特集・コラム
2019/04/170xが発表した $ZRX トークンエコノミクス改善案『ZEIP-31』とは?
ZEIP-31とは、分散型取引所のプロトコルである0xが発表したZRXのトークンエコノミクスに関する新たな改善案の一つです。 0xの長期的な発展に大きく寄与する可能性のあるこの提案は、コミュニティでも大きな注目を集めています。 本記事では、新たに発表されたZEIP-31にどのような特徴があるのか、具体的に何が改善されるのかという点に関して要約していきます。 ZEIP-31の概要 今回、0xによって発表されたZEIP-31とは、主にマーケットメイカーにliquidity(流動性)提供のインセンティブを付与するために考案された、ステークをベースとした新たなトークンエコノミクスの改善案になります。 以下、具体的な変更点の要約になります; マーケットメイカーは0xのトークンZRXをステークすることで、liquidity提供に対する報酬を獲得することができる - 彼らはステークのプールを作成することができ、ユーザーも同様にステーキングを行い報酬の一部を獲得することができる - ZRXをステーキングしている状態であっても、Votingなどのコミュニティのガバナンスは参加が可能 マーケットメイカー・テイカーはそれぞれ設定された手数料(ZRXではなくETH)をコントラクトアドレスに対して支払う必要性が生じる - 手数料はEthereumのネットワークに対して支払うものと同額なので、ユーザーに手数料の決定権がある 手数料として支払われたETHはコントラクトアドレスにpoolされる - この一部はZRXをステークするマーケットメイカーに対して報酬として支払いが行われ、その他はエコシステムに貢献するプロジェクト等に対してGrantとして適宜支払われる この提案では、これまで0xの投票プロセスやガバナンスがより強力に、コミュニティ主導となるようにデザインが施されています。 0xのエコシステムにおける参加者 0xのエコシステムには、以下の図に示されるよう①~③の参加者が存在します。 ここでは、改善案が実装される前のモデルとして解説をしていきます。 [caption id="attachment_35756" align="aligncenter" width="921"] https://www.youtube.com/watch?time_continue=2&v=s2wlzlQxd5E より抜粋[/caption] ①のリレーヤー(Relayer)は主にオフチェーンでのオーダーブックの管理を行います。彼らは手数料を徴収する権利を持ちますが、取引を執行することはできません。 ②のマーケットメイカーは売り買いの板を出すことで、マーケットに流動性を提供する役割を果たします。このプレイヤーは裁定取引(アービトラージ)により利益を得ることができます。 ③の個人投資家(テイカー)は手数料(Ethereumのネットワーク手数料)を支払うことで流動性にアクセスし即座に取引を行うことができます。 今回の改善案の提案に関して ZEIP-31の改善案においては、②のマーケットメイカーに対して、裁定取引という形ではなく0xのトークンであるZRXをステークさせ、それに対して報酬を付与するトークンエコノミクスを導入ことで、マーケットメイカーに対して流動性提供に対するより大きなインセンティブを提供していくことを目的としています。 また、マーケットメイカーはステーキングのプールを形成することが可能となり、これにより個人投資家もステーキングによる報酬を獲得することが可能となります。 提案の背景とされる以下のイメージは、現状の0x市場参加者の比率を表しています。 [caption id="" align="aligncenter" width="800"] 0x Mediumのアナウンスより抜粋[/caption] 二つの項目; traded on 0x (0x上で取引を行った) hold ZRX tokens (ZRXトークンを保有している) をもとにアドレスが3つのグループに分類されていますが、長期的な0xのエコシステムの発展を考える場合、イメージ中央の2項目に当てはまる人々が不可欠となります。 ZEIP-31実装において起こりうる事象の考察 具体的にこのZEIP-31を実装していくことでエコシステムにどのような変化がもたらされるのか、という点に関して考えていきたいと思います。 エコシステムにおけるユーザー層の変化 ZRXのステーキングに対する報酬が導入されることで、より多くの人々がZRX保有のメリットを享受することが可能となります。 また、流動性が高ければそれだけ0xのミッションである、価値が自由に行き来するエコシステムの実現により近づくものとなるでしょう。 取引に別のモデルで手数料を徴収するという部分に関して これは、余分に手数料が徴収されてしまうことを考えると、ユーザー的にはマイナスであるように思われます。 しかし、裁定取引による利益獲得の機会を狙うBOTなどの存在からも手数料を徴収することが可能となるため、これは0xのエコシステムの発展に貢献することになります。 これにより取引BOTが消えるということであれば、ユーザーはより自由に取引を行うことができるようになるため、どちらにせよポジティブなものになると考えることができます。 ZRXのトークン価値について Relayer(リレーヤー)は0xの仕組み上、マーケットメイカー・テイカーから自由に手数料を徴収することができます。 この部分を考慮すると、パブリックで流動性の高い取引を実現するというユーティリティに対して先ほどの中央の層が増えることで、ZRXの保有と0x上での取引という部分が一致していくことになります。 改善案の導入で、リレーヤー・マーケットメイカー・テイカーのインセンティブが上手くAlignedされた形になり、これまでよりエコシステムの拡大にZRXのトークン価値が敏感に反応するのではないかと考えています。 ZEIP-31 概要・キーポイントまとめ 今回発表されたZEIP-31の要点は以下になります。 テイカーが0xを利用した取引において少額の手数料を支払う マーケットメイカー(MM)は流動性の提供に対する報酬を以下の二通りの方法で受け取る - テイカーが支払う手数料の一部 - ZRXトークンのステーキング ZRXを十分に保有していないMMはZRXのステーキングプールを形成することができる また以下は今後の予定になります。 コミュニティによるディスカッション、詳細の確定、監査等 2019年Q3を目途に実装を目指していく 0xが今後どうなっていくか要注目です。
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2019/04/17オーストラリアのスタートアップからビットコインキャッシュがあらかじめロードされた紙幣が登場
