「friend.tech」Dapp|インフルエンサーが注目する新たな分散型SNS
Crypto Troll
急速に話題を集める「friend.tech」Dappに注目が集まっています。
8月10日にベータ版がリリースされ、これに伴い多くのインフルエンサーが参入し、高額の収益を上げることで話題となりました。その後も新たなインフルエンサーが参入するたびに話題が再燃し、日々注目が高まっています。
しかし、この急速な注目の中で、friend.techの仕組みやエコシステムについて理解が追いついていない人も多いかもしれません。
この記事では、friend.techの概要を紹介し、同時に懸念されている事項などに焦点を当ててみます。
急に注目を浴びたfriend.tech
friend.techは、Coinbaseが提供するイーサリアムレイヤー2「Base」上に展開されたDappです。このアプリケーションは、Twitterと連携して個人の影響力を収益化する仕組みを提供しており、特にクリプトインフルエンサーたちの間で大きな注目を浴びています。
ベータ版がリリースされたことを受けて大注目:プロトコル手数料がイーサリアムに次いで、第二位に。
8月10日にfriend.techのベータ版が公開されました。このアプリケーションへの注目度を反映する興味深い側面は、ユーザーが支払うプロトコル手数料です。以下では、その規模を具体的に探ってみましょう。
8月22日時点で、friend.techは過去24時間で約168万ドルの手数料を獲得しています。この数字は、イーサリアムに次ぐ第二位の位置に位置し、プロダクトの登場から半月も経たない段階で、他の多くの名だたるサービスを上回る成果を収めています。これにより、friend.techの高い注目度が浮き彫りにされています。
friend.techの影響によってBaseのユーザー数が10万人を突破
friend.techの影響は、そのサービスの成長だけでなく、Baseにも波及しました。
8月10日の時点で、Baseの日次アクティブユーザー数は13万人以上に達し、これはBaseの過去最高記録となりました。元々Baseへの注目度は高かったとはいえ、急激なアクティブユーザーの増加には明らかにfriend.techの影響があると考えられます。
friend.techに登録するには、必ずBase上でイーサリアムをデポジットする必要があります。これがBaseのアクティブユーザー数の増加に寄与した要因の一つでしょう。ただし、現在friend.techへの新規登録は招待コードを介したものに限られており、アプリへのアクセスが制限されています。
誰もが自由に利用できるわけではないアプリケーションであるにもかかわらず、多くの人々がアプリに参加している様子を見ると、その注目度の高さがわかります。
Paradimからシードラウンドの支援
Earlier this year, we partnered with @paradigm to build tools for new online social interactions.
We're grateful for the community's warm reception and excited to continue growing with you all pic.twitter.com/yINDMXkpuZ
— friend.tech (@friendtech) August 18, 2023
突如として現れたfriend.techは、周囲の情報が十分でないため、その信頼性に疑念がありました。しかしこのような状況の中、8月19日に、Paradigmからシードラウンドの支援を受けていることが明らかになりました。
Paradigmは、暗号資産に特化したベンチャーキャピタルであり、Coinbaseの既存投資家でもあります。最近ではAI分野への投資も行っており、その幅広い投資活動を展開しています。
friend.techの特筆すべきポイントは、「Share」を中心に据えた独自のエコシステムを構築している点です。このセクションでは、その中心的な要素である「Share」を基盤に、その仕組みを詳しく解説していきます。
friend.techのユーザーは、自身が発行する「Share」と呼ばれる独自のソーシャルトークンを持つことができます。そして、これらのShareはfriend.techのプラットフォーム内で取引可能です。
Shareを所有するユーザーは、Shareの発行者であるインフルエンサーの投稿を閲覧するだけでなく、そのインフルエンサーと個人的なメッセージのやり取りも可能です。さらに、同じ発行者のShareを持つユーザー同士は、その発行者の返信内容を他の保有者からは隠すことができるため、独占的な個人間コミュニケーションが可能です。
