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レポート
2018/04/07【BeyondBlocks初日レポート】Skycoin Brandon Synth氏 ブロックチェーンの未来とその課題
CryptoTimesもメディアパートナーとして参加した、恵比寿のウェスティンホテルで行われたBeyond Blocks 1日目のレポートになります。 本記事は、Skycoinの創設者の一人であるBrandon Synth氏による『基調講演: ブロックチェーンの歴史、ブロックチェーンの未来とその課題』のレポートになります。 【BeyondBlocks初日レポート】bitFlyer 加納氏 日本の現状 ブロックチェーン全体に関する進展の概況 - CRYPTO TIMES 【BeyondBlocks初日レポート】Wanchain(ワンチェーン) 基調講演 - CRYPTO TIMES ビットコインの数学的な観点からの分析 Synth氏は自身の数学に関するバックグランドを生かし、ビットコインの価格やドミナンスの観点から解説していました。 仮想通貨市場全体の時価総額が$300bilであるのに対して、ビットコインの現在の時価総額が$150bilである点(ドミナンスの理論)、日付と対数変換を施した価格の線形回帰分析、法定通貨や金、銀などの他の資産と比較した時価総額など、様々なデータの分析に基づいた独自のビットコインの理論を展開していました このデータをベースにSynth氏は、 『ビットコインは最初の仮想通貨であるがこれが最後にはならない』 『ビットコインは(仮想通貨の大衆への普及を成功させた仮想通貨にすぎず)仮想通貨のプロトタイプである』 と結論付け、次に価格やドミナンスの下方変動が、具体的にどのような問題のために起き、プロトタイプであるビットコインの何を解決していかなければならないのかを語りました ビットコインの問題点、今後の課題は? Synth氏のスライドにはBitcoin will die(ビットコインは死ぬ)の文字がありました。 その中でも特に重要な問題として挙げられたのは、世間で騒がれているビットコインのスケーラビリティ問題やトランザクションのスピードではありませんでした。 Synth氏によれば、ビットコインの技術的な問題が永久に解決できないわけではないようです。 現にLN(Lightning Network)の普及などで大幅にトランザクションのスピードやスケーラビリティ問題は改善されています。 更に今後も他のソリューションと組み合わせることで、必ず解決のベクトルに向かうことができます。 しかし、現状ビットコインのマイナーは少数のマイニングプールによって占有されています。マイニングのシステム上トランザクションの手数料は採掘報酬と共にマイナーへと支払われる仕組みになっています。 Synth氏は、『ビットコインの技術的な問題を解決するソリューションがあったとしても、コミュニティ(一部のマイナー)がビットコインの送金手数料の報酬のために、恣意的に問題の解決を拒んでいる』と説明しました。 ビットコインにおいて、この一部が合意形成の権力を持つ状態が技術以上に大きな問題であるとし、Skycoinの解決策へとプレゼンテーションは続きます。 Skycoinの導き出した解決策 Skycoinには従来のPoWやPoSにおける合意形成の問題を反映した、Obelisk(オベリスク)というシステムを採用した新たな合意形成のアルゴリズムが反映されています。 このシステムでは、PoWであれば計算能力の多少、PoSであれば保有するトークンの枚数などによって、エコシステムの発展を妨げる可能性のあった合意形成アルゴリズム(マイニング)が必要とされません。 更に、ビットコインのTPSが(1秒あたりのトランザクション数)6~7であることやトランザクションに数時間から数日かかるようでは、現実社会での決済手段としての実用は難しいとし、これをSkycoinが解決すると話しました。 Skycoinのブロックはいかなるトランザクションのレートにも対応できるよう、ブロックサイズに柔軟性を持たせた設計になっています。 また、トランザクションは、新たな合意形成アルゴリズムのために数秒で完了し、他のあらゆる通貨においても、このスピードはクレジットカードやAlipayに勝るものでなくてはならないと語りました。 最後に Synth氏は、ビットコインの手数料は現在、形式上PoWによって使われる5万戸の家と同等或いはそれ以上の電力を、ユーザーが手数料という形で負担する構図になっていると話しました。 これはクレジットカードの1回のトランザクションの数千倍の電力消費に相当します。 ユーザーにとって不本意な形で行われる合意形成のために、ユーザビリティが低下している点やユーザーの利便性をコインが反映しきれてない点などを今後の仮想通貨への課題としプレゼンテーションは幕を閉じました。
プロジェクト
2018/03/30Sentinel Protocol(センチネルプロトコル) -分散型セキュリティプロトコルのプロジェクト-
今回紹介するのは、Sentinel Protocol(センチネルプロトコル)というセキュリティ関連のプロジェクトになります。 このプロジェクトの3つのポイント! 通貨のシステムでしか解決できなかったハッキングに対しての防衛手段となるプロトコル 人工知能やAIを利用した自律性を持つエコシステムを創造 ハッキング自体のインセンティブを奪い去ることができるので問題の根本的な解決が見込める Sentinel Protocolとは? Sentinel Protocol(センチネルプロトコル)とは、仮想通貨のAutonomy(自律性=管理者の不在)の弱点であるセキュリティを集団的知性や機械学習で解決しようというプロジェクトです。 仮想通貨におけるサイバー犯罪は、分散型台帳を利用したP2Pネットワークの匿名性ゆえ、ハッカー側がターゲット(取引所など)を選ぶことが非常に容易であるにもかかわらず、攻撃者を特定するのが非常に難しい仕組みになっています。 現状これらの被害が全て自己責任という言葉に片づけられてしまうのですが、ではそれぞれが対策を練っていったとしても、根本的な『仮想通貨におけるセキュリティ』は脆弱性を突くハッキングに対する本質的な防衛手段にはなりえません。 Sentinel Protocolはブロックチェーンのそれぞれが自己利益のために動きそれが相互作用する仕組みに目を付け、仮想通貨の自律性という柱を守りつつ、集団的知性や分散型AIを使うことによって、サイバーセキュリティエコシステムのプロトコルの実現を目指しています。 このICOが実現できることこのプロジェクトの本質は分散型エコシステムの健全な環境維持にあります。ハッキングと聞くと対策という枕詞が頭に浮かびますが、このプロジェクトでは従来のセキュリティ対策と比較すると、分散型システムの強みを生かした自律的で健全なセキュリティのシステム創造がビジョンの根底にあると考えることができます。 プロトコルとは?アプリケーションとの違いは? Sentinel Protocolのプロトコルという言葉についてですが、これは皆が共通して対応するどのアプリからでも同様に利用するための基盤となるルールのようなものと覚えておきましょう。 例えば、https(HyperText Transfer Protocol)とはSSLやTLSが提供するセキュアな接続上でhttpのプロトコル通信を行います。 Google ChromeやFirefoxなどのアプリケーションは、基盤となるhttpsのプロトコルを利用することができるため、どのプラットフォームからも同様にセキュアにwebサイトを閲覧することができるようになります。 Sentinel Protocolを利用する場合だとケースがいくつかありますが、基本的にはSentinel Protocolの集団的知性やAIを生かしたネットワーク上で送金や受金などを行うことができ、このプロトコルに疑わしい、危険などと判断されたアドレスへの送金、からの受金をブロックすることができます。 