健全なSNSの構成を目指す「Project Liberty」とは?| 次世代Webインフラの構築へ

2022/10/09・

bobotango

健全なSNSの構成を目指す「Project Liberty」とは?| 次世代Webインフラの構築へ

インターネットやウェブの発達により、社会や経済の仕組みは大きく変化し、人々の日常の行動がデータとして可視化され価値を持つようになりました。

今回紹介するProject Libertyは、現代社会における個人のデータが持つ課題にアプローチするプロジェクトです。

web2.0からweb3.0への移行でインターネットやウェブの在り方が大きく変わると囁かれている中、Project Libertyのようなプロジェクトは注目しておきたいプロジェクトと言えるでしょう。

是非、最後まで読んでみてください。

Project Libertyが掲げるインターネットやウェブの課題

Project Libertyは広告によるマーケットの活性化自体には反対しておらず、ユーザーが自分のデータに関する所有権を持ち、かつコントロール出来るインターネットに価値があると捉えています。

Project Libertyは、現在のwebインフラには以下の課題があると提言しています。

  • Facebook等のプラットフォーマーが個人のデータ、およびデータの価値を独占している実状
  • 広告収益モデルにより、注目を浴びやすい過激なコンテンツが優先され、運営企業側には金銭的ベネフィットがあることにより、公衆的な利益が軽視されがちなこと
  • アルゴリズムの設計により分極化されたコンテンツが推奨され、社会分裂が加速されていること
  • それらのアルゴリズムが企業の戦略的優位性となり、透明性が欠如している。それにより、民主主義が脅かされていること
  • 現在のウェブが公営や安全性を基盤に設計されておらず、規制や微修正で修繕することには限界があり、且つ長い時間がかかること

Project Libertyの創業者は、上記を示す内容として過去に以下のコメントを述べました。

“「世界中の人々の個人データにより、前例のない価値が生み出されているにもかかわらず、価値を生み出した人が恩恵を受けられていない現状は問題である。」”- Frank McCourt氏

https://twitter.com/unfinishedlabs/status/1467925129988509699

Frank McCourt氏はProject Libertyに合計で1億5千万ドルの財源を開発団体やエコシステムに投資するとしており、非営利的なイニシアティブに加わってくれる協力者を募っています。

Project Libertyについて

Projecty Libertyは、次世代の新しいWebインフラストラクチャーの構築を目指しているプロジェクトです。

Project Libertyチームは既存のウェブやSNSにおけるプライバシーの侵害や収益モデルに課題を感じ、社会に健全なインターネットを構築するため、Frank McCourt氏のビジョンを元に結束しました。

web2.0の仕組みの根源であるユーザーのデータを活用した広告モデルビジネスや一部のプラットフォーマーが独占している現状を打破するとともに、収益化を優先したインターネットの仕組みの正常化をコアな目的としています。

Project Libertyのアプローチ

Project Libertyは非営利団体として位置づけられており、目的を達成するために以下の3つの柱を定義しています。

・テクノロジー
・ガバナンス
・ムーブメント

以下でそれぞれ紹介していきます。

テクノロジー

Project Libertyの技術チームが開発する、次世代のインフラとなる新しいオープンソースプロトコル 「DSNP(分散型ソーシャル・ネットワーキング・プロトコル)」はProject Libertyが目指すフェアなインターネットにおいて、非常に重要な役割を果たします。https://www.dsnp.org/

  • データー所有権を保ったままプラットフォーム間で移動することができ、今までと同じ感覚でwebサービスを使うことが可能
  • 一企業が恩恵を受けていた個人データによる経済的ベネフィットを全ての人が受け取ることが可能(Brave Browser のモデルに一部似た構想)
  • サービスとは分離した非営利団体 (DSNP.org) が設計することにより、ユーザーファーストのモデルの維持が可能

