をしていると良いことがあるのではないでしょうか。 ビニール:場所にとらわれないというのはweb3の魅力ではないでしょうか。自社の他のメンバーは東京ですが、自分だけは大阪。東京を起点としてweb3は広がっているけど、やはりそこら辺も分散化してもいいのでは。地方という文脈で、Web3をする人が増えたらなと思っています。 ここでセッション2は終わり、質疑応答へと移りました。 質疑応答 以下、質疑応答の内容を、箇条書き形式で記述していきます。 Q. Crypto Babyさんは、Mask NetworkやKudasaiJPそれぞれの役職でどんなことをしているのですか? Crypto Baby:エコシステムマネージャー(Mask Network)では、うちの社長に日本の良いプロジェクトを紹介したり、日本のイベント関連の管理をしています。KudasaiJPの方では、コミニュティのイベントにモデレーターで入ったりや業界の人たちと交流して提携などをしています。最近では、イベントの共催などをしています。 Q. 私も美容師をしています。最初のきっかけは仮想通貨であるとのことでしたが、次のステップに行く時に何を勉強しましたか? Crypto Baby:最初はDeFiに触ったりしたのですがよく分からず、アウトプットをすることを心がけて少しずつ自分の力にしていきました。自分はTwitterやYoutubeを中心に動いてきたのですが、分からないことなどを聞きながらやっていきました。 ビニール:来週にも福岡でDAOキャンプがありますし、そこでもわからないことを教え合うなどできたら良いですね。そこではWeb3だけでなくDAOとは何かなど、初歩的なところから始めますので、興味ある方どうぞという宣伝をさせていただきます。 Q. Crypto Babyさんはどこの国で何をしていたんですか? Crypto Baby:自分はカナダに行っていて語学研修をしていました。そこでエンジニアの人たちを会ったりもしました。 セッション3「福岡で活躍するWeb3.0 プレイヤーに学ぶ」 [caption id="attachment_95621" align="aligncenter" width="800"] (左から)紫竹佑騎氏、みなもとこうき氏、岡崇氏。[/caption] 登壇者紹介(敬称略) 紫竹佑騎(https://twitter.com/79yuuki?s=20):暗号屋 代表社員 みなもとこうき(https://twitter.com/KoukiMinamoto):株式会社Vess Labs Co-founder, CDO 岡崇(https://twitter.com/thin9rypto):OverlayDAO Founder このセッションでは、福岡を中心として活躍するWeb3プレイヤーを招いて、Web3事業を始める上での福岡の強みや、Web3の未来について語られました。 自己紹介 このセッションは、岡氏の司会によって進められました。まずは自己紹介から始まりました。 ここからは主に対談形式で紹介いたします。 岡:生まれも育ちも福岡で、自分の拠点はスイスにあります。 みなもと:企業のインターンシップの証明書などを発行したりしています。福岡には20年もずっと住んでいます。北九州に住んでいて、北九州高専の出身ですね。今やっている業務としてはデザインをしています。 紫竹:暗号をしている会社で社長をしています。ブロックチェーンを活用しています。前の仕事で仮想通貨の取引所のCTOをしていて、サイバーエージェントでもエンジニアをしていました。そのほかにも色んなIOTデータの活用など、福岡市の支援を得ながらやっています。ブロックチェーンが関係していることであれば何でもですね。 ここで、岡氏から、来場者へ職業の質問がされました。挙手形式でしたが、エンジニアの方はあまりおらず、事業家の方が数人、勤め人でブロックチェーンを学びたいという方も数名いました。 ここから早速、Web3への話となりました。 そもそもWeb3とは何なのか? 業界に入った理由は? 岡:では、Web3の可能性について話していきましょうか。 みなもと:web3は何かという逆質問からしてみてもいいですか? 岡:認識としてブロックチェーンを活用して、コミュニティを軸として、かつトークンを活用していく組織作りをすることかなと。DAOなどにも繋がるでしょうし、ユースケースとしてNFTが多いと思います。では、AIなどいろいろありますが業界に入った理由を聞いていきましょうか。 紫竹:サイバーエージェントにいた時の話ですが、上司がビットコインが造詣が深く、ビットコイン論文を勧められたりしていました。GOXにお金を預けていのですが失くなってしまい、GOXの本社が近くだったので直撃してみたら、WBSに取材され被害者として出演したりしました。そこからイーサリアムなど出てきて、色々あって取引所の手伝いなどをしました。最終的にブロックチェーンの技術を生かそうと思い、いざそれを表に出したら、大企業から誘いがあり、中には数千万円の誘いもあったのですが、社員としてやるよりかは、会社としてやった方が良いのではないかと思い、暗号屋を立ち上げました。やっていることはブロックチェーンの社会実装ですね。 みなもと:高専生だったときに仮想通貨に興味を持ちました。友達はNEMに投資していましたね。ブロックチェーン(の世界)に入ってみて、いろいろと面白いことになっている時に創業者と知り合って作ってみたら、その時がブル相場だったこともあって資金調達も決まって、いつの間にかこの場にいます。 岡:アメリカにいた時に、「死んだり生き返ったり通貨」があるとニュースがあり、それがBTCでした。そこから触っていったのですが、BTCがどこの国にも所属しない形で価値を作っているというのが(興味を持った)きっかけ。そしてその価値を成り立たせるための仕組みに衝撃を受けました。 Web3を選んで良かったと思える時 岡:これは市役所の人から聞きたいという質問なのですが、Web3 を選んでよかったという実体験はありますか? みなもと:なーちゃん(Crypto Baby氏)が言っていたことにも繋がりますが、色んな海外の人と触れ合えるというのが大きいですね。