日銀当座預金がブロックチェーンに?2030年代前半にも稼働
よきょい

政府と日本銀行が次世代の決済インフラ整備に向けた検討会を今夏に立ち上げます。国債や株式の売買に伴う資金決済を24時間いつでも即時に完結させる仕組みが第一の目標で、2027年初にも整備計画をまとめる想定です。
銀行が日銀に預ける日銀当座預金の一部をブロックチェーン上で流通するトークンに変換する構想で、正式決定すれば2030年代前半の稼働もあり得ると、日本経済新聞が伝えました。
「始動」はすでに5月に語られていた
この構想は、突然浮上したものではありません。日銀が7月2日に公表した「中央銀行デジタル通貨に関する連絡協議会」第11回会合の議事要旨によれば、5月29日の会合で日銀は預金のトークン化などの動きを踏まえ、日銀当座預金のトークン化について検討を開始していると明言しています。同じ会合では全国銀行協会が、全銀ネットもデジタル決済手段に対応した新しい決済システムの検討を始めたこと、そして新システムの稼働開始目標が2030年度であることに触れ、中央銀行と民間インフラの役割分担を官民で詰める必要があると述べています。
今回の対象は金融機関同士の資金決済に使うホールセール型で、個人が日常の支払いに使う一般利用型とは目的が異なります。日銀は前述の会合で、一般利用型が現金のデジタル版としてリテール決済を補完するものであるのに対し、ホールセール型は金融機関間の資金決済を円滑にする仕組みであり、両者は並行して検討可能な論点であると整理しました。
保有上限やオートスウィング機能といった銀行預金からの資金流出を防ぐための論点は、あくまで一般利用型の側にあります。
本当のボトルネックは「T+2」のほうにある
ここで見落とされやすいのが、資金側だけを速くしても効果は限られるという点です。日本の株式決済は約定の2営業日後、いわゆるT+2で、2019年7月16日の約定分から現在の形になりました。国債はT+1です。一方、米国とカナダ、メキシコは2024年5月にT+1へ移行し、EUと英国は2027年10月11日を移行日として準備を進めています。
日本では2024年9月に「T+1化に関する勉強会」が設置され、2025年7月に中間整理が公表されましたが、移行日は決まっていません。ホールセール型の資金決済が即時になっても証券の受渡しがT+2のままなら、投資家が売却代金を即座に再投資できる状態にはなりません。証券と資金を同時に動かすDVP決済の仕組み上、遅い側が全体の速度を決めるためです。
今夏の検討会が扱うべき論点は、実はブロックチェーンの設計だけではなく、証券決済制度改革との歩調の合わせ方にあるとみられます。
3つの時計が2027年から2030年に集中する
日本の金融インフラは、いくつもの期限が近接する局面に入りました。EUと英国の株式決済がT+1になるのが2027年10月。仮想通貨の申告分離課税が始まる見込みが2028年1月。全銀ネットの新システムの稼働目標が2030年度。そして政府・日銀のトークン化基盤が2030年代前半です。それぞれ所管も目的も異なる計画ですが、いずれも「決済のスピードと、資産をデジタルで動かす前提」を作り替える点で共通しています。
証券のトークン化では米欧が先行しており、対応が遅れれば海外投資家や投資信託の投資対象から外れかねないという懸念が今回の動きの背景にあります。今夏に立ち上がる検討会の成果は、どのブロックチェーンを選ぶかよりも、官と民の役割分担をどこまで具体的に書き込めるかで測られることになりそうです。

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