トランプ一族の仮想通貨資産23億ドルが足かせに|最重要法案CLARITYは上院で足止め

トランプ一族の仮想通貨資産23億ドルが足かせに|最重要法案CLARITYは上院で足止め

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米国の仮想通貨市場構造法案「CLARITY法案(H.R.3633)」は9月15日、上院で審議入りに必要な60票を確保できず、賛成49・反対50で手続きが止まりました。共和党は民主党の要求126項目を反映した635ページの最終案を用意していましたが、法案作成に関わってきた民主党議員7人も反対に回りました。

決裂の中心にあったのは公職者の仮想通貨保有を制限する倫理規定です。その背後には集計で約23億ドルとされるトランプ一族の仮想通貨関連収益があります。

民主党7議員が離反、最後まで続いた倫理規定の協議

9月15日のクローチャー(討論終結)採決ではギリブランド、ワーナー、ブッカー、ウォーノック、ガレゴ、アルソブルックス、コルテス・マストの民主党7議員が反対票を投じました。いずれも法案作成に関わってきた議員です。

採決直前まで公職者の仮想通貨保有に関する倫理規定を巡る協議が続いていましたが、上院銀行委員会のティム・スコット委員長側が合意に至らないまま協議を打ち切ったとされています。

共和党が週末に公開した最終案には仮想通貨関連で大きな金銭的利害を持つ連邦高官に対し、保有資産の売却か適格なブラインド・トラスト(白紙委任信託)への移管を義務付ける規定が盛り込まれていました。トランプ大統領自身も高官の利害に対する規制強化に同意していましたがそれでも採決は1票届きませんでした。

「制限が薄い」反対派が問題視した執行の抜け穴

民主党側が問題視したのは倫理規定そのものではなく実効性です。スロトキン上院議員は大統領一族や政権高官への制限が「あまりにも薄い」と批判しました。

エリザベス・ウォーレン上院議員のスタッフは最終案では司法省が主要な執行権限を握り、ホワイトハウスの倫理担当者が認めた行為には州が対応できないと指摘。州司法長官の関与は実質的に限定されると主張しています。

この対立は7月から続いています。共和党は7月22日の草案にも倫理規定を追加しましたが、ウォーレン氏は「投資に関する適用除外」「関連会社を通じた保有」「司法省のみによる執行」の3点を抜け穴として挙げていました。

8月にはティリス(共和)、ガジェゴ(民主)両議員が大統領や連邦高官にデジタル資産企業からの投資撤退を義務付け、司法省が執行しない場合には州司法長官が司法省を提訴できる権限まで盛り込んだ超党派案をホワイトハウスに提出しています。

最終案がこの水準に届かなかったことが対案提出者でもあるガレゴ氏らの反対票につながったとみられます。

一族の収益23億ドル、投資家の損失とほぼ一致

倫理規定が大きな争点となる背景には規制を主導する大統領の一族がその市場の有力プレイヤーでもあるという構図があります。

ロイターの集計によれば、トランプ一族に関連する仮想通貨事業は2024年11月の大統領選後から2026年4月までに税引き前で約23億ドルの収益を上げました。同期間のコインベースの収益21億ドルを上回る規模です。

最大の収益源はWorld Liberty Financial(WLF)で一族関連の事業体はトークン販売収益の75%を受け取る契約上の権利を持ち、推定9億8700万ドルを得たとされます。ミームコイン「TRUMP」も推定6億1600万ドルをもたらしました。

米政府倫理局の資産開示報告書でもトランプ氏個人が仮想通貨関連事業から10億ドル超の収入を得ていたことが明らかになっています。

一方、この約23億ドルは事業に投資した個人投資家らの推定22億5000万ドルの純損失とほぼ一致すると指摘されています。9月15日の採決ではサンダース上院議員も一族の収益を理由に反対を訴えました。

一族の事業は現在も拡大しています。WLFは約40億ドル規模のステーブルコイン「USD1」を発行し、8月には通貨監督庁(OCC)から全国信託銀行設立の条件付き予備承認を取得。エリック・トランプ氏が関与するAmerican Bitcoinは8,002BTCを保有しています。

倫理規定が厳格化されれば、WLFからの撤退を迫られる可能性も指摘されており、規定の強さを巡る攻防は一族の資産に直結します。トランプ氏自身は一族の収益について「違法な点や悪いことは一切ない」と主張しています。

8月の先送りから否決へ、続く停滞

法案は2025年7月に下院を294対134で通過し、2026年5月には上院銀行委員会も通過しましたがその後は倫理条項を巡る駆け引きで停滞しています。

8月には採決自体が9月へ先送りされ、Polymarketの年内成立確率は14%まで低下していました。8月19日にはトランプ大統領がホワイトハウスに業界首脳を集め、「公正な版のCLARITY法案」の可決を要求。コインベースのブライアン・アームストロングCEOも60票超の賛成獲得を目標に掲げましたが1カ月後の採決では届きませんでした。

今回の結果は法案の最終的な否決ではありません。ただし復活には、共和党が「最終案」と位置付けた倫理規定を再び開き、交渉をやり直す必要があるとみられます。

譲歩を重ねても民主党議員の反対を止められなかった共和党と一族の資産構造に踏み込まない限り賛成しない民主党の一部。市場が待つ規制の明確化は大統領一族の資産という法案外の問題に足を取られたまま先行きが見えない状況といえます。

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