「ステーブルコインは国債を支える」は本当?日米共通の壁
よきょい

米国のステーブルコイン法(GENIUS法)は、認可発行体に対し発行残高1ドルにつき1ドル以上の準備資産を求めています。適格資産は米ドル現金と連邦準備制度への預け金、引き出し可能な銀行預金、残存期間93日以下の米国債、適格なレポおよびリバースレポ、それらに投資する政府系マネー・マーケット・ファンドなどです。新規発行の10年債や30年債は、この直接的な準備資産の枠に入りません。これはステーブルコインの需要が国債市場へ届く経路には、最初から満期の壁があることを意味しています。
サークルの実例がその形をよく示しています。7月31日時点の報告では、USDCの流通量718億2,600万ドルに対し準備資産は719億400万ドル。うちCircle Reserve Fundが607億1,700万ドルで、内訳は翌日物の米国債レポが527億2,300万ドル、米国債が71億7,900万ドルでした。ファンド外の111億8,700万ドルは、規制対象金融機関に置かれた現金106億700万ドルが中心です。直接保有していた米国債はすべて9月22日までに満期を迎える構成でした。
短期金利には効き、超長期には届かない
国際決済銀行(BIS)のワーキングペーパーは、2026年3月までのデータを用い、35億ドルのステーブルコイン流入が3か月物財務省短期証券の利回りを即時に0.71ベーシスポイント、10日以内に約4ベーシスポイント、推計上のボトムで約5ベーシスポイント押し下げたとしています。一方、より長い年限への波及は限定的か、ほとんど確認されませんでした。8月28日の米国債利回りは10年物4.73%、20年物5.21%、30年物5.22%。いずれもGENIUS法が定める93日という上限のはるか外側にあります。
日本でも構造は同じです。2025年10月に発行が始まった資金移動業型の円建てステーブルコイン「JPYC」は、発行額に見合う預貯金と国債を裏付け資産として保有すると説明されています。累計発行額は2026年4月15日時点で21億円を超えた水準にあり、発行体は3年で1兆円という目標を掲げています。
仮にその規模へ達したとしても、裏付けとして積まれるのは流動性の高い短期資産であり、日本国債の超長期ゾーンの需給に直接効く性質のものではありません。
「デジタルドルが国債を支える」の限界
米財務省の借入諮問委員会も同様の整理を示しています。ステーブルコインの発行は短期国債の需要を増やしうるものの、その一部は銀行預金やマネー・マーケット・ファンドといったもともと短期国債を支えていた資金からの移動である可能性があります。新規の海外ドル需要であれば純粋な上積みになりますが、その割合を示す公的な推計はありません。つまりトークン残高が増えても、短期国債を保有する主体が入れ替わっただけという場合があり得ます。
制度面はまだ動いている途中です。GENIUS法は2025年7月に成立しましたが、一般的な施行日は2027年1月18日か、最終規則の公表から120日後のいずれか早い方とされています。通貨監督庁(OCC)は2月に規則案を示し、8月19日には最終規則を11月までに公表する見通しを示しました。
ステーブルコインが政府債務の資金調達にどこまで関与するのかという議論は、規則の細部が固まるにつれて、より具体的な数字で語られるようになりそうです。
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