【今週の半導体】OpenAI向け半導体に500億ドル超の調達か、TSMCは米社に生産委託
よきょい
引用元: Evolf / Shutterstock.com
今週の半導体業界では、AI需要を支える資金と供給網をめぐる動きが相次ぎました。OpenAIの独自半導体をめぐっては、共同開発先のブロードコムが500億ドルを超える資金調達を準備していると報じられました。TSMCは10月8日、競合でもある米グローバルファウンドリーズと20億ドル規模の製造契約を結んでいます。AMDのリサ・スーCEOも10月6日、2027年に半導体の供給量を大幅に増やす方針を示しました。
共通しているのは、AI半導体の競争の軸が設計の性能から資金、製造能力、部材を確保する力へ移りつつある点です。一方で、OpenAIの年換算売上高が市場の想定を下回ったことで、巨額投資の持続性を問う声も出始めました。10月中旬からは海外の半導体大手の7〜9月期決算が本格化し、AI需要の強さが改めて数字で確かめられる局面に入ります。
本記事では、今週の動きをAI投資の資金と需要・供給網の争奪・コスト上昇と周辺領域の3つに分けて整理します。
1. OpenAI向け半導体に500億ドル超の調達か、売上は想定届かず
OpenAIが自社設計で進めるAI半導体について、共同開発先のブロードコムが500億ドルを超える資金調達を準備していることが関係者の話で分かりました。打診先にはアポロ・グローバル・マネジメントやブラックストーンが含まれています。協議は初期段階で、規模は変わる可能性があります。
両社は2025年10月、10ギガワット分の独自AI半導体を共同開発し、2026年後半から2029年末にかけて導入する計画を公表していました。社内で「Nexus」と呼ばれるこの計画のうち、今回の資金は数ギガワット分に充てられる可能性があり、年内に成立することもあり得るとされています。
ただし収益面では不安も残ります。OpenAIの9月末時点の年換算売上高は約500億ドルで、市場で前提とされていた約700億ドルを下回ったことが10月8日に明らかになりました。同日のフィラデルフィア半導体株指数は3.4%下落しています。オラクルも半導体購入の資金について協議を進めており、OpenAIの計算資源の確保は複数企業の資金調達に支えられる構図です。
需要側の強気な見方も続いています。AMDのスーCEOは10月6日に台湾で、想定を上回るAI向け計算需要を背景に、2027年に供給量をさらに大きく増やす計画を明らかにしました。同日のAMD株は2.8%上昇し、シティは目標株価を575ドルから800ドルに引き上げています。
2. 供給網の争奪──TSMCが米社に20億ドルの生産委託
グローバルファウンドリーズは10月8日、TSMCと20億ドル規模の製造契約を結んだと発表しました。契約期間は当初5年で、ニューヨーク州マルタの工場でシリコンインターポーザーを生産します。インターポーザーはAI向けプロセッサーとメモリーを高速でつなぐ部品で、TSMCの先端パッケージング技術「CoWoS」向けに供給されます。
同社は、先端パッケージング用のインターポーザーを米国内で供給する初の拠点になるとしており、量産は2028年前半に始まる見通しです。20億ドルは同社の2025年度売上高の約3割に相当します。一方で、量産は1年半以上先であり、足元のパッケージング不足をすぐに和らげるものではありません。
製造の主導権をめぐっては、イーロン・マスク氏も10月7日、半導体製造計画「Terafab」をテスラとスペースXが所有・運営する方針を明確にしました。TSMCが関与する場合でも工場の一部を借りる程度にとどまる可能性を示しています。主要パートナーのインテルはTSMCの参加で役割が薄れるとの懸念から株価が一時売られましたが、リップブー・タンCEOが関与の継続を確認し持ち直しました。
3. 値上げは2027年まで続くか、関心は電力領域にも
台湾のIC設計企業の間では、顧客への価格転嫁が2027年まで続く可能性があるとの見方が広がっています。トレンドフォースは10月5日付の分析で、8インチウエハーの供給逼迫と台湾ファウンドリーの値上げを指摘しました。AI向け電源半導体に生産能力が優先的に配分されている点も挙げており、先端品だけでなく旧世代のラインや後工程にまでコスト上昇が及んでいます。
電力の領域では、ルネサスエレクトロニクスが10月6日、同社初となる100V耐圧のGaNパワートランジスタ4製品を発売しました。スイッチング損失を40〜70%低減でき、AIデータセンターやヒューマノイドロボットなどを対象としています。ルネサス株は5日に8.03%、6日に3.44%上昇しました。一方でモルガン・スタンレーは、米国のデータセンター建設で電力不足が生じれば、周辺半導体に在庫調整が及び得ると分析しています。
当面の焦点は4つに整理できます。ブロードコムによる調達がどのような条件でまとまるか、OpenAIの収益がAI投資の規模に見合う形で伸びるか、先端パッケージングの増強が需要に追いつくか、そして値上げが最終製品の価格や設計会社の利益率にどう波及するかです。
AI投資の拡大が続く中で、資金の出し手と製造能力の担い手がどこまで広がるかが、来週以降も市場の関心を集めそうです。
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