好決算でもなぜ売られた?スペースX、BTC評価減と9億株の解禁
よきょい

引用元: Juan Alejandro Bernal / Shutterstock.com
米SpaceX(銘柄コード:SPCX)が8月4日の米国市場引け後、6月の上場後初となる四半期決算を発表しました。2026年第2四半期の売上高は前年同期比92%増の78億1,400万ドルと市場予想の68億〜69億ドル台を上回りましたが、株価は時間外取引で一時8%超下落。翌5日の取引でも売りが続き、一時115ドル前後まで水準を切り下げたと報じられています。
好調な売上の裏で、AI向け設備投資の膨張と8月6日に控えるロックアップ解除が意識された形です。
損益面の改善は明確でした。純損失は前年同期の10億800万ドルから5億4,100万ドルへ縮小し、1株当たり損失は0.09ドルと市場予想の0.26ドルを大きく下回っています。減価償却費や株式報酬を除く調整後EBITDAは、前年同期比191%増の35億3,800万ドルとなりました。
| 項目 | 2026年4-6月期 | 前年同期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 78億1,400万ドル | 40億7,000万ドル |
| 営業損失 | 1億4,300万ドル | 9億7,000万ドル |
| 純損失 | 5億4,100万ドル | 10億800万ドル |
| 調整後EBITDA | 35億3,800万ドル | 12億1,600万ドル |
| 1株当たり損失 | 0.09ドル | — |
※前年同期の売上高・調整後EBITDAは開示された増減率からの逆算値です。調整後EBITDAは米国会計基準の営業利益とは異なります。
部門別ではStarlinkとStarshieldを含むConnectivity事業、xAI買収で加わったAI事業、打ち上げを担うSpace事業の3部門すべてが伸びました。Starlinkの加入者数は6月末時点で1,200万人と前年同期の600万人から倍増し、サービス提供地域は167カ国・地域、軌道上の衛星は約1万200機に達したとされています。
市場が見ていたのは売上ではなく設備投資
株価が下落した主因は、AIインフラへの投資ペースにあるとみられています。第2四半期の設備投資は総額183億7,000万ドルで、うちAI関連が158億ドル。第1四半期の77億ドルから倍増した計算です。上期通算では設備投資284億7,600万ドルのうち235億5,100万ドルがAI事業向けで、全体の約8割を占めます。
| 2026年上期の設備投資 | 金額 | 構成比 |
|---|---|---|
| AI事業 | 235億5,100万ドル | 約82.7% |
| Connectivity事業 | 26億9,900万ドル | 約9.5% |
| Space事業 | 22億2,600万ドル | 約7.8% |
| 合計 | 284億7,600万ドル | 100% |
※構成比は開示された金額からの算出値です。
同社は6月のIPOでClass A普通株式約6億3,889万株を発行して約857億ドルを調達し、さらに250億ドルの投資適格社債も発行しました。6月末時点の現金及び現金同等物は935億2,200万ドル、有価証券と合わせて約1,000億ドルの手元資金を積み上げていますが、投資の回収時期は依然として見えにくい状況です。
経営陣は成長シナリオを強調しています。ブレット・ジョンセン最高財務責任者(CFO)は決算説明会で、年内に年換算売上高(ARR)1,000億ドルに到達するペースにあると説明。第3四半期に入ってからの数週間で、10月から立ち上がる6カ月間のクラウドサービス契約を追加で67億ドル分獲得したとしています。
約600億ドル規模とされるAIコーディングツール「Cursor」運営会社の買収は第3四半期中の完了を見込み、決算と同じタイミングでは、新たな軌道上コンピューティング構想「Starmind」向けのAIチップ供給元としてNVIDIAを指名したことも明らかにされました。
8月6日、9億株超のロックアップが解除
需給面の重しも意識されています。SpaceXは6月12日に1株135ドルでナスダックに上場し、直後に225.64ドルまで買われましたが、その後は反落。8月3日の終値は114.53ドルと、公開価格を15%、上場後の高値を49%下回る水準まで調整していました。
8月6日に解禁されるのは、インサイダー保有の制限付き株式のうち最大20%にあたる約9億1,150万株です。時価にして1,000億ドル超とされ、上場時に流通していた約6億3,900万株(発行済み株式約132億株の5%未満)を大きく上回る規模になります。以降も残る制限付き株式が15〜20日ごとに約7%ずつ自動的に解放され、上場から180日後の12月8日にすべての標準的な制限が外れる設計とされています。
損益計算書に組み込まれたビットコイン1万8,712枚
仮想通貨市場にとって、今回の決算にはもう一つ見逃せない項目があります。SpaceXが保有するビットコイン1万8,712枚です。6月末時点の公正価値は11億ドルで、2025年末の16億4,000万ドルから5億3,900万ドル減少しました。
これは上期のビットコイン価格が33%下落したことを反映したものですが、取得原価は約6億6,100万ドルとされ、なお4億3,700万ドル程度の含み益が残っている計算になります。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 保有数量 | 1万8,712 BTC |
| 取得原価 | 約6億6,100万ドル |
| 平均取得単価 | 約3万5,300ドル |
| 公正価値(2025年末) | 16億4,000万ドル |
| 公正価値(2026年6月末) | 11億ドル |
| 上期の評価減 | 5億3,900万ドル |
| 含み益(6月末時点) | 約4億3,700万ドル |
※含み益は公正価値と取得原価の差額です。
同社は公開企業のビットコイン保有としては7番目の規模、テスラの1万1,509枚を上回るとみられています。注目されるのは、会計基準の変更によってこの保有分が四半期ごとに時価評価され、価格変動が損益計算書に直接反映される点です。ビットコインが1万ドル動けば、SpaceXの帳簿上でおよそ1億8,700万ドルの評価損益が発生する計算になります。時価総額に対しては小さな比率にとどまるものの、上場企業の決算を通じてビットコイン価格が可視化される事例が一つ増えたことになります。
もう一点、オンチェーン分析の観点でも示唆的です。分析企業Arkhamが5月時点でSpaceXに紐づけていたのは約8,285枚と開示された1万8,712枚の半分以下でした。差の要因は、同社が第三者カストディを通じてオムニバス型のウォレットで保有しているためとみられています。チェーン上のデータだけでは企業の保有実態を捉えきれないことを示す例であり、提出書類との突き合わせの重要性が改めて浮き彫りになりました。
ロックアップ解除の消化とAI投資の回収ペース、そして四半期ごとに揺れるビットコインの評価額。上場企業となったSpaceXの決算は、宇宙とAIに加えて仮想通貨市場からも注視される材料となりそうです。

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