オーストラリはメルボルンに拠点を置くスタートアップのGlobal Notesは、ビットコインキャッシュ(BCH)があらかじめロードされた紙幣をローンチしました。 Global NotesはBitcoincashnotes.comというウェブサイトを運営しており、サトシナカモトの考案したP2Pデジタルキャッシュシステムを支持しています。同社はBCHチェーンの安価な手数料は経済的実現性のために大切だと主張します。 豪スタートアップからBCHの紙幣が誕生 Global Notes社はこの度、少額のBCHがあらかじめロードされた無記名債券(紙幣)を発表しました。この紙幣はレストランなどのお店でチップを渡す際や、友人や家族にギフトとして贈る際に使われることを想定しています。 Bitcoincashnotes.comによると、最初にリリースされたバージョン0.1.0では一枚あたり1mBCH(0.001BCH/12円相当)がロードされています。 「Bitcoin cash notesはあらかじめBCHがロードされたまるで本物のお金のような紙のウォレットです。それぞれの紙幣には不正防止開封シールによって保護されたプライベートキーが添付されており、いつでも好きな時にビットコインキャッシュにアクセスすることができます。」 現在は通常の紙幣セットと、コレクター向けのレアな番号が割り振られた紙幣の二種類が販売されています。 紙幣のデザインは米ドル紙幣に似ていますが、中央には大統領の代わりにDorian Nakamotoの写真が採用されています。そして、パブリックキーもプライベートキーと同様に紙幣に印刷されているので、もらった直後でも、急にBCHが必要になった時にでも資産を取り出すことができます。 Dorian Nakamotoとは?Dorian Nakamoto氏は米国在住の日本人で名前をドリアン・プレンティス・サトシ・ナカモトと言います。ビットコインの開発者を追っていた記者によって発見され、一時サトシナカモト本人だと話題になりましたが、ドリアン氏とサトシナカモト氏のアカウント両方から関連性を否定する声明文が発表されています。 紙幣の最上部にはその紙幣が発行された年月日と、Global NotesがBCHを紙幣にロードしたという内容が注意書きとして記載されています。不正防止開封シールの下には、キーにアクセスし資産を回収した場合、この紙幣は無効になるという旨の注意書きが書かれています。 「不正防止開封シールの左上には4桁のコードが印刷されており、一度剥がした後にシールを再び貼れないような仕組みになっています。そしてその4桁のコードはビットコインキャッシュアドレスの下4桁と一致するようになっています。」 裏面にはオレンジ色の背景にビットコインキャッシュのロゴが大きく印刷されており、「暗号学では人々はお互いを信頼する」と記載されています。 また、全ての紙幣にはIDとバージョンが割り振られており、このIDによって価格設定に差がつけられています。 通常の紙幣5枚セットは0.1624BCH(2,080円相当)で販売されているのに対して、200番から499番の紙幣は一枚あたり0.1068BCH(1,370円相当)で販売されています。最も高額な値段がつけられているのは10番から99番で一枚あたり0.9616BCH(12,320円相当)とかなり高額になっています。 さらに、1番から9番の一桁台は入札制となっており、明確な価格は提示されていません。 Global Notesは経済的自由の実現を目指す Bitcoincashnotesは顧客からの信頼を大切にし、高いレベルでの誠実さを実現していると主張します。 プライベートキーを保護するのに使われているシール一つに着目してみると、シール自体が光を通さない低透過率仕様になっており、表面にはランダムな文字列が印刷されているほどセキュリティ対策に力を入れているようです。 さらにBitcoincashnotes.comは顧客が自分の目で紙幣の安全性を確かめることも可能だとし、確認する方法を紹介しています。 一つ目の方法は同社が公開しているアップデート履歴と紙幣のバージョンおよびIDを照らし合わせて確認するという方法です。また、別の方法としては、不正防止開封シールの左上に記載されている4桁の数字とBCHアドレスの下4桁が合致するかどうかを確認する方法が紹介されています。 一方でBitcoincashnotes.comはアルジェリア、バーレーン、バングラデシュ、ボリビア、中国、エクアドル、イラクなどを含む15カ国には紙幣を配送しないとしています。そして、全ての紙幣はビットコインキャッシュでのみ購入が可能となっています。 Bitcoincashnotes.comは社会的企業だと自負しており、仮想通貨のP2Pシステムを用いて世界を変えることを最終的な目標としているようです。 「私たちは長期的にはこの紙幣が世界中の銀行口座を持たない30億人に経済的自由を提供するものに変化を遂げていくことを期待しています。しかし、現時点ではこの紙幣は銀行口座を持つ人にとっての小さな楽しみでしかありません。」 まとめ ビットコインを用いた紙幣は既に商品化されており、販売されていますが、ビットコインキャッシュの紙幣は初めての試みなのではないでしょうか。 世界中の銀行口座を持たない30億人に経済的自由を届けたいという企業理念を掲げる割に中国やバングラデシュなど銀行口座を持たない人が数多く生活する国には紙幣を配送しないという点にはツッコミたくなりますが、追々解決されていくことを信じたいところです。 数十円相当のBCHがロードされた紙幣に数百円を支払うのはコスパが良いとは決して言えませんが、友人にギフトとして送ってみると意外に喜んでくれるかもしれませんね。
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2019/04/16専業トレーダーえむけんの仮想通貨市場分析!【4月16日】
どうも、みなさん、こんにちは。えむけん@BinaryMkent です。 前回の更新からBTCも一時形を崩してきましたね。しかし、そんな中でも比較的底硬そうな推移をしています。 前回の盛り上がりから若干ひと段落したところではありますが、次の大きな動きに備えるべく、今回もじっくり分析していきましょう! BTCチャートの分析 BTCチャート(長期) 今回も、前回同様ログスケールを利用して分析を進めていきます。 前回記事では、白ラインを想定シナリオとしてお話しさせていただきましたが、その後底固い推移をしながら、高値周辺のチャネルを守りながら上昇していきました。 専業トレーダーえむけんの仮想通貨市場分析!【4月6日】 - CRYPTO TIMES さて、前回更新後から一部ラインの修正などを行いましたが、依然ここからのロング(短期以外)については、RRもさほど優秀でないため、買い方に回るのであればもう少し様子を伺うべきでしょう。 具体的に言うと、スイング目線でのLを持つのであれば、白シナリオのような押し目(黄色レジスタンスのリターン)を作りにいってから・・・、が最も無難だと思われます。 ではこれらを前提に、中期チャートの分析に移りましょう。 