【独占インタビュー】なぜビットコインではなくSolanaなのか──日本1位・世界10位のSOL保有企業WIZE社が賭けた「増える資産」の構造
アラタ | Shingo Arai


新井 進悟
株式会社ロクブンノニ代表取締役2013年に東京理科大学大学院(経営工学専攻)修了後、Web・アプリ・広告業界の複数社でエンジニア、データサイエンティスト/データアナリストとして従事。2017年頃から仮想通貨・ブロックチェーン領域に携わり、2018年1月に株式会社ロクブンノニを設立、同年2月にブロックチェーン特化型メディア「Crypto Times」をローンチ。業界歴は約9年。DeFi・L1/L2プロトコル・トークノミクス・ZKP・国内外の規制動向を専門領域とし、自身でもオンチェーンでの資産運用・リサーチを日常的に行う。数百本以上の記事執筆・監修を担当し、国内外カンファレンス登壇、DeFi資産運用セミナー講師、KOLアンバサダープログラム運営など実績多数。
デジタル資産トレジャリー(DAT)企業の淘汰が世界中で始まっている。相場の下落局面で資金繰りに行き詰まり、保有資産を売却する企業が相次ぐなか、日本でいち早く「Solana(SOL)」に絞ったトレジャリー事業を開始し、国内最大規模で展開する上場企業がある。株式会社WIZE(旧モブキャストホールディングス)だ。
同社は2025年10月にSOLの取得を開始し、保有規模は世界トップ10入り。さらに、同社によれば日本の上場企業として初めて、Solana財団の委任プログラム「SFDP」(財団が一定の基準を満たしたバリデータにSOLを委任する支援制度)に採択され、バリデータ運用まで手掛けている。
なぜエンターテインメント企業がSolanaだったのか。含み損をどう受け止めているのか。代表取締役CEOの藪考樹氏と、Chief Solana Officer(CSO)の南雲悠太郎氏に、率直に聞いた。
インタビュアー : 新井進悟(Crypto Times代表)
この記事の用語
- DAT(デジタルアセットトレジャリー
- 上場企業が自社のバランスシートで暗号資産を保有・運用する財務戦略。米Strategy社、日本メタプラネット社のビットコイン保有が代表例。
- Solana(SOL)
- 処理の速さと手数料の安さを特徴とするブロックチェーン。2020年にメインネット公開。DeFi、ミームコイン、決済、トークン化株式などで利用が広がっている。
- バリデータ/ステーキング
- バリデータは、ネットワーク上の取引を検証・承認する役割の担い手。保有するSOLをバリデータに預ける(ステーキングする)と報酬が得られる。ビットコインにはこの仕組みがなく、保有しているだけでは枚数は増えない。
株式会社WIZE「第二の創業」の物語

WIZE株式会社 代表 : 藪 考樹 , インタビュー実施日 : 2026年8月5日
――お二人の自己紹介と、WIZEのSolana・トレジャリー事業での役割を教えてください。
藪 : WIZEは今年、「モブキャストホールディングス」から社名変更しました。その理由のひとつが、「持株会社から事業会社への移行」です。
現在、私は代表と事業本部長を兼務しており、その下に「Solana事業部」と「エンターテインメント事業部」の2つを置いています。ですので本日は、現場の事業戦略とトップの経営判断、どちらの視点からでもお話しできると思います。
南雲 : 私はWIZEに2つの立場で関わっています。ひとつはパートナー企業の代表として。Dawn Labsという会社のCEOをしていて、WIZEのバリデータ運用は当社が受託しています。もうひとつが「Chief Solana Officer」、いわば外部から、WIZEのSOLに特化したトレジャリー事業の戦略をアドバイスする役割です。私個人がSolanaのエコシステムで海外を含めた関係性を持っているので、そこをレバレッジして、SolanaにおけるWIZEのポジションをつくっていく。この2つの役割になります。
――モブキャスト時代はゲーム・エンタメの会社だったと思います。そもそもなぜトレジャリー事業を始めようと思ったのですか。
