【インタビュー】World Liberty Financial CBOが語る「次は日本へ」|USD1を“使われるドル”にする戦略
Crypto Times 編集部
トランプ米大統領の一族が関わる仮想通貨プロジェクト、World Liberty Financial(ワールド・リバティ・ファイナンシャル、以下WLF)は10月1日、韓国ソウルのグランドハイアット・ソウルでMOA Protocolとイベント「My Own Access: The Future of Borderless Wealth & Lifestyle」を共催し、両社は戦略的業務提携の覚書(MOU)を結びました。提携の軸になるのは、WLFが発行する米ドル連動のステーブルコイン「USD1」です。
Crypto Timesはイベント当日、会場でWLFの最高事業責任者(CBO)Ryan Ballantyne氏に話を聞きました。Ryan氏はCoinbase Institutionalで法人顧客戦略を率いたのち、2026年8月にWLFへ加わりました。取材時点で入社から約2か月です。
インタビューでは、MOA Protocolを提携相手に選んだ理由や、韓国の医療ツーリズムという少し意外な用途、日本市場への関心まで率直に語ってもらいました。Ryan氏が何度も口にしたのは、USD1が「どれだけ買われたか」より「どれだけ使われたか」という物差しです。
目次
- 1 任務はUSD1を「使われるドル」にすること
- 2 MOAには最初から使い道があった
- 3 買い物のときに流動性を気にする人はいない
- 4 発表はMOA Cardと医療ツーリズムの2本
- 5 アプリ1つで、両替も乗り換えもいらない体験へ
- 6 成果を測る物差しは時価総額より利用実績
- 7 立会場の熱気を求めて仮想通貨の世界へ
- 8 日本は「まさに得意分野」
- 9 日本企業の国際送金にUSD1を
- 10 「次は日本へ。どこに行けばいいか教えてほしい」
- 11 おわりに
任務はUSD1を「使われるドル」にすること
――まず、WLFでの役割と、USD1で目指していることを教えてください。
Ryan : WLFに入ったのは2か月前です。役職はCBO(最高事業責任者)で、主にパートナーシップを通じてUSD1を育てることに取り組んでいます。育てるといっても時価総額だけの話ではありません。ユースケース(用途)を増やすことも含みます。USD1を買って貯めてもらうだけでは足りず、現実の世界で使ってもらうところまで持っていきたい。業界がまだ答えを探している部分だと感じていて、そこを担うのが私の仕事です。
MOAには最初から使い道があった
ここからは、イベントへの参加理由とテーマについて聞きました。
――今回、MOA Protocolのイベントに参加したのはなぜですか。
Ryan : MOAにはすでにユースケースがあったからです。プラットフォームがあり、ユーザーはUSDT(テザー社が発行する米ドル連動ステーブルコイン)で口座に入金し、さまざまなチェーンを経由してUSD1を利用していました。用途がすでに出来上がっていたことは、私たちにとって前向きな材料でした。
USD1は、いわば「インテル入ってる」のような存在です。ステーブルコインそのものは作りました。そこから先は、どうやって外に出てネットワーク効果を生むかを考えなければなりません。MOAはそのためのプラットフォームをすでに持っていた。そこに惹かれました。
――イベントのテーマは「My Own Access: The Future of Borderless Wealth & Lifestyle」です。WLFの立場から見て、このテーマにはどんな意味がありますか。
Ryan : ドルは、あなたがどの国境の内側にいるかを気にしません。私たちはUSD1を、地球上のどこでも償還でき、どこでも使えるように設計しました。MOAはその構想を現実のものにしてくれます。MOAは資産(ウェルス)とライフスタイルの両面で多くの取り組みを進めています。
ライフスタイルの面でいえば、ご存じかもしれませんが、MOAは韓国の医療ツーリズム関連の協会と提携を結んでいます。これは面白いと思いました。ステーブルコインの用途として医療ツーリズムの話はあまり聞きませんよね。調べてみると、韓国の医療ツーリズム市場はかなり大きく、昨年だけで100万人を超える人が訪れています。
これまでもアプリを通じて、ホテル代や食事代をUSD1で払えました。そこに医療という用途が丸ごと加わるのは、なかなかいいですね。MOAがこれから出すMOA Cardも、USD1をチャージしてそのまま使えるので興味深いです。強固でコンプライアンスを満たしたステーブルコインを私たちが作り、それを実際に流通させる場所ができた。好循環が回り始めたと感じています。