BTCチャート(中期) 前回記事更新時には、4時間足でのパターン形成が確認できませんでしたが、前回記事でお話しした緑チャネル下抜け後の下げ止まりポイントから、このようなチャネルを形成していることが分かりました。 ですから、まずは「この4時間足のチャネルを下抜けるのかどうか?」に注目し、下抜けるようであれば、先ほどの長期分析でお話しした押し目(黄色レジスタンスのリターン)でスイング買い、下抜けないのであればそのまま再度高値トライ・・・という形で立ち回っていくのが妥当だと思われます。 さて、今回はこれらを踏まえた上で短期(1時間足)の流れについても確認してみましょう。 前回記事でお話ししたチャネル(緑)を下抜け、大きく下落するも再度持ち直しました。そして、この時の下げ止まりポイントから大きなチャネル(太)を基準に推移していることが分かりましたね。 つまり、現状4時間足のチャネル(太)を基準に推移しており、その中にさらに小さなチャネル(細)を2つ形成して推移しているわけです。 一つ目はチャネルを形成した後、チャネル上限を無視して高値を更新、そして徐々に白ウェッジへと転換していきました。 そしてその下抜け後、一気に下落。しかし、比較的早い段階で切り返し、現状大きなチャネルの下限周辺にて、比較的緩い角度のチャネルを形成して推移しています。 今回は、前回のシナリオ考察を引き継いで、具体的にどうやって立ち回っていくか?を考察してみました。 BTCチャートの総評 現状、この緑チャネル(太)を押しのけて再上昇していく可能性もありますし、これを下抜け、当初予想していた黄色ゾーンまで押し目を作りにいく可能性もあります。つまり、売りであれ買いであれ、比較的長期のポジションが取りづらい状況です。 ですから、1時間足の小さなチャネルを参考に短期トレードをしつつ、「4時間足の大きなチャネルを抜けるのか?それとも守るのか?」を観察、状況次第では短期ポジションをスイングまで引き伸ばして立ち回る・・・という動き方がベストだと思われます。 少し長くなってしまいましたが、次に仮想通貨市場のドミナンス分析を行いましょう。 ドミナンス分析 ドミナンスチャートに関しては、「Trading View」を参考することにしております。 前回から大きく変わった点としては、「Others(その他)」のドミナンスが下落し、BTCならびにTetherのドミナンスが上昇している点でしょうか。 これだけで断定することは出来ませんが、全体的に一部アルトが利食いに向かっており、それらの利食いに伴ってBTC、もしくはTetherのドミナンスが上昇している可能性が高いと思われます。 特にOthersにまとめられるようなマイナー通貨には、リスクオン、リスクオフの動きが顕著に現れます。その前提を踏まえて考えると、現状はマイナーアルトの利確期(BTCorUSDT)、もしくは比較的出来高が安定しているメジャーアルトに資金が流れていると思われます。 ですから、ここから「さらに資金が抜けるかどうか?」はこの間にドミナンスが上昇しているETH、ADA、BCH(BCHABC)の推移がキーになると見ています。 当然、BTCの状況にもよりますが、ここで上記3通貨の状況が好転すれば、逃げていた資金が出戻りする可能性も考えられますし、そうなればBTCも再度高値トライする可能性が高くなってきます。 では、次に主要アルトコインの分析に移りましょう。 主要アルトコインの動向 特に気になるのはADA、BCHABC、EOS、LTCといったところでしょうか。どれもBTCと連動して動いている様子が伺えますね。 では早速、これらの主要アルトコインの推移を分析しながら、「ここからさらに資金が抜ける可能性はあるのか?」について分析していこうと思います。 ADA 2月頃に記事内にてご紹介して以降、かなり大きく上昇しましたね。そして現状は、大きく上昇した後の調整段階です。 恐らく、調整波内でパターン形成をしていないため、ざっくり「半値を守るかどうか?」というのが節目になってくると思われます。ここを守れず・・・となると、再度逆三尊ネックライン(1350sats)までは売り優勢の展開になってくるでしょう。 BCHABC 黄色ラインの直近高値を上抜け、BTC建てでの最高値を更新しました。その後、調整に入るも、「守るべきラインを守りつつ、レジスタンス上抜け」と、チャートとしては依然高値更新にも期待出来る展開です。 不安要素としては出来高の衰退ですね。BTCもどっちつかずな状況ですから、恐らく、まだしばらくは現在の価格帯にて停滞すると思われます。 つい、焦ってしまうような展開ですが、ここからの手出しはリスクも高いため、無理に飛び乗らず、ここからのパターン形成などを元に売買判断するのが妥当でしょう。 EOS 今回、BTCの上昇と一緒に上昇してきたEOSですが、ここ最近の推移を見た所、アルト市場におけるEOSの立ち位置が以前にも増して大きくなってきたように思います。 チャート的には、安値を基点としたチャネルを基準に推移しており、現状チャネル上限周辺にて、上ヒゲを複数回つけた後の高値更新できずといった状況で、若干の「上げ疲れ」が伺えますね。 総評(まとめ) 今回は、以前よりも若干深堀りしたため、少し長くなってしまいましたが、いかがでしたでしょうか?それでは最後にまとめに移りましょう。 BTCは大チャネルと小チャネルに注目 大チャネル下抜けで本格調整 →レジスタンスのリターン期待 EOS、ADA、BCHABCに注目 →資金抜けの参考に 今回はここまでにさせていただきます。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。 現在、私えむけんが制作した初心者~中級者向けの有料note、『7日間でマスター!テクニカル分析とそれを元にしたトレード戦略』、好評販売中です!今回のような、BTC分析やアルトコイン投資などの立ち回り方についても解説しておりますので、是非ご覧ください!(詳しくはコチラ)
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2019/04/06専業トレーダーえむけんの仮想通貨市場分析!【4月6日】