藪 : 理由は3つあります。
1つ目は、経営課題の解決です。投資回収に時間のかかるエンターテインメント事業の財務基盤強化と、12月期に向けた東証の上場維持基準のクリア。この2つの課題に対する打ち手になる、というのが最初の動機でした。
2つ目は、本業との連動です。私はこれまで多くのクリエイターと仕事をしてきましたが、彼らのほとんどが「社会課題の解決」を目的にエンタメを作っており、私自身もそういう方々がすごく好きです。だからこそ我々にとってのエンターテインメント事業とは、イコール「社会課題を解決するコンテンツをどう成長させるか」ということになります。
そして、そこに暗号資産をつなげることで、これまでの課題が解決できると考えました。「マイナスをゼロにする」ような課題解決に、あえて投機的な価値を持つ暗号資産を掛け合わせることで、極めてバランスの良い収益スキームが創れる。直感的にそう確信しました。
3つ目は、「人」です。かつて私がブロックチェーン展開に大反対したことで会社を離れたメンバーたちが、この数年間で業界の波に揉まれ、頼もしい有識者になっていました。いざチームを作ろうとした時、double jump.tokyoの上野さんやArriba Studioの佐藤さんなど、すぐに相談できる元モブキャストの仲間が何人も身近にいました。
これら3つの要素が、今回トレジャリー事業への参入を決断した大きな理由です。
――社内から反対の声はなかったですか。
藪 : いえ、それが、特にありませんでした。
ひとつは、資金調達先のEVO FUNDと厚い信頼関係があったことです。深く議論できる担当者もおり、彼らが過去に手掛けたトレジャリー企業の貴重な経験値も、可能な範囲で共有してもらうことができました。
もうひとつは、モブキャストでかつて数年間取締役を務めてくれた佐藤さんに、手伝ってもらえることになった点です。彼は現在、Web3アクセラレーターを率いるITやプラットフォーム領域の専門家です。いきなり当社の経営会議に連れて行って「お久しぶりです!」と登場してもらったのですが(笑)、現経営陣もよく知る彼が、事業の人的な軸として立ってくれました。私の構想を確実に実行できる有識者がそこにいるというのは、やはり非常に大きかったですね。
――役員だけでなく、社員レベルでも「急によく分からない事業を始めたぞ」という反応はなかったですか?
藪 : そこは、先ほどお話しした「2つ目の理由」につながってきます。そもそもエンタメって、なぜ時間がかかるのか。クリエイターが望んでいるのは、安売りしてすぐに儲けることではありません。時間をかけてでも、自分たちが本当に伝えたいことを理解してもらい、そこに共感してくれるファンを増やすこと。それこそがエンターテインメント事業の本質です。
実際に、地球環境の問題に取り組んでいるチームがいるのですが、彼らにこの話をしたら「すごい!」と言ってくれました。彼ら自身、日々本気で向き合い、苦労を重ねています。だからこそ、「そこを突破するには、こういった発想が必要だと思う」と深く共感してもらえました。一方で、事業サイドのエンタメ担当のメンバーたちからも、「なんか面白いことができそう」とすごく良い反応をもらえました。
――トレジャリー事業といえば、世界的にはBitcoin(ビットコイン)が主流でした。徐々にEthereum(イーサリアム)も出てきた。そのなかでSolanaを選んだ決め手は何でしたか。
藪 : 当時すでに他社の事例もあったので、仕組み自体はすぐに理解できました。我々も上場企業として資金調達の機能は持っているので、あとは「何のトレジャリーをやるか」だけでした。そこでSolanaに着目した最初のきっかけは、正直に言うと「響き」でした。
暗号資産というと、どうしても「怪しい」「危険な匂い」といった一般的なイメージがあります。映画などでもそういった文脈で描かれてきています。 その点、「Solana」はパッと聞いて暗号資産だと認識されづらい。将来エンターテインメント事業として一般の方に届ける上で、この親しみやすい響きは大きな武器になると直感しました。