サイドイベントもあって、IVSでもWeb3の人たちはサイドイベントがありました。二条城を貸し切ったっていうのは、パリピですよね。それはオープンな文化だからかなと。いろんな人たちと仲良くなって、その人たちに呼ばれるなどあります。 岡:クリプト業界は、カルチャーがそもそもオープンですよね。ヴィタリック(イーサリアム開発者)みたいな人が、半袖半ズボンで歩いてたりする。業界を牽引しているような人たちにすぐ近づくことが出来る。通常の企業であれば出来ないフラットな部分がありますね。 紫竹:出来立ての業界だからというのもあるかもしれません。きっとインターネットの業界もそういった時期はあったでしょうし、今のweb3はそういう時期でしょう。Web3のカルチャーとしていいなと思うのは、NFTアートというのがありますが、「こんなjpeg何なんだよ」と思われながらも、自分が良いと思うから買うといった風になっている。BTCだってみんなが価値があると思うから価値があるのであって、昔の貝殻みたいなものではないでしょうか。価値があるという人もいれば、価値がないという人もいる。自分はブロックチェーンがいいなと思っていて、銀行口座を作ってもらえない時期もあったけど、自分がいいと思っているものをやっているというのが、いざ陽が当たると良いですし、否定されながらも良いと思うからやるのだというようなカウンターカルチャーでもあると思います。 岡:この業界は通名や偽名で活動している人も多いですよね。自分と切り離したアイデンティティで活動している人も多くて、それによって個人的なパーソナルな情報に関係なくいろいろすることもできる。それもカルチャーではないでしょうか。 Web3という言葉すらなかった時代から携わっている人からすると、今の業界はどのようなフェーズに入ってきていると考えているのか? 岡:web3という言葉すらなかった時代から携わっている人からすると、今の業界はどのようなフェーズに入って来ていると思いますか? 紫竹:一回飽きられているという状況だと思います。AIに人が流れているけれど、そうした光景はブロックチェーンをしてきた自分からすると何度も見てきた光景。しかし、BtoBをしていると、一社の基盤に乗っかろうというよりはみんなで一緒にフェアな基盤作ろうという部分でブロックチェーンを使おうというような動きがあって、沢山のところで社会実装され始めている。もしかしたら、皆が思うweb3と自分にとってのweb3は違うかもしれない。例えば、NFTを見ると幻滅期(※ハイプ・サイクル)にあるように思うのですが、しかしそれを乗り越えるときちんと歴史がある人なんだと思われるのではないでしょうか。ブロックチェーンでもそうでした。 岡:自分の時は仮想通貨と言えば怪しいという印象が世の中にありました。これが決定的に変わったタイミングが、エルサルバドルの法定通貨の採用かなと。怪しいものを国が法定通貨として設定するというのが、信頼できるものというラベリングになりました。そこから仮想通貨が信用されるものという入り口になったのではないかなと思います。Web2.5という言葉も今日出てきたが、どのようにしてマスに向けて訴求していくかという動きがあります。その他としてあるのが、仮想通貨に対する規制ですね。このような流れが以前にもあり、株式にだって最初は規制があった。規制を通して健全化していってマスへ向いていった。そういった流れがありました。 みなもと:飽きられつつあるけども、技術を導入したいという企業は増えてきています。自分としては信頼の網が大事であって、信頼できるインターネットでの取引というのが大事だし、分散型IDというのもそこが大事になってくる。証明書の業務をしていく中で、信頼できる情報が少ないことが多いことに気付きます。表に出る情報は表面的なものであって、顔写真とか収入とかも表には出せない。質の高い情報は信頼の網に乗っていかないと、活用ができない。NFTはマーケティングに使われることも多く、属性の判断に使われる。しかし、NFTから得られる情報が信頼できるパーソナルで質の高い情報とも限らない。自分たちはそうした質の高い情報を事業会社さんにベネフィットを示しつつ、信頼できる情報を増やしていけるかという部分が大事ではないでしょうか。 福岡市からweb3を増やしていくという点から、これから福岡市はどのようなところに力を注げばいいのか。現場の声としての提案。 岡:福岡市からweb3を増やしていくという点から、これから福岡市はどのようなところに力を注げばいいかを、現場の声として提案していきましょうか。 紫竹:Web3の人たちに対して有利な規制緩和は大きいと思います。スタートアップ支援という点では日本一といっていいですね。福岡市で起業するという点でも自分は恩恵を得ているし、こうした場を作ってくれるのもとてもありがたい。現時点でもありがたいが、そこに規制の緩さという空白を作ってくれると、もっと良いのではないでしょうか。福岡県レベルではブロックチェーン学習のコミュニティもあるし、そういうイメージもあるし、新しくそういうイメージを作るのもあるし、身近にブロックチェーンを詳しく話せる人が実は身近にいたりもしました。そうしたエンジニアの人たちが集まりやすいようなコミュニティを作るようなのもいいのではないでしょうか。 岡:自分としてもエンジニアを集めるのがとても大変でした。昔そうしたことを企画した時には、人に教えられるレベルの人はいなくて、海外から呼んだりしないといけませんでした。柴竹さんのいうように、福岡はエンジニアがいっぱいいますし、そうした土台はすでに十分あるように思います。 みなもと:本当に仰る通りで、東京の次にということになれば、やはり福岡ではないでしょうか。 岡:人材という点を除くと、今はスイスにいますが、日本に移住するとなると福岡かなと。冗談抜きでご飯が良いです。規制とか物価とか大事ですけど、ご飯はとても大事。