NISA年内復活「2027年1月施行」は誤り|損失に手厚いのは仮想通貨
よきょい

「NISAで売却した非課税枠が、その年のうちに復活するようになる」。この話をここ数カ月、目にした人は多いはずです。2027年1月施行が決まったと書いている媒体もあります。ただ、一次資料を確認すると、この改正はまだ決まっていません。現在も、売却で空いた非課税保有限度額が使えるようになるのは翌年1月1日からです。
経緯はこうです。金融庁は2025年8月の令和8年度税制改正要望で、NISAについて3つの項目を挙げました。子ども支援としてのつみたて投資枠の年齢要件の見直し、対象商品の拡充、そして投資商品を入れ替えやすくするための非課税保有限度額の当年中の復活です。同年12月19日に公表された税制改正大綱には、前の2つが盛り込まれました。0歳から17歳を対象とした年間60万円・限度額600万円の枠が2027年から設けられ、つみたて投資枠の対象指数も追加されます。
しかし3つ目の当年中復活は見送られました。金融庁自身が公表した大綱の解説資料にも、この項目の記載はありません。そして同庁は2026年8月31日に公表した令和9年度税制改正要望で、同じ内容を継続要望として再び提出しています。
仮に実現しても、効く人は限られる
誤解を解いたうえで、実現した場合の影響も冷静に見ておく価値があります。年間投資枠が360万円であることは変わりません。つまり年内に360万円を使い切っていれば、売却しても追加の買い付けはできません。また復活するのは取得価額の分だけです。400万円で買った投資信託が600万円になった時点で売却しても、戻るのは400万円分にとどまります。恩恵が実感できるのは、生涯投資枠1800万円に到達した人が中心で、満額で積み立てても到達は2028年から2029年ごろになります。
対照的だったのが仮想通貨です。同じ2025年8月の要望リストには、仮想通貨取引に係る課税の見直しも入っていました。そしてこちらは大綱に盛り込まれました。金融商品取引法等の改正を前提として、居住者が取引業者を通じて譲渡した場合の所得を申告分離課税とすること、デリバティブ取引も分離課税とすること、ETFについては投資信託法施行令の改正を前提に組成を可能としたうえで分離課税とすること、そして損失について3年間の繰越控除を認めることが明記されています。
実際、2026年3月31日には所得税法等の改正法が成立し、7月15日には金融商品取引法と資金決済法の改正法が成立、7月23日に公布されました。
損失の扱いが逆転する
ここで一つ、あまり指摘されない逆転が起きます。NISAには損益通算も繰越控除もありません。NISA口座内で損失が出ても他の口座の利益と相殺できず、そのまま切り捨てになります。非課税制度である以上、利益に課税されない代わりに損失も認識されないという整理です。一方、仮想通貨に導入される分離課税では、3年間の繰越控除が創設されます。値動きが大きい資産ほど繰越控除の価値は高く、この点だけを見れば、課税される仮想通貨のほうが損失に対して手厚い設計になります。
もっとも仮想通貨側も適用はこれからです。分離課税は金融商品取引法の改正施行を前提とするため、開始は早くても2028年1月とみられています。整理すると、NISAは制度としては先行しているものの柔軟性の改善が2年続けて見送られ、仮想通貨は制度整備が一気に進んだものの適用が先送りされている状態です。どちらにも「決まった」と「効く」の間に距離があります。
なお令和9年度の要望には、個人向け国債について「国債保有者層の多様化」と「個人投資家の資産形成ニーズへの対応」の観点から税制を検討するという項目も含まれました。長期金利が3%を超えた局面でこの検討が動けば、安全資産とリスク資産の綱引きはさらに複雑になります。次の節目は今年12月の令和9年度税制改正大綱になりそうです。
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