DSNPについて:分散型アイデンティティ(自己主義)、データプライバシー、SNS情報(フィード)の整理方法を含むフレームワーク

ガバナンス

現在のインターネットにおける課題を解決するために、Project Libertyは新しい技術に基本原則や安全性を事前に統合する必要があると述べています。

ガバナンスフレームワークを健全に開発するために、技術者と社会科学者を招集し、 McCourt研究所が設立されました。

画像引用元:projectliberty.io

McCourt研究所は倫理的テクノロジーの最先端を歩む Georgetown大学(ワシントンDC)と Science Po (パリ)を創業パートナーに迎え、デジタルガバナンスの統合を目指しています。テクノロジーの観点からだけでなく、社会科学者、倫理学者、および政策立案者などと協力し、包括的なフレームワークの設立を試みているようです。

Project Liberty の 目的を達成するために5千万ドルが10年におよびR&D費用や助成金としてあてられます。

ムーブメント

Project Liberty はテクノロジーだけでは大規模な一般普及は難しいと考えており、同じ社会課題を掲げている様々なパートナーと健全なデジタル環境の普及を目指していきます。

  • テクノロジー、学会、アート等の領域に秀でる様々な公的機関や民間企業と共同で社会課題の包括的な解決方法を設計し、エコシステムに対してのサポートを得る
  • Unfinished (DSNP開発元)が開催するUnfinished Live 等のイベントにおいて、テクノロジーやアート、社会アクティビスト等、幅広いメンバーが参加https://live.unfinished.com/ – Facebook の whistle blower として有名なFrances Haugen氏も参加
  • 開発者を巻き込み、DSNPの倫理的なデジタルガバナンスの仕組みの教育により、DSNPを使用した新しいサービスを開発し、より多くの一般ユーザーの方にユーザーファーストの健全なデジタルライフを提供する取り組みを推進

ブロックチェーン選定プロセス

Project Libertyはブロックチェーン発のプロジェクトではないものの、同技術が不可欠であると判断し2021年の10月からコミュニティ内でチェーンのセレクションが行われ、同時にProject Liberty のビジョンに共感するパートナーを募っています。

https://forums.projectliberty.io/t/about-chain-evaluation/230

上記で紹介したDSNPの実験台としてイーサリアム上で実装されていましたが、取引コストが高い点とマージの日程が当時不明確だったため、DSNPの本格実装チェーンの選定が開始されました。

以下の判断基準を軸にチェーン選定が行われました。

  • 分散性:分散型ノードがリレーするチェーンの情報に仕組み上関心がないこと
  • コスト:金銭的なコストおよび、環境に対してのコスト。言い換えるとPoWではないこと
  • オープンソース:セキュリティ、汎用性、および持続性の観点から重要である
  • メインネット:ビルドを開始できる環境であること
  • アクティブで責任感のあるデベロッパーコミュニティ:初心者デベロッパーに対してのデベロッパーコミュニティの姿勢

2022年1月時点での8つの候補ブロックチェーン

30以上のブロックチェーンのメリットデメリットを考察・精査し、最終的にポルカドットがDSNPのベースチェーンとして選定されました。

右:Frank McCourt氏 – McCourt Global CEO、左:Gavin Wood氏 – Polkadot 創業者 | 写真:Web3 Foundation

DSNP活用のファーストステップ

DSNPを活用した新しいSNSの第一弾としてFrequencyという新しいSNSが今後ポルカドットのパラチェーンとしてローンチされる予定です。

McCourt Globalによるテクノロジービジネスユニットの Unfinished Labsにより開発が手がけられており、Project Libertyエコシステムにおいて始めてのブロックチェーンの活用事例となります。

https://www.coindesk.com/tech/2022/06/29/meet-frequency-polkadots-new-decentralized-social-media-parachain/

Frequencyを通じてFrank McCourt氏やUnfinished Labsのプレジデント Braxton Woodham氏(DSNPのリード設計者)、その他大勢の思い描いている健全なインターネットの第一歩を踏み出すとしています。

Project Liberty チームの紹介

Project Liberty は独立した非営利団体ですが、McCourt Globalの様々なビジネスユニットがProject Libertyの開発にかかわっています。