スイスも美味しいけど、(福岡は)安いし美味い。他にはやはり規制周りですかね。 ここでセッション3が終わり、質疑応答へと移りました。 質疑応答 以下、質疑応答の内容を、箇条書き形式で記述していきます。 Q. 「人が多い」という言及がされましたが、それはエンジニアが多いということですか? ユーザーが多いということですか? 岡:私が話した「人が多い」というのは、プレイヤーが多い、ソリューションを提供するような人が多いということですね。 みなもと:投資をする人も多い印象です。 Q. 一般の人たちにブロックチェーンが広まるにはどういう風にするのが良いのでしょうか? SUGOCAみたいな多くの人に触れてもらうような機会の提供など、皆さんが考えていることなどありますか? 紫竹:何かの仕組みの裏側に仕込んでおくというのが、マスに向けたという点においては簡単ではないでしょうか。 岡:JR九州の取り組みもそのようなものかと思いますね。 柴竹:コロナワクチンの証明書でも、それ自体はブロックチェーンではないのですが色んな技術があります。結局はインフラであって、裏側にまで目が向くことはありません。こっそり裏側にというのが良いのではないでしょうか。 みなもと:NFTもブロックチェーンも埋もれているものでしょうし、マイナンバーだってある種のウォレットですよね。 柴竹:他には、エルサルバドルでは、皆が自国の通貨を使わない中で強制的にウォレットを渡しているのですが、これもマスへの訴求の一つだと思います。 Q. 福岡のエンジニア状況は足りている状況なのでしょうか? 新しく学びたい人が学べる環境なのでしょうか? 体感でいいので教えて下さい。 紫竹:うちは東京半分、福岡半分ですね。福岡の人である人である必要はないですし、採用したりする場所は特に気にしていません。育てる環境という意味では、学習コミュニティがあるのでそういうところに行くのが良いのではないかと思います。それこそうちに入りたいという人がいれば、人を育てる土壌はあるので門を叩いてもらえればと思います。 終わりに [caption id="attachment_95626" align="aligncenter" width="800"] (一番左・マイクを持った方)Fracton Ventures 亀井聡彦氏(https://twitter.com/tolehico)[/caption] 最後、Fracton Venturesの亀井氏から、イベントの総括が行われました。 「本日は17時という時間から、皆様来て頂いてありがとうございました。ここまできて頂けるとは思いませんでした。これでやる気だとか湧いてもらえればと思いますし、文脈として、福岡市とFracton Venturesを感じていただければと思います。今回の一回で終わるということでもないですし、福岡市は以前よりスタートアップ支援をしています。その中の一環としてweb3が取り上げられていて、コミュニテイ作りの一環となればと思います。」 この締めくくりの後、Fracton Venturesの紹介がされ、イベントはネットワーキングへと移り、閉幕しました。 実は私自身、このようなWeb3イベントを体験することは初めてでした。 イベントでは度々、Web3の現状や展望について語られていましたが、いずれもに共通する事柄として、コミュニティや体験、人との繋がりを重視しているように思われました。 セッション1では、NFTを通じてのコミュニティに所属している人の体験を重視すること。 セッション2では、仕事をより充実させる要素として人との繋がりが大切であること。 セッション3では、福岡をより素晴らしいWeb3の発信源にするには、エンジニアといったプレイヤーが増えることが重要であり、そのためにはエンジニアが気軽に教え合ったり交流したりする場所が必要であること。 Web3分野は、一見するとブロックチェーンという技術的な言葉ばかりで、てっきりパソコンやスマホといったデバイスばかりに目を向けがちかもしれません。しかし、実際にはそれらデバイスに触っている人間こそが重要なプレイヤーであり、インターネットの世界で繋がるからこそ、現実のリアルな体験や、直接交流出来る機会が重要なのかもしれません。 私自身、今後ともWeb3業界を取材していく中で、積極的にイベント参加をしていこうと思える良い機会でした。 締めくくりの中で、亀井氏は「規制が進む中で、規制から逃れるという意味でもDAOは重要」と話しており、それが個人的には印象に残りました。 ちょうど、今週末(7月29日と30日)にも「FUKUOKA DAO CAMP」があります。そちらにも取材し、潜入レポを書かせて頂きますので、ご期待して頂ければ幸いです! (謝辞) 今回のイベントを主催するにあたって尽力して下さった福岡市職員の皆様。私の突然の取材を快く受け入れて下さるだけでなく写真提供もして下さったFracton Venturesの皆様。興味深いお話をして下さった登壇者の皆様。イベントに来て下さった来場者の皆様。その他全ての方々に、この場を借りて改めてお礼を述べさせて頂きます。ありがとうございました。
ウォレット
2023/07/17Rabbyウォレットを徹底解説|メリットからアカウント作成、メタマスクとの連携方法まで【初心者・DeFiユーザー向け】