どうも、みなさん、こんにちは。えむけん@BinaryMkent です。 前回の更新からBTCが急激に上昇しましたね。市場の空気を一変するような上昇でしたから、さまざまなメディアにも取り上げられ、Twitterでもお祭り騒ぎになっていました。 さて、久しぶりに活気に満ちた仮想通貨市場ですが、今回もじっくり分析していこうと思います。ぜひ最後までお付き合いくださいね。 BTCチャートの分析 BTCチャート(長期) まずは、BTCの長期チャートを分析していきましょう。今回もログスケールにて分析して参ります。 前回記事でもお話ししていたトレンド転換となりうる岐路、4200ドルを上抜けた後、 5000ドル周辺まで跳ね上げ、現在は黄色ライン、白ラインのレジスタンスライン周辺にて推移しています。 現在差し掛かっているレジスタンスラインをいずれ上抜けるとしても、急上昇を見せた直後ですから、長期チャートを見た限りでは、このように一時調整に転じると判断するのが妥当でしょう。 とはいえ、これだけでは情報量が足りません。これらの分析を元に、中期チャートも同様に分析していきましょう。 BTCチャート(中期) 4時間足で見てしまうと、ローソク足の少なさから分析がやや困難になってしまいます。ですから今回は1時間足にてお話しさせていただきます。 現状、日足基準のレジスタンスライン(黄色)周辺の白□にて推移しています。つまり、「上げるにしてもここで一度調整を挟むのでは?」というようなポイントです。 であれば、一時この価格帯でのパターン形成が濃厚になると判断し、このようなチャネルライン(緑)を引いてみました。 チャネル上限が三尊の肩部分として参考にされており、チャネル下限が三尊のネックラインとなっていますね。 恐らく今週末においては、この2本のラインを基準に推移していくと思われます。ですから、ここからはこの2本のラインを元に押し引きしていくのが妥当でしょう。 例えば、右肩でSが溜まりすぎていれば、その否定に伴って再度推進波に移行する可能性もありますし、ネックラインを下抜けたとしても現在の状況下であれば、「押し目待ちに押し目なし」のような、大きな下ひげをつけて再上昇してくる可能性も考えられます。 これらを元に、現状から考えられる展開を考察してみました。 BTCチャートの総評 今回も前回同様、こちらの1パターンのみのご紹介とさせていただきます。 もちろん、「現状の価格帯(白□)で一度調整転換する」という前提ではありますが、この前提通りに事が進んだ場合、恐らく押し目を待っているトレーダーも多いでしょうから、「黄色□周辺にて大きな下ひげをつけて、再上昇していくのでは?」と見ています。 下ひげをつけた後、日足チャートの節目でもある5900ドルを目指して上昇・・・。そして恐らく、多くのトレーダーがこの5900ドル到達を機に、現物などを一気に処分してくると思われます。 昨年11月から今日に至るまで、特に現物をメインに触ってきた方々にとってはかなり辛い期間だったことでしょう。ですから5900ドル到達以降はこの節目で売りたい人も多く、その分上値も重たくなってしまうのでは?と思われます。 つまり、「5900ドル到達後に押し目を作れるか?こそ、今後の仮想通貨市場における岐路である」というのが私なりの見解になります。 ドミナンス分析 ドミナンスチャートに関しては、「Trading View」を参考することにしております。 それでは、次にドミナンス分析に移りましょう。少しアップデートされてそれぞれの数値が見やすくなりましたね。 さて、4月に入ってからの大きな変化としては、BTCとBCH(BCHABC)が急上昇している点でしょうか。そしてそれらの上昇とは逆に、OthersやETH、XRPのドミナンスが下降しています。 これは、BTCがアルト市場から資金を吸い上げている状態であることを指し、またこのような状態を「アルトドレイン」と呼びます。過去、BTCが急上昇を見せた際にも、同様のアルトドレインが見られました。 そして現状、アルトドレイン後に割安となってしまったアルトコインに対して資金が出戻りしている状態ですね。 このようなアルトドレインから、もし今後アルトコインを攻めていくのであれば、リスクを軽減するためにもドル建てで攻めていくのが無難だと思われます。 では次に、主要アルトコインの動向を見ていきましょう。 主要アルトコインの動向 こちらからも、主要アルトらがBTCの急上昇直前(黄色ライン)に利食い転換し、資金が最終的にBTCに集中していった様子が伺えますね。前回記事で要注目とご紹介させていただいたXMRについても、急上昇後一気に売り浴びせられ、元の価格帯へと戻ってしまいました。 そして現状、アルトから抜けた資金が再び戻り、多くの通貨がリバウンド推移を見せています。 現状から、「アルト市場内で再び資金循環していくのか?」は判断できかねますが、BTCが押し目を作り再上昇となると、仮想通貨市場から抜けていた資金の出戻りも考えられます。つまり、市場に流れる資金の総量が底上げされる可能性が高いということです。 とはいえ、再度アルトドレインへと流れが傾く可能性も十二分に考えられます。ですから先にもお話ししたように、アルトを攻めるのであればUSDT建てで攻めるというのが最も妥当な立ち回りかと思われます。 総評(まとめ) 今回は、現状の地合いが不安定かつ不明瞭というのもあり、個別アルトコインに対する考察は控えさせていただきました。それでは最後にまとめに入りましょう。 BTCは現状のチャネルを基準に調整転換の可能性 レジスタンスの上抜け後は5900ドルが節目 5900ドル到達で一気に資金が抜ける可能性大 アルトドレインに要警戒。攻めるならUSDT建てを 今回はここまでにさせていただきます。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。 現在、私えむけんが制作した初心者~中級者向けの有料note、『7日間でマスター!テクニカル分析とそれを元にしたトレード戦略』、好評販売中です!今回のような、BTC分析やアルトコイン投資などの立ち回り方についても解説しておりますので、是非ご覧ください!(詳しくはコチラ)
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2019/04/05Bitwiseによる「BTC取引ボリュームの95%は偽装されている」SECへの調査報告書まとめ
大手暗号資産データプロバイダーのCoinMarketCapでビットコインのチャートを確認すると、今年3月のデイリーボリュームは80~100億ドルほどとなっています。 しかし、暗号資産マネジメント業者のBitwise(ビットワイズ)によれば、この取引量の約95%は経済的価値を生み出さない偽取引によってかさ増しされているといいます。 一方、偽取引を除外した市場は実はとても健康的で、正当な取引所は効率の良い市場展開を行なっているということも報告されています。 こちらのページでは、ビットワイズがSECに提出した226ページにわたる同調査のエッセンスを抽出し、わかりやすく解説していきたいと思います。 BTC取引ボリュームの95%は偽物 ビットワイズの調査によると、CoinMarketCapに報告されているビットコインのデイリー取引ボリュームの95%は経済的価値のない取引でかさ増しされているといいます。 経済的価値のない取引とは、同額を機械的に交互に売り買い(つまりプラマイゼロ)したものを指し、多くの取引所はこのテクニックを利用して取引量を自動的に増やしているというのが今回の調査の重要なポイントのひとつです。 [caption id="" align="aligncenter" width="715"] 3月24日時点でのBTCマーケットの取引所ランキング | CoinMarketCap[/caption] 偽装された取引ボリュームの見分け方 ビットワイズは、取引データの「不自然なパターン」の有無を元に各取引所がかさ増しを行なっているかどうかを判断しています。 