Project Liberty創立者、McCourt Global, CEO – FRANK McCOURT

Frank McCourt 氏はMcCourt Global – Family企業のCEOであり、数々の不動産、スポーツ、テクノロジー、メディアや金融ビジネスを運営しており、フランスのサッカークラブの Olympique de Marseille の現オーナー、ベースボールチームLos Angeles Dodgersの元オーナーとして幅広く知られています。

彼は数々の学問、民政、文化研究期間のサポーターであり、Project Libertyの創立者です。Project Libertyの重要な一角であるDSNPを通じ、社会全体に健全なオープンソースSNSフレームワークを提供。自身の幅広い人脈によるパートナーシップや研究資金を元にインターネットのガバナンスモデルをユーザーファーストな視点で構築する取り組みを進めています。

Labs, President – BRAXTON WOODHAM

Braxton Woodham氏は Unfinished Labのプレジデントであり、DSNPの開発の第一人者です。

彼はテクノロジーの分野において20年間の長い経験を持っており、過去にはFandangoのCTOおよびCPOとして活動していました。又、アメリカ空軍に属し、キャプテンの称号を有していました。

McCourt Institute, Inaugural Executive Director – SHÉHÉRAZADE SEMSAR-DE BOISSÉSON

Shéhérazade Semsar氏は2021Inaugural Executive Director として、2021年にMcCourt Instituteに入社しました。プログラミングの監督、イベント開催の取り組みやProject Libertyに当てられる学術助成金資金のとりまとめ等、幅広く活動しています。

彼女は2015年から2021年まで、POLITICO Europeという中立的なメディアのCEOを勤め、強いリーダーシップを発揮し、同社をヨーロッパにおけるトップの出版会社に導きました。

Unfinished, President – PAULA RECART

Paula Recart氏はUnfinishedのプレジデントであり、McCourt Globalの社会的影響における取り組みを監督しています。2019年から McCourt Global に在籍しています。

彼女は以前12年間 社会起業家のネットワークを持つことで有名な Ashokaにおいて重要なリーダーシップポジションに就いていました。

考察

Project Liberty は現在のインターネットにおいての個人情報の扱かわれ方に課題を感じ、SNSの仕組みを根本から変えるという非常に大がかりなプロジェクトです。

GAFAを筆頭にプラットフォーマーが大きな力を持つことになり、利益を重視する株式会社というポジションがゆえに、より収益性の高いアルゴリズムが強行されることにより、民主主義が脅かされているという現状について強い課題意識を感じています。

筆者は、以下の理由でProject Libertyに注目しています。

  • ビジョン・ドリブンで社会課題に向けた解決策に取り組んでいる点。ブロックチェーンを使ったフレームワークを作ることが目的なのではなく、インターネットの健全化という目的を達成するためにブロックチェーンの技術を活用している。
  • Franc McCourt氏および、複数の関連団体から多額のファンディングを受けており、多くのWeb3プロジェクトが資金調達に重きを置いている中、公的利益を重視している点。
  • リサーチドリブンなアプローチで、コミュニティを巻き込み、ブロックチェーンを選定。様々なチェーンの特性を考慮した後、最終的にポルカドットを選んでいる点。
  • テクノロジー視点だけでなく、社会科学、倫理学の視点を取り組んだ包括的なフレームワークを設計しており、その分野の様々なエキスパートを巻き込んでいる点。
  • 今後のポルカドット・パラチェーンオークションにおいてFrequencyがパラチェーンになる可能性がある点。

Facebookに対してのFrances Haugen氏の内部告発が記憶に新しいところですが、プラットフォーマーの問題に対しての課題意識をお持ちになられている方は多いのではないでしょうか?

近年DeFiやGameFiをはじめとしたユースケースは主流になりつつありますが、今後はソーシャル分野のBIGプロジェクトが出てきてもおかしくない頃だと認識しています。

まとめ

インターネットやウェブの課題解決を目指すプロジェクト「Project Liberty」について解説してきました。

今回紹介したProject Libertyは、既存プロジェクトと比較してもより本質的なアプローチをしているように感じられます。

本記事を読んで興味を持った方は、是非下記公式リンクより最新情報をキャッチアップしてみてください。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

– 公式リンク –

ニュース/解説記事

Enable Notifications OK No thanks