L2ソリューション「Arbitrum One」の概要や設定方法、基本的な使い方からリスクまで徹底解説!
airutosena
DeFiなどを利用していると、悩ましいのがガス代や処理性能といった問題です。
特にもっとも知名度が高いイーサリアム経済圏では、問題になりがちであると言えるでしょう。
そんな中で、活用を検討したいのがL2ソリューションであるArbitrum Oneです。
この記事では、Arbitrum Oneの概要や仕組みから、ネットワーク設定からデポジット・解除までの一連の利用方法を解説しています。
Arbitrum Oneを使いこなしていきましょう。
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目次
Arbitrum Oneの概要
まず、はじめにArbitrum Oneの概要や仕組みなどについてチェックしていきます。
Arbitrum Oneを利用する前に知りたい基本的な部分を掴んでいきましょう。
L2について
Arbitrum Oneについて理解するためには、Layer1(以下L1)やLayer2(以下L2)に対する基本的な知識が不可欠なため、簡単にご紹介していきます。
なにもしていない状態(L2のソリューションなどを利用していない)で、DeFiの利用や送金などを行う場合、基本的にL1のネットワークを利用している状態です。
L1は、イーサリアムに関連したサービスやソリューションの土台となっているネットワークとなっており、一般的な環境ではL1を利用していると考えて問題ありません。
しかし、近年では利用者が増加傾向にあり、L1で処理するトランザクションも増えつつあります。
特にイーサリアムは、トランザクションが増えれば増えるほど、ガス代(トランザクションを通すときの手数料)が上がる仕組みになっています。
そのため、DeFiなどが流行した際には、ガス代の高騰が問題視されるようになりました。
このような現象に対する対処法が、L2のソリューションです。
L2のソリューションでは、L1とは異なる場所や方法でトランザクションを処理するため、ガス代軽減・処理性能向上を期待できます。
Arbitrum OneはL2ソリューションの1つ
Arbitrum Oneは、前述したようなL2ソリューションの1つです。
L2ソリューションといっても、トランザクションを処理する際の仕組みによっていくつか種類があり、Arbitrum Oneは「ロールアップ」に分類されるソリューションです。
そのロールアップの中でも、Arbitrum Oneは「Optimistic Rollup」というロールアップの技術を利用したソリューションになっています。
Optimistic Rollupは、2021年12月時点でもっとも利用されている主流なロールアップです。
また、Arbitrum Oneでは、AVM(Arbitrum Virtual Machine)という実行環境で、一連のトランザクションの処理を行なっています。
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Arbitrum Oneの特徴
次に、Arbitrum Oneの特徴についてご紹介していきます。
Arbitrum Oneを利用することによりメリットや特別なポイントをチェックしていきましょう。
手数料が安い
Arbitrum Oneを利用する際の大きなメリットは、ガス代が安くなるという点でしょう。
CT Analysisで計測したデータでは、各L2ソリューションとイーサリアムのガス代比較は、以下のような数値になっています。
イーサリアムと比較すると、Arbitrum Oneの手数料が大きく低下していることが分かります。
ただしL2ソリューション間で比較すると、Arbitrum Oneは他のロールアップ系L2ソリューションと比較すると若干割高になっています。
しかし、Arbitrum Oneよりも大幅に手数料が安い「zkSync」「Loopring」は、別のロールアップを使用したものです。
そのため、一概に比較することはできません。(特徴が異なり、各ロールアップごとにメリット・デメリットがある)
L2ソリューション間の競争はあるものの、Arbitrum Oneを利用すると、イーサリアムよりもガス代の大幅な軽減が可能です。
もっとも資金が集まっている
Arbitrum OneのTVLは、2023年7月時点で21.7億ドル程度の金額になっています。
ローンチ移行、非常に早いペースで資金がロックされており、現在Arbitrum Oneは最も資金がロックされているロールアップ系L2ソリューションです。
それだけ利用されいているということですから、Arbitrum Oneを利用できる各サービス間での開発などが加速する影響が期待できるでしょう。