調査報告書では、米取引所であるCoinbase Proが健全な取引所の例として挙げられています。Coinbase Proは以下の4つの理由で健全と判断されています。 売買の価格を示す「板」のパターンがランダムである Coinbase Proの板を見ると、売り(赤)と買い(緑)の注文数は均等ではなく、出現パターンもランダムになっています。一方、ビットワイズが危険視した取引所・CoinBeneの板は以下のようになっています。 見てわかる通り、CoinBeneの板は売り買いが綺麗に交互に並んでいます。ビットワイズによれば、これは自然には起こりにくい現象であるといいます。 また、CoinBeneではこの売り買いペアが同時刻に注文されており、かつ注文量もほぼ同じである点もとても怪しいです。 注文枚数に幅・キリの良い数字がある 例に挙げられたCoinbase Proの取引履歴を確認すると、各取引量は0.0017~1.00ビットコインと少額から高額まで幅広いレンジがあることがわかります。 また、0.10、0.60、1.00のようにキリの良い枚数(=人間が処理しやすい数字)がトレードされていることも注目に値します。 一方、CoinBeneの取引履歴には少額取引がほぼ存在せず、キリの良い数字も一切見られません。 取引量がランダムに動いている 上の画像はCoinbase Proの5分ごとの取引量を表しています。かさ増しが行われていないとみられる取引所では、取引量も相応に上下することがわかります。 一方、ビットワイズから危険信号の出ているRightBTCでは、取引量がほぼゼロとなっている時間帯が複数存在します。 同様にかさ増しが見られるCHAOEXでは、取引量が不自然なことに常に一定となっています。 企業規模を元にした分析 CoinBeneはデイリーボリューム4.8億ドル(Coinbaes Proの18倍)を記録する「世界最大のビットコイン取引所」とされています。 しかし、上の画像の統計をチェックすると、検索数やコミュニティがCoinbase Proよりも圧倒的に小さいことがわかります。 さらに、CoinBeneのスプレッドはCoinbase Proの0.01ドルに対し34.74ドルとなっています。「世界最大の取引所」であるはずの市場でこれだけスプレッドが広いのは怪しい点です。 セーフな取引所・アウトな取引所は? ビットワイズは、正当な額の取引量を報告していると見られる取引所として以下の10社を挙げました。 一方、上項のパターンを元にビットワイズが「市場操作をしている」と判断した取引所には以下が挙げられています。 OKEx CoinBene IDAX LBank BitForex Exrates BitMart ZBG CoinTiger SIMEX Coinsuper Bit-Z BTC市場は実際のところとても健康? ビットワイズの調査のもうひとつの大事な点は、偽造された取引量を除外すると暗号通貨市場はとても健康な市場である、という点です。 以下の画像では、金およびビットコイン(かさ増し取引を除外したもの)それぞれの市場総額、スポットボリューム、ターンオーバー率がまとめられています。 偽の取引量を除外したビットコインのスポットボリュームは約2.7億ドルとなっており、1日あたり市場総額(700億ドル)の0.39%(ターンオーバー)が取引されていることがわかります。この値は金の例と似ています。 一方、スポットボリュームがCoinMarketCapなどで表示されている値(約60億ドル)であると仮定すると、ターンオーバーは8.6%ととてもあり得ない(あるいは危ない)値になってしまいます。 また、上の画像では健全な取引高トップ10に入る取引所のBTC価格が表されていますが、全てほぼ重なっていることがわかります。 これはつまり、BTC市場ではアービトラージがとても効率よく行われている(ビットコインの価格がメジャーな市場で全て統一されている)ということになります。 まとめ 当記事はビットワイズ社がSECに提出した200ページ以上にわたる調査のエッセンスを抽出したものです。実際の調査報告書はこちらから閲覧することができます。 同調査の重要なポイントは、BTCデイリーボリュームの95%がかさ増しトレードによって偽造されている、ということでした。 このかさ増しは取引板や注文数、出来高、スプレッドなどを観察することで見破ることができ、メジャーな取引所より高い取引量を報告しているところは検索数やコミュニティの規模なども見ていくべきということでした。 一方、こういったかさ増しトレードを除外したデータによれば、ビットコイン市場はとても健全に成長しているということも同調査から明らかになりました。 配当型取引所トークンの時代が終わり、IEOビジネスが人気を集めつつある今、新参取引所を正しく評価する方法として同調査のことを覚えておくと良いでしょう。 記事ソース: Bitwise Asset Management
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2019/04/04CoinHive事件とは?経緯や問題点、裁判における主張などを徹底解説!
Coinhive(コインハイブ)というプログラムを自身のサイトに設置し、不正指令電磁的記録保管の罪に問われた男性の裁判で、先月27日、横浜地裁によって無罪判決が下されたのをご存知でしょうか? こちらの記事では、Coinhive(コインハイブ)事件はどのようにして起こったのか、何が問題だったのかなどについて、分かりやすくまとめています。 Coinhive(コインハイブ)という言葉を聞いたことはあるものの、結局何のことなのかわかっていない、そんな方はぜひこの記事を最後まで読んでいただければと思います。 そもそもCoinhiveとは? Coinhive(コインハイブ)とは、サイトの運営者が、そのサイトの閲覧者に仮想通貨をマイニングさせ、収益を得ることのできるツールです。 HTMLにJavaScriptコード埋め込むことで、そのサイトを閲覧した人のパソコンのCPUを動かし、仮想通貨Monero(XMR)をマイニングします。 JavaScript プログラミング言語の1つ。名前は似ていますが、Javaとは全く異なるプログラミング言語です。 そして、そのマイニングによって得られた仮想通貨Monero(XMR)の7割がサイト運営者に、3割がCoinHiveの運営に送られるのです。 Coinhive(コインハイブ)は、Webサイトに広告そのものが表示される従来の収益システムとは異なり、サイト運営者がサイト上に広告を表示することなく、そのサイトの閲覧者から直接的にリアルタイムで収益が得られるというもので、大きな注目を集めていました。(現在はサービスを終了しています。) では、一体なぜ、このような新しい収益システムを自身のサイトに取り入れた男性は罪に問われたのでしょうか。以下で詳しく解説します。 CoinHive事件はなぜ起こった? 