またAI(人工知能)を取り入れることで、アドレスのブロックのみでなく、通常のユーザーの挙動と異なる動きを検出、未然にブロックすることも可能になります。 Sentinel Protocolの特徴 Sentinel Protocolには特徴となる Sentinel Portal(センチネルポータル) S-wallet 分散型マルウェアサンドボックス の3つの柱があります。 Sentinel Portal Anti-Theft System(犯罪防止システム) ネットワーク上での資金のやり取りを管理する一つの例としてクレジットカードがありますが、クレジットカードの場合、それが盗難された際に管理者(カード会社)が利用を停止するなどして、不正な利用を防ぐことができます。 しかし、管理者のいない仮想通貨のシステム上、こういった犯罪と関連した資金の不正な移動を防ぐことができません。 Sentinel Portalによりコミュニティ内の全ての情報を仮想通貨の取引所にシェアすることで、盗まれた資産がFIATに交換されることを防ぐことができると考えています。 Malformed Transaction Prevention(不正取引防止) Scam認定されたアドレスやそれに派生するアドレスは、ブロックチェーンの利点を生かしてコミュニティ内のすべてのメンバーと共有されます。 Sentinel Protocolが適用されている限り、ハッキングの被害の拡大、分散を防ぐこともできます。 一つの例として、ICOの詐欺などにおいて、アドレスに送金したが持ち逃げされた際に、詐欺を行った人物(チーム)のアドレスを追跡することができます。 S-wallet S-walletはSentinel Protocolのコミュニティにいる人々に提供される、従来のセキュリティソフトのにあるような機能を搭載したウォレットになります。 従来の中央集権的なソフトウェアはサーバーにある既知の脅威にしか対応することができなかったのですが、S-walletは脅威の傾向や履歴を分析することでゼロデイ攻撃*などの未知の脅威に対して対抗しうる可能性を持ちます。 集団的知性によって集まったデータベースを参照して、アドレスフィルタリング、URL/URIフィルタリング、データフィルタリング、詐欺検出などを行うことができます。 特に機械学習(後述)を利用した詐欺の検出などは、サイバー犯罪における二次被害を防ぐことができる点において非常に重要な意味を持ちます。 *ゼロデイ攻撃…ハッカーが脆弱性の発見者となるような攻撃 分散型マルウェアサンドボックス サンドボックスとは、未確認のプログラムやコードを仮想マシン上で動かすことでアプリケーションやホストに対してノーリスクで動かすことのできるシステムです。 既存のサンドボックスは中央集権的でサーバー内で仮想マシンを起動させてこれらの未確認のプラグラムを動かす必要があったため莫大なコストがかかりそれがネックとなることもありました。 しかし分散型のサンドボックスは、これをPoWの仕組みと融合させることで、未確認のプログラムやコードのテストの役割をユーザーに担ってもらうことで、従来のシステムにかかっていたコストを大幅に削減することが可能になりました。 言うまでもなく、PoWを利用しているのでサンドボックスのエコシステム維持に貢献したユーザーにはインセンティブが付与されます。 ※Sentinel ProtocolにはPoP(Proof of Protection)(後述)というアルゴリズムが用いられますが、サンドボックスのシステム維持に貢献した人にはPoWによってトークンUPPと互換性を持つSP(Sentinel Point)が付与されます。SPはUPPと交換可能です。 これらのセキュリティ、特に仮想通貨におけるセキュリティを強固にすることには大きな意味があります。それは、ハッカー側の攻撃インセンティブを間接的に奪うことができる点です。 例えば、ハッカーはCoincheckのハッキング後にダークウェブで15%オフでNEMを販売していたことなどからも、実際に奪った資産を換金し利用することを最終的な目標にしていることが伺えます。Sentinel Protocol導入によるアプローチはこういったハッカーの金銭的なゴールを妨げる役割を果たしています。 このプロトコルが世界中で利用されることで、ハッキング自体が不毛であることを気付かせそのインセンティブを消し去ることができるかもしれない、という点で優れていると言えます。 合意形成アルゴリズム『PoP』とは? 上述の通り、Sentinel Protocolでは、Daniel Larimerという人物によって発案されたDPoS(Delegated Proof of Stake)を元にしたPoP(Proof of Protection)というアルゴリズムを採用しています。 簡単に言えば、Delegatedとは代表者のことで、この合意形成アルゴリズムにおいては、Uppsalaによって選抜されたセキュリティの詳しい知識などを持つ機関や個人が合意を形成します。 これによってPoWの電力の無駄を十分に削減し、従来のPoSでも起こり得る51%問題などの脅威を劇的に減らすことを可能にしました。 更にReputation Scoreと呼ばれる内部評価のようなシステムを採用しています。 このスコアがコミュニティ内での影響力を示し、既存のPoS同様そのスコアに応じたステークが与えられるため、個人個人のユーザー、機関があえて犯罪に加担してくような動きを見せることは極めて考えにくいとしています。 集団的知性と機械学習・AI(人工知能) S-walletの項でSentinel Protocolには集団的知性や機械学習が利用されている旨を簡潔にに説明させていただきましたが、これらをセキュリティで利用していくことのメリットをこちらで紹介します。 ブロックチェーンは分散型で書き換えもできないからセキュリティが強いと世間では謳われていますが、実際のところそうではありません。 まず必ず注目しなければならないのが、従来のセキュリティと比較した際に見える中央管理者の有無です。 仮に仮想通貨が集権的で、仮想通貨管理局なるものが存在するとすれば、仮想通貨で行われた不正に対して管理局の専門家が『このトランザクションは無効』などの判断を下したり、『こういうハッキングが流行り始めたから気を付けて』などの注意喚起なり、個人のユーザーの不利益の阻止にある程度は貢献できるかもしれません。 ですが、現状こういった専門家や最新のデータなどに個人がアクセスし情報を得て対策をする、という一連の理想の流れは中央管理者が不在である点などから実現が非常に難しい状況にあります。 第二に注目すべきは、ハッキングやデータの漏洩などから、実際に資産が盗まれた際、そのトランザクションデータはすべてブロックチェーン上にあるという点です このブロックチェーン上の情報を収集して共有(集団的知性)、パターンや不正な挙動などの解析(機械学習)することで、中央管理者の不在による個人へのダメージを解消し、従来の集権的なデータベース以上にスケールする最高のセキュリティプロトコルを創り上げることができます。 Sentinel Protocol のロードマップ この記事の執筆段階でSIPB(Security Intelligence Platform for Blockchain, Sentinel Protocol)のベータテストは既に完了しています。3月にはトークンの発行と同時にテストネットのローンチがあるようです。 Sentinel Protocolのリリースは18年6月を予定していて、機械学習やサンドボックスなどのシステムは11月から12月にかけて随時追加されていく予定です。 2019年には詐欺検出システムがメインネットに追加される予定です。 