行動経済学から見る仮想通貨【第1回】 -仮想通貨を買う人とその動機-
Yuya
みなさん初めまして。CryptoTimesで新しくライターをさせていただくこととなったYuyaです。
今回の記事では、仮想通貨ブームの「誰が」と「なぜ」を行動経済学の観点から考察したいと思います。
この記事の3つのポイント!
- 「非合理な人間性」を研究する行動経済学
- バイアスがビットコインの成長を助長する
- 仮想通貨市場は異なる目的を持った人々が集まって成り立っている
目次
行動経済学とビットコインバブル
いわゆる”普通の”経済学の根本には「人はみな合理的な選択をする」という仮定があります。
言い換えると、
「自分の好み等の情報がはっきりわかっていて、常に効用(=幸福度)が最大限になるように行動する」
ということです。
例えばスーパーで 「このブランドのヨーグルトと、●●県産のほうれん草と、二枚重ねのトイレットペーパーを一緒に買えば、私の幸福度は最大になる」なんて考えながら買い物するわけです。
まあ、まずそんなことしないですよね。
何千、何万とある商品の中から本当に欲しいものの組み合わせをつまんで行く、というのは骨の折れる作業です。
食べたいものって毎日変わりますし、どのブランドが一番良いかなんて考えるのも面倒ですよね。そこで私たち人間は「いつもこれを買っているから」とか「CMでこれを見たから」、「パッケージが可愛いから」というバイアス(=先入観)を利用して選択肢をわざと狭めるわけです。
こういったバイアスと経済・金融の関係性を研究する学問を行動経済学と呼びます。
行動経済学は現在の仮想通貨のトレンドとも深く関わっています。急騰・大下落を繰り返し「ビットコインバブル」などとも騒がれる仮想通貨事情の裏には、様々な動機・先入観を持った金融機関や投機・投資家が関係しているのです。
今シリーズでは、ゴールデンゲート大学のRick Lehman氏の記事を基に、仮想通貨トレンドを行動経済学の観点からひも解いていきたいとおもいます。
今回の「その1」では、「仮想通貨を買う人とその動機」、次回の「その2」では「仮想通貨を買う人が持つバイアス」についてお話したいと思います。
マーケット・セグメント
ゴールデンゲート大学で行動ファイナンスの教授を務めるLehman氏は、仮想通貨トレンドを深く理解するためには、「市場に参加する人々を動機を元にグループ分けすること(マーケット・セグメント調査)が大切だ」と語ります。
Lehman氏の仮説によると、仮想通貨市場には8つのタイプの参加者がいるといいます。
(引用元: A Behavioral Finance View of Cryptocurrencies)
仮想通貨創設者、デベロッパーと一部のマイナー
「新時代の通貨」という仮想通貨の理念をサポートする人々。通貨を長期的に保有すると考えられる。但し、中には投機の誘惑に負けて売ってしまう者もいる。
仮想通貨支持者
これは仮想通貨が持つ「匿名性」や「分権化」などの政治的な特徴を支持する個人のことを指す。投機をみて売り買いするより、上記同様次世代の通貨をサポートする意味で購入・保有する者が大半。
テクノロジー好き
新しいテクノロジーにはすぐに手を出す、というこのタイプの人々は、おそらくブームになる前からブロックチェインや政治的な特徴に惹かれてビットコインに投資をしていたと考えられる。
仮想通貨支払いOKの会社等
仮想通貨が円やドルといった今までの不換紙幣と取って代わる通貨になると信じている人々。仮想通貨をサービスに対する支払い方法の一つと設定する企業などが当てはまる。これらの企業は金融先物等を利用しながら仮想通貨のボラティリティーと付き合って行く。
ギャンブラー・投機家・デイトレーダー
仮想通貨ブームの波に乗って手っ取り早く稼ごうとする人々。一番規模の大きいタイプで、未だに成長を続けている。仮想通貨の流動性とボラティリティーを作り出す第一人者。
パッシブ投資家
資産分散型の伝統的な投資家。現在はまだ投資総額では他のグループには及ばないが、仮想通貨ETFやインデックスファンドの到来と共に市場を動かす力が膨大すると予測される。ちなみに、今月6日にはすでにCoinbaseが仮想通貨指標Coinbase Index Fundを公開している。
アクティブ投資家
ヘッジファンド、メガバンク、取引所、ETF発行者等が当てはまるグループ。スキャルピングやアービトラージを通して仮想通貨の貯蓄、先物やETFへの資金作りをする。
アメリカの金融機関
取引所、銀行、ETF発行者、ブローカーおよびディーラーなど。すでに大手の銀行では仮想通貨取引の特許を取得するなどの動きが出ている。
仮想通貨を購入することとは
ビットコインや他の仮想通貨市場は政治的・技術的な面を支持する人、投機として一攫千金を狙う人、パッシブまたはアクティブ投資で利益を狙う人など様々な動機を持った人たちで構成されているんですね。
前項でも少し触れた通り、仮想通貨にはインフレ、金融機関によるコントロール、国際通貨としての金の使用などといった現在の不換紙幣の問題を解消するという理念があります。これを踏まえた上でLehman氏は、「(動機は何であれ)ビットコインの購入はこういった仮想通貨の政治的な理念を支持する行為に等しい」とまとめます。
以上が行動経済学から見る仮想通貨のパート1となります。仮想通貨ブームというのは、みんなが同じ気持ちで投資しているわけではなく、実はそれぞれが違った動機を持っているということでした。次章では、こういったそれぞれのグループが実際にどのような「バイアス」を持っているのか、ということを解説します。