JPモルガンのビットコイン仕組債、早期償還ならず
よきょい
引用元: Tang Yan Song / Shutterstock.com
JPモルガンが2025年8月に発行した2,137万4,000ドルのIBIT連動仕組債が、1年後の早期償還判定を通過できませんでした。判定日にあたる8月26日のIBITの終値は44.46ドル。早期償還の条件である当初価格63.69ドルを30.2%下回っており、投資家は2028年8月の満期まで債券を保有し続けることになります。
この商品はETFの持ち分ではなく、JPモルガン・チェース・ファイナンシャルの無担保債務です。利札はなく、早期償還が成立していれば1口1,000ドルに対し1,210ドル、つまり21%のプレミアムが支払われる設計でした。現在のビットコイン価格とIBIT株価の比率で換算すると、当初価格63.69ドルはビットコインでおおむね11万ドル前後に相当します(記者試算)。1年でその水準まで戻る必要があったことになります。
「入口のコスト」は最初から開示されていた
発行時点でコストは明示されていました。JPモルガンは1口1,000ドルの証券の推定価値を926.20ドルと算定しており、その差は7.4%です。販売手数料と、組成・ヘッジの想定経済性が内訳とされています。加えてこの証券は上場されておらず、同社自身が流通市場は限定的または存在しない可能性があると説明しています。途中で売却しようとすればファンドの値動きだけでなく金利、ボラティリティ、発行体の信用力、残存デリバティブ価値を織り込んだディーラーの提示値に委ねることになります。
満期時の条件は別に設定されています。ダウンサイド閾値は当初価格の75%にあたる47.7675ドルで、判定は2028年8月21日です。この水準を上回れば元本は戻り、63.69ドルを超えれば上昇率の150%が上乗せされます。逆に47.7675ドルを割り込むと、当初価格からの下落がそのまま損失になります。8月26日の44.46ドルはこの閾値も下回っていますが、判定日ではないため損益は確定していません。
早期償還を逃したことは、2年分の発行体信用リスクと引き換えに上振れの可能性を残したとも言えます。
後続商品はコストが指数の内側に入った
注目すべきは新しい商品の設計です。JPモルガンが8月3日付の仮条件で示した自動償還債は、マークキューブ社のビットコイン・ボラティリティ・アドバンテージ指数に連動し、年14.50%以上の条件付きクーポンを掲げています。ただしこの指数は年6%を日割りで控除し、さらにIBIT連動部分からSOFRに年1.25%を上乗せした想定調達コストを差し引きます。
バークレイズはさらに別の構造を提案しています。8月4日付の仮条件はIBITとiシェアーズ・イーサリアム・トラストの2本に連動し、判定日ごとにリターンの低い方が結果を決める「ワーストオブ」型です。満期時に30%のバッファーを設ける代わりに、劣後した側が30%を超えて下落すると元本の最大70%を失う可能性があります。
なお仕組債の発行額はETFへの資金流入とは別物であり、ビットコイン現物の買い需要を意味しない点も混同されやすいところです。
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