【最新版】IEOとは?ICOとの違い・各取引所のパフォーマンスを解説
Crypto Times 編集部
イニシャル・エクスチェンジ・オファリング(IEO)は、暗号資産取引所がプロジェクトを代行してトークンセールを行う新しい資金調達法です。
イニシャル・コイン・オファリング(ICO)は、ブロックチェーン系プロジェクトの資金調達法として莫大な人気を集めていましたが、近年米国を中心に規制が厳しくなり、最近ではほぼ見かけなくなってきました。
2018年からは、証券法を遵守したセキュリティ・トークン・オファリング(STO)も話題になり始めましたが、ユーティリティトークンの発行が大半を占める中、証券型トークンの発行というのはあまり人気ではないのが現状です。
そこで2019年に入り、「ICOの死」と入れ替わるように登場したのがIEOで、2019年2月に実施されたBinance LaunchpadのBitTorrent Token ($BTT) IEOを皮切りにその人気は急騰し、今では大手取引所の多くが同様のIEO事業を展開しています。
こちらのページではIEOの仕組みや特徴、ICOとの違いなどを詳しく解説し、各取引所でのIEO事業状況などをわかりやすく徹底解説していきます。
IEO(Initial Exchange Offering)とは?
IEO(イニシャル・エクスチェンジ・オファリング)とは、一言で表すならば「暗号資産取引所がプロジェクトを代行して行うICO」です。
一般的にIEOでは、プロジェクトが発行したトークンを取引所へ送付し、取引所はプロジェクトに代わって受け取ったトークンを投資家に販売します。
投資家は取引所を通してトークンを購入するため、必然的に取引所のアカウント(KYC・AMLも含む)が必要となります。
2017年12月に大手暗号資産取引所のBinanceが初めてIEOを行いましたが、当初はあまり注目されず、同社は以降事業を中止していました。
しかし、ブームの衰退や規制の厳格化などからICOが実施困難となった2019年に入り、BinanceはIEOプラットフォームを復活させ、TRONが買収したP2Pネットワーク「BitTorrent」のトークンセールを代行することになります。
BitTorrentの$BTTは18分で完売し、瞬く間に7億7000万円相当を調達します。対象トークンはセール後にプラットフォームの取引所に上場もするため、このシステムは莫大な人気と注目を集めることになりました。
ICOとの違い
ICO(イニシャル・コイン・オファリング)は、プロダクト開発段階にあるプロジェクトが、開発資金の投資と引き換えにプロダクトに付随するトークンを先行配布(=テストネットトークンを配布)するという資金調達法です。
Mastercoinと呼ばれるプロジェクトが2013年に初めてICOを行い、翌年にはイーサリアムが12時間で3700BTC(当時で約230万ドル相当)を調達し、ICOはブロックチェーン系プロジェクトの資金調達法として大きく注目されることとなりました。
2017年あたりからICOの数は目まぐるしい勢いで増え、調達資金を持ち逃げする「スキャム」も多く登場しました。優良プロジェクトの選別も当然難しくなっていきました。
そんな中、Binanceなどの大手集権型取引所が優良プロジェクトを選定し、自社プラットフォーム上でそのプロジェクトのICOを代行しよう、というアイデアから始まったのがIEOです。
それでは、投資家が自分でプロジェクト選定をしないこと以外に、大手取引所がICOを代行するIEOにはどのような特徴があるのでしょうか?
IEOの特徴
IEOは、ICOにはない特徴をいくつか備えています。ここでは、それぞれの特徴を詳しく説明していきます。
プロジェクトは取引所のユーザーベースにリーチできる
大企業が主導するプロジェクトを除き、ICOを行うプロジェクトはゼロから投資家を勧誘していかなければならないため、マーケティングに多くの労力を費やす必要がありました。
一方IEOでは、すでに多くのユーザーを抱える大手取引所がプロジェクトを告知するため、リーチできるユーザーの規模・削減できるマーケティングコスト共に大きなアドバンテージがあります。
また、取引所によってはIEO実施に手数料を課すケースもあるようですが、ICOにかかるマーケティングコストやリスクを取り除くと、その分の資金や労力を開発など他のことに回すことができるようになります。
取引所が優良プロジェクトの審査を行う
IEOでは、取引所がプロジェクトの技術力や正当性などを審査します。例えばBinance Launchpadでは、プロダクトの実用性やユーザーベースの大きさなどが審査項目として挙げられています。
ICOブーム時には技術力や正当性に疑問のあるプロジェクトが多く存在しましたが、IEOではこういった取引所の審査を突破して初めて資金調達ができるため、中身のないプロジェクトは淘汰されていきます。
取引所の審査ポリシーを鵜呑みにすべきではありませんが、上場通貨の精査などをしてきた取引所の判断はある程度信用しやすいといえます。
大型セカンダリマーケットへの流通が確定している
ICOでは、トークンセール終了後にどこの取引所にも上場しない、もしくは流動性に欠けるマイナーな取引所にのみ上場するといったケースが数多くありました。
特に投資家にとって、投資したトークンがメジャーなセカンダリマーケットに上場するかどうか、というのは大きな心配であると言えます。