Shareは価格が一定ではなく、株式のように変動します。特に人気のあるユーザー(この記事では「インフルエンサー」と呼びます)のShareは高額で取引される傾向があります。要するに、Shareの価格はそれを発行したインフルエンサーの人気度を示す指標と言えます。
Shareの取引は購入と売却の両方で手数料が発生し、この手数料からプロトコルの収益や、Shareを発行したインフルエンサーに支払われるETHのロイヤリティが供給されます。
具体的な上位インフルエンサーのETH還元例を見てみましょう。
- Cobie氏(https://twitter.com/cobie)
- 著名なクリプトインフルエンサーであり、Coinbaseでのインサイダー取引についても言及したことで知られています。
- 最近では、バイナンスの創設者であるCZ氏に関する「Red Notice」(国際逮捕手配書)の情報をツイートしていますが、その真偽は不明であり、公式発表はないことに注意が必要です。
- Racer氏(https://twitter.com/0xRacerAlt)
- friend.techの創設者として知られています。
CoinGeckoのデータによれば、Cobie、0xRacerAlt、HsakaTradesの3人の合計ロイヤリティが、上位25アカウントが受け取ったロイヤリティの34.6%を占めています。
ここまでfriend.techのエコシステムの中心であるShareについて説明してきましたが、次にそのShareの売買に関する詳細を探ってみましょう。特に、Shareの販売方法や価格設定に焦点を当てて説明していきます。
ここまでShareの売買について詳しく説明してきましたが、重要な点として、インフルエンサーやユーザー同士が直接的にShareを売買しているわけではないことに留意する必要があります。
ユーザーは自分の保有するShareをいつでも売却することができますが、これは運営側がそのShareを買い取っているためです。同様に、ユーザーはいつでもShareを購入することができますが、これは運営側が所有しているShareを売却しているものです。
重要な点として、Shareの売買はすべて運営側によって行われているため、インフルエンサーはShareを発行することはできますが、そのShareの価格を自ら設定することはできません。代わりに、運営が設計したアルゴリズムによって自動的にShareの価格が決定される仕組みとなっています。
この仕組みにより、個別のインフルエンサーによる価格設定の偏りや操作を防ぎつつ、公平な取引が行われることが保証されています。インフルエンサーやユーザーは自分の保有するShareをいつでも売買することができますが、その価格は運営のアルゴリズムに基づいて決定されるため、市場における需要と供給のバランスを考慮した価格設定が行われています。
報酬ポイントのエアドロを実施中:ガバナンストークンの発行予定も。
2023年8月15日、friend.techは公式Twitterを通じて、アプリ利用者に報酬ポイントのエアドロップを実施することを発表しました。
This Friday, we'll begin airdropping reward points to app testers. Points are collected off-chain during the beta period and will have a special purpose when the app enters official release status
100,000,000 points will be distributed over six months pic.twitter.com/MggfM4oitw
— friend.tech (@friendtech) August 14, 2023
毎週金曜日に、8月18日から合計で1億ポイントが配布されるとのことです。先週の金曜日には、4万4千人を対象として最初のエアドロップが行われたことが発表されました。
また、将来的にはガバナンストークンの発行も計画されています。
friend.techの懸念されるリスクや問題点
ここまでFriend.techのエコシステムに関して詳しく説明してきましたが、新興のプロダクトであるために情報が限られている点や、その仕組みがまだ不透明な部分もあることから、多くの懸念事項が存在しています。
プライバシーポリシーが不明。セキュリティへの不安も
friend.techは、インフルエンサーとしての価値を直接的に金銭に変換できるサービスと言えます。これまでInstagramやYouTubeなどでインフルエンサーは自身の知名度を活かしてビジネス展開し、収益を上げてきましたが、friend.techではインフルエンサーが自分の価値をより手軽に金銭的な価値に変えることができる仕組みを提供しています。