利用できるサービスが多い
前述の通り、Arbitrum Oneには資金が集まっているため、Arbitrum Oneに対応するサービスがすでに多数発表されています。
一例ですが、以下のようなサービスが挙げられます。
- 1INCH
- AAVE
- ADAMANT
- AMY
- Curve
- SushiSwap
- Uniswap
また、この他にも複数のブリッジ・ウォレット・ツールなどが利用可能となっており、Arbitrum Oneに対応したプロダクトはコチラからチェック可能です。
資金が集まっており知名度が高いことから自然と周辺環境が整っているのは、Arbitrum Oneが他のL2ソリューションに差をつけているポイントに挙げられるでしょう。
$ARBの概要
ArbitrumはDAOなどの発表とともに、2023年3月に独自のトークンである$ARBが発表されました。
$ARBは以下のような割合で分配されます。
2023年7月時点で約16.4億ドルの時価総額となっており、類似のロールアップであるOP(Optimism)を大きく上回っています。
以下の記事で、ARBのエアドロを詳しく振り返っています。
Arbitrum、約2100億円規模の大型エアドロップを振り返る|今後の獲得戦略も解説
Arbitrum OneとNova・Orbitの違いを解説
Arbitrumは、現在複数のチェーン(もしくはソリューション)を展開しており、どれも名前が似通っており混乱している方もいるかもしれません。
これから、そんな方に向けてArbitrum Oneと類似するソリューションやチェーンについて解説していきます。
Arbitrum OneとNova
Arbitrum Novaは、Arbitrum Oneと似通った技術を採用しているものの、一部分を犠牲にしてより低コストな処理を可能にしているソリューションです。
Arbitrum Oneではより厳格なプロセスでトランザクションを処理しイーサリアムと同等のセキュリティを確保しますが、Novaは一定のセキュリティに留まっています。
具体的には、Arbitrum Oneでは全てのデータをイーサリアムに渡しますが、Novaでは基本的に別の場所でデータを処理し、問題が発生した場合のみオンチェーンで処理します。(また必要な委員会の量も圧縮)
その代償として、Arbitrum NovaではOneよりもより早く・低コストで、さまざまな処理が可能です。
Arbitrum Novaは、Oneと比較して厳格なセキュリティが必要のないユースケース(ゲームやソーシャルなど)に焦点を置いており、若干Arbitrum Oneと特色が異なります。
ただし、両者ともL2であり細かな違いはあるものの、イーサリアム上に構築されています。
Arbitrum OneとArbitrum Orbit
Arbitrum Orbitは、$ARBの発表などとともに発表されたArbitrum関連の技術を活用して、L3を構築するためのソリューションです。
Arbitrum Orbitにより、開発者はL2をベースにしたL3のブロックチェーンを開発可能です。(L2のL2のようなイメージ)
Arbitrum OrbitのL3は、Arbitrum One・Novaのどちらにも構築できます。
L3によって、各アプリケーション固有のブロックチェーンといったよりカスタマイズ性の高いブロックチェーンを構築できるようにすることなどが、目的となっているようです。
Arbitrum Orbitによって構築されるL3ブロックチェーンは、パーミッションレスになっており自由に開発ができ、DAOなどを通す必要がありません。(新規のイーサリアム上のL2はDAOへの提案が必要)
複数のチェーンを展開するという観点から、CoinbaseのBaseが活用したOPスタックやスーパーチェーンとの類似性なども考慮できるでしょう。
Arbitrum Oneを利用するときの全体の流れ
Arbitrum Oneを利用する際に、利用までの長い手順に対して戸惑ってしまうケースも少なくありません。
特にL2ソリューションをはじめて利用するという方にとっては、ハードルになりがちです。
そのため、Arbitrum Oneを利用するときの全体の流れを、まとめておきます。
- ETHなどを予め入手
- MetaMaskの設定を行う
- ブリッジを行う(L1からL2へ)
- 各サービスとの接続などを行う
- Arbitrum Oneから資金を解除(L2からL1へ)
少々長く感じられるかもしれませんが、実際はそれほど難しくありません。
また、Arbitrum Oneの利用には、前提としてイーサリアムなどのERC20規格のトークンが必要です。