もちろん響きだけで決断したわけではありません。「ステーキング」の収益性や「ガス代の安さ」といったビジネス上の優位性を確認したうえで、トランプコインなどの事例から「エンターテインメント事業と強力なシナジーを生み出せる」と確信したわけです。
そうやって自分なりの仮説を一つずつ検証し、有識者にも背中を押してもらう中で、「響きの良さ」という最初の直感が、確固たるビジネス上の確信に変わっていきました。そうして1〜2ヶ月ほどかけて頭を整理した段階で、経営会議に持ちかけました。
――他にも決め手はありましたか。
藪 : タイミングの良さもありました。ちょうどSolanaを選ぼうかと考えていた頃に、アメリカでSolanaのETFに関する話が動き出していました。それと、もう一つは「差別化」ですね。ビットコインを保有している企業はすでにたくさんありました。有識者からはイーサリアムもかなり勧められたのですが、先ほどのネーミングの点でどうしても少し迷いがあって。エンタメ業界の人たちに話を持っていくのにも、ちょっと響きが違うような気がしていました。
他社としっかり差別化ができるという点、そして何より「日本で1位を取れそうだった」というのは、決断する上で非常に大きかったです。
――実際、いま日本で1位ですよね。南雲さんと出会われたのは、この後ですか。
藪 : もう少し後ですね。Solanaでいくと腹を決めた後、佐藤さんにチーム作りをお願いしました。彼が元モブキャストのネットワークを頼りに動いてくれて、最終的に南雲さんにたどり着きました。最初は3人で一緒に沖縄料理を食べに行きました(笑)。
編集部注 / 新井
こうして始まったソラナ事業は、9ヶ月で体制そのものが変わった。同社は2026年8月、社内外の専門家によるアナリストチーム「SOL MAN’S」を新設している。国内大手証券会社出身でソラナ財団での活動経験を持つメンバー、暗号資産専門メディアの運営者、ソラナ特化のインフラ運用に知見を持つ技術者、Web3特化の投資ファンド創業者の4名が、ソラナ事業の分析と、独自の価格予測モデル「W3M」の運用にあたる。代表の直感から始まった事業は、組織として意思決定する段階に入っている。
※ SOL MAN’Sは同社が自社事業の分析を目的として組成した社内体制であり、投資助言・代理業を営むものではない。
「持っているだけ」で終わらせない
――WIZEはバリデータも運営しています。具体的に何をしているのでしょうか。
南雲 : 大きく2つあります。技術面・運用面と、ビジネス面──つまりステーク(委任)を集める部分です。
技術面から簡単に説明すると、ブロックチェーンを支えているのがバリデータです。ユーザーがトランザクションを出したときに、それが不正でないか、二重の取引になっていないかを検証し、承認する。Solana側が「このプログラムを動かしてほしい」と提示しているプログラムがあるので、それをサーバーで動かして承認作業を行う。ここはパートナー企業である当社(Dawn Labs)が受託しています。ダウンタイムもなく、高いパフォーマンスで運用できている状況です。
ビジネス面、つまりステークを集める部分では、ひとつがSolana財団の委任プログラム(SFDP)からの委任。もうひとつが、バリデータにデリゲーションを分配する「ステークプール」と呼ばれるプロトコルからの委任です。ここはある種、政治的な要素も発生します。「日本で最初のピュアなSOL DATである」というWIZEの価値を評価してもらって、委任をもらってくる。もちろん、単純にパフォーマンスが良いからもらえる部分もあります。
解説
なぜビットコインではなく Solana なのか ── 器としての構造の違い
ビットコインと Solana では、ネットワークの合意形成の仕組みが根本的に異なる。ビットコインは計算競争によって取引を承認する PoW(プルーフ・オブ・ワーク)で、保有者が保有していること自体から報酬を得る仕組みを持たない。1 BTC を10年保有しても、1 BTC のままだ。
