PoLの利用で学習を頑張った人が頑張った分だけ報われる世界を創る – 株式会社techtec 田上 智
アラタ | Shingo Arai
現在、世界中でブロックチェーンへの注目が再度集まっています。この流れは、過去に盛り上がった投機的なブームとは違い、ブロックチェーンをどのように社会に実装していくか?ということが焦点となり、世界でのムーブメントが起きているように感じています。
日本でも仮想通貨だけでなく、ブロックチェーンを実装しようという企業が多く増えているように感じますが、実際問題、どのように学習すればよいかという課題を抱えている企業や個人も少なくないのが現状です。
今回、インタビューを行った株式会社techtecでは、ブロックチェーンに対してのオンライン学習サービス『PoL』を提供しています。
エンジニア向けの学習サービスが増える中、PoLでは初学者やビジネスマンを対象にしています。その狙いと新しく実装されたPoLトークンに関して話を聞きました。
PoLについて
PoL(ポル)は、無料で利用可能なブロックチェーンに特化したオンライン学習サービスです。
無料で始められる豊富なカリキュラムと、「英語コース」を現在は提供しており、今後、「ビジネスコース」「ライターコース」「エンジニアコース」も公開予定とされています。
現在、学習すればたまるPoLトークンの提供も開始しており、PoLを利用したトークンエコノミーも拡大させていく予定としています。
株式会社techtec 代表 田上 智裕氏へインタビュー
ブロックチェーンに興味を持ったキッカケ
— 田上さんの自己紹介とバックグラウンドについてお聞かせいただけますか。
田上 : techtecという会社で代表をしている田上と申します。今はPoLというブロックチェーンの学習サービスをメインに行っており、そのほかにもリサーチ系の業務などもしています。
バックグラウンドとしては、3年前にリクルートという会社でブロックチェーンのR&Dをしていました。リクルートには新卒で入り、1年半ほどブロックチェーンの仕事をしました。
その後、元々起業することを考えていたので、昨年の1月に起業をしたという流れになります。
— ブロックチェーンのどのあたりに興味を持たれたのでしょうか。
田上 : 私は、ブロックチェーンのことを知ったのはビットコインからでした。一番最初にビットコインを購入したのが2013年末にあったKrakenでビットコインを購入しました。
最初にビットコインを購入したのがMt.GOXの時なので2013年ですね。元々チームラボという会社でアプリを作っていて、テクノロジーにはすごく興味がありました。
なので、ビットコインとテクノロジーというところで、仮想通貨の仕組みってどうなってるんだろうと思い、ブロックチェーンに興味を持つようになりました。
私はもともと経済学部だったので、最初はテクノロジーとは違う分野、お金の仕組みというところに興味がありました。その中で、仮想通貨やビットコインが出てきて、信頼不要な形で通貨があるというようなことを耳にし、これはもしかしたらすごいことなのではないかと思うようになりました。
そこから調べれば調べるほど、それこそVitalikがEthereumを作ったように、通貨じゃない分野でもブロックチェーンが使えるというようなことも思うようになりました。
— 最初はビットコインへの興味だったけれども、純粋に興味がどんどんブロックチェーンに移っていったんですね。リクルートでブロックチェーンのR&Dをとのことですが、そちらもお聞かせいただけますか
田上 : 私は、チームラボでアプリ開発をしていたのでテクノロジー周りに関しては詳しかったのですが、ビジネスが分かりませんでした。そこで、ビジネスのことなら起業家の登竜門であるリクルートに入って修行をしようと思い、2年ほど入りました。
内定者のときに、FacebookでブロックチェーンについてPostしていたのをリクルートの役員が見て、声を掛けられました。そこから、ブロックチェーンのR&D担当にアサインされてという流れです。
今でこそ、リクルートはBeamやCOTIなどに出資していますが、当時はスタートアップへの投資や、不動産事業(SUUMO)にブロックチェーンを活用したり、組み込めないか?というようなことを考えていました。
— そして、リクルートを経て株式会社techtecを創業に至るということですね。
田上 : 起業したのが2018年の1月31日でした。ただ、皆様も記憶に新しいかと思いますが、その5日前にコインチェックの事件が起こったので、本当に大変な時期に作ってしまったという感じです。(笑)
ブロックチェーン業界には、信頼できるメディアもありますが、間違っている情報を発信してしまうようなメディアも多くありました。だからこそ、そこにちゃんとした人間をアサイン出来るようにしないといけないと思い、仮想通貨メディア向けのライターサービスからスタートしました。
当時、ライターもかなり集まって、メディアも数十社集まりました。ですが、なかなか契約が成立しなかった。