事の発端は2017年9月下旬、ウェブメディアの記事を読みCoinhive(コインハイブ)の存在を知ったウェブデザイナーの男性が、自身のサイトのJavaScriptコードを書き加え、Coinhive(コインハイブ)を設置したことでした。 男性は、Coinhive(コインハイブ)を1カ月間ほど設置していましたが11月下旬、とあるエンジニアから「運用にはサイト閲覧者の同意が必要ではないか」との指摘を受け、その後Coinhive(コインハイブ)をサイトから削除していました。 ところが、それから3ヶ月後の2019年2月上旬に神奈川県警が男性の自宅を家宅捜索し、3月28日に横浜地検が不正指令電磁的記録取得・保管の罪で略式起訴、横浜簡裁が罰金10万円の略式命令を出したのです。 当時、Coinhive(コインハイブ)は従来の広告の代わりとなる新しい収益システムとして注目される一方で、ユーザーのパソコンのCPUを許可なく使用するマルウェアであると問題視する声も出ていました。 CoinHive事件の流れ CoinHive事件が法廷で争われるに至ったのは、横浜簡裁が出した罰金10万円の略式命令に対し、男性が不服として正式裁判を請求したためです。 ぼにふぁ 略式命令とは、簡易裁判所が公判を行う前に検察官の出す書面で審理を行う裁判手続のことです。 男性が略式命令を不服としなければ、罰金10万円を支払ってそのままCoinHive事件は終わっていたというわけです。 そうして、2019年1月9日から横浜地裁で裁判が開かれ、争われることになりました。 男性が問われた不正指令電磁的記録保管罪とはどのような犯罪なのでしょうか?以下で確認していきます。 不正指令電磁的記録保管罪とは? 男性が、2018年3月28日の略式起訴の段階から問われていた罪が、「不正指令電磁的記録保管罪」(刑法168条の3)、通称ウイルス罪というものです。 ひとまず条文を確認しよう! 刑法168条の3 正当な理由がないのに、前条第一項の目的で、同項各号に掲げる電磁的記録その他の記録を取得し、又は保管した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。 つまり、不正指令電磁的記録保管罪は、 正当な理由がないのに、 人の電子計算機における実行の用に供する目的で、 人が電子計算機を使用するに際してその意図に沿うべき動作をさせず(反意図性)、又はその意図に反する動作をさせるべき不正な指令を与える電磁的記録(刑法168条の2第1項第1号)(不正性)、もしくは同号の不正な指令を記述した電磁的記録その他の記録(同項第2号)を 保管した 場合に成立するということになります。 そして、法定刑が二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金と定められています。 ぼにふぁ 難しい単語が並んでいて分かりにくいですが、、、 裁判では主に、CoinHiveが条文に定められている不正指令電磁的記録の要件の「反意図性」と「不正性」を満たしているかについて主張・立証されました。 ウイルス罪の曖昧さ 昨今、兵庫県警サイバー犯罪対策課が、不正指令電磁的記録供用未遂の疑いで、JavaScriptを使った無限ループプログラムのURLを掲示板に書き込んだ男性2人を書類送検し、13歳の女子中学生を補導したというニュースが報道され話題になりました。 エンジニアの中では、いたずらURLを貼っただけで摘発されるため、その根拠を疑問視する声が上がっていました。 また、昨年6月に仮想通貨のマイニングツールについての注意喚起を掲載し「マイニングツールを閲覧者に明示せずに同ツールを設置した場合、犯罪になる可能性がある」としていました。 マイニングツールの設置を閲覧者に明示せずに設置した場合、犯罪になる可能性があります。また、マイニングツールが設置されたウェブサイトにアクセスすると、パソコンの動作が遅くなることがあります。ご注意ください。https://t.co/GLl7GSzKqo — 警察庁 (@NPA_KOHO) 2018年6月14日 ぼにふぁ ただこの時も、ユーザーに無断でCPUに負荷を与えるとすれば、Web広告も同様であると批判が寄せられていました。 裁判における争点と双方の主張は? CoinHive事件の裁判で、争点となったのは以下の3点です。 CoinHiveは不正指令電磁的記録に該当するか 実行の用に供する目的があったといえるか 故意があったといえるか 故意 犯罪を犯す意思のこと。刑法168条の3の場合、過失犯が処罰されないため、故意がなければ罰せられることはありません。(刑法38条1項但書) 以下では、裁判で行われた双方の主な主張についてまとめています。 検察側の主張 検察側は、「反意図性」と「不正性」が認められ、CoinHiveが不正指令電子的記録に該当するとし、罰金10万円を求刑しました。 まず、男性がCoinHiveを設置したサイトには、マイニングについて同意を得る仕様にはなっておらず、閲覧者はマイニングされていることに気づかなかったと指摘、また閲覧者のCPUを20%使用し、PCが遅くなったりと、閲覧者の意図に反していると主張しました。 また、「実行の用に供する目的」の有無については、「利用者が実行しようとする意思がないのに実行され得る状態に置くこと」をいうとした上で、「閲覧者がマイニングする意思がないことは明らかだった」と述べました。 なお、「故意」についても、「未必的には故意を認識していた」としました。 未必の故意 犯罪事実の確定的な認識・予見はなくとも、それが実現されるかもしれないことを認識・予見している場合のこと。 弁護側の主張 一方で弁護側は、不正指令電子的記録の要件である「反意図性」と「不正性」を満たさないとし、無罪を主張しました。 ユーザーはウェブサイトを閲覧する際に、自分のPC上で知らないプログラムが動くことを想定した上で閲覧していると主張し、「コインハイブはユーザーの計算機を壊したり、情報を勝手に抜き取るものではなく、単に計算をおこなうに過ぎない。計算によって負荷がかかるのは全てのプログラムに共通することだ。」と反論しました。 また、男性はCoinHiveをウイルスと思っていた訳ではなく、「実行の用に供する目的」や故意の要件も満たしていないと主張しました。 また、証拠書類としてGoogle翻訳されたページなどが提出されており、検察側の杜撰(ずさん)な捜査や立証の批判も行いました。 判決 横浜地裁の本間敏広裁判長は2019年3月27日、男性に対し無罪を言い渡しました。 判決では、男性がCoinHiveを設置した際に閲覧者に同意を取る仕組みを設けなかったことから、反意図性を認め、人の意図に反する動作をさせるべきプログラムであるとしたのです。 しかし、CoinHiveについて「不正な指令を与えるプログラムに該当すると判断するには合理的な疑いが残る」とし、不正性を満たさないことから、不正指令電子的記録に該当しないと結論付けました。 CoinHive事件を受けて今後どうなる? CoinHive事件を受けて、今後の社会にどのような影響が出てくるのかを見ていきましょう。 