Sentinel Protocolのチーム概要 このICOを行っているUppsalaという企業ですが、創立者と他数名がDarktraceという最先端の機械学習を使ったサイバーセキュリティの会社の出身です。 その他メンバーは、Palo Alto Network、Penta Security Systemsなどの企業が出身で、いづれもサイバーセキュリティ方面で活動を行ってきたようです。 最初はUppsalaという企業が検索で見つからなかったので不安になりましたが、チームメンバーがれっきとしたセキュリティのバックグラウンドを持つことや、彼らの経歴を客観視した際に、プロジェクトの実現が十分に見込めるなどという理由で紹介させていただきました。 その後、このプロジェクトメンバーと連絡を取ったところ、こちらで会社の存在を確認することができました。このThe centralという場所はKyber NetworkやDigixなども拠点にしているようで、Crypto Buildingなどと呼ばれているようです。 トークンセールの詳細 プレセールの開始は4月中旬とされています。プレセールに割り当てられるトークン枚数は、87,500,000UPPになります。 ハードキャップはプライベートセールの内容を反映して$11,670,000に設定されています。 こちらはホワイトリストの登録を完了させたユーザー向けに以下の内容で行われます。 1ETH = 5,000UPP 15%のボーナス(5,750UPP)とボーナス付与分に対しての6か月のロックアップ ※ホワイトリスト登録にはKYCが必要となります。 クラウドセールはこのプレセールの終了後に順次開始されます。 初期段階で発行されるトークンのうち、33.7%+26.7%がそれぞれ一般向け、初期段階で貢献した人々に、15.0%がUppsalaに分配されます。残りはビジネスなどの用途に使われるようです。 関連リンク 公式サイト Twitter(@s_protocol) ホワイトペーパー(英語) Medium 公式Telegram(英語) 公式Telegram(日本語) ※プロジェクトのICOへ参加される際には、自身でも利用規約やプロジェクト内容に関して十分理解をした上での投資を行いましょう。投資をおこない損失などが生じた場合、CRYPTO TIMESでは一切の責任を負いません。全て自己責任となります。
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2018/03/30仮想通貨交換業者2社が申請取り下げ 事業撤退を決断
この記事の3つのポイント! 仮想通貨交換業者2社が申請を取り下げ事業撤退を決めた いずれも改正資金決済法に基づくみなし業者として営業を行っていた 金融庁はコインチェック事件を受けて交換業者に対する審査を厳格化している 本記事引用元:新たに2社が登録断念=仮想通貨業者、撤退相次ぐ 東京ゲートウェイ(東京)とMr.Exchange(福岡)の二つの仮想通貨交換業者が29日、金融庁に対して行っていた業者登録の申請を取り下げたことが明らかになりました。 取り下げを行った業者は、来夢(三重), Bitexpress(那覇), ビットステーション(名古屋)に続き現時点で系5社となりました。 いずれの企業も、改正資金決済法に基づく登録審査中のみなし業者として営業を行っていました。 1月後半のコインチェックから約5億枚のNEMがハッキングにより奪われた事件を受け、金融庁は審査を厳格化していると考えられ、今後も撤退が相次ぐ可能性があるとみられています。 コインチェックからの仮想通貨流出はシステムの安全面での不備が問題となりました。 この事件のあと、金融庁はコインチェックを含む16のみなし業者に対して、立ち入り検査などを行い利用者保護や安全対策などを検証しています。 今回撤退を決めたMr.Exchangeは金融庁から業務改善命令を受けており、今後も対策が不十分な交換業者に対しては管理体制の見直しや、事業撤退を迫っていくようです。
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2018/03/27BTC(ビットコイン)のトランザクション手数料が12か月ぶりの最安値に
この記事の3つのポイント! 1バイト当たりのブロック生成手数料が一時1satoshi(0.00000001BTC)に 3/25のトランザクション平均手数料は$1.23と5月以来の最安値を更新 Segwitのより広い普及で取引量増加にも耐えうる低い手数料の維持が可能に 本記事引用元:SEND $10,000 FOR 1 CENT: BITCOIN TRANSACTION FEES HIT ‘UNFAIRLY CHEAP’ LEVELS ビットコインのトランザクション手数料が12ヵ月安を記録 TwitterのBitcoin Core Fee(@CoreFeeHelper)によれば、次のブロック生成に必要な手数料が、1byteあたり1satoshi(0.00000001BTC)と直近12ヵ月の最低値を記録しました。 https://twitter.com/CoreFeeHelper/status/977898765897097216 Bitcoinist.comによって行われたテストによれば、Edge Walletという手数料をカスタムで設定できるウォレットを使用し、上記の通りbyteあたり1satoshiの設定をしたところ、$10,000相当のビットコインの送金にかかった手数料は$0.01だったようです。 一方で、Bitinfochartsによれば、昨日のビットコインのトランザクションの平均手数料は$1.23と、2017年5月以来の最安値を記録しています。 手数料と出来高の相関関係 手数料が安くなってきている原因の一つとして挙げられるのが、取引所や大きな企業によるバッチ処理の増加です。 バッチ処理とは、データをある程度のサイズまでまとめてから一括で処理する処理のことで、これが増加した結果として全体的な取引量も減少したとみられています。 手数料のピークは昨年12月中旬に、ビットコインの価格が$20,000に到達した時点には、急激な出来高の増加に伴い、トランザクションの平均手数料は一時期$55にまで増加しました。 ビットコインの手数料の高さが長い間批判の的となっていたこと、新規ユーザーが急激に増加したことなどと同時にビットコインのネットワークはスケールの方法を模索していました。 Segwitに効果はあるのか? Segwit(Segregated Witness)とは、2017年8月にビットコインに採用されたスケーリングのソリューションのことです。 関連記事 Segwitとは何か?今さら聞けない仮想通貨 - CRYPTO TIMES 2日間でSegWitのトランザクションが15%から30%に増加! - CRYPTO TIMES これは、ブロックのウエイト最適化というアプローチで、結果としてトランザクション手数料を減らすという解決策になります。 ここ数ヵ月の間にも、BitstampやCoinbaseなどの海外の取引所は増加する取引量に伴うユーザーの手数料の増加の懸念から、Segwitへの統合を進めています。 Segwit.partyによれば、Segwitのトランザクション量は徐々に増加しており、現在は全てのトランザクションの30~35%を推移しています。 BitmainのCEOであるJihan Wu氏は以前、『Segwitが導入されると、マイナーにとっての手数料が不平等なまでに安くなる』と語っていましたが、これは間違っていなかったようです。 手数料の減少は商人の増加を招くか? 多くの小売店は、ビットコインのボラティリティや高いトランザクション手数料から、決済手段としてこれを利用することを避けてきました。 もし昨日のような低い手数料を維持できるならば、価格や取引量が増加しても、日常生活の決済においてより広く決済に普及していくでしょう。 高いトランザクション手数料とスピードが改善された時には、ビットコインでピザを買う日がもう一度訪れるかもしれません。