一方 Solana は、保有量に応じて検証者を選ぶ PoS(プルーフ・オブ・ステーク)を採用している。保有する SOL をバリデータに預ける(ステーキングする)と、ネットワークから報酬が支払われ、枚数そのものが増える。トレジャリー企業にとっては、価格が動かない局面でも保有量が積み上がることを意味する。WIZE が「1株あたりの SOL は増え続ける」と説明する根拠は、ここにある。
ただし、押さえておくべき前提が2つある。
1報酬は SOL 建てで支払われる
枚数が増えても、SOL 価格が下がれば円換算の評価額は減る。増えるのは枚数であって、資産価値そのものではない。
2報酬の原資の一部は新規発行である
Solana は現在およそ年3.8%のインフレ率で新規発行が続いており、これは全保有者の持ち分をわずかに薄める方向に働く。したがってステーキング報酬の実質的な取り分は、名目の利回りからインフレ率を差し引いた水準で捉えるのが実態に近い。記事後半で南雲氏が触れる SIMD-0550 の提案が注目されるのは、この差し引き分を小さくする方向の変更だからだ。
※本ボックスは編集部による解説です(2026年8月時点)。
――率直に伺います。バリデータ運用は技術要件が重い領域です。上場企業がそこまで踏み込むコストに、見合うものはあるのですか。
南雲 : 実際の運用からステークを集める部分まで、すべてパートナー企業が担っており、WIZE側で追加の人員やサーバーコストをかけることなく、収益を積み上げていける構造になっています。そこは非常に合理的だと思っています。
おっしゃる通り、バリデータ運用は技術的なハードルが高く、継続的なアップデートへの対応も必要です。そうしたナレッジを持つパートナーと連携しているからこそ、WIZEは自社で大きなリソースを割くことなく、高い水準でバリデータを運用できているということです。
また、バリデータ運用では、通常の報酬に加えてMEV(ブロック内の取引の並べ方などから生じる追加収益)などからも収益を得られる場合があります。
解説 収益の「第2エンジン」── ターゲットバイイング
同社は2026年8月の決算説明資料で、保有SOLが生む収益(ステーキング報酬・バリデータ報酬)を「第1エンジン」と位置づけたうえで、将来的な「第2エンジン」としてターゲットバイイングの導入検討を明らかにしている。あらかじめ狙った価格でSOLを買う権利を相手に与え、その対価としてオプション料を受け取る手法だ。価格が下がらなければオプション料がそのまま収益になり、価格が下がれば狙っていた水準より割安にSOLを取得できる。どちらに転んでも「原則ホールド・単価低減」という同社の方針と整合する、という説明である。ただし、あくまで検討段階であり、導入時期や規模は明らかにされていない。またオプションの売り手は、価格が想定以上に上昇した場合の値上がり益を放棄することになる点にも留意が必要だ。
一方 Solana は、保有量に応じて検証者を選ぶ PoS(プルーフ・オブ・ステーク)を採用している。保有する SOL をバリデータに預ける(ステーキングする)と、ネットワークから報酬が支払われ、枚数そのものが増える。トレジャリー企業にとっては、価格が動かない局面でも保有量が積み上がることを意味する。WIZE が「1株あたりの SOL は増え続ける」と説明する根拠は、ここにある。
※本ボックスは編集部による解説です(2026年8月時点)。
投資家の疑問に答える

――ここからは投資家目線で伺います。SOLの取得を始めてから、暗号資産の市場環境は2〜3月頃からかなり悪化しました。SOL自体も価格を落としていて、現在は含み損の状態かと思います。これはどう受け止めていますか。
藪 : 始めた時点の平均取得単価は、円換算で2万5千円ほどでした。そこから直近では1万5千円ぐらいまで下げてきています。財務指標上は含み損が出ますが、我々は実質キャッシュフローで見ています。
例えるなら、50年前の港区の土地ぐらいのつもりで持っています。将来的に多少の変動はあるでしょうけれど、10年スパンで価値が認められていくと考えて、財務基盤を整えるために保有しています。だから、その都度の含み損はほぼ気にしていません。