CoinHive事件がもたらす影響 判決では、「警察などの公的機関による事前の注意喚起や警告がないのに、いきなり刑事罰に問うのは行き過ぎの感を免れない」と、警察・検察に苦言を呈するところがありました。 最近起こったニュースでも、JavaScriptの無限ループを発生させるスクリプトを貼ったことで中学生が補導されたことも記憶に新しいです。 しかし、今回の判決は、他のJavaScriptにまつわる事件が裁判になった場合でも、無罪になり得ることを示します。 ただ、いずれにしても、不正指令電磁的記録(ウイルス)に関する罪の適用範囲がはっきりとしない今、JavaScriptを使った無限ループプログラムのURLを掲示板に書き込だりするのは控えておきましょう。 4月10日横浜地検が控訴 4月10日、横浜地検が男性に無罪を言い渡した横浜地裁判決を不服とし、東京高裁に控訴したことが弁護士ドットコムニュースによって報じられました。 上級審で争われることで、不正指令電磁的記録に関する罪の適用について、より統一的で影響力のある判断が下されることになります。 しかしながら、現在、控訴理由などを記載し控訴裁判所に提出する控訴趣意書が出ていないため、横浜地検がどの点について反論しているのかは明らかになっていません。 なお、最高裁判所への上告は、憲法違反や判例違反等の上告理由を満たしていなければ原則として棄却されるため、次の東京高裁の判決で確定する可能性も十分にあります。 最高裁への上告制限 最高裁判所への上告は、その上告理由を憲法違反や判例違反等に制限されています。 控訴が明らかになった直後、被告人の男性は自身のTwitterで以下のようなツイートをしていますが、その後控訴審に向け引き続き頑張る旨のツイートもしています。 残念ながら、控訴されてしまったようです — モロ (@moro_is) 2019年4月10日 インターネット上では被告人らを応援する声が多く上がっており、今後東京高裁で行われる裁判について多くの注目が寄せられています。 2月7日東京高裁で逆転有罪 2020年2月7日、東京高裁で開かれたコインハイブ事件の控訴審で、栃木力裁判長は第一審を破棄し罰金10万円の有罪を言い渡しました。 栃木力裁判長は、「プログラムはサイトを見た人に無断でパソコンの機能を提供させて利益を得ようとするもので、社会的に許される点は見当たらない。プログラムによってサイトを見た人のパソコンで電力が消費されるといった不利益が認められる」と指摘しました。 その上で、「コンピューターウイルスとは使用者のパソコンを破壊したり、情報を盗んだりするプログラムに限定されない。今回のプログラムはウイルスに当たる」と判断しました。 第一審で無罪となっていたが故に、ネット上では驚きの声が上がっています。 【速報】コインハイブ事件の控訴審で2月7日、東京高裁はウェブデザイナーの男性に対し、一審横浜地裁の無罪判決を破棄し、罰金10万円を言い渡しました。https://t.co/6f5UFjObE2 #Coinhive — 弁護士ドットコムニュース (@bengo4topics) February 7, 2020 CoinHive事件のまとめ 今回は、CoinHive事件について解説してきました。 警察のずさんな捜査、そして略式命令に立ち向かい、正式裁判によって白黒をはっきりと付けたことは、今後の不正指令電磁的記録(ウイルス)に関する罪の適用範囲の明確化などに非常に意味のあることだと思います。 不正指令電磁的記録(ウイルス)に関する罪の適用範囲が曖昧であれば、日本の技術者が様々なプログラムを公開するのをためらうなどの萎縮効果が生まれ、ひいては日本の技術の進歩にまで影響が出かねません。 今後、不正指令電磁的記録(ウイルス)に関する罪が適切に運用されることることを切に願うばかりです。 ぼにふぁ 以上、ぼにふぁ(@bonifasan)でした。ご覧いただきありがとうございました。 記事ソース: 仮想通貨マイニング(Coinhive)で家宅捜索を受けた話、弁護士ドットコムNEWS
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2019/03/28まだマイクリやってないの?こっそりゲームの現状教えます
こんにちは。はるか先生です。クリプトタイムズの読者さんの多くはdAppsゲームを触ってない方も多いかと思う。いまアクティブユーザーは千人くらいであろうか。 今、マイクリプトヒーロズというdAppsゲームが、通常のゲームとは違う進化をしはじめているのでぜひ紹介させてください。思いがけない現象が起こっておりdAppsゲームとしての醍醐味を感じてもらえると思う マイクリプトヒーローズとは マイクリプトヒーロズ(以後マイクリ)は、歴史上の有名人をキャラクターとして購入し、そのキャラクターを冒険に送り込んで宝物を集め、時にはバトルイベントに勝利して賞金を得るゲームだ。 実際のバトルはオートバトルのため戦いが開始するとエンターを押すのみである。 あらかじめ、戦うパーティーと武器などのアイテムを決めることが勝敗を左右する。このパーティーの作成が勝敗を決めるのである。そのために、特徴のあるヒーロやアイテムを入手してパーティーを強化するのが重要となる 多様化するプレイヤーごとの楽しみ方 仮想通貨のトークンで作られたキャラクターとアイテムが可能にしたことはキャラクターとアイテムを自由に売買できることである。ETHを用いて市場に出回っているキャラクターを得て自分のパーティーを強化する。この市場性から士農工商と呼ばれる遊び方が定着してきた。 士 Weekly Cupなどの武闘会での勝利を得る。毎週、行われている武闘会での戦いを中心に遊ぶ方法である。敵のパーティーに対して工夫を凝らしてカウンターできるパーティーを作りトップに登りつめるのだ。およそトップ層は全て最高レベルまで上げているので如何にキャラクターの相性を考えて組み合わせを作るのかが勝敗を決定する 農 冒険に出てモンスターを倒し、モンスターの落としたアイテムを集め、そのアイテムを販売することにより生計を立てる人々を農と呼ぶ。コツコツとなんども冒険にでることが必要である。コツコツと冒険を積み重ね、アイテムを得る地道な作業により生活の糧をえる。 工 この職業は今までのオンラインゲームではなかったであろう。実はキャラクターの外見は誰でも自分で変更することができる。美しいデザインには投げ銭が行われる。また、デザインの発注を受けるプレイヤーもおり、巧みの技がお金になる時代になりました。 商 市場性が生まれたヒーローやアイテムを売買し差益を得ることでゲームに参加する人々である。彼らのおかげでアイテムの流動性と適正価格が形成され、他の職種の人々は必要な売買が行えるようになるわけだ。 政治もできてしまう そして2019年2月に大きな変化が起こった。土地の販売である。土地の販売やその土地からの不動産的な収入が入る仕組みは他のゲームでも存在するが、マイクリはとうとうやってしまった。 