税制改正で仮想通貨に資金集中?20%分離課税とETFの波

2026/08/31・

よきょい

税制改正で仮想通貨に資金集中?20%分離課税とETFの波
ct analysis

2026年7月15日、金融商品取引法と資金決済法の改正法が成立しました。仮想通貨は資金決済法上の決済手段という位置づけから、金融商品取引法上の金融商品へ移ります。株式のような有価証券になるわけではなく、情報開示、市場の監視、不公正取引の防止といった証券市場と同等のルールを適用する制度改革です。施行は2027年度中が見通しとされています。

また片山さつき財務・金融担当相は7月10日の講演で、海外で取引が拡大する仮想通貨ETFについて、日本でも解禁する方向で検討を進めたいと述べました。

税制も同じ方向で動いています。令和8年度税制改正では、「特定暗号資産」の現物取引、投資信託、デリバティブ取引から生じる所得に対し、20%(所得税15%、住民税5%)の申告分離課税を導入する方針が示されました。3年間の損失繰越控除も併せて設けられます。ただし適用開始は金融商品取引法等の改正法の施行の翌年1月1日からで、現時点では2028年1月1日以後の譲渡が対象と整理されています。



制度が効き始めるまで、まだ2年ある

一方で、制度が実際に効き始めるまでには時間があります。現時点で国内に仮想通貨ETFの上場実績はありません。投資信託が組み入れられる「特定資産」に仮想通貨が含まれていないため、国内の運用会社が現物を保有するETFを組成することが法律上できないためです。

今回の改正はその前提を動かす第一歩ですが、この先には政令や内閣府令の整備、運用会社による商品設計と申請、取引所の上場審査という工程が控えています。

日本の制度は今どこにあるか

項目現在(2026年8月)制度整備後(予定)
法的な位置づけ資金決済法上の決済手段金融商品取引法上の金融商品。改正法は2026年7月15日に成立し、施行は2027年度中の見通し
国内の仮想通貨ETF上場実績なし解禁の方向で検討中。時期は未定
利益への課税原則、雑所得の総合課税で最大55%特定暗号資産に20%の申告分離課税。現時点では2028年1月1日以後の譲渡が対象
損失の繰越なし3年間の繰越控除。通算できる範囲は限定される見込み
NISAの対象対象外未定

この空白期間そのものが投資家の行動に影響します。2026年8月から2028年1月まで、制度は決まっているが効いていないという状態が続きます。この間に売却すれば課税は現行のままです。含み益を抱える人ほど税率の変更を待つ動機が働き、売却が先送りされやすくなります。

逆に、適用開始をまたいだ一斉の利益確定が生じる可能性もあります。制度変更のスケジュールは、それ自体が需給の材料になります。



先に整えた米国では何が起きたか

先に制度を整えた米国の実績は参考になります。現物ビットコインETFは2024年1月に上場し、7月9日時点で累計の純流入は約512億ドル、純資産は約765億ドルに達しました。これはビットコインの時価総額の約6%にあたります。ブラックロックのiシェアーズ・ビットコイン・トラスト(IBIT)が純資産463億ドルで突出しています。8月28日時点では上場来の流入が約546億ドル、運用資産は約970億ドル規模となりました。証券口座を通じた経路が定着したことは確かです。

ただし、その米国でビットコインの価格が一貫して上がったわけではありません。2025年10月に約12万6,000ドルの最高値を付けたあと大きく下落し、2026年8月30日時点では7万8,000ドル前後、最高値からおよそ4割低い水準にあります。ETFは買うための経路であると同時に、売るための経路でもあります。資金の出入りは双方向です。

制度が変えるもの、変えないもの

整理すると、制度整備が下げるのは参加コストです。税率、確定申告の手間、保管の負担、機関投資家であれば社内規程上の制約。これらは確実に小さくなります。

他方で、価格の変動幅、値動きを生む金利や規制の動向、保有期間中に耐えなければならない下落は制度では変わりません。20%への引き下げは利益が出たときの手残りを増やしますが、利益が出るかどうかを変えるものではありません。

制度が変えるもの/変えないもの

制度が変えるもの制度が変えないもの
税率(最大55%から20%へ)価格の変動幅
損失を3年間繰り越せること値動きの原因となる金利や規制の動向
証券口座から買える経路下落局面で持ち続ける難しさ
機関投資家の社内規程上の制約期待できるリターンの水準

NISAの対象になるかどうかも、現時点では決まっていません。仮に対象外であれば、分離課税後の扱いは上場株式などと同じ20%になるだけで税制上の特別な優位性が生まれるわけではありません。損益通算の範囲も限定される見込みで、上場株式等との通算はできないと整理されています。

制度が定まったときに問うべきは、魅力的になったかどうかではなく、その値動きに自分が何年耐えられるかという別の質問になりそうです。

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