編集 : 新井記
※ 2026年7月31日時点で、平均取得単価は15,053円(開始時の約25,063円から約40%低下)、累計取得額10.0億円、取得回数60回。総保有は66,458 SOL(うち購入分65,603 SOL、累計ステーキング報酬855 SOL)。2026年12月期2Q累計では暗号資産評価損148.7百万円を計上している。
――それは、株主の皆様に向かって言ってもいいことなんでしょうか(笑)。
藪 : そうですね(笑)。ただ、いま実際に売ってしまうと、本当のキャッシュ上の損失が出てしまう。現段階では売る予定もないので、含み損はそこまで重く受け止めていません。
――昨年は多くの企業がビットコイン・トレジャリーに参入しましたが、結局取得したものを売却してしまった例もありました。相場がインフレの影響で長引きそうだから手放して別のことをやろう、という検討は一切なかったのですか。
藪 : 全くなかったですね。投機目的でビットコインを売っていた企業もありましたが、我々の目的は先ほどの2つ──経営課題の解決と、本業との連動です。特に本業とのつながりがあるのは大きいと思います。
もちろん、財務戦略上の選択肢を持たないわけではありませんが、長期保有が基本で、いまは売る予定はありません。
――新株予約権で資金調達してSOLを買い増すと、その分だけ既存株主の1株あたりの価値は薄まります。それでも「1万株あたりSOL」という指標を掲げているのはなぜですか。
藪 : 我々は前回の決算発表で「WIZE Dual-Loop 戦略」を掲げました。本業の話と、Solana事業の話です。そのSolana事業では、株式が希薄化することも当然含めたうえで、1株あたりの資産価値の向上を一番に掲げています。
構造としてはシンプルで、新株の発行分を含めた発行済株式総数が分母になる。調達した資金はすべてSolanaの購入に充てるので、そこで得たSolanaが分子になる。さらに、ステーキング報酬が分子に追加されていく。つまり、株を刷らなくても分子は増えていく設計になっている。ここは常に意識しているところです。
編集 : 新井記
実際、1万株あたりSOLは2026年2月の1.99から7月には6.54へ、5ヶ月で約3.3倍に増えている。新株予約権の行使が進むなかでの増加である。同社はこの指標が期間中に何%増えたかを「SOL Yield」と定義し、株式発行に頼らずステーキングによって株主持分のSOLが複利で増える速さを示す指標としている。
解説 SOL を直接買うのと、SOL を保有する企業の株を買うのは何が違うか
株で持つ側の理屈 ──証券口座でそのまま売買でき、暗号資産取引所の口座開設やウォレット管理、秘密鍵の保管が不要になる。ステーキングの運用も企業側が行うため、保有者が技術的な作業を負わない。税制面でも、現行制度では株式の譲渡益が20.315%の申告分離課税であるのに対し、暗号資産の売却益は総合課税の雑所得として扱われる。
その前提は変わりつつある ──暗号資産についても申告分離課税(20%)の導入がすでに法制化されており、金融商品取引法改正法の施行翌年からの適用が見込まれている。税制上の差は、将来的には縮小する方向にある。
株ならではのリスク ──株価は SOL 価格に連動するとは限らない。市場の期待が高いときは保有資産の価値を上回る株価がつき、逆に市場が冷えれば下回ることもある。加えて、資金調達に伴う株式の希薄化、暗号資産以外の事業の損益、上場企業としての各種リスクも株価に影響する。SOL の値動きだけを取りたいのであれば、現物のほうが素直だ。どちらが優れているかではなく、何のリスクを取るかが違う。
※本ボックスは編集部による解説です(2026年8月時点)。
――海外の大手ビットコイン・トレジャリー企業では、ビットコイン価格の下落で株式や優先株が軒並み下がり、変動型の配当を出す原資の確保に苦しんでいたりといった問題が起きています。御社に、こうしたデススパイラル的なケースはあり得ますか。
藪 : 基本的にはない、と考えています。