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2018/03/23Loom Network(ルームネットワーク)とは?-ゲームdAppsに特化したプラットフォーム-
こんにちは!Shota(@shot4crypto)です。 本記事では、Loom Networkと呼ばれるイーサリウム上のdApps(分散型アプリケーション)におけるスケーリング問題を解決するデベロッパー向けのキットを紹介します。 PlasmaやRaiden Networkなどはメインネット側のスケーラビリティ問題を解決するために考えられたものであるのに対し、Loom NetworkはdAppsのスケーリングに関しての初めてのプロジェクトになります。 スケーラビリティ問題とは? 仮想通貨の根幹をなすシステムといっても過言ではないブロックチェーンですが、このチェーン上の個々のブロックには保持できる情報の量が規定されています。 例えば、ビットコインの最大のブロックサイズは『1MB』と定められています。 しかし、利用者が増えより多くのトランザクションが行われるようになると、ブロックに保持できる量が定められている性質上、トランザクションや送受信の詰まりが発生します。 ブロックサイズが定められている設計上、指数関数的なトランザクションの増加と同じスケールでブロックサイズを大きくするといった解決策はとることができません。 この増加する情報量とブロックサイズの制約によって引き起こされる問題をスケーラビリティ問題と呼びます。 スケーラビリティ問題の関連記事はこちら 仮想通貨に送金革命!?ライトニングネットワークとは何かを解説! Segwitとは何か?今さら聞けない仮想通貨 Plasma Cashのモデルが取引所にハッキング耐性を付与する可能性をもたらす スケーラビリティ問題を解決する4つの策とは? Loom Networkの特徴 Loom Networkは次世代のブロックチェーンプラットフォームと呼ばれており、主にゲームやソーシャルアプリ向けのスケーラビリティ問題に対するソリューションとして機能します。 従来のイーサリアム上のDAppsは全てメインチェーン上にコントラクトがありました。 メインチェーン上のコントラクトは、高額なトランザクションに対してもセキュリティを維持するために処理能力や速度を犠牲にしている合意形成アルゴリズムが用いられていた為、ゲームやソーシャルアプリなどのDAppsにおいてこれが障壁となっていました。 Loom Networkでは、DAppsチェーンというアプリケーション特化型のチェーンを使用しており、トランザクションの処理をこのサイドチェーン上で行わせることで、障壁となっていたゲームとは無関係な場所で起こるトランザクション詰まりを解消することに成功しました。 また、記録されたトランザクションはRelayという形で従来利用されていたメインチェーンと双方向でやりとりをすることが可能になります。 既存のソリューションとの違いは? スケーラビリティ問題に対するソリューションは、ビットコインであればLightning Network、イーサリアムであればRaiden Network / Plasma、NEOであればTrinityなどと色々ありましたが、これらのソリューションとの根本的な違いについても解説しておきます。 Raidenなどの従来のソリューションとLoom Networkの比較 従来のソリューション Loom Network 問題 トランザクション増加で送金詰まり DAppsメインチェーンの制約 アプローチ 個人のチャンネル開閉など コントラクトをサイドチェーン上で 対象 個人から法人まで デベロッパー向け 備考 - コミュニティ内の合意でフォーク可能 まずLightning Network, Raiden Network, Trinityについて、これらはオフチェーンを利用したソリューションでユーザーがトランザクションの際にチャンネルと呼ばれるものを作成することでチャンネル開閉時以外の採掘コストを抑えられるというものになります。 つまり、オフチェーン上で極力情報のやりとりを行うことで、メインチェーンへの負担を減らすというのがこれらのソリューションのアプローチです。また、これらは主に上で述べたトランザクションや送受金詰まりに対しての解決策として開発されました。 (※Plasmaに関してはLightningなどとは別の子チェーンを利用するアプローチをとっているのですが、こちらは記事の主旨の都合上割愛させていただきます。) 一方でLoom Networkはサイドチェーンを利用したソリューションで主にデベロッパー向けにDAppsにおいて不要なトランザクション詰まりを解消するために開発されました。 このサイドチェーンとは、Plasmaのような子チェーンではなく、メインチェーンと同列に扱われるDAppsチェーンというもので、あるDAppsゲームにおいてコミュニティの判断でフォークを行ったりすることも可能になります。 また、Solidityという言語を用いることでLoom Network SDKを利用し、独自のDAppsを簡単に作ることもできます。次項でどのようなDAppsが作成できるのか、いくつか例を紹介します。 Loom Networkを利用したDApps DelegateCall DelegateCallはDAppsチェーン上で動く、DAppsチェーンに関してのQ&Aサイトで、ユーザーは質問や回答を閲覧できるほか、これに参加することでトークンを獲得することもできます。 CryptoZombies CryptoZombiesもDAppsチェーン上で動くゲームで、開発に必要なSolidityという言語をから学ぶことができます。利用者は本記事執筆時で13万人を超えています。 詳しくはこちら理系男子コンソメ舐め太郎の『HACK YOU!』 第2回 -CryptoZombies完走してみた- ETHFiddle ETHFiddleはより開発者向けのDApps上コミュニティのようなもので、ユーザーはSolidityのスニペット(コードの切れ端)をシェアできます。 Loom Networkのトークン Loom Networkにはトークンが発行されていますが、こちらの使い道に関しても技術的な面から軽く触れておきます。 この記事では、Loom NetworkはDApps開発におけるソリューションとして新たに生み出されたサイドチェーンを用いたソリューションで、Relayという方式を用いてメインチェーンとのやりとりを行うことを説明しました。 これから色々なLoom Network上におけるゲームの開発が進んでいく中で、ゲーム内で獲得したトークンはそのゲームの中で完結することなく、様々なゲームで扱われるトークンとの互換性を持つことなども期待されています。 このときにメインネットとのやりとり(トークンとETHの交換の作業)が必要になるのですが、その際のアクセス権に該当するものがLoom Membership Tokenになります。 そのため、アクセス権を獲得するのに必要なトークン1枚のみで、購入後は永久的にLoom Network上のDAppsで利用することができます。 更に、仮に将来的にCryptoZombiesで育てたゾンビと互換性を持つ別のゲームが開発された際にも、自身のゾンビをインポートして別のゲーム上で動かすことも、Loom Membership Tokenの購入で可能になります。 まとめ DAppsの開発がここ最近注目されてきましたが、Loom Networkは従来のDAppsのメインチェーン上でのコントラクトによるトランザクションの詰まりなどスケーラビリティの問題を、DApps特化型のサイドチェーンを利用することで解消することに成功しました。 以前のDAppsと違い無料で利用できる点からも、ユーザー数の更なる増加を見込める要素だと思います!今後の動きに注目したいですね!
