ビットコインを売らずに家の頭金へ|価格が下がっても追証なし
よきょい

米国の住宅ローン会社Better Mortgageとコインベースが8月26日、ビットコインを担保に頭金を用意できる住宅ローンの一般提供開始を発表しました。仕組みは二本立てです。住宅そのものを担保とし、ファニーメイの基準に適合する第1順位の住宅ローンと、頭金の資金を供給する別ローン。後者がビットコインの質権と住宅の第2順位抵当で保全されます。ビットコインが住宅ローン本体の担保になるわけではない点が、この設計の要です。
現行の商品条件ではビットコインのアドバンスレートは40%、言い換えれば250%の担保が必要とされています。同社の例では、25万ドル相当のビットコインが10万ドルの頭金ローンを支えます。アドバンスレートは予告なく変更されうるとされており、この数字は公表された枠組みを示すものであって、すべての申込者への確約ではありません。
担保となるビットコインはBetter Mortgageがコインベース・プライム上に持つカストディ口座へ移され、質権期間中は書面の同意なく売却、移転、再担保できません。
価格が下がってもマージンコールは来ない
この商品の特徴は日々の価格変動だけでは追加担保の請求も強制売却も発生しない点にあります。ローン・トゥ・バリューの上昇が自動的な清算につながる従来の仮想通貨担保ローンとは、ここが大きく異なります。借り手はビットコインの経済的なエクスポージャーを保ったまま、売却せずに頭金を用意できます。250%という厚い超過担保が価格変動を吸収する緩衝材としてあらかじめ置かれている構造です。
代わりに引き金となるのは返済の延滞です。延滞は支払期日の翌日から始まり、30日以内に正常化するための猶予が設けられます。60日にわたって延滞が続いた場合、Better Mortgageは質入れされたビットコインを清算できるとしています。実際の義務と対抗手段は個別のローン契約が定めます。つまりこの商品はリスクを消したのではなく、価格リスクを信用リスクへ置き換えたと理解するのが正確です。
強制売却が起きる場面は最も条件が悪い
置き換えの結果として、清算が起きる場面の性質も変わります。返済が滞るのは通常、収入が減ったり支出が急増したりしたときです。景気後退局面ではリスク資産の価格も下がりやすいため、最も安い水準でビットコインを手放す可能性が高まります。強制売却は将来の値上がりを失わせるだけでなく、課税イベントになりうるとも説明されています。加えて第2順位の抵当により住宅そのものにも追加の担保権が設定されます。
利用の間口も限定的です。コインベースの本人確認済み口座、Better側の審査と適合ローンの要件、対象地域での購入が条件で、最低FICOスコアは680とされています。対象州は限定される可能性があるとされる一方、州ごとの一覧は公表されていません。日本では住宅ローンの担保としてビットコインを受け入れる商品は一般的ではありませんが、価格変動を担保率で吸収し清算の引き金を返済履歴に置くというこの設計は、担保評価の議論に一つの参照例を与えることになりそうです。
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