ステーブルコインは「通貨」に入るか|FRBスタッフ論文が論点整理
よきょい
米連邦準備制度理事会(FRB)は9月4日、「新しい形態の通貨と米国のマネーサプライ統計」と題するスタッフ論文をFEDS Notesで公開。決済用ステーブルコインを狭義流動性M1または広義のM2へ算入する場合に何を解決する必要があるかを整理した内容です。
判定の軸は経済的な用途です。家計や企業の日常的な支払いに使われるなら即時移転性からM1に近く、価値の一時保管や仮想通貨取引の流動性として使われるならM2のうちM1以外の部分に近い、という整理になります。
トークン化された銀行預金は法的に預金のままであるため既存統計に含まれており、リテール向けのトークン化マネー・マーケット・ファンドも既にM2に入っています。決済用ステーブルコインだけが現在はどの統計にも入っていません。
二重計上という会計問題
中心的な難所は準備資産の側にあります。GENIUS法のもとで許容される準備資産には銀行預金、財務省証券、政府系マネー・ファンドが含まれますが、このうち銀行預金や政府系ファンドの純資産は既にM1やM2で捕捉されています。
発行体がドルを受け取り、その一部を銀行預金やファンドに置いてトークンを発行した場合、額面でトークンを数えると、裏付けが別の項目として既に計上されたまま新しい行が加わることになります。
サークルの7月31日時点の月次アシュアランスでは、USDCの流通量が718億2,600万枚、準備資産の公正価値が719億400万ドルと報告されています。これは特定時点の裏付けを示す数字であり、統計への純増分を示すものではありません。
日本の統計にも同じ問題が待っている
用途の測定にも別の困難があります。国際決済銀行が6月に公表したワーキングペーパーは、2025年にイーサリアム上で実行されたUSDT、USDC、PayPal USD関連の1億4,100万件の取引から5億9,300万件超のイベントログを分析し、取引の約3分の1が複数の工程やログを生み、転送イベントの約60%が複合取引の内部で発生していたとしています。生の転送件数をそのまま決済件数と読むと、決済としての役割を過大に見積もることになります。
日本にも同じ論点があります。2023年6月施行の改正資金決済法はステーブルコインを「電子決済手段」として仮想通貨と区別し、発行者を銀行、資金移動業者、特定信託会社に限定しました。裏付けの多くが国債と預金で構成される以上、日本銀行のマネーストック統計でも将来同じ重複調整の問題が浮上します。
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