まだ、仮想通貨を購入していないという方は、日本の仮想通貨取引所でイーサリアムを購入しましょう。(ガス代の支払いなどに必要なため、イーサリアムがおすすめ)
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Arbitrum OneのMetaMaskの設定方法
これから、Arbitrum Oneを利用するために必要なMetaMaskの設定方法(ネットワーク設定)についてご紹介していきます。
以下の手順で、MetaMaskでArbitrum Oneを利用できる状態にしていきましょう。
自動で行う方法
- Arbitrum Oneにアクセス
- ウォレットを選択
- ウォレットの承認
- 「Add L2 Network」へ
- ウォレットの承認
自らネットワーク設定を行う方法
- MetaMaskへ
- 上部へ
- 「ネットワークの追加」へ
- 情報を入力
- 「保存」へ
入力する情報
- ネットワーク名:Arb1
- RPC:https://arb1.arbitrum.io/rpc
- チェーンID:42161
- 通貨記号:ETH
- ブロックエクスプローラーのURL:https://arbiscan.io
どちらの方法であっても、MetaMaskのネットワーク欄に「Arbitrum One」が以下のように追加されていたら、成功しています。
Arbitrum Oneのブリッジ手順
Arbitrum Oneを利用するためには、ブリッジを利用してL1の仮想通貨をL2にて利用できる状態にする必要があります。
以下の手順で、Arbitrum Oneで仮想通貨を利用できる状態にしていきましょう。
L1からL2へのBridge
- Arbitrum Oneのブリッジへアクセス
- L1からL2にBridgeする仮想通貨を選択
(ティッカーなどを検索すると出てくる)
- 金額を入力
- 「Deposit」へ
- ウォレットの処理などを行う
また、L1からL2へのブリッジを行う際には、ウォレットのネットワーク設定を「イーサリアムメインネット」になっている必要があります。
Arbitrum Oneのネットワークでは、利用できないため注意です。
1INCHでAAVEを使える状態にしてみる
これから、一例として1INCHでArbitrum Oneを利用できる状態にしてみます。
AAVEをArbitrum Oneで利用する手順
- 1INCHへアクセス
- 右上から「Arbitrum」へ
- 「Connect Wallet」へ
- MetaMaskなどのウォレットを選択
- ウォレットの承認などを行う
- 右上に文字列が表示されたことを確認
これ以降の1INCHの利用方法は、他のネットワークと大きく変わりません。
関連:マルチチェーン対応DEXアグリゲーター「1inch.Exchange」の基本的な使い方・リスクを徹底解説!
また、他のサービスでArbitrum Oneを利用する場合であっても、利用手順はネットワークの設定・ウォレットの接続を完了すれば、基本的に利用可能です。
Arbitrum Oneの解除手順(Withdraw)
次に、Arbitrum Oneの利用を解除する手順をご紹介していきます。(仮想通貨をL2からL1へ)
以下の手順で、仮想通貨をL1で利用できる状態に戻していきましょう。
Arbitrum OneのWithdraw手順
- Arbitrum Oneのブリッジにアクセス
- 真ん中の矢印をクリックして「L2」を振替元に
- トークンを選択
- 金額を選択
- 「Withdraw」へ
- ウォレットの処理を済ませる
また、ここまでの処理が終了すると「7日間」程度の検証期間が必要です。
L2からL1に仮想通貨を戻すには、7日間の期間が必要であり、なおかつ検証の終了後にいくつか手順が必要になっています。
その手順は以下のとおりです。
- Arbitrum Oneのブリッジにアクセス
- 検証中はトランザクションの以下のような履歴が表示
- 検証が完了したら「イーサリアムメインネット」に切り替え
- 検証が完了したトランザクション履歴の欄の「claim」をクリック
L2からL1へのブリッジの際には「Arbitrum Oneのネットワーク」に設定されている必要があり、最終的な請求(claim)では「イーサリアムメインネット」への切り替えが必要です。
デポジットの際の手順も考慮すると、ネットワーク設定を何度か切り替えるタイミングが複数存在するため、注意しましょう。
絶対にチェックしたいArbitrum Oneの注意点・リスク
これまでArbitrum Oneの使い方などについて解説しましたが、いくつか注意点やリスクも存在しています。
把握しておかないと、仮想通貨を無くしてしまうリスクなどもあるため、利用する上での注意点を1つ1つチェックしていきましょう。