無理な投資をしているトレジャリー企業が資金繰りに行き詰まり、保有資産を安値で手放す動きは、確かに業界内で続いています。ただ当社の場合は、EVO FUNDを割当先とするMSワラント(行使価額修正条項付新株予約権)で調達した資金をSolanaの購入に充てるという、至ってシンプルな構造をとっています。
実際の買付についても、相場が良かった時期に十数億円規模の資金を一気にドンと投じるような、リスク管理を度外視した方法は一切取っていません。佐藤さんを中心とするSolana事業部が相場の動向を冷静に見極めながら、細かく分けて買い付けています。
具体的には、2025年10月から60回に分けて買い付けを行っています。その結果、スタート時には2万5千円台だった平均取得単価が1万5千円まで下がり、現在の市場価格との乖離もそこまで大きくせずに済んでいます。
こうした徹底した「リスク管理」と、「無理のない資金調達」。この2つの掛け合わせこそが、他のトレジャリー企業とは明確に違うところだと思っています。
――海外と国内で、資金調達の方法自体が違うという面も大きいですか。
藪 : そうですね。あとは実際の購入時も、きちんと取締役会や経営会議での決議を経ている点は、違いかもしれません。
加えて、資金調達側のEVO FUNDと、買い付けを行うSolana事業部が、私を通じて密に連携できています。決して機械的なやり取りではなく、しっかりとコミュニケーションが取れています。
少し感情的な話に聞こえるかもしれませんが、実務を進める上では、こうした「血の通った連携」がかなり大きなウエイトを占めていると思っています。
――Strategy社(旧マイクロストラテジー)がビットコインを少しずつ売り、イーサリアム最大のファンドBitMine社も大きな含み損を抱えて再び優先株の発行を検討している。国内の企業においても既にトレジャリー事業からの撤退が出てきています。DATブームは一度落ち着いたように見えますが、どういう企業が生き残ると考えますか。
藪 : トレジャリー事業といっても各社で状況は違うので、業界全体の動向よりも「私たちがどうしていくか」に集中しています。
当社にとって重要なのは、やはり「本業といかに直結させるか」です。一般的に暗号資産は価値が上がるのを「待つ」側面が強いですが、我々はアプローチが異なります。日本1位、世界10位の規模となった保有基盤を活かし、エンターテインメント事業を通じて「社会貢献が資産になる」状態を実際に作っていく。
そうすることで、「怪しい」と思われていたものが、「現実の『港区の土地』と同じように価値あるものだ」と正しく理解されていくはずです。だからこそ、我々自らが主体となって価値を高める側に回りたいと考えています。
「Solanaの価値は我々自身が上げていく」という強い気概で、今後も具体的な取り組みを発表していく予定です。これこそが、私たちが目指す新しい事業の形であり、最大の強みだと思っています。
南雲 : まさにそこが違います。相場が悪い状況が続くなかで辞めていくトレジャリー企業との最大の違いは、いま藪が言った通りだと思います。
――投資家からすると、暗号資産を直接買うと現行制度では総合課税になる(2028年見込みで分離課税へ移行予定)。それが嫌だから、ビットコインを保有する上場企業の株を買う、というケースがあります。御社の株主にも「過去の成功事例に乗れるのでは」という理由で買った投資家も少なくないのではないでしょうか。
藪 : もともとお話しした「2つ目の目的」というのが、我々のエンターテインメント事業が生み出す『共感』と、Solanaを使ったトレジャリー事業が生み出す『資産価値』、この2つをうまく循環させることでした。
もっと噛み砕いて言えば、「社会貢献をすると儲かる」という仕組みを作ること。実は、これを実現したいという想いが一番根底にありました。
ですからこの先は、株主の皆様や我々のサービスを利用してくださる方々に対して、その構想をしっかりと有言実行していくフェーズです。それが結果として、株主の皆様への最大の貢献に繋がっていくと信じています。