ただ、こうしたサービスを提供する上で、プライバシーや情報管理が非常に重要です。しかし、friend.techのプライバシーポリシーは現在まだ公開されておらず、「coming soon」となっています。
Hypeの懸念
「Hype(ハイプ)」は、元々は誇大宣伝や過度な宣伝を指す言葉でしたが、最近では、特定の商品やサービスが大きな注目を浴び、熱狂的な受け入れを受けている状態を指す用語としても使われています。
現在のfriend.techに関する状況は、かつての「Hype」の意味と現代の意味の両方を含んでいるようです。
手数料の増加からも分かる通り、friend.techのShareの取引は盛んです。しかしながら、具体的なビジョンが明確でなく、サービスの実際の姿を把握することは難しいです。多くのインフルエンサーが参加していますが、これが継続するかどうかは未知数であり、一時的な現象で終わる可能性も考えられます。
また、friend.techはParadigmがシードラウンドの資金調達に関与したことを発表し、これに反応して多くの人々がShareを購入したことで、Buyersの比率が急速に上昇しました。
データを見ると、Paradigmの関与が明らかになる前は、BuyersとSellersの間で需要と供給が安定していました。しかし、その関与が判明した後、Buyer側の需要が急激に高まり、一時的に4:1という比率にまで達しました。その後も、基本的にはBuyer側の需要が高い傾向が続いていることが分かります。
一見すると、非常に活気のある状態に見えますが、これは実際には実体のないものに影響されている可能性があるため、冷静な分析が必要です。良い側面もあれば悪い側面もあり、現実との乖離があるため、過度な期待に振り回されることなく、状況を冷静に評価することが重要です。
導入が初心者向きではない
これまでfriend.techの懸念事項にフォーカスしてきましたが、ここからはプロダクトの使いやすさについて詳しく見ていきます。筆者自身も試してみましたが、正直なところ、ユーザビリティは高くはありません。特に、暗号通貨初心者にとっては取り扱いが難しいと言えるでしょう。
Base上にETHが必須
friend.techが注目を浴びる中で、実際にShareを発行したり売買したりしなくても、その仕組みに触れてみたいと考える人もいるかもしれません。しかし、実際に登録する手続きはかなり煩雑です。
登録には電話番号かメールアドレスが必要ですが、その際にETHのデポジットが不可欠です。デポジットを行わずに進むことはできないため、friend.techの内容を確認するだけでも、わざわざETHをデポジットしなければならないという状況です。
さらに、ETHのデポジットを行う際には多くの手数料が発生します。
手続きの煩雑さや手数料に加えて、最も重要な点は、新興プロジェクトに大量の資産を預けることは、大きなリスクを伴う可能性があることです。少しでも試してみたいと考える人でも、Shareを購入しない限り、最低限のETHデポジットに留めることが賢明かもしれません。
招待コードが必要
さらに、手続きの面倒さを除いても、friend.techはどんな人でも簡単にアクセスできるアプリではありません。まず、招待コードが必要です。招待コードを手に入れるためには、旧Twitter(X)などで招待コードを提供している人を見つけるしか方法がありません。
おわりに
インフルエンサーにとって、InstagramやYouTubeなどでのマネタイズは重要な課題です。たとえば、YouTubeではスーパーチャットなどを通じてファンから直接収益を得ることが可能ですが、多くの場合、企業案件や広告収入が主な収益源となっています。広告収入を得るには登録者数や総再生時間などの要件を満たす必要があり、ハードルが高いとされています。
以前はマネタイズの仕組みが整備されていなかったX(旧Twitter)も、最近になって収益分配プログラムが導入されましたが、それにも関わらずインプレッションを確保する難しさが残り、ハードルが依然として高いと言えます。
このような状況の中で、friend.techの仕組みが存在することは、著名インフルエンサーがXに偏るクリプト領域の需要を満たす潜在的な能力を持っていることを意味します。friend.techはXとの連携によって自身の知名度を利用し、容易に収益を生み出すことができるプラットフォームを提供しており、そのために多くの注目を浴びる要因となりました。
ただし、friend.techはプライバシーやユーザビリティに関して多くの懸念事項を抱えており、その将来には不透明な要素も存在します。その進展にどのような方向性が示されるかは分からないものの、friend.techの動向には引き続き注目が集まるでしょう。