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2018/03/19Mt Goxの破産管財人がBTC売却について語る
3月17日、Mt Goxの破産財官人であり"Mt Gox Whale"と揶揄される小林氏は彼の所持するBTCとBCHの売却に関しての重要な情報を明らかにしました。 小林氏によれば、BTCの売却は仮想通貨の専門家の意見を参考に、市場価格に影響が出ないような形で行われていたようです。 この記事の3つのポイント! BTCとBCHの売却がどのような形で行われたのかを公にした 売却は専門家の相談の元、市場価格への影響を避ける形で通常とは違った方法で行われた 残るBTCとBCHの将来的な売却の目途は立っていない 本記事引用元:The ‘Mt Gox Whale’ Explains His Crypto-Selling Strategy 売却は相談の元で慎重に行われていた 17日土曜日、財官人である小林氏は、彼の保有するBTCとBCHをどのような形で売却を行ったかを公にしました。また、彼は現在も約1900億円相当のBTCとBCHを保有しているようです。 仮想通貨のトレーダー達は、この巨額のBTCとBCHが売り払われた際に、それらの市場価値を大きく落とす可能性があることを懸念しています。 彼によれば、BTCとBCHの売却は仮想通貨の専門家への相談の元で行われ、通常の取引所を介しての売却は行っていないとしています。 更に、『大衆によるこの売却に対しての動きは無意味である。なぜなら、12月と2月の特定の日時に売却が行われたわけではないからだ』と続けています。 この売却は、市場価格への影響を避ける形で、できる限りのトランザクションの安全性も考慮して行われました。 また、『この手段は法廷にも認可されているが、将来的な売却が難しくなること考えるとここでそれを公にはしない。現在のところ、残るBTCとBCHの売却に関しての目途は立っていない』と話しました。 彼は、約1900億円相当の仮想通貨資産のほかに、前回までの売却で得た日本円約440億円を監督しています。債権者が具体的にいつ返済の和解を受けることになるのか、という点に関しても近い将来決定されるだろうとのことです。 shota FUDって怖いですね。正しい情報を知っていても個人じゃ民衆の総意にには勝てませんから
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2018/03/15中国中央銀行 OKCoinの協力で電子通貨発行を画策しているとの噂
この記事の3つのポイント! 中国の中央銀行がDCEPと呼ばれる電子通貨発行に向けて動いている DCEPがブロックチェーンを利用する場合値動きの無いペッグ通貨として扱われる 中国大手取引所OKCoinがこの電子通貨発行に協力するとの噂 本記事引用元:OKCoin May Assist China's Central Bank To Develop a Government-Backed Virtual Currency 中国政府が独自の電子通貨発行を画策 中国中央銀行(PBoC)の行長である周小川氏の発表によると、中央銀行はDigital Currency Electronic Payment(DCEP)と呼ばれる通貨の発行に向けて動いているようです。 公式によると、この電子通貨DECPの発行の主な目的は、人々が迅速、安全、便利に送金することを可能にするためとのことです。 小川氏によれば、当局ではこのDECPをブロックチェーン上に発行するか、もしくは従来のテクノロジーを利用するかという点で意見がまとまっていないようですが、国として新たな電子通貨の決済システムを導入することに関しては概ね定まっているそうです。 この電子通貨の決済システムの提案は財政の安定やリスク防止、消費者保護などの問題を解決するためのものです。したがってDECPは値動きのないペッグ通貨のようなものとして扱われます。 [caption id="" align="aligncenter" width="670"] 周小川氏[/caption] PBoCの総裁は 『3年前と比較すると電子通貨に関しての会談をより多く目にするようになり、その後中央銀行の電子通貨に関しての研究機関が創設された。直近では多様なプログラムを進めるために、様々な場所で行われるR&D(研究開発)が組織され、電子通貨の発展のために尽力している』 と話しました。 更に、PBoCの通貨発行の目的に関して同氏は 『電子通貨の導入には、従来のお金が悩まされていた技術的な問題の解決という明確なビジョンがある。小売店の既存の決済システムと比べた純粋な利便性、迅速さ、コスト削減、またセキュリティやプライバシーの保護などがそのビジョンのうちにあげられる』 と続けました。 PBoCは今のところ、どの技術を使ってDECPを発行するかなどは公にしていないのですが、ブロックチェーンは電子通貨を発行するうえで最も安全な技術であり、現在の状況のままであれば第一の選択肢となることが予想されます。 中国大手取引所OKCoinと協力の噂 OKCoinの創設者であるStar Xu氏中国政府との間で交わされたチャットのリークによれば、中国政府との協力も十分に視野に入れていることが伺えます。 更に、OKCoinはいつでも国に貢献する体制は整っているとしており、このリークした会話が中国のソーシャルメディアでは大きな反響を呼んでいます。 しかし、政府の権威主義的な面を考えると、ブロックチェーンの特徴の一つである分散型という点において、PBoCは完全に非中央集権型の電子通貨を発行する事は考えにくいでしょう。 shota 政府が取引所と協力する動きは予想してましたが、BinanceではなくOKCoinでしたね。チャイナマネーの流出を恐れているのだと思いますが、中国は独自のブロックチェーン経済圏が他の国とは違うベクトルで発展してくのではないでしょうか?