買い物のときに流動性を気にする人はいない
――取引所でデジタル資産を手に入れることと、それを金融サービスや日常生活で使うことの間には、まだ隔たりがあります。この差を埋めるには何が変わる必要があるでしょうか。
Ryan : 業界はこれまで、前半の部分の最適化に多くの時間を費やしてきました。流動性、取引所への上場、マーケットメイカー、そうしたエコシステム全体です。
ただ、先ほども言ったように、作ったからといって人が使ってくれるとは限りません。いまはネットワーク効果を活かし、エコシステムの中でUSD1を使い始められるプラットフォームがあります。流動性があって取引でき、各所で償還できることに加えて、個人の生活の中で実際に使えるようになりました。
買い物をするときに「流動性はどうなっているか」と考える人は、ほとんどいませんよね。決済はちゃんと通るものだと当然のように思っている。そこが私たちにとって魅力的なところでした。
発表はMOA Cardと医療ツーリズムの2本
――今日のイベントで、WLFとMOA Protocolの間では何が発表されますか。この節目にはどんな意味がありますか。
Ryan : 発表は2つあります。1つ目は先ほども触れたMOA Cardで、年内の商用化を目指しています。もうすぐですね。2つ目は、MOAと韓国の医療ツーリズム関連の協会との提携です。とても独創的で、先を見た取り組みだと思います。韓国ならではの市場をうまく捉えている。
面白いのは、これを韓国だけでなくアジア全体に展開できることです。私たちも韓国でのMOAとの提携を、アジア全域、さらにその先まで視野に入れて考えています。
――協業相手としてのMOA Protocolの、どこが目を引きましたか。一緒に取り組むことで、どんな機会が見えていますか。
Ryan : カードの届く範囲の広さです。結局はユースケースと流通の話に戻ってきます。医療ツーリズムという切り口は、私たちにとって特に関心の高いところです。MOAは支払いのネットワークを持ち込んでくれます。旅行、飲食、小売で使えて、近いうちに医療・ヘルスケアの用途も加わります。
アプリ1つで、両替も乗り換えもいらない体験へ
――MOAは現在、USDTを預け入れてUSD1のマーケットで運用できるDeFi(分散型金融)商品に対応しており、年内にはMOA CardへのUSD1チャージにも取り組んでいます。こうした取り組みで、どんなユーザー体験が実現しますか。
Ryan : 最終的には、通貨を両替したりアプリを行き来したりせずに、MOAのアプリの中でUSD1を保有・管理できるようになるはずです。1つのアプリで完結する体験で、通貨の値動きも気にしなくていい。アプリをいくつも使い分ける疲れも、できる限り減らしたい。私たちが関心を持っているのはそこです。
成果を測る物差しは時価総額より利用実績
――今回の協業をきっかけに、韓国やアジアでどんなビジネスや次の展開が生まれることを期待していますか。
Ryan : 今週だけでも、流動性や取引所への上場、マーケットメイカー、無期限先物について数多くの話をしてきました。どれも金融業界にとって大事な話です。
ただ、金融の仕事を離れれば、私たちも一人の消費者で、お金を使う側です。医療ツーリズムでもホテルでも、実生活の中でステーブルコインを使えるようにする。MOAとの提携はその点で先を見た一手だと思っていて、同じ流れは韓国の外、アジア全域でも繰り返せるはずです。もちろん韓国市場そのものにも期待しています。仮想通貨にもテクノロジーにも前向きな市場なので、MOAと組むのは自然な選択でした。
――今日のイベントから、パートナーや業界関係者に持ち帰ってほしいメッセージを1つ挙げるとしたら何でしょうか。
Ryan : 私たちはこの取り組みの行方を注意深く追っていく、ということです。利用実績は、時価総額よりも頼りになる指針、いわば北極星のようなものだと考えています。人々がUSD1を使い始め、MOAとの提携が消費者を含む全員にとって実りあるものになれば、このビジネスの将来を占ういい物差しになります。
だからこそ、正しく、効果的に進めること、必要なリソースをしっかり投じることが大切です。ここで形にできれば、同じことを世界中で再現できると考えています。
立会場の熱気を求めて仮想通貨の世界へ
予定していた質問を終えたあと、Ryan氏自身の経歴についても聞きました。
――質問リストにはないのですが、以前はCoinbase Institutionalにいらして、いまはWLFにいらっしゃいます。そもそも、この業界に入ったきっかけは何だったのでしょうか。
