TOPIX見直しで8月末が運命の判定日|仮想通貨企業に二重の壁
よきょい

引用元: show999 / Shutterstock.com
東証株価指数(TOPIX)の第2段階の見直しが、2026年10月の定期入替から始まります。判定の基準日は2026年8月の最終営業日で、当落線上にある銘柄にとっては今月の株価と出来高がそのまま採否に反映される局面に入りました。
加えてJPX総研は、仮想通貨を主たる資産として保有する銘柄について、定期入替を行う指数への新規採用を当分の間見送る方針を正式に決めています。仮想通貨を財務戦略の中核に置く、いわゆるトレジャリー企業は、流動性と資産構成という二つの基準のどちらかに直面することになります。
今回の見直しは、2022年4月の市場区分再編を契機に進められてきたものです。第1段階では流通株式時価総額100億円未満の銘柄などのウエイトを段階的に引き下げ、2025年1月末の完了時点で構成銘柄は約2,200から約1,700へ減少しました。第2段階では対象をプライム市場だけでなくスタンダード市場・グロース市場にも広げ、流動性をより重視した定期入替に移行します。
TOPIXに連動する運用資産はETFや年金信託などで約110兆円(2024年3月末時点)とされ、指数からの除外はパッシブ資金の流出につながりやすい構造です。
次期TOPIXのスケジュールと選定基準
初回の定期入替は2026年10月、2回目は2028年10月に実施されます。初回で継続採用されなかった銘柄は「移行措置銘柄」として四半期ごと8段階でウエイトが引き下げられ、2028年7月に0%となります。ただし2027年10月には再評価があり、継続基準を満たせばウエイト低減が停止される仕組みです。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2025年1月末 | 第1段階の見直しが完了。構成銘柄は約2,200から約1,700へ減少 |
| 2026年8月最終営業日 | 初回定期入替の判定基準日 |
| 2026年10月 | 初回の定期入替。仮想通貨保有銘柄の新規採用見送りもここから適用 |
| 2026年11月 | 非定期の追加・除外にも新ルールを適用 |
| 2027年10月 | 移行措置銘柄の再評価。継続基準を満たせばウエイト低減を停止 |
| 2028年7月 | 移行措置銘柄のウエイトが0%に(完全除外) |
| 2028年10月 | 2回目の定期入替 |
選定に使われるのは、年間売買代金回転率と浮動株時価総額の累積比率という二つの流動性指標です。いずれも絶対額ではなく市場全体の中での相対評価であるため、他社の株価が上昇すれば自社が変わらなくても順位が下がる点に注意が必要です。
| 項目 | 継続採用の基準 | 新規追加の基準 |
|---|---|---|
| 年間売買代金回転率 | 0.14以上 | 0.2以上 |
| 浮動株時価総額の累積比率 | 上位97%以内 | 上位96%以内 |
| 対象市場 | プライム・スタンダード・グロースの全市場区分 | 同左 |
ここで注目したいのが、絞り込みの度合いが当初の想定を上回っている点です。ニッセイ基礎研究所の試算によると、2026年5月末時点で次期TOPIXの構成銘柄数は984銘柄と1,000銘柄を割り込み、当初想定されていた1,100〜1,200銘柄を大きく下回ったとされています。
同レポートは浮動株時価総額の上昇が上位の大型株に集中したことが背景にあると指摘し、継続候補と除外候補の浮動株時価総額の中央値には約10倍の開きがあるとしています。1,100〜1,200銘柄という数字を前提にした議論は、すでに古くなっている可能性があります。
仮想通貨保有銘柄の新規採用見送りが正式決定
もう一つの論点は、資産の中身に着目した仮想通貨ルールです。JPX総研は2026年4月3日に「特別注意銘柄等の取扱いについて」を公表し、仮想通貨を主たる資産として保有する銘柄について定期入替を行う指数への新規採用を当分の間見送る案を示しました。同日から指数コンサルテーション(意見募集)を開始し、7月に正式決定に至っています。
対象は、資産合計に占める仮想通貨の比率が50%を超えることを目安に判定されるとされています。適用は2026年10月の定期入替と同年11月の非定期の追加・除外からで、すでに指数に採用されている銘柄には遡及適用されません。対象はTOPIXに限らず、定期入替を行う他の指数も含まれます。
JPX総研は理由として、指数の投資機能性と安定性の維持を挙げ、株価が保有資産の相場変動に大きく左右されやすい点や上場後に事業内容が大きく変化した事例が見られる点を問題意識として示しています。
トレジャリー企業にとっての「二重の壁」
トレジャリー企業が向き合うのは、流動性基準と仮想通貨ルールという性質の異なる二つの条件です。前者は売買の活発さを、後者は資産の中身を見るもので、適用される対象も一致しません。
まだ指数に採用されていない企業は、仮想通貨ルールによって入口で止められます。売買代金や浮動株時価総額の条件を満たしていても、資産の半分以上が仮想通貨であれば新規採用は見送られます。一方、すでに採用されている企業に仮想通貨ルールは適用されません。ただし流動性基準は引き続き働くため、売買が細れば移行措置銘柄として段階的にウエイトを下げられます。
壁は二つありますが、どちらに当たるかは採用済みかどうかで決まる構図です。
| ハードル | 内容 | 対象 |
|---|---|---|
| 流動性基準 | 浮動株時価総額と売買代金回転率で相対評価。小型株ほど除外候補に入りやすい | 既存の構成銘柄・新規候補の双方 |
| 仮想通貨ルール | 総資産に占める仮想通貨比率が50%超を目安に、定期入替を行う指数への新規採用を当分の間見送り | 指数に未採用の銘柄のみ(既存銘柄には不適用) |
国内では2024年以降、ビットコインなどを財務戦略の中核に据える企業が増えました。明確な定義はありませんが、メタプラネットを筆頭に数社から10社程度が該当するとみられています。
同様の議論は海外でも進んでいます。MSCIは総資産の50%以上を仮想通貨で保有する企業について、既存銘柄の指数除外は見送る一方、新規採用と構成比率の引き上げを行わない方針を示しました。既存銘柄のウエイト拡大まで抑える点で、JPX総研より広い範囲の暫定措置といえます。
| 指数提供者 | 既存の構成銘柄 | 新規採用・ウエイト |
|---|---|---|
| JPX総研(TOPIXなど) | 遡及適用せず、従来どおり流動性基準で判定 | 仮想通貨比率50%超を目安に新規採用を当分の間見送り |
| MSCI | 指数からの除外は見送り | 新規採用を行わず、構成比率の引き上げも抑制 |
今後の焦点
直近の焦点は8月末の基準日に向けた株価と売買代金の推移です。ニッセイ基礎研究所は、構成銘柄数が大型株集中の継続か中小型株への物色の広がりかに左右されるとして、基準日だけでなく8月中の値動きにも注目すべきだと指摘しています。中期的には2027年10月の再評価、トレジャリー企業の事業多角化がどこまで進むか、そして仮想通貨の法的位置づけを巡る制度整備との連動が論点になります。
指数から外れることは上場廃止を意味するものではなく、アクティブ運用や個人投資家という需要の受け皿も残ります。ただし、パッシブ資金という安定した買い手を欠いた状態で企業価値を説明し続けられるかどうかは、これまでとは質の異なる課題になりそうです。
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