中央集権的な取引所への送金は注意
ティッカーなどがほとんど変わらないため、勘違いしやすいのですが、Arbitrumネットワーク上の通貨をそのまま中央集権的な取引所へ送金する際は注意が必要です。
現状、Binanceのような大手取引所ではArbitrumネットワークのETHに対しての対応がなされていますが、まだ多くの通貨は未対応となっています。
そして、その他の中央集権取引所では、まだArbitrumネットワークのETHすら対応していない取引所も多く存在します。
通常、中央集権的な取引所では、L1用のアドレスを表示しているため、そのアドレスにL2の仮想通貨を送金すると、仮想通貨が失われる可能性が非常に高いです。
L1へのアドレスを送金する際は、その前にArbitrumネットワークからEthereumのネットワークへ戻してから送金を行いましょう。
予期せぬトラブルが発生する可能性
Arbitrum Oneに限ったことではありませんが、基本的にDeFiなどで運用を行う場合は、エラーなどによるリスクが伴います。
しかし、Arbitrum OneなどL2ソリューションの利用には、L2特有のエラーなどが出てくる可能性が否定できません。
Arbitrum Oneの公式チュートリアルでも、スマートコントラクトのリスクが指摘されています。
このようなリスクがあることから、Arbitrum Oneの利便性が高いからと言って、全ての資産をArbitrum Oneにデポジットするといった利用はおすすめできません。
仮想通貨の取り扱いに注意
Arbitrum Oneを利用する際には、送金や、頻繁にネットワークを切り替えたり、ブリッジの際に振替先・元をチェックする機会があります。
上記のような仮想通貨を取り扱う際にミスをしてしまうと、最悪の場合仮想通貨が無くなってしまうことや、意図しない操作をしてしまう可能性が考えられます。
特に注意したいのは、L2にブリッジした仮想通貨の送金です。
例えば、L2ソリューション間であっても、他のソリューションを利用する際には一度L1にブリッジした上で、再度L2へのブリッジを行う必要があります。
また、L2にブリッジした仮想通貨をそのままダイレクトに、L1のアドレスに送金することはできません。
L2ソリューションで仮想通貨を取り扱う際は、ネットワーク・振替元・振替先や送金先の情報をしっかりと確認した上で実行しましょう。
機能に制限がある可能性あり
Arbitrum Oneに対応しているサービスであっても、すべての機能が利用できるとは限りません。
例えば、1INCHで「DAO」に該当する機能は、Arbitrum Oneのネットワークで利用できない状態になっています。
他のサービスでも、イーサリアムメインネットで利用できていた一部の機能が、Arbitrum Oneでは利用できないということがあります。
各サービスの核となる機能は利用できるケースがほとんど(DEXならSwapなど)ですが、絶対に利用したい機能などがある場合は、予め各サービスの対応状況をチェックしておいた方が良いでしょう。
デポジット・解除の問題
Arbitrum Oneは、解除(Withdraw)までに7日程度の時間が必要です。
このことから、解除されるまでに仮想通貨の価格に大きな変化があった場合、機会損失が発生する可能性は否定できません。
また、デポジットを行う際はイーサリアムメインネットでのガス代が適用されるため、タイミングによっては高額なガス代が必要になる可能性があります。
しかし、上記のようなデメリットは、Arbitrum Oneというよりも、Arbitrum Oneと同じロールアップを利用している他のL2ソリューションにも共通している問題となります。
Arbitrum Oneのデメリットやその仕組みなどを正確に把握するためには、Arbitrum Oneが採用しているロールアップである「Optimistic Rollup」への理解が不可欠です。
CT Analysisのレポートでは、Optimistic Rollupのデメリットについて詳しく解説しており、それが発生してしまう仕組みについても網羅的に解説しています。
「Arbitrum Oneの裏側の仕組みをもっと詳しく知りたい!」という方は、ぜひCT Analysisのレポートをご覧ください。
Arbitrum Oneについてまとめ
この記事では、Arbitrum Oneについて解説しました。
Arbitrum Oneは、L2ソリューションでもっとも注目度の高いソリューションの1つであると言え、利用を検討している方も少なくないでしょう。
しかし、注意点やリスクが無いわけではありません。
注意点・リスクを把握した上で、活用していきましょう。
画像:https://arbitrum.io/