ステーブルコイン大手が株式市場へ|「5倍の利回り」を検証

2026/08/29・

よきょい

ステーブルコイン大手が株式市場へ|「5倍の利回り」を検証
ct analysis

合成ドル「USDe」を運営するEthenaが8月28日、裏付け戦略を株式のパーペチュアル(無期限)先物へ拡張する計画を明らかにしました。仮想通貨のファンディングレート低下で従来のベーシス取引の収益力が落ちるなか、対象を約2兆5,000億ドルの仮想通貨市場から120兆ドルを超える株式市場へ広げる狙いです。

創業者のガイ・ヤング氏は、株式・商品連動のパーペチュアルが同プロトコルにとって最大級の成長市場になったと述べました。

数字の裏付けはあります。株式パーペチュアルの建玉は3月時点の10億ドル未満から8月11日には約62億ドルへと約10倍に拡大し、契約数はおよそ200本に達しました。ハイパーリキッドが2025年12月に約9,000万ドルで始め、バイナンスが2026年1月にテスラ連動契約を約1,100万ドルで追加したのが起点です。メモリやAI関連ハードウェアの銘柄が建玉の約半分を占めています。

「5倍」の比較対象を確認する

焦点のファンディングレートですが、比較の仕方で見え方が変わります。5月20日から8月11日の期間では、ハイパーリキッドの建玉加重平均が年率約14%、バイナンスが約17.5%でした。同じ期間のビットコインは約4.1%で、倍率にすると3.4〜4.3倍です。一方、ビットコインの年初来平均(8月11日まで)は2.2%まで低下しており、この数値と比べれば6.4〜8.0倍になります。「5倍以上」という表現は年初来平均を基準にした場合の話であり、同一期間での比較では倍率がやや縮む点は押さえておきたいところです。



より説得力があるのは相関の低さです。株式パーペチュアルのファンディングと仮想通貨のファンディングの日次相関は、ハイパーリキッドで+0.08、バイナンスで+0.14にとどまります。片方の市場で条件が悪化しても、もう片方が機能し続ける可能性があるという意味で、収益源の分散としては合理的です。ただし建玉は仮想通貨パーペチュアルの約940億ドルに対して62億ドルで、規模は6.6%にすぎません。

Ethenaが本格的に資金を入れればショート側が厚くなり、ファンディング自体が圧縮される可能性があります。株式市場が閉まっている時間帯も取引が続くため、価格形成と流動性の扱いも新しい論点です。

買い戻し発動ラインまでの距離

急ぐ理由は、ENAトークンの買い戻しがUSDeの供給量に紐づけられたことにあります。8月27日に示されたガバナンス提案では、USDeの供給量が75億ドルに達した時点で買い戻しが始まり、100億、150億、200億ドルで配分比率が引き上げられます。現在の供給量は約40億6,000万ドルで、最初のしきい値までに34億4,000万ドル、率にして約85%の積み増しが必要です。リスク委員会は単発の大量発行で発動しないよう14日移動平均での判定を推奨し、過去データに基づく買い戻し規模を年間約5,270万ドルと試算しています。

8月の回復ペースから機械的に逆算すると、距離の遠さが見えてきます。USDeは8月10日の約39億2,000万ドルから28日には約40億6,000万ドルへ増えましたが、1日あたりの増加は約780万ドルです。このペースが続いた場合、75億ドル到達までは440日前後、1年2か月ほどかかる計算になります。一方でENAの価格は30日で約2倍に上昇しており、供給量の回復より先に期待が織り込まれた形です。

裏付け資産の構成も、DeFiレンディングが約12億6,000万ドル(30.8%)、ステーブルコインが32%、実物資産が12.3%、機関向けレンディングが11.8%と、当初の中核だった仮想通貨ベーシスは1割強まで縮んでいます。株式パーペチュアルがこの穴を埋められるかどうかが、次の四半期の焦点になりそうです。

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