――一方で、そもそもSolanaを知らない投資家をどう増やすか。ここも生き残りに直結しそうだと考えています。
南雲 : 国内ではSolanaの認知度がそもそも低いという課題があります。これはWIZE社だけで解決するのは難しい。
そこで戦略的に、6月にSBI VCトレードとの提携をリリースしました。SBI側としてもSolanaは、いま注目しているブロックチェーンのひとつとして見ている。そういった先と当社の持つアセットを組み合わせて連携していくことで、一緒に国内のSolanaの認知度を高めていく、というのが我々の考えです。将来的にも、いまはまだ言えませんが、さらなる連携を出していければと思っています。
これから ── 5年後のWIZEに関して
――前回の四半期資料にあったエコシステム構想、NFTの配布などは、今後の核になる部分だと思います。現時点ではまだこれから、という段階でしょうか。
藪 : 少しずつ進んでいます。年内には、テストの意味合いを含めた1つ目の取り組みができると思います。
――具体的には、どういう構想なのでしょうか。
藪 : WIZEには現在、「Solana事業部」と「エンターテインメント事業を担う部門」の2つがあります。エンタメ側では、食、音楽、アパレル、デジタルアートの4つの柱がすでに動き出しています。この2つの事業をどう掛け合わせるか、社内でずっと議論を重ねてきました。

Wize社決算資料 – WIZE Dual−Loop戦略ページより
これまでの「推し活」のような消費行動は、好きだからお金を払うものの、手元に資産として返ってくるわけではない一方通行な面がありました。しかし、WIZEの理念に共感しサービスを利用してくださる方々には、我々の取り組みの成果をしっかりと還元したいと考えています。
具体的には、消費の「行動履歴」をブロックチェーン上に刻み、「WIZEスコア」として貢献度を可視化します。その際、単なる無機質なデータではなく、我々のメッセージを込めたデジタルアートのNFTを付与する。これをコレクションとして集める体験が純粋な楽しさに繋がり、結果として熱狂的なファンを生み出す仕組みです。
かつてのNFTブームは投機に振れすぎたため、「失敗だった」とも言われました。私たちはその課題を改め、ワクワクするような体験は活かしつつも、きちんとした「実需」に基づき価値を還元するエコシステムを作ります。これを私は「トークン型の還元マーケティング」として展開していきたいと考えています。
そして足元で考えたとき、一番分かりやすく理念に共感してくれているのは、やはり株主の皆様です。株主の方々に対してこうしたデジタルアセットをお届けし、楽しみながら価値を共有できる形を作っていきたいという構想を持っています。
――Solana自体の話で、直近で注目している動きはありますか。
南雲 : Solanaのインフレ削減に向けた動きがあります。SIMD-0550 と SIMD-0553 という改善提案です。
まずSIMD-0550は、インフレ率の低下ペースを速める提案です。Solanaのインフレ率は現在およそ3.8%で、毎年15%ずつ減っていき、最終的に1.5%(ターミナルレート)に到達する設計になっています。この年間15%を30%に引き上げ、より早く1.5%に到達させる。現在のペースだと2032年頃ですが、この提案が通れば2029年に到達します。
単純にインフレ率が下がれば、新しく発行される通貨が減るので、その分Solanaの価格は上がりやすくなる。プラス材料だと思います。
もうひとつのSIMD-0553は、トランザクション手数料の仕組みを変えるものです。ネットワークの利用量が増えるほど、より多くのSOLがバーン(焼却)される仕組みへの変更が提案されています。ミームコインの取引や、最近だとトークン化株式の取引もSolanaが最も使われていますが、そうした利用が増えるほどバーンが進む。
新規発行が減り、使われるほどバーンされる。両方が効けば、よりインフレ削減が進むので、Solanaの価格は上がりやすくなる。これがミクロで見た直近の変化ですね。
解説 SIMD-0550・0553 の試算と現在のステータス