多くの方々が利用しているウォレットのメタマスクは、DeFi使用時に「チェーンを跨いだやり取りが面倒」と感じるケースがあります。 今回、そんなメタマスクの代替候補として紹介するのが"DeFiに特化したウォレット"として昨今注目を集めている「Rabby」です。 本記事ではメタマスクと比較した際のRabbyウォレットの利点や、実際の導入方法や使い方などを解説をしていきます。 Rabbyウォレットとは?概要やメタマスクとの比較 [caption id="attachment_95069" align="aligncenter" width="800"] 公式Twitterより:https://twitter.com/Rabby_io[/caption] 元々シングルチェーンとして開発された「メタマスク」 vs 多くのチェーンに対応している「Rabby」 Rabbyはマルチチェーンでスムーズな接続が可能なウォレットです。 比較対象としてよく挙げられるメタマスクは、元々Ethereumのシングルチェーンで設計されたウォレットであるため、DeFi利用時などのチェーン間の切り替えに関して、面倒に感じてしまうUXが依然として残っています。 DeFiやDEXは当初、Uniswapを始めとしてEthereum上で多くの開発がされてきましたが、最近ではEthereum以外での開発も盛んで、取引所だけでもAvalancheの「Trader JOE」、Arbitrumチェーンの「Vertex」など様々なチェーン上で複数のプロジェクトが勢力を伸ばしてきています。 [caption id="attachment_95036" align="aligncenter" width="458"] 上:Trader Joe、下:Vertex[/caption] 多くのDeFiプロジェクトが乱立し、チェーンの切り替え作業が求められるなか、Rabbyは開発の最初の段階からマルチチェーン用として設計されており(現在55のチェーンに対応)、例えば、DeFiに対応するチェーンを自動的に選択してくれます(手動での選択も可能です)。 何故Rabbyはマルチチェーンに対応した設計が初めからされているのでしょうか?それはRabbyの開発元の意向が反映されているからです。 Rabbyはポートフォリオ管理ツールとして有名なDeBankのチームによって開発されました。 [caption id="attachment_95037" align="aligncenter" width="772"] DeBank公式サイトより:https://debank.com/[/caption] DeBankはDeFiユーザー向けに作られたウォレットを一括管理出来るポートフォリオアプリです。ユーザーは自身が使用しているウォレットをDeBankと接続することで、対応しているチェーン上の暗号資産やNFT、運用しているDeFiを全て確認できます。 DeBankの開発チームは、DeFiの登場によって、ブロックチェーンの世界はトークン指向の時代から全く新しいDeFi指向の時代へと変化すると考えています。彼らはDeFiで使われることを前提とした拡張ウォレットのユーザー体験を重視しており、その上で作られたのがRabbyです。 そのため、Rabbyは特にDeFiユーザーに対して優れた利便性を提供する仕組みとなっています。 続いてRabbyの魅力について、さらに見ていきましょう。 Rabbyの4つの魅力 1. スムーズなマルチチェーン体験 [caption id="attachment_95039" align="aligncenter" width="676"] Rabby公式サイトより:https://rabby.io/[/caption] Rabbyでは、ウォレット内の資産全体を一目で確認出来ます。 前述の通り、メタマスクの欠点の一つはチェーン周りの不便さです。複数のチェーンで同時にDeFiを使用しながら、異なるチェーンを頻繁に切り替えるのは面倒なだけでなく、エラーが発生する可能性もあがってしまいます。 また、チェーン毎の資産の把握は非常に重要ですが、メタマスクでは、ウォレットの残高表示はチェーンごととなっており、一目で全チェーン上の資産の把握ができません。 [caption id="attachment_95040" align="aligncenter" width="800"] Rabby Mediumより:https://medium.com/@rabby_io/rabby-wallet-easy-onboarding-for-new-users-6fb1ab26ef40[/caption] Rabbyとメタマスクの画面を比較した上記画像では、残高表示における両者の違いが顕著に表れています。 メタマスクの方では、自身の資産残高はチェーンごとの表示となっていますが、Rabbyの方では、アドレスをインポートすると、EVMチェーンにまたがるすべてのトークンが自動的に表示されているのが分かります。 2. 署名内容がより明瞭に [caption id="attachment_95041" align="aligncenter" width="800"] Rabby公式サイトより:https://rabby.io/[/caption] Rabbyの開発チームは、現在のオンチェーン取引は単純なトークン転送ではなく、複雑になっているとみなしています。そして、従来の拡張ウォレットの仕組みでは、ユーザーがトランザクションの内容を具体的に理解するのに不十分であると述べています。 そこで、Rabbyは署名確認ポップアップウィンドウで取引内容を解析し、署名前にその内容や推定残高の推移を表示し、ユーザーが署名内容の把握をしやすいようにしています。 3. エラーやリスクを署名前にチェック [caption id="attachment_95042" align="aligncenter" width="736"] Rabby公式サイトより:https://rabby.io/[/caption] Rabbyでは、ユーザーが署名をする前に、全てのトランザクションをセキュリティエンジンに送り、潜在的なリスクがないかを特定するためのスクリーニングが行われています。「相互作用する契約が以前に攻撃されたことがある」、「受信者のアドレスがチェーン上に存在しない」などの脆弱性が発見された場合、警告を発することで安全性が高められる仕組みとなっています。 またRabbyは、セキュリティとユーザー体験を両立するにあたって、以下の6つのことに注力するとしています。 「オープンソースであること」:Rabbyは拡張ウォレットの中でも、MITライセンスを使用している唯一のウォレットです。 