Light創設者Shun Kakinoki氏にインタビュー|Lightが目指す「チェーンの抽象化」とは?

2024/04/22・

ユッシ

Light創設者Shun Kakinoki氏にインタビュー|Lightが目指す「チェーンの抽象化」とは?

日本発プロジェクトである「Light」は先日、スマートウォレットであるLightを公開しました。Lightは異なるチェーン上のトークンでガス代の支払いを可能とするなど画期的なソリューションを提案しています。

様々なチェーンの乱立が続きユーザー体験があまり良くない状況が続く中、Lightはチェーン抽象化に関する仕組みを提供し、Web3ユーザーのさらなるUX向上を目指しています。

本記事ではそんなLightのFounder兼CEOを務めるShun Kakinoki氏へのインタビュー内容をお届けします。

目次

– 「自己紹介とLightの概要について教えてください」

25歳のKakinokiと申します。クリプトへの参入は2021年、サンフランシスコの起業家たちと共にWagumi DAOを立ち上げたことから始まりました。

Wagumi CatsというNFTを扱いながら、ガバナンスやDiscordコミュニティのモデレーションなどの活動を通じてクリプトの面白さに魅了され、深く関わるようになりました。

「Light」は、スマートウォレットという形態で取り組んでいるプロジェクトです。

Lightでは、EVM互換のチェーンを円滑かつなるべく使いやすくできるような機能を提供しており、例えば、自分が使ったことがない新しいチェーンでガス代の支払いが必要となった場合、自分がすでに持っているどのチェーン上のアセットでもガス代の支払いが可能となります。

参考ポスト↓

また、複数のチェーンにわたるトランザクションを1つの署名で行うことができます。

現在、様々なチェーンが乱立しているかと思いますが、全てのチェーンをあたかも1つのチェーンで使っているようなUXを実現したいというのがLightのビジョンです。

– 「Lightは以前、Web3 Socialのプロダクトも開発していたかと思いますが、現在はどのような状況になっていますか?」

現在公開しているLightはプロジェクトとして3つ目のプロダクトです。

1つ目がWeb3 Socialのプロダクトで、CyberConnect上でお互いの共通のDAOやNFTなどを可視化できるソリューションの提供に取り組んでいました。

2つ目が、iOS Safari内でメタマスクの概念や要領で使えるモバイル上のweb拡張機能のようなアプローチのモバイルウォレットです。

そして、今取り組んでいるのがスマートウォレットのLightとなっています。

– 「Lightではどのような仕組みで、別チェーン上のアセットでガス代の支払いを可能としているのでしょうか?」

Lightではガスの抽象化レイヤーを独自で開発していて、ここではガスの支払いを誰かが負担してくれる設計になっています。

ガスを支払う”ソルバー”と呼ばれる事業者のようなポジションの人たちがいるのですが、これらの人達がどのチェーンにも参加できるようになっています。

そしてこのソルバー達が「Polygon上でUSDTを後で受け取れるのであれば3つのチェーンのガス代を負担してあげるよ」といった形でユーザーが希望するチェーン、アセットでのトランザクションが通るよう協力してくれます。

– 「ソルバーはガス代を一時的に負担するインセンティブとして、手数料収入が入ってくるのでしょうか?」

その通りです。ただ、そうなるとユーザーにとって不利な状況が発生しかねないため、Lightでは複数の事業者が競売するような仕組みが採用されています。

また、ガス代が無料になるといったケースも発生します。DeFiのアプリケーションを作っている事業者がいたとして、自分たちのプロトコルを伸ばしたい時に「自分達のプロトコルを使ってくれればガス代を無料にする」といった施策も可能です。

– 「今回公開されたLightの主なターゲットはどんなユーザーですか?」

最初は複数のL2を使っているクリプトのコアユーザーをターゲットにしています。

スマートウォレットの面白い点として汎用性が高い部分が挙げられます。そもそも秘密鍵やシードフレーズを覚える必要が無くなったり、ソーシャルリカバリーのように鍵を無くした場合に友達に復旧してもらうことが出来るんです。

また、ウォレット自体をプログラミングできるのも魅力の1つですね。

最近はRhinestoneのように、アプリストアのような形のアプローチでウォレットに色々な機能を付けれるようにするのがスタンダードになりつつあります。

画像引用元:blog.rhinestone.wtf

Lightでもそういったことを将来展開していくつもりで、ウォレット自体が色々と拡張したり、ユーザーが好きな拡張機能を入れられるようになればウォレットの幅は大きく広がると思います。

チェーンを意識しないであらゆるトランザクションをワンクリックで出来るようになれば、コアユーザー以外の一般の方にも普及するかと思っています。

– 「基盤としてLightの仕組みがあり、その上に開発者たちが考える最適なUI/UXのアプリを構築できるといったイメージでしょうか?」

はい、おっしゃる通りです

Lightとして提供している基盤は、ワンクリックでどのトランザクションも完結できるソリューションで、このユーザー体験はクリプトのマスアダプションには必須だと考えています。