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2018/03/12Plasma Cashのモデルが取引所にハッキング耐性を付与する可能性をもたらす
この記事の3つのポイント! イーサリアムの共同創設者がPlasma Cash(プラズマキャッシュ)の構想を発表 スケーラビリティ問題を解決する現存のPlasma(プラズマ)の問題点を解消 実装されれば該当のプラズマチェーンを参照し証明することでハッキングされた資産を取り戻せる 本記事引用元:Buterin Presents Blockchain Scaling Solution That Could Make Exchanges ‘Hack Resistant’ Buterin氏によるPlasma Cash構想の発表 3月9日、パリで行われたイーサリアムコミュニティ会議で、創設者の一人であるVitalik Buterin氏は現状のスケーラビリティ問題を解消するPlasma呼ばれるソリューションより、更に性能を向上させたPlasma Cashの構想を発表しました。Plasma CashはButerin氏とDan Robinson氏、Karl Floersch氏の3名によって開発されました。 Plasma自体はオンチェーンのスケーラビリティ問題へのソリューションとしてButerin氏とライトニングネットワークの生みの親であるJoseph Poon氏によって2017年8月に誕生しました。Plasmaは親チェーンに与えられた情報を最適化することで機能し、これによってスマートコントラクトやDAppsの手数料を削減することに成功しています。 しかしButerin氏によれば、Plasmaのスケーラビリティの問題はユーザーがプラズマブロックと呼ばれるブロックをそれぞれダウンロードする必要性にあり、これが将来的に指数関数的に難しくなっていくこと、だと話しています。 一方で新たに発表されたPlasma Cashはというと、取引所やあらゆる第三者(機関)サービスに預け入れたEtherの量に応じて、同等の量のPlasma Coinが生成される仕組みになっています。更にこれには合算・分割ができないユニークIDと呼ばれるものが付与されます。 Plasmaが機能するためには全体のブロックが必要であった点と比べ、Plasma Cashはユーザーが参照したいブロックを引っ張り出すのみで機能することを可能にしました。従来ではユーザーが不正の証明にすべてのプラズマブロックを参照する必要があったものの、この新たなPlasma Cashでは参照したい部分のプラズマチェーンの正当性を参照するのみで機能するようになるということになります。 Plasma Cashの実用的な使い道についてButerin氏は、この技術を利用することで、仮想通貨の取引所により良いハッキングに対する耐性を生み出すことができる可能性があると語っています。 上述のユニークIDが付与される仕組みによって、プラズマチェーン上にあるPlasma Cashが必ず所有者の元にIDと共に残されるため、本来の所有者への通知がない状態で送金が発生することがなくなります。親チェーン上で不正なトランザクションが行われた場合、ユーザーは該当のプラズマチェーンを参照しこの不正を証明することで、ユーザーが資産を失う可能性は、プラズマチェーンによってゼロになります。 shota 中央管理者がいなくてかつ匿名である仮想通貨のシステム上の最大の難点だと僕が捉えているセキュリティですが、別チェーン上で二重にトランザクションを管理するPlasma Cashの構想は画期的ですね!
特集・コラム
2018/03/07仮想通貨を体系的に説明するCryptoEconomicsとは?
こんにちは。Shota(@shot4crypto)です。 本記事はCryptoEconomicsというコンセプトについて説明していきます。 CryptoEconomicsとはブロックチェーン技術を利用した仮想通貨の設計に関してを理論的に説明する学問分野です。 個人的にブロックチェーンの面白さを集約した部分だと考えているので、是非本記事でこの理解を深めていただきたいです! この記事のポイント! 仮想通貨は暗号学と経済学を融合した分野である暗号経済学を軸に成立している ビットコインはP2Pシステムにおいて初めて貢献者にインセンティブを付与することに成功した ブロックチェーンの暗号学的な仕組みのおかげで通貨としての優れた機能や価値が保たれている 希少性やPoWなどのシステム緻密なシステム設計がネットワーク維持の肝になっている CryptoEconomicsとは? CryptoEconomicsとは名前の通りCrypto(暗号)とEconomics(経済学)を融合させた分野です。正確には、Cryptography(暗号学)とEconomics(経済学)の2つの要素で構成されているとするものです。(対訳が見つからなかったので本記事では以降暗号経済学とさせていただきます。) 仮想通貨の暗号学的な側面に関しては暗号学的な、また経済的な側面に関しては経済学的な理論で説明をすることができます。 暗号学などの比較的複雑な理論体系を説明する前に、仮想通貨の根幹をなすブロックチェーンが何故革新的であるのかという点について説明していきます。 この説明の後に仮想通貨(ブロックチェーン)の暗号学的側面、経済学的側面の解説を行います。 ブロックチェーンの革新性 分散型台帳を利用したブロックチェーンの仕組みはP2Pネットワークの応用としてとらえることができます。というのもブロックチェーン自体が中央集権的なサーバーを持たず、個人個人が繋がることによって成立しているものであるからです。 P2Pといえば一時期世間を騒がせたWinnyなどのP2Pファイル共有が有名ですが、これらのP2Pとブロックチェーンの違い、Winnyなどのファイル共有システムが不完全なものとして終わった理由は何でしょうか。 P2Pファイル共有の失敗 P2Pファイル共有において不完全であった部分は単刀直入に言えばEconomicsの側面です。分散型のシステムである以上、ファイルをユーザーからダウンロードする際にファイルを所有するユーザーは常にネットワークに接続し続けていなければならないという前提があります。P2Pファイル共有においてこれらのネットワークに接続し続けているユーザーはシードと呼ばれますが、シードがネットワーク上にいて初めて成立するのがこのシステムです。 この際、シードには接続し続けておく状態の維持、すなわちP2Pファイル共有の環境維持に貢献するインセンティブは皆無です。その為、十分なシードがいて初めてエコシステムとして成立するtorrentは失敗に終わったと言われます。 shota ユーザーがファイルをアップロードし続ける(シード)ことで成立するシステムでしたが、ユーザー側にこれを行うメリットがありませんでした。 ビットコインの出現 2008年Satoshi Nakamotoと呼ばれる人物(機関?)によってビットコインが誕生しました。 