「分散型であること」:秘密鍵はフロントエンド側にのみ保存され、いつでもエクスポートすることが可能です。 「Less is More」:Rabbyは拡張ウォレットとして必要な機能のみを搭載しています。他のDeFi Dappsと併用することで、様々なニーズに対応することが可能です。 「トランザクションの構築に関与しない」:RabbyはユーザーやDeFi Dappから独立した第三者のゲートキーパーとして機能しており、トランザクションの構築には関与しません。トランザクションの確認と署名を支援するだけです。 「ユーザー体験よりもセキュリティを」:Rabbyにおける全てのユーザー体験の最適化は、新たなセキュリティリスクを持ち込まないことを前提に行います。 「プライバシー保護」:Rabbyはユーザー体験の向上のために、特定のシナリオにおいて必要な情報をバックエンドサーバーに送信するものの、関連するすべての機能は厳格なプライバシー保護原則に従います。具体的には、「Rabbyは閲覧しているページの情報をアップロードしない」、「署名内容には個人情報が含まれものの、確認ボタンをクリックしない限り、これらの情報はアップロードされない」、「すべてのバックエンドサービスにトラッキングパラメータを設定しない」といったことを徹底しています。 このようにRabbyは利便性だけでなく、セキュリティやプライバシーに対する取り組みも欠かしていません。 4. Rabbyは、Revoke機能やSwap機能も充実 ここまでRabbyの魅力を、複数のチェーンへの対応やメタマスクとの比較をしながら幾つか述べてきましたが、RabbyにはRevoke機能やSwap機能も備わっています。 「Revoke」とは、自身のウォレットとのトークンの経路をシャットアウトする行為。DeFiやDEXを使用した際、「Approve」という操作をしますが、これはWeb3プロダクトがウォレット内のトークンにアクセスして移動する許可を意味しています。 Approveを行うと、承認状態が維持されることがあり、これが悪用されるとウォレット内の資産が抜き取られてしまいます。こうした「悪意ある第三者がウォレット内にある資産に触れないようにする」ことを、Revokeと呼びます。 RabbyはRevoke機能を搭載しており、万が一怪しいApproveをしてしまった際でも、すぐに対処をすることが可能です。 「Swap」はウォレット内で特定のトークンを別のトークンに交換することです。RabbyではDeBankであった機能を活用することで問題なくSwapを行うことが出来ます。 この記事では、RevokeやSwapの具体的なやり方も取り上げますが、それは次の章でRabbyの導入を解説した後のセクションで行うことにします。 Rabbyウォレットを実際に導入してみよう Chrome拡張機能版Rabbyウォレットを導入する Rabbyの導入には、「デスクトップアプリ」と「Chrome拡張機能」の二種類がありますが、この記事では使いやすく導入も簡単なChrome拡張機能の方を紹介します。 (メタマスクにはスマホアプリが既にありますが、Rabbyにはまだありません。しかし、現在開発中であり、いずれアプリでも使えるようになるとのことです。) まずはこちらのページからRabby拡張機能を導入します。 https://chrome.google.com/webstore/detail/rabby-wallet/acmacodkjbdgmoleebolmdjonilkdbch?hl=ja 「Chromeに追加」をクリックします。 Chromeブラウザ右上から拡張機能のタブを開いて、「Rabby Wallet」をクリックします。(この際、その右側にあるピンをクリックすれば、ピン留めすることが出来るので便利です) 次にこのような画面が表示されますので、①と②をクリックして進めて下さい。 すると以下の画面が表示されますが、ここでは新しくアカウントを作ることを前提としますので、一番上の「Create New Address」をクリックして下さい。 次にこの画面に進みますので、パスワードの設定をして下さい。 赤枠をクリックして、シードフレーズを表示します。 この際、12のシードフレーズが割り当てられます。(下記の画像の黒く塗りつぶしている箇所に表示されています) これは、ウォレットを復元するために必要なもので、仮に紛失してしまうと、ウォレットの復元は不可能になります。 絶対に無くしたりせず、ウォレットの安全性のためにも人に教えたりもせず、必ず大切に保管して下さい。 これでウォレット作成は完了です! メタマスクを使っている方向けの操作 Rabbyとメタマスクとの連携 ここまでは初めてウォレットを作る方向けの説明でしたが、ここからはメタマスクとの連携の操作の解説をします。これによって、Rabbyの機能をベースとして、メタマスクを使えるようになります。 後述しますが、OpenSeaでRabbyを使う場合に必要な手順となっていますので、連携をしておいた方が利便性が増します。 まず、赤枠部分をクリックしてアカウントの追加画面を開きます。 次に「Import My MetaMask Account」をクリックして下さい。 すると下記の画面が表示されます。 この画面では、Rabbyにメタマスクアカウントをインポートするための3ステップが表示されています。 そして、連携の際にはメタマスク作成時に生成されたシードフレーズか、秘密鍵の入力をしなければなりません。 以下、それぞれの手順を解説していきます。 1.シードフレーズを使う場合 ①をクリックするとシードフレーズ入力画面が表示されます。 こちらにメタマスクのシードフレーズを入力し、「Confirm」をクリックして下さい。 その後、「Manage Seed Phrase」という画面が表示され、いくつかのAddressが表示されます。その中から、Rabbyと連携したいアドレスを選び、「Add to Rabby」をクリックして下さい。 これにてRabbyとメタマスクの連携は完了です。 2. 