というのも、当時集まったライターの質が良くなかったんです。純粋に、ライターになりたい!というような人を集めていたので、テストライティングをしてもらったのですが、クオリティの面で心配がかなりあり、このままでは紹介できないなという状態でした。
そこで、課題はライティングではなく、ブロックチェーンの理解をつけてもらわなければいけないと思い、学習サービスを作り始めました。現在では、PoLのライターコースというのを出そうとしているところなのですが、当初やりたかったことが一年越しに出来るようになろうとしています。
PoLトークンの使いみち
— 今、話にも出てきましたが、techtecが出しているプロダクトPoLに関してのご紹介をお願いします。
田上 : PoLは、無料で始められる仮想通貨・ブロックチェーンの学習サービスです。エンジニアではなく、ビジネスマン向けに作っています。
ブロックチェーンというと、前提知識が無いと始められないので、PoLは体系的に学べるようなサービスになっています。そのため、何から始めればいいの?といった疑問を持つ方に是非始めてもらいたいと思っています。
学習した後、業界に還元してほしいと思っているので、アウトプットをどんどん行って欲しいと考えています。
そういった観点から、グローバルに活動してもらうためには英語が使えたほうが良いので、英語コースを設けたり、ライターとしてメディアと一緒に活動していく人を増やしたいのでライターコースも設けています。
近々ビジネスコースもオープンする予定なのですが、いろいろな企業にブロックチェーン活用事例を増やしてもらうのが狙いです。
日本人って過去から学ぶのは得意ですが、ゼロから作り出していくのは難しいところがあります。そもそも、ブロックチェーン業界は事例をどんどん増やしていかないと産業が伸びていかないと思っているので、このコースを設けました。
— 英語コース以外は無料となっていますね!ユーザーとしてはありがたい半面、マネタイズなどはどこでやっていくのでしょうか。
田上 : 正直、マネタイズは今から考えるところです。去年、資金調達を行っているので、資金はそこから回しています。業界が発展していけば自分たちに跳ね返ってくると思っているのでそこを目指しつつも、アドバンスドコースのほうで今後はマネタイズをしていく予定となっています。今無料で公開しているものについては今後も無料で提供していく予定です。
ただ、オンライン学習サービスの課題として、ユーザーの継続率が低いという部分があります。海外のオンライン学習サービスのデータを見てみると、ユーザーの継続率5%などと書かれたりしています。
継続率5%ってWEBサービスとしては致命的で、そこの部分をPoLにトークン組み込むことで解決できないかと思っています。
— 今、話題にも出てきたPoLトークンですが、このトークンの使いみちを教えてください。
田上 : PoLトークンは一定経済圏として、コミュニティを作って、リテンションやリファラルを狙っていきたいなと思っています。学習すればするほどトークンが溜まっていく仕組みにしていきます。
これによってトークン保有量が多いほど学習量が多いという風に定義づけられると思うので、トークン保有量に応じて仕事を依頼したり、将来的には転職に使える一つの指標として使えるようになるのではないかと考えています。
オンライン学習サービスなので、例えばサービス内に誤字脱字があったりしたとします。その場合、ユーザーからフィードバックを貰ったらインセンティブとしてトークンを付与したりもしていく予定でいます。
— 溜まったトークンは主にどこで利用することができるのでしょうか。
田上 : 今後の規制との兼ね合いにもなります。5月31日に改正資金決済法と改正金融商品取引法が参院本会議で可決されました。これの影響は結構大きくて、スタートアップ関連はかなりシビアになってきています。
改正資金決済法を考慮しなければいけませんし、ポイント周りの規制、前払式支払手段、あとは景品表示法などの規制も見ておかなければなりません。
自社で発行しているポイントを他社のサービスで使えるようにすると、景品表示法に引っ掛かります。
そのため、最初はPoL内のみで使えるようにし、無料サービスで得たトークンを有料サービスで使えるようにしていく事を考えています。
ポイントにすると前払い式や景品表示法の対象になりますし、仮想通貨だと資金決済法の対象になるので、データベース上にあるユーザーのただの数字のようなものととらえ、両方の対象にならないようなスキームでやっていこうと考えています。
トークンと表現しているからややこしくなっていますが、現状は割引に近い感じでの利用がメインです。学習して溜まっていった分を割り引いていくというイメージです。学習するほどトークンが付与されるようにしていきますが、付与量は常時変動するような設計となっています。
PoLが目指していく世界
— PoLは将来的にブロックチェーン上での実装なども考えていますか?