一方、大手取引所が実施するIEOでは、トークンセール終了後にエスカレーター方式で上場されるため、投資したトークンを必ずトレードできるという観点では安心できます。
メジャーなIEOプラットフォームの状況まとめ
Binance Launchpadを皮切りに、今では多くの暗号資産取引所がIEO事業を展開しています。こちらでは、メジャーなIEOプラットフォームのこれまで事業状況を詳しく解説していきます。
Binance Launchpad
プロジェクト名 | 上場日 | 上場日最高価格÷セール価格 |
---|---|---|
Troy | 2019/12/5 | 2.50倍 |
Kava | 2019/10/25 | 2.78倍 |
Band Protocol | 2019/9/18 | 5.00倍 |
Perlin | 2019/8/26 | 3.48倍 |
WINk | 2019/8/1 | 7.89倍 |
Elrond Network | 2019/7/4 | 46.15倍 |
Harmony | 2019/6/1 | 7.55倍 |
Matic Network | 2019/4/26 | 4.00倍 |
Celer Network | 2019/3/25 | 5.53倍 |
Fetch.AI | 2019/2/25 | 6.00倍 |
BitTorrent Token | 2019/1/28 | 5.48倍 |
Bread | 2017/12/26 | 2.70倍 |
Gifto | 2017/12/14 | 4.20倍 |
Binance Launchpadは2017年末にローンチされた世界初のIEOプラットフォームですが、当初にいくつかのプロジェクトをローンチした後放置されていましたが、2019年にサービスの再開が発表され、毎月1件IEOが行なわれることになりました。
第1弾として行われたBitTorrentのトークンセールは、開始後18分間で約7.7億円を即調達し、IEOブームに火を付けるきっかけとなりました。
Binance Launchpadは「一定期間内での自社トークン($BNB)平均保有量に応じて、IEOトークン購入権利の抽選券を獲得できる」という事業モデルを発明した第一人者でもあります。
このIEO事業モデルには、自社トークンの需要を高める狙いがあります。
Huobi Prime
プロジェクト名 | 上場日 | 上場日最高価格÷セール価格 |
---|---|---|
EMOGI Network | 2019/8/15 | 7.40倍 |
Akropolis | 2019/7/16 | 18.60倍 |
Reserve Rights | 2019/5/22 | 8.48倍 |
ThunderCore | 2019/5/9 | 8.00倍 |
Newton Project | 2019/4/16 | 7.18倍 |
TOP Network | 2019/3/27 | 6.21倍 |
Huobi Primeは大手暗号資産取引所のHuobiが今年3月にローンチしたIEOプラットフォームです。
第一弾となる「TOP Network」のIEOに参加したユーザーは全世界で13万人に登りました。Binance Launchpad同様、このトークンセールは瞬時に終了し、実際にトークンを購入できたのはわずか3764名となっています。
Huobi PrimeのIEOは、セールを3段階に分ける「Price Limit Rounds」方式を採用しています。また4月からは、従来のPrimeリスティングより短い期間でIEOを行う「Huobi Prime Lite」というものも登場しました。
Huobi Primeが選定するプロジェクトはBinance Launchpadに比べマイナー気味のものが多いのも特徴的です。
KuCoin Spotlight
プロジェクト名 | 上場日 | 上場日最高価格÷セール価格 |
---|---|---|
Tokoin | 2019年8月23日 | 9倍 |
Coti | 2019年6月4日 | 17.42倍 |
Chromia | 2019年5月28日 | 3.0倍 |
Trias | 2019年5月14日 | 10.0倍 |
MultiVAC | 2019年4月9日 | 3.67倍 |
KuCoin SpotlightはKuCoinが2019年3月にローンチしたIEOプラットフォームです。
他者に比べるとまだ取り扱い数が少ないですが、MultiVACやTrias、Cotiなど認知度のあるプラットフォーム系プロジェクトを多く採り入れています。
特にCotiは、ブロックチェーン関連企業への積極的な投資をしている株式会社リクルートから出資を受けているプロジェクトです。
OK Jumpstart
プロジェクト名 | 上場日 | 上場日最高価格÷セール価格 |
---|---|---|
Pledgecamp | 2019/8/22 | 2.20倍 |
Echoin | 2019/8/9 | 4.16倍 |
Eminer | 2019/7/31 | 4.67倍 |
WIREX | 2019/7/1 | 5.32倍 |
En-Tan-Mo | 2019/6/10 | 3.36倍 |
ALLIVE | 2019/5/16 | 2.50倍 |
Blockcloud | 2019/4/11 | 18倍 |