秘密鍵を使う ここからは秘密鍵を使った場合を解説してきます。 ②をクリックすると、こちらの画面へと進みますので、秘密鍵を入力し「Confirm」をクリックして下さい。 これ以降、画面の指示通りに進めれば、Rabbyとメタマスクの連携は完了です。 Rabbyを優先的に使用するための操作「Filp」 さてここまでで、RabbyのChrome拡張機能の導入から、メタマスクとの連携までが完了しました。 ただ、ここでもう一つしなければならない操作が「Filp」という操作です。「Filp」とは、Rabbyを優先的に使うか、メタマスクを優先的に使うかの設定のことを指します。これを今から説明します。 まず、これがメタマスクと連携をした後の、Rabbyのホーム画面です。 下部にオレンジの枠組みで「MetaMask is in use and Rabby is banned」と表示がされています。 これは現段階では、メタマスクの方を優先的に使用する設定になっていることを示しています。 そこで、Rabbyの方の優先順位を高くするために「Filp」という操作を行います。 操作は簡単です。そのオレンジ枠の右にある「Flip」をクリックして下さい。 すると次のような画面となります。 今度は、青色の枠組みで「Rabby is in use and Metamask is banned」との表示に変わりました。 これでRabbyを優先的に使うように設定をすることが出来ました。 メタマスクとRabbyの切り替えは「Flip」をクリックするだけで完了です。 またどちらの方を優先的に使用する設定になっているのかは、ブラウザ右上の拡張機能の表示を見れば、一目でわかる仕組みになっています。 このような表示になっていれば、メタマスクが優先的に使用される設定になっています。 一方で、このような表示の場合は、Rabbyが優先的に使用される設定になっています。 Rabbyでの送金・受け取り方法 ここまでで、Rabbyの基本的な設定をすることが出来ました。ここからは、送金・受け取り方法について解説していきます。 送金方法とホワイトリストへの登録 上段真ん中の「Send」をクリックして下さい。 すると以下のような画面になります。 ここから「To」の欄に、送付先のアドレスを入力するのですが、入力すると次の画面のようになります。 画面下部に、「The address is not whitelisted」と赤字で書かれています。これは送付先のアドレスが、ホワイトリストに登録されていないため、このままではトークンを送付出来ないことを示しています。 そこで、ホワイトリストへの登録をしていきます。 先ほどの赤枠部分をクリックすると、以下のような画面へ切り替わります。 ①にパスワードを入力し、②の「Confirm」をクリックすれば、送付ができるようになります。 また、その際、③をクリックしておけば、自動的にホワイトリストへの登録がされます。 ※②で先に進んだ場合は、「Send」の上に「Temporary permission granted」と表示がされます。一方で、③まで進めていた場合には、「The address is whitelisted」という表記に変わります。 その後は、先ほどの画面へと戻りますので、送付したいトークンと数量を選んだ上で「Send」をクリックして手順を進めて下さい。 これで送金は完了です。 先ほど、送金の手順を介してホワイトリストの登録をしましたが、送金の手順を介さないで既に登録しているアドレスをホワイトリストに追加する方法も解説します。 まずは、赤枠部分をクリックして下さい。 すると、既に登録しているアドレスの一覧が表示されます。 下の赤枠部分の「Edit Whitelist」をクリックして下さい。 すると以下のような画面が表示されます。 アドレスごとにチェックマークが用意されていますので、ホワイトリストに登録したいアドレスのチェックマークをクリックして①のように選んで下さい。 次に、②をクリックすると、その後パスワード入力画面へと進みますので、パスワードを入力すれば完了です。 受け取り方法(QRおよびアドレスの表示方法) 上段真ん中の「Receive」をクリックして下さい。 すると、このような画面が表示されます。チェーンが表示されますので、任意のチェーンを選んでクリックして下さい。 今回はイーサリアムチェーンを選んでみました。 黒枠で塗り潰している部分にQRおよびアドレスが表示されていますので、どちらかの方を選んで、送付先の方で手続きをすればトークン受け取りが可能です。 OpenSeaで使うには? この記事の冒頭で、メタマスクの欠点として対応チェーンの不便さについて言及しましたが、いざRabbyを積極的に使おうとした際、とある用途で問題が生じるかもしれません。それがNFTです。 NFTに興味がある方であれば、ほとんどの方がOpenSeaを触った経験があるかと思います。しかし、OpenSeaにウォレットを接続しようとした時、選べるウォレットの中にRabbyがありません。 では、Rabbyが使えないということかといえば、そんなことはありません。OpenSeaでRabbyを使う方法を今から解説していきます。 まず、こちらがOpenSeaのウォレット選択画面です。やはり、Rabbyはありません。(下部に「表示を増やす」とありますが、他のウォレットを見てもRabbyの表示はありません) しかしながら、Rabbyが優先になっていることを確認した上で、OpenSeaのウォレット選択画面からメタマスクを選択して下さい。 すると、上記のような画面が表示されるので、「Connect」をクリックして下さい。 次に、OpenSeaから署名を求められるので、「Accept and Sign」をクリックして先へ進んで下さい。 最後に、Rabbyの画面が表示されるので、「Sign and Submit」から「Confirm」をすれば完了です。 これでRabbyウォレットでOpenSeaへのログインをすることが出来ました。 