田上 : 選択肢の一つとしては当然考えています。ユーザーの学習履歴を全てブロックチェーンに記録していくという案です。 BlockcertsやuPortといったようなサービスが既にありますが、これは学位をブロックチェーンに入れるだけです。
そうではなく、学習履歴をブロックチェーンに記録していきたいと考えています。
学歴は実際、重要な証です。例えば、東大の人は、やはり優秀です。そこの学歴に対して、改ざんされると被害が出てくるので、ブロックチェーンに乗せることは重要ではないかと考えています。
企業の人事は、実際に採用した人が経歴に書いた大学を卒業しているかを電話で確認します。それが、ブロックチェーンに情報を乗せることで無駄なコストの削減につながるのではないかと思います。
これらは一種の信用スコアではないかと考えていて、学習を頑張った人が頑張った分だけ報われるように、トークン付与のインセンティブで解決していくつもりです。
— 最近ではブロックチェーンにおけるオンライン学習サービスも色々ありますが、他社との具体的な違いとかはどこでしょうか。
田上 : PoLと他のオンライン学習サービスにおける決定的な違いとしては、他社はエンジニア向けのサービスが多く、初学者向けやビジネス向けにやっているのはPoLぐらいかなと思っています。
ブロックチェーン業界外の人に入ってきてもらうには、やっぱり初学者向けやビジネス向けの部分の学習サービスが必要だと思います。
エンジニアは正直なところ、ソースコード読んだりすれば、学習サービスがなくても学べます。オープンソースでGitHubにもソースコードが上がっていますのでこの傾向は特に強いと思います。
他社は、純粋にブロックチェーンの学習サービスをやっていこうというところが多いですが、我々はブロックチェーン産業と教育業界を発展させたいと考えています。
ブロックチェーンは面白いし、確かにすごい技術ではありますが、あくまでも手段であって、目的になりすぎるのは事業としてはよくないと思います。
— 現在だと海外でもBinance Academyなどの海外の学習サービスも出てきていますが、そういうプロダクトなども意識されていますか?
田上 : Binanceは意識しています。他にもCoinbase Earnなどのようなサービスもありますが、あれはあくまでも取引所が新規ユーザーの獲得のために行っていて、取引所のアカウントが無いと作れません。
なので、当分日本に入ってこないと思っています。BinanceやCoinbaseと競争していくとなると相当厳しいですね。Binance Academyの情報の網羅性が非常に高いので、仮に日本に入ってきたら厳しいかなというところです。
ただ、PoLは日本人が作っているというところが大きいかなと思っています。ただ、入ってくる前にコミュニティを作っておこうとは考えています。
国内であれば競合というよりはみんなで協力してやっていこうという感じですが、海外はBinance Academyは意識していますね。
— 今後のPoLが見据えていることや最後に一言お願いいたします。
田上 : 将来的には総合オンライン学習サービスにしていきたいと考えています。数学とか国語とかそういうような分野です。そこにトークンエコノミーの概念を組み込んでいきたいと考えています。
その前段階としてブロックチェーンに力を入れていて、今後はあらゆる分野に展開していきたいと思っています。
仮想通貨は怪しい、ブロックチェーンは怪しいといったイメージを我々のプロダクトで変えていきたいと思っています。テクノロジーは面白いですし、そこにどんどん新しい人達が入ってきてもらいたいです。
それこそPoLで無料のカリキュラムを用意していますので気軽に入ってもらいたいと思っています。仮想通貨は知ってて損はないと思うので、今後の同僚と差をつけるためにもつながりますし、是非ともやってほしいと思います。
後は皆で協力して発展させていきましょう!というフェーズで、教育コンテンツを欲しがっている企業さんも散見されるので、是非とも気軽に相談して欲しいと思っています。
Interview :新井進悟