今だとコアのクリプトユーザーであっても、新規で使いたいチェーンがあっても、実際に使った経験がなければ「ブリッジして、ネットワークをメタマスクに追加して、ガス代を補填して、ようやく使える」みたいな形だと思います。これだと絶対に一般のユーザーは使えないですよね。

これらの複数のチェーンを跨ぐトランザクションをワンクリックで出来るようになればクリプトのマスアダプションに向けた大きな一歩となるかなと思っています。

世界の色んな人の生活にどれだけクリプトを根付かせられるかをLightの最終的なゴールとして考えていて、手軽さや分かりやすさ、いかに障壁をなくせるかは常に意識しています

– 「メタマスクや取引所のウォレットしか使ったことがないユーザーが一般的かと思いますが、そのような人たちにLight、またはLightのソリューションを活用したプロダクトを実際使ってもらうようにするためにどのような戦略を持っていますか?」

戦略は2つあります。

今は色んなチェーンが毎日のように誕生していると思いますが、これだとメタマスクや取引所のウォレットだと限界があると思っているんですよね。そこで有効なマーケティング戦略を描けるかと考えています。

メタマスクを使っている以上、ネットワークを追加したりブリッジしたりは必要で制約として存在します。そういった意味で1つでもチェーンが増えるごとにLightとしての優位性は増していくと考えています。現在の状況で1クリックで全てが完結するようなLightのソリューションが提供できたら、多くの人がこれを好んで使ってくれるのではないかと思っています。

長い目で見ると、マルチチェーンがデフォルトの世界というのはLightの観点からすると絶好の機会かと思います。

「チェーンアブストラクション(チェーンの抽象化)」といった概念があるんですが、いかにあらゆるチェーンをあたかも1つに感じさせるか、もしくはチェーンの存在すら感じさせなくするかというUXを実現することが、マーケティングの側面でもUXの側面でも非常に重要かなと思います。

2つ目がグループウォレットです。

これはあまり日の目を見ていない分野だと思っているのですが、マルチシグのように、例えば誰かとの間で議決権を半々にして何かしらのアセットを持てるというのは、人類の歴史上初だと思います。真の意味で複数の人と平等な立ち位置で何かを所有できるんです。

例えば土地とかだと結局は政府が握っていたり、銀行に資金を預けていても政府と銀行と自分だと自分以外が2/3の権利を持っていたりしますよね。

「友達とNFTを一緒に管理する」といった形で複数人で平等な立場で何かを所有できるのは、今まで不可能だっただけに面白いことが起こる可能性があると考えています。

-「Lightはどのチェーンから対応していくのでしょうか?」

現状ではメインネットでは10個くらいのチェーンにすでに対応しています。

Light(デモ)で対応しているチェーン

比較的新しいチェーンのBlastにも対応予定だったり、Berachainのような新しい切り口のプロジェクトともパートナーシップを提携するような形で進めたいと思っています。

チェーン側からするといかに自分たちのチェーンの特性をアピールするかが重要視されると思います。なので、個々のチェーンの特性をユーザーにわかってもらえるような仕様にしたいと考えています。

– 「Lightとして日本ユーザーにどのように認知をしてほしいのでしょうか?また、日本でどのようなポジションを取りたいと考えていますか?」

毎日使ってるWeb2アプリで日本製のものは1つあるかないかといった感じです。

Web3の世界で世界中の人たちが使っているインターフェースだったり、基盤となるネットワーク的な部分はまだまだ黎明期だと思います。

今後10年100年単位で見るとスマートウォレットの数は何百億個と存在するようになると思いますし、EVMチェーンのTVLは何兆、何百兆となっていくでしょう。

そうなるとクロスチェーンでデフォルトで使えるスマートウォレット、大きな規模のアセットを保有するのみならず、チェーン抽象化の基盤インフラをもとにユーザーが毎日そこからトランザクションを発生させるのは考えられる世界線かと思います。

私も日本人として頑張りたいですし、日本人ユーザーの方の声には耳を傾けたいと強く思っています。

現在はクローズドでやっていて申し訳ない気持ちでいっぱいなのですが、前回のLight Walletは本当に多くの方に使っていただきました。進化したプロダクトとして戻ってくる予定ですので、楽しみにしていただければ幸いです!

– 「2024年のロードマップや読者の方に向けた抱負を教えてください」

2024年に入り、L2を始めとしたスケーリング・ソリューションのお陰で多くのチェーンを高帯域・安価で使える時代に突入しました。それと同時に、多くのチェーンを同時に用いることはユーザーにとっては複雑なプロセスとなり、体験を損ねているのは紛れもない事実だと思います。チェーン抽象化によって老若男女が使い得るシンプルな体験を実現して、世界中の多くの人にクリプトの素晴らしさと利便性を届けたいです。

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