ウォレットを接続せずに使用感を軽く試してみたい方向けの機能「Watcher Mode」 ここまでRabbyの導入手順およびメタマスクとの連携などの解説をしてきました。しかし、Rabbyの使用感を試してみたいけれどもウォレットの安全性のために最初からいきなりウォレットを接続するのは避けたいという方もいるかもしれません。 そんな方向けの機能に、「Watcher Mode」という機能があります。 Watcher Modeでは、秘密鍵をインポートせずにアドレスを追加するだけで、Rabbyの機能を体験することが出来ます。これにより、実際の使用感をリスクなく体験することが可能です。 ここではその手順を解説していきます。 Google拡張機能を既に行なっていることを前提としますが、いきなりこのページに飛んだ方向けにGoogle拡張機能の追加ページを記載しておきます。(Watcher Modeはウォレットアドレスを持っている方であれば、Rabbyでウォレットを作成していなくても、誰でも使うことが出来ます) https://chrome.google.com/webstore/detail/rabby-wallet/acmacodkjbdgmoleebolmdjonilkdbch?hl=ja では、今から「Watcher Mode」の手順の説明をします。 まず、右上の赤枠部分をクリックして下さい。 次の画面で、一番下の「Add Contacts」をクリックして下さい。 そうしたら下記の画面が表示されるので、赤枠の中に実際にRabbyで使用したいウォレットのアドレスを入力すれば、Rabbyの画面での実際の使用感を体験することが出来ます。 ここまで来れば、Watcher Modeは完了です。 Rabbyの使用感を是非体験してみて下さい! その他Rabbyの機能 1. Revoke機能 Revokeはウォレット運用にあたって、必須な機能となっています。なぜなら、一度許可したトランザクションは、Revokeをしない限りそのApproveは残り続けるからです。 となると、悪意あるサイトやスマートコントラクトにApproveしてしまった場合、ウォレット内の資産が抜き取られてしまいます。それを防ぐために、Approveを取り消すRevoke機能が存在します。 ここではRabbyでRevokeを行う際の手順について解説します。 まず、Rabbyを開いて、左下の「Approvals」をクリックして下さい。 すると次の画面で、Approveしているトランザクションが表示されますので、任意のものを選んで「Revoke」をすれば完了です。 実はこのRevoke機能が活用される機会が先日ありました。それが、Multichainから1.25億ドル相当の資金が流出した事件です。 The lockup assets on the Multichain MPC address have been moved to an unknown address abnormally. The team is not sure what happened and is currently investigating. It is recommended that all users suspend the use of Multichain services and revoke all contract approvals… — Multichain (Previously Anyswap) (@MultichainOrg) July 6, 2023 Multichainは資金流出の報告の後、ツイッターにて全てのユーザーに対してMultichainのサービス利用を停止し、Revokeを推奨しました。 そしてRabbyはMultichainの事件を受けて、MultichainのApproveを取り消すよう以下のツイートを行いました。 ⚠️ @MultichainOrg urges users to revoke all contract approvals related to Multichain. We've flagged high-risk contracts across all chains. To check if you're affected, please open your Rabby wallet - "Approvals". If you see the warning, you can promptly revoke the approval in… pic.twitter.com/xrnSPlyrwn — Rabby Wallet (@Rabby_io) July 7, 2023 このようにRevoke機能が必要とされる状況は決して珍しいものではありません。こうした事例に対する備えとしても、こうしたRevoke機能は必須ですし、ユーザーとしてもいざという時にはすぐにRevokeが出来るよう手順を把握しておかなければなりません。 2. Swap機能 Rabbyには勿論、Swap機能もついています。今からその手順を説明します。 Rabbyを開いて、左下の「Swap」をクリックして下さい。 そうしたら以下の画面が開きますので、任意のトークンをSwapして下さい。 4. まとめ Rabbyウォレットの解説いかがでしたか? 暗号資産ウォレットといえばメタマスクが著名ですが、Ethereumのシングルチェーンを前提としていることもあって、様々なチェーンが入り乱れる現在のクリプト世界では使いにくさが徐々に出てきています。 今回の記事では、マルチチェーンへの対応という点に特に注目しながらRabbyのメリットについて述べてきました。ウォレットをまだ作ったことがない方だけでなく、DeFiユーザーの方々にとってもチェーンの変更が簡単、且つ資産全体を一目で見られる利便性は非常に素晴らしく感じられたのではないでしょうか。 もしRabbyに興味を持った方がいれば、まずはWatcher Modeから試しに触ってみて下さい。 ウォレット開発は今も尚、盛んに行われていますが、もしかすれば近い将来、狐ではなく兎の時代が来るかもしれません。 最後まで読んでいただきありがとうございました。