SIMD-0550(新規発行の抑制)
実装された場合、6年間で約1,890万 SOL の新規発行が削減され、総供給量は現行スケジュール比で約2.6%少なくなるとされる。
SIMD-0553(バーンの拡大)
日次のバーン量が約650 SOL から7,500〜9,000 SOL へ増加する可能性が示されている。
※ いずれも提案側の試算。2026年8月13日時点で両提案はバリデータのステーク加重投票にかけられており、可決・実装は決まっていない。記載の到達時期・削減効果や SOL 価格への影響を保証するものではない。
――最後に、5年後のWIZEはどんな会社になっていたいですか。あわせて、この記事で初めて御社とSolanaを知る読者へメッセージをお願いします。

南雲 : Solanaは、サンフランシスコ・ベイエリア発のプロジェクトで、創業者のアナトリー・ヤコベンコ氏とラージ・ゴカル氏も米国側の人間です。エコシステムは立ち上げからの最初の3〜4年は、欧米中心に回ってきました。DATに関しても同じで、米国が一番大きい。
そのなかでAPACにも、Solanaを盛り上げていくプレイヤーが求められていく。それはプレイヤーの分散化にも資するし、政治的な意味でも、この地域のビルダーやユーザーの発言権を強くしていくことにつながります。
APACにそういう課題感があるなかで、WIZEが果たせる役割は大きいと思っています。APAC発のSOL DATとしては、Nasdaq上場のSolana Company(NASDAQ : $HSDT)のような先も出てきています。将来的には、各国を代表するSolana企業同士でAPACにおけるSolanaの価値を上げていく。そうした動きが出てくれば、APACにおけるSolanaの拠点としてのWIZEの価値向上にもつながる。大きな目線では、そこを目指していけばいい立ち位置が築けると思っています。
藪 : Solana事業部単体の目的は、「1株あたりの資産価値を上げていくこと」です。今後は南雲さんを中心とするチームで、他の大企業との提携なども見据えながら、Solanaの価値そのものを我々の手で引き上げていきます。
そのうえで、本業のエンターテインメント事業との接続が実現できれば、社会課題だらけの世の中を大きく変えられると信じています。
先ほどの「50年前の港区の土地」の例で言えば、当時は一部の人が利益を独占しましたが、我々が目指すのは価値が広く分散される仕組みです。クリエイターが純粋に「課題解決」に向き合えば、無理なビジネス化をしなくても、応援するファンに価値が還元されていく。そんな理想の形を実現したいです。
長期的にはこの大きな野望に挑戦しつつ、中期的には日本最大かつ世界上位のSolana保有企業として、上場企業としての成功を確実に見据えています。今後も新しい取り組みを次々と発表していきますので、ぜひご期待いただき、応援していただければと思っています。
- ※ 本記事中の数値は、特記なき限り2026年8月12日時点のものです。
- ※ 記載のステーキング利回りは過去の運用実績であり、将来の利回りを保証するものではありません。
- ※ 本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄・株式の取得を勧誘するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
- ※ 本記事の取材・執筆・編集は、編集部が独立して行っています。なお、Crypto Timesを運営する株式会社ロクブンノニは、株式会社WIZEに対しIRアドバイザリー業務を提供しています。また本記事のインタビュアーは、同社が2026年8月に組成したアナリストチーム「SOL MAN’S」に社外メンバーとして参画しています。こうした関係にかかわらず、質問内容および記事の構成は編集部の判断によるものであり、株式会社WIZEによる内容の指示・承認を受けたものではありません。

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