金利3%時代は円ステーブルコインに追い風か|残るは規模の壁
よきょい

ドル連動ステーブルコインUSDC発行元サークルの決算は、この事業の正体を端的に示しています。6月30日までの四半期で総収益7億130万ドルのうち準備資産の運用益が6億6770万ドル、率にして95.2%を占めました。取引関連の収益は530万ドルです。USDCの送金額が年間32兆ドルに達しても、稼いでいるのは送金手数料ではなく預かった資金を運用した利息だという構造です。
この収益モデルは日本では長らく成り立ちませんでした。政策金利がゼロ近辺やマイナス圏にあった間、円建てのステーブルコインは利用者から預かった円を安全資産で運用しても収益がほとんど生まれません。発行すればするほどシステム費用と法令対応の費用だけがかかる。円建てが世界のステーブルコイン市場でほぼ存在感を持てなかった理由の一つは、この単純な採算の問題にあります。
制度と金利が同じ年に動いた
その前提が2026年に二つの面から変わりました。制度面では、6月1日に施行された改正資金決済法により、信託型ステーブルコイン(特定信託受益権)の裏付資産について、発行額の50%を上限に国債および定期預金での運用が認められました。それまでは全額を要求払預貯金で管理する必要があり、運用の余地がほぼありませんでした。
金利面では、日銀が6月16日の会合で政策金利を0.75%から1.0%へ引き上げ、1995年以来31年ぶりの水準となりました。9月1日には10年国債の利回りが3%を突破しています。裏付資産の半分を短期国債で運用できる制度と、その国債に相応の利回りが乗る金利環境が同じ年に揃ったことになります。発行残高が積み上がれば、円建てでも準備収入が事業として成立する条件が初めて整った形です。
それでも残るのは規模の壁
課題は残高です。世界のステーブルコイン市場は時価総額で約3100億ドル規模とされ、その8割から9割をドル建てが占めます。円建ては5000万ドル前後、全体の0.02%にも届かない水準です。国内初の資金移動業型として2025年10月に発行が始まったJPYCの累計発行額も、2026年4月15日時点で21億円を超えたところです。準備収入は残高に比例するため、この規模では収益モデルとして機能しません。
動きは出ています。三菱UFJ銀行、みずほ銀行、三井住友銀行の3行は6月10日に共同発行の覚書を締結し、2027年3月までの商用取引開始を目指しています。裏付けは現金と短期国債で、想定用途は証券決済です。ただし金利は上がるだけでなく下がることもあります。
サークルの決算は準備収入モデルが成立し得ることと同時に、その事業が金利水準に全面的に依存する脆さも示しています。円建てが後発である分、そこを織り込んだ設計ができるかが問われることになりそうです。
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