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2023/07/10Binance Launchpad32回目となるArkham / $ARKM トークンセールが発表
Binance Launchpadの第32弾プロジェクトとして、Arkham (ARKM)のトークンセールがサブスクリプション形式で実施されることが発表されました。 https://twitter.com/binance/status/1678334559903965184?s=20 Binance Launchpad詳細 今回のBinance Launchpadでは、2023年7月11日 0時(UTC)から2023年7月17日 0時(UTC)までの間、ユーザーのBNB保有残高が毎日1時間ごとに記録されます。期間中にユーザーが保有するBNBの平均額が、Binance Launchpadに対してコミット(購入希望)できる最大枚数となります。 Launchpadの実施日である7月17日6時(UTC)になると、ユーザーは自分が保有していたBNBの6日間の平均枚数を最大枚数として、スポットウォレットからトークンセールに向けてBNBをコミット(購入希望)して参加することができます。この間の時間は24時間となっていて、参加は7月18日6時(UTC)までです。 最終的な参加決定枚数は (個人の購入希望分のBNB / 全参加者の購入希望分のBNB ) x 販売されるIDトークンの合計 で枚数が決定されます。 取引所Binanceのまとめや特徴に関しては、こちらの記事にて解説しているので、世界最大の取引所、Binanceという取引所に関して詳しく知りたい方は本記事よりご確認ください。 >>Binanceの登録はこちら トークンセール期間 準備期間: 2023年7月11日 0:00 (UTC) から 2023年7月17日 0:00 (UTC) サブスクリプション期間: 2023年7月17日 6:00 (UTC) から 2023年7月18日 6:00 (UTC) 計算期間: 2023年7月18日 6:00 (UTC) から 2023年7月18日 7:00 (UTC) 最終トークン配布: 2023年7月18日 7:00 (UTC) トークンセール詳細 トークン名: Arkham (ARKM) Launchpadハードキャップ: 2,500,000 USD ユーザーあたりのハードキャップ: 15,000 USD (300,000 ARKM) 総トークン供給量: 1,000,000,000 ARKM Binance Launchpadに割り当てられたトークンの総数: 50,000,000 ARKM(総トークン供給量の5%) パブリックセールトークン価格: 1 ARKM = 0.05 USD(BNBの価格は事前に決定されます) トークンセールフォーマット: サブスクリプション サポートされるトークン: BNBのみ Arkhamとは Arkhamは、オンチェーン情報を追跡するためのインテリジェンス・プラットフォームです。ユーザーは、ブロックチェーン取引の体系的な分析や匿名化の解除によって、ブロックチェーン活動の背後にいる人物や企業を、その行動に関するデータや分析結果とともに参照することが出来ます。 Arkhamの特徴 Arkhamは独自の技術により、エンティティベースで検索をすることで、誰に対しても容易なオンチェーンデータの分析や可視化を提供しています。 また、今回のBinanceのローンチパッドに合わせて、世界初のオンチェーン・インテリジェンス取引所「Arkham Intel Exchange」を発表しました。 https://twitter.com/ArkhamIntel/status/1678339355314900992?s=20 このArkham Intel Exchangeでは、スマートコントラクトを介して、ブロックチェーンウォレットアドレスの所有者に関する情報を匿名で売買することが出来ます。 Arkham Intel Exchange のバイヤーは、報奨金(bounties)をかけてコミュニティからの情報提供を求めます。賞金稼ぎ(情報提供者)は、要求された情報を提供することで報酬を獲得します。その一方で、ウォレットもしくはその所有者に関する貴重な情報を持っている人であれば誰でも、その情報を販売したり、オークションを通じて他のユーザーに提供したりすることが可能です。 これによって、流動的な情報市場が形成され、オンチェーン上での情報収集を大規模に収益化出来るようになるとのことです。 Arkhamは二つの傾向に気付いて、Arkham Intel Exchangeを構築しました。 トレーダー、投資家、ジャーナリスト、研究者、プロトコルからのオンチェーン分析に対する大きな需要 Arkhamコミュニティに毎日参加する有能なオンチェーン探偵の数の増加 Arkhamは、今回の報奨金メカニズムを用いながらこの両者のマッチングを行うとのことです。また、Arkham Intel Exchangeによって、分散型のインテリジェンス経済を生み出すとも述べています。 Arkham Intel Exchangeは7月18日より稼働するとのことです。 Arkham 各種Infomartion Website: https://www.arkhamintelligence.com Whitepaper: https://www.arkhamintelligence.com/whitepaper Twitter: https://twitter.com/ArkhamIntel Discord: https://discord.gg/arkham Telegram (English): https://t.me/arkhamintelligence