OK JumpstartはOKExが2019年4月にローンチしたIEOプラットフォームで、19年7月からは月2件という活発なペースでトークンセールを行なっています。
コインチェック
マネックスグループが運営する大手国内取引所・コインチェックは2019年8月、ユーティリティトークンの資金調達を支援するIEO事業の検討を開始しました。
国内取引所のコインチェック、IEO事業の検討開始を発表 – CRYPTO TIMES
現時点では詳細な情報は一切公開されておらず、「検討」の範疇を超えないものとなっていますが、国内取引所初のIEO事業イニシアチブとして期待ができます。
日本ではJVCEA(日本仮想通貨交換業界)が主導して通貨上場に厳しいガイドラインが設けられており、匿名通貨やセキュリティ(配当型)トークンはもちろん、リスティングできるプロジェクトはかなり限られてくるものと推測されます。
IEOの懸念点
IEOは上位互換のような形でICOに取って代わりましたが、ICO時から残る問題点や、IEOならではの新たな課題が存在します。
大手取引所による集権的な資金調達
IEOは、大手取引所が優良プロジェクトをピックし、プラットフォーム上で販売を代行する資金調達法です。
また、上記でも触れた通り、IEO事業は取引所トークン(BNBやHTなど)の需要を助長するためのツールとして機能している点も否めません。
こういった意味合いでは、ブロックチェーン技術に分散型社会確立の可能性を見出している人々にとって、IEOはベストな資金調達システムではないと考えられます。
また、ICOではほとんどのトークンがイーサリアムのERC-20規格を用いたテストネットトークンとして発行されており、資産の追跡などは比較的容易でした。
しかし、取引所が行うIEOでは、セール結果のみが報告される場合が多く、透明性の確立が以前より難しくなっています。
結局、即売りがベスト?
IEOプラットフォームの中には、Huobi Primeなど、より安定した価格形成を促す資金調達法を考案しているところもあります。
しかし、大半のケースではICO時同様、上場とともに購入したトークンを即売りして利益を上げるケースが多いように見受けられます。
こういった観点では、IEOはICO時から存在する投機的要素を取り除けていないと言えます。
取り上げられるプロジェクトがVCの出口に?
主要取引所で実施されているIEOには、2018年の5月以降に話題になったプロジェクトが多く存在します。
2018年は市場が悪化した年で、ベンチャーキャピタル(VC)から投資を受けたものの、ICOを実施せずに時を待ったプロジェクトも多く存在しました。
BinanceでIEOを実施したCeler Networkや、Huobi PrimeのTop Networkがその最たる例です。
2018年に有望と言われていたプロジェクトに投資したVCは、投資したトークンが上場するのを待ちわびてきたわけで、エグジットを考えるVCが一気にトークンを売ることで価格が大きく割れることなども出てくるかもしれません。
IEOの参加方法
IEOに参加するには各取引所のアカウントが必要となります。また、KYC(本人確認)や2段階認証などのセキュリテイも参加条件に含まれてきます。
取引所によって参加方法は異なりますが、ここではBinance Launchpadを例に紹介します。
まずはBinanceにログインし、右上の人型のアイコンから「My Account」を選択します。
続いてマイページ上部のLv.2の下にある「Submit Verification Documents」をクリックします。
アカウントの所有者が個人か法人か聞かれるので個人の方はPersonalを選択します。
上の画面が表示されるので以下の順に情報を入力していきます。
- 名前
- ミドルネーム(ない場合は空欄)
- 苗字
- 生年月日
- 住所
- 郵便番号
- 都市
- 国
入力が完了したら「Begin Veritification」をクリックして次へ進みます。IDの認証プロセスが開始されるので「Start」をクリックして始めます。
身分証の発行国を選択し、アップロードする書類を選びます。日本の身分証はパスポート、免許証、保険証などに対応しています。
身分証の写真をアップロードすると、自撮り写真のアップロードを求められます。紙にBinanceと今日の日付を書いて自分の顔と一緒に撮影し、アップロードします。
ここまで完了すると、最後のプロセスとしてアプリ上での顔認証が求められます。Binanceのアプリをダウンロードし、表示されるQRコードを読み込んで認証を完了させます。
これで一連の認証プロセスは完了となります。あとは参加したいIEOのプロジェクトページに受付期間中に行き、「Claim Tickets」を押すと抽選に参加できるチケットがもらえます。
まとめ
IEO(イニシャル・エクスチェンジ・オファリング)は、ブーム衰退・規制強化に伴って消え去ったICO(イニシャル・コイン・オファリング)に代わって登場した、集権的な資金調達法ということでした。
IEOはBinance LaunchpadでのBitTorrent Token即完売を火付け役に大きな人気を集め、今では米国・日本以外の主要取引所の多くが同事業に参入しています。
日本でもIEO参入が検討されつつある中、これからもIEOの動向を追っていくことはとても大切だと考えられます。
*こちらの情報は新たなIEO案件やプラットフォームの登場に応じて随時更新していきます。