Ryan : もともとはトレーディングの世界にいました。昔のトレーディングは値動きが激しく、無法地帯のような空気もあって、とにかく刺激的でした。証券取引所の立会場で、人が叫びながら売り買いしている光景を思い浮かべてもらうとわかりやすいと思います。それがだんだんありふれたものになり、すべてコンピューターで処理されるようになって、熱気が消えてしまいました。
そんなときにビットコインや仮想通貨を知って、新しくて最先端だと感じたんです。新しい資産クラスに触れるあの興奮を、もう一度味わえると思いました。それで仮想通貨の世界に入り、Coinbase Institutionalにたどり着きました。当時、特に米国ではあらゆる動きの最前線にいた会社です。仮想通貨の成長や、取引所での売買、資産のカストディ(保管)に集中できる貴重な機会でした。
WLFのメンバーと出会ったのは、数年前のあるイベントです。その後も経営陣と親しくしていて、成長を引っ張る人が欲しいという話になったとき、「やりましょう」と答えました。
日本は「まさに得意分野」
――日本市場は、WLFからどう見えていますか。
Ryan : 日本も非常に関心の高い地域です。今回のようなプロジェクトが日本でも見つかれば、まさに私たちの得意分野です。
アジアの人々は、新しいテクノロジーを早く受け入れてきました。携帯でメッセージを送るのが広まり始めたころ、私は「なんでわざわざ文字を打つんだ、電話すればいいじゃないか」と思っていました。いまは逆で、誰も電話をかけずにメッセージを送っています。こうした変化の多くはアジアの市場から生まれました。
デジタル資産も同じ道をたどり、アジアが起業や開発の先頭を走るのは自然な流れだと思います。世界はもうデジタルで、ステーブルコインはドルをデジタルで表したものです。デジタルの世界にデジタルのドルがあるのは理にかなっています。日本はもう1つの有望な市場ですから、話をすべきプラットフォームがあれば、ぜひ教えてください。
日本企業の国際送金にUSD1を
――USD1を日本の仮想通貨取引所に上場させる計画はありますか。
Ryan : USD1がデジタルのドルとして使われる機会があれば、ぜひ活かしたいと考えています。米ドル建ての取引ペアを扱う取引所があれば、決済の観点からそこにUSD1を組み込みたいですね。
私たちはクロスボーダー送金を手がける企業とも多くの取り組みを進めています。韓国から、メキシコから韓国へ、あるいは米国にある日本企業の子会社から日本へ、といった資金の移動です。これはUSD1にとって非常にいいユースケースです。扱いの難しい法定通貨や、資金を持ち出しにくい地域を抱えて困っている日本の大企業があれば、ぜひ提携したい。その2つをつなぐ区間にUSD1を差し込めれば、ビジネスの機会は大きいと思います。
「次は日本へ。どこに行けばいいか教えてほしい」
――日本の読者へのメッセージをお願いします。
Ryan : 次は日本に行きます。日本は私たちが参加するのにふさわしい市場だと思っています。テクノロジーを受け入れる姿勢、人々の文化、私たちが世界中ですでに築いている日本とのつながり、そして歴史や共有する価値観。どれをとっても、モノと商取引の流れにステーブルコインを組み込むのは自然なことです。日本へのメッセージは「私たちは日本に行きます。どこに行けばいいか教えてください」です。
おわりに
取材の中でRyan氏が繰り返したのは、USD1を取引所の中だけで終わらせず、ホテルや食事、医療といった日々の支払いで使われる通貨にしたいという考えでした。MOA Cardは年内の商用化を目指しており、韓国で積み上げた実績をアジア全域へ広げる構想も語られました。日本についても「次は日本に行く」と明言しています。国内でどのような提携が生まれるのか、今後の動きに注目です。
World Liberty Financial 公式サイト:https://worldlibertyfinancial.com
同じイベントでは、MOA Protocol CEOのStefan Piech氏にも話を聞いています。
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Triaの特徴
記事ソース:MOU締結に関する報道(Bloomingbit)、USD1(World Liberty Financial)
※ Crypto Timesは本イベントにメディアパートナーとして参加しています。なお、本記事の掲載にあたって金銭の授受はありません。
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