ビットコインはP2Pの分散型台帳を利用したブロックチェーンを利用して作られた初めてのコインでしたが、経済学的にP2Pが注目されるに至ったことには理由があります。 先ほども述べた通りP2Pのエコシステムの前提はネットワークに接続し続けるユーザーが存在することですが、ビットコインはP2Pにおいて初めて、ネットワークに接続し続けることに対してユーザーにインセンティブを付与することに成功しました。 これが経済学的にビットコインを価値のあるもの足らしめる重要な要素になっています。 このインセンティブ設計に関しては記事後半で具体的に説明します。 また、ハッシュを持つ連続性のあるブロックを生成し続ける仕組みや、ブロック内の情報を改変することが非常に難しい点、有効なトランザクションのみを処理する仕組みなどは暗号学・暗号理論的な部分と密接に関連しています。 これらの様々な要素が重なり、行動暗号経済学の学問分野の範疇で成り立つ初めてのモデルとしてビットコインの革新性が注目され始めるようになりました。 仮想通貨の暗号学的側面 先ほど軽く説明した仮想通貨(ブロックチェーン)の暗号学的な側面ですが、 ハッシュ 署名 Proof of work ゼロ知識証明 の主に4つの特徴が挙げられます。 ハッシュ ハッシュとは簡単に言えばインプットされたデータを特定のアルゴリズムを用いた固定長の文字列に変換しアウトプットするというものです。BTCではSHA256というものが使用されています。このハッシュには主に2つの暗号学的特徴があります。 不可逆的 インプットするデータをA、アウトプットするデータをBとしたとき、AからBを生成することは可能ですが、BからAを復元することはできません。 衝突耐性 インプットデータA1とA2があった場合そのデータにほぼ違いがない場合(例:トランザクションにおいてXがYに2回同額送金)でも必ずこのアウトプットB1はB2と異なる文字列になります。 署名 現実社会においての署名は、例えば取引において自分がこの取引を受け持った、などの有効性を与え更に紙に押す印鑑などは複製ができないという点で大きな意味を持ちます。 ビットコインの署名においてもその意味は同一で、あるトランザクションにがどの二者間で行われたのかをデジタルで証明することができます。 まずは上のイメージで電子署名の全体像をご覧ください。 右の男の子二人は、このトランザクションの発行元が誰であるか(誰の署名が記載されているか)を知りたい状況であると仮定します。 トランザクション(TXs)発行者であるタケシ君は自身の秘密鍵(プライベートキー)AAAとその秘密鍵から生み出される公開鍵(パブリックキー)AAAを持っています。 TXsを発行する際、タケシ君は自身の秘密鍵AAAで暗号化の処理を施し、自身の秘密鍵で生成した公開鍵AAAでしか解読できない状態にします。 次に、マモル君とユウタ君が登場します。 彼らは、それぞれ公開鍵AAAと公開鍵BBBを持ちます。 このTXsには暗号化の処理が施されているため、解読(復号化)の処理を施さなければなりませんが、ユウタ君の持つ公開鍵BBBでは解読を行うことができません。 一方で、公開鍵AAAを使って解読に成功したマモル君は、このTXsがタケシ君によって発行されたこと(公開鍵AAAが秘密鍵AAAの保有者によって発行された)ことを証明することができます。 この一連のプロセスがビットコインで採用される署名方式になります。 Proof of Work Proof of Workとは、集権的なネットワークでの合意形成が不正・エラーなどによってうまくいかないという問題を解決した、ビットコインの合意形成アルゴリズムのことです。 ユーザーはネットワーク上で、ナンスと呼ばれる16進数の数値を、ビットコインのハッシュの値(アウトプット)に当てはまるまでコンピュータの計算能力を使って算出しようとします。この計算はマイニングと呼ばれ、先ほど述べたP2Pにおけるインセンティブの付与の部分にも関係してくるのですが(後述)、この計算によって承認されたもの(=ネットワーク内で合意があるもの)のみがブロックチェーン上に繋がれていきます。 この計算は難易度が非常に難しく設定されており、アウトプットには膨大な計算能力と時間を費やします。これによって一部の人物がブロックの内容を自在に操ることなどが非常に難しくなります。その一方で計算の答え合わせは、ハッシュが既定のアルゴリズムを持つため非常に単純なものになります。その結果、指定されたアルゴリズムで暗号化されたもの以外の計算結果を弾く結果となり、それによって正確な合意を形成することができるようになります。 このネットワーク内の合意形成のアルゴリズムがProof of Workと呼ばれます。 shota 簡単に言えば、ユーザーのマイニングによって時間と莫大な労力をかけて暗号化されたデータは、不特定多数のユーザーの過半数以上の合意によって承認され、ブロックチェーン上に繋がれていきます。不特定多数+過半数のシステムによって参加者が多いビットコインなどは不正が非常に難しくなりますね。 ゼロ知識証明 ゼロ知識証明とは、命題が真であることを、真であることを伝える以外の方法で、真であることを証明することです。少しややこしい日本語だと思うので例を使って説明します。 Aさんはジャンケンの必勝法を知っているとします。Bさんは必勝法があるのかどうかをAさんに証明してもらいたいですが、Aさんは必勝法を教えずに必勝法があるということを証明(ゼロ知識証明)しなければなりません。 ここで、AさんとBさんは100回ジャンケンすることにしました。もし、Aさんがこのジャンケンで見事100連勝することができたならば、必勝法の詳細(知識)をBさんに教えなくとも証明することができます。というのも、ジャンケンの必勝法を知らなければ、その勝利の確率は、試行回数を重ねれば重ねるだけ一定の値に収束していきます。更に、BさんはAさんの必勝法が真であるか偽であるかという情報以外証明することができません。 仮想通貨において、このゼロ知識証明は様々な用途で使われています。先ほどの例において、マモル君やユウタ君が知り得るのは、タケシ君が発行したトランザクションであるか否かという結果のみです。 このゼロ知識証明によって『TXsの過程で何が起こっているのか』というテクニカルな部分を意図的に省略し、『このTXsはどういった情報を持つか』という必要な情報のみを知ることができます。 仮想通貨の経済学的側面 仮想通貨が価値を持つ理由などを説明するのが、暗号経済学における経済学的な側面(だと感じています)です。経済学的な仮想通貨の説明は主に2つのセオリーがあるのでそちらを紹介させていただきます。 需要と供給 ゲーム理論 どちらも経済学を専攻された、もしくは理論を軽くでも理解をしている方にとっては、聞き馴染みのある言葉だとは思いますが、特に2つ目のゲーム理論に関しては仮想通貨独自のものとなっているので、是非一度目を通してみてください! 長くなってしまいましたがこの2つで最後です! 需要と供給 仮想通貨になぜお金としての価値がつくのか、という疑問に対しての答えは、金やお金と一緒で人々がその仮想通貨に対して信用を置いているからという点に尽きます。人々が、あるモノに対して共通の信用を置くことでそれに価値が付きやがてお金と同等として扱われるようになります。 この信用を裏付けにした需要、また供給量(=希少性)の関係性を表したグラフは仮想通貨の経済学においても同様に機能します。 (画像はたんめんさんの記事から引用させていただきました) ビットコインは供給量が2100万枚と決まっていますが、ここで重要になってくるのが難易度調整とブロック生成時間の概念になります。これらが定められていない場合だと、マイナーが好きなだけビットコインを掘っては市場に投げ売る、供給過多の状態になり上の画像に照らし合わせても分かる通り、価値を保つことができなくなってしまいます。 難易度調整 この難易度調整のアルゴリズムは、ハッシュのアウトプット難易度に関連することなのですが、ユーザーから計算されたハッシュが承認されるのは、ある一定の数字以下の文字列が生成されたときのみです。この数字が難易度と呼ばれていてビットコインにおいてはこれが0から始まります。 ブロック生成時間 1ブロックの生成時間が10分、それに対するインセンティブが25BTCと定められています。これによって、無造作にブロックチェーンに新たなブロックを繋げられるだけ繋ぐといったようなことができなくなります。 難しい話になってしまいましたが、簡単に言えば採掘(計算)の難易度を定めることによって、採掘の結果(供給)をシステム的に調整できるということです。 この2点が大まかなビットコインの採掘のルールになります。このルールがあるおかげで、ビットコインの供給の市場において、参加者が常に整合性を保っている状態を維持することに成功していると言えます。 この2点が仮想通貨のシステム的な供給への影響となりますが、需要の部分に関しては、開発者チームの良し悪し、通貨の社会貢献などへのポテンシャル、歴史など様々な要素が影響していると考えられます。 仮想通貨におけるゲーム理論 経済学におけるゲーム理論は上の画像のような囚人のジレンマなどで有名ですが、仮想通貨におけるゲーム理論とはどんなものになるのでしょうか? ブロックチェーンを改竄しようとするとき、Proof of Workの理論に基づけば、ネットワーク上のユーザーの合意形成が必要になることは自明ですね。 このブロックチェーンを見てください。1→2→3と繋がっていくのが通常ですが、悪意を持ったユーザーが1→2Aとブロックを分岐させて自分の利益のためにフォークさせたとします。 このときおそらく多くのユーザーは自身の計算を無駄にしたくないので1→2→3のブロックに合意します。ここでの悪意を持ったユーザーの利益は0になります。ここでの0というのは莫大な計算能力を使ってアウトプットまでした後の0です。つまり電気代などを考えた場合のマイナスです。 通常のネットワーク上のユーザーが取れる選択肢は 1ドル分の電気代分をブロックの報酬を貰う(+1ドル) 1ドル分の電気代分で承認される可能性が非常に低いブロックの承認(-1ドル) の二択です。 画像だとこのようになります。 Proof of Workの合意形成アルゴリズムにおいて不正をすることがいかに不毛であるか、お分かりいただけたでしょうか?51%攻撃などの言葉からも直接推測できる通り、51%以上の合意を勝ち取れない限り不正に改竄などをすることは非常に難しい仕組みになっていますね。 囚人のジレンマなどがよく例にされることの多いゲーム理論ですが、どちらの行動をとるべきかは自明の理です。 このゲーム理論で証明された通り、マイナーが常に最大限の利益を出すことを目的としている前提であれば、マイナーは信頼できる可能性が高いということになります。 まとめ 長い文章になってしまいましたが、仮想通貨が暗号通貨たる所以を理解していただけたでしょうか? 今回は暗号経済学の簡単な説明でしたので、それぞれの内容についての詳しい説明は割愛させていただきました。ですがその代わりに、仮想通貨(暗号通貨)のどのようなシステムが暗号的であるのか、価値がどのように生み出され、マイニングのインセンティブがどのようにして生まれるのか、などの点に注目した内容になっています。 shota 最後まで読んでいただいてありがとうございました!! 参考記事:What is Cryptoeconomics? The Ultimate Beginners Guide
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2018/03/04韓国の大手5銀行がRippleのテスト送金を完了
この記事の3つのポイント! 韓国Woori Bank(ウリィ銀行)がRippleの送金テストを完了 日本からも37の銀行がこのテストに参加 実装には既存のSwiftネットワークを上回る規模のネットワーク整備が必要 本記事引用元:Woori Bank Successfully Tested Ripple Remittance 地元のビジネスメディアであるChosunによれば、韓国Woori BankがRippleのソリューションを利用した国際送金テストに成功していたことがわかりました。このテストを監督していた韓国のデジタル戦略部門は、ブロックチェーンの技術を実践的に利用することに対して前向きな考えを示しています。Rippleを利用した国際送金は早ければ今年中に商業化される見込みです。 送金のテストを完了させた今、海外の取引所やIT部門でこの新しいシステムを利用を実践に移すことが実用化へ向けての次のステップとなります。Woori Bankの要人は『国際送金における大きな問題はその手数料の高さにある。今後顧客にとってより有益なシステムがあれば、言わずもがなそちらの送金手段を選ぶだろう』と話しています。 しかし、Rippleのソリューションを利用した国際送金の導入が、現状のSwiftのネットワークに完全にとってかわる可能性は低いです。これは、RippleのネットワークがSwiftの世界中に張り巡らされたものに比べて限定的である事が要因となっており、Rippleのソリューションを利用したネットワークの更なる拡大が必要とされていることを示唆します。 日本においても、日本の銀行公式からもRippleを使った国際送金の高速化に対しては『既に行われたテストの結果も良いものであった上に、いくつかの銀行、メガバンクなどがこれを実装する方向で動いている』と肯定的な意見が出されています。 SBIグループとWoori Bankグループによれば、今回のRippleのソリューションを利用したテストは60の銀行が参加、うち37の銀行は日本の銀行であったことからも、日本国内ではRippleのネットワークは広く張り巡らされているようです。日本国外からはWoori Bankを含め、Shinhan Bank、タイからはSiam Commercial Bankなどが参加しています。 Swiftを使った国際送金では仲介する銀行が存在しているため、平均して送金には3日程度を要しますが、Rippleのソリューションを使った送金が実現すれば、これらすべてのトランザクションがリアルタイムで行われることになるでしょう。