プレイヤーによる統治が可能なシステムを提供したのだ。国の土地を最大限に持っているプレイヤーは王として君臨ができる。 王はその国から得た収入を配分する権利を持ちその権利により国の統治を行うことができる。また国は9個制定されており、国民の人数やその国での活動により国ごとに貧富の差が生まれる。 マイクリは海外のプレイヤーも存在している。ある国では海外の方が王様になったため英語しか喋らない国もある。 また、自分のキャラクター名にメッセージをのせることにより国民との対話を行なっている国もある。唯一の連絡手段が百文字にも満たない名前のテキストだけでの活動である。 ある有名プレイヤーの方は武を国是として制定し、最強の戦士たちを育てる施策を打ち出している。 まとめ 土地の販売を国単位で行うという発表があった時には気がつかなかったが、土地を得て王様になると皆それなりに統治を始めた。 それぞれの国での特色がでてきて、より一層ゲームの中のドラマが深まってきました。まさか政治までできてしまうゲームが成立するとは思ってもみませんでした。 実際の価値の交換が可能な仮想通貨の仕組みの上に構築されたゲームであるため可能であったシステムの構築であろう。 我々プレイヤーはマイクリの運営の手のひらの上で楽しんでいるようです。このあとはどんなサプラズがまっているのでしょうか? マイクリ楽しそうだなと思った方はぜひこちらから始めてみてください。 MetaMaskもしくはモバイルウオレット(Token Pocket, Go Wallet Trust Walletなど)があればはじめられます。最低限のキャラクターは無償で提供されていますので、ちょっと試してみることが可能です。 はるか先生もフォローください。マイクリやその他のdAppsの情報発信しています。 では、またゲームの中で会いましょう。 画像参照: https://www.mycryptoheroes.net/
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2019/03/25専業トレーダーえむけんの仮想通貨市場分析!【3月25日】
みなさん、こんにちは。えむけん@BinaryMkent です。 前回の更新から再度、BTC並びにアルト市場が非常に活発になってきましたね!様々なアルトコインが上昇したことにより、Twitterも活気に満ち満ちていました。 さて、待ちに待った上昇相場ですが、こういったときこそ大切なのが逃げ足です。浮かれることなく、今回もしっかりと分析していきましょう! BTCチャートの分析 BTCチャート(長期) こちらがBitMEXのBTCチャートになります。 ザッと見た感じ、長期の水色レジスタンスなども上抜けていますし、後は大本命の4200ドルの突破を残すのみ・・・といった感じでしょうか。 不安なポイントとしては、ストキャスのDC成立。このストキャスDCは、現状の長期レンジ(3000~4000ドル間)を見た限りでは、精度も非常に高く、現状における不安要素の一つと言えるでしょう。 そして今回、こちらの通常スケールではあまり見所もなく、いまいちパッとしなかったため、長期足での分析に特化した「ログスケール」でも同様に分析を行ってみました。 ログスケールで見てみますと、現在ちょうど長期レジスタンスライン(水色)周辺と、「むしろ、ここが山場」というような状況ですね。 これは経験談ですが、BTC長期分析の場合、ログスケールは通常スケールよりも価格に与える影響が大きいように感じます。ですから、まずはログスケールを監視しつつ、「このラインに対して、どう動いてくるのか?」を見守っていくのが良さそうですね。 また、現状このように長期の重要なライン周辺で推移しているわけですから、BTCがどちらに動こうと、アルト市場に流れている資金などが次第に利食いムード(リスクオフ)へと転換する可能性も考えておいたほうが良さそうですね。 それでは、次に中期チャート分析に移りましょう。 BTCチャート(中期) こちらも先ほど同様、ログスケールにて分析を進めていきます。 現状、前回記事にてお話しした緑チャネルを守りながら上昇していますね。しかし、頭上すぐに長期のレジスタンスライン(水色)を控えているため、しばらくは「ここを抜けられるかどうか?」が最注目ポイントになってくるでしょう。 また直近の推移では、オレンジポイントにてMACDのダイバージェンス発生・・・。この点から、「上がってはいるものの、推進力(勢い)が不足している状況」というのは明らかだと思います。 加えて、直近緑チャネル接触時の売り出来高大からの出来高衰退。個人的には、ここから多くのトレーダーが現状の含み益確定を優先し、様子見に移っているような印象を受けました。 BTCチャートの総評 色々考えてみたのですが、今回のチャートの場合はこの白シナリオが最も現実的だ、という結論に至りました。 もちろん、3940ドル周辺で押し目を作り、再度上昇転換。その後、長期レジスタンス突破・・・という可能性もなくはないのですが、少なくとも現状の出来高のままで特別変わった動きもなければ、このようなシナリオ展開はかなり厳しいでしょう。 ドミナンス分析 ドミナンスチャートに関しては、「Trading View」を参考することにしております。 ドミナンスに関して言えば、特別大きな変化はありません。ですが、強いてあげるのであれば、「Othersが引き続き上昇傾向にある」ということでしょうか。現状、若干のアルト祭りのような雰囲気にもなっておりますから、これは納得ですね。 ですがその半面、ここからそれらの利食い等が発生してもおかしくない、というのもまた事実です。そして先ほどもお話ししたように、現状はBTCも長期の山場を迎えております。 こういった状況下で、もし自分が含み益を抱えていれば、その含み益を確定させようと動くのは至極当然の行動です。そのため個人的には、「今日明日を目処に、アルトコイン市場が全体的にしぼみ始め、現物主導でBTCが一時下降路線になるのでは?」と推測しております。(あくまで現状を元にした勝手な憶測ですが) 主要アルトコインの動向 さて、それでは主要アルトコインの動向を見ていきましょう。 2月15日の更新記事から何度もうるさく言っていたADAがようやく花咲きましたね。 その他には、XEMやDASHの伸びが顕著ですね。 今回は、上記3通貨とは異なりますが、ADA、BNB、XMRの3通貨をピックアップしてみていこうと思います。 ADA 現状、文句のつけようがない綺麗なチャートです。ここからオレンジラインを割ることなく押し目を作れば、再度高値更新も望める展開となるでしょう。 チャート的には、押し目を狙った買いが殺到してもおかしくはないので、オレンジラインまで到達することなく再度高値更新、というような展開もあり得ます。 ですが、BTCの現状を踏まえると、そこまでアグレッシブに飛びつくのはやや危険かな・・・というのが正直なところです。 ですから、もし押し目買いを狙いにいくのであれば、BTCにヘッジSを噛ませ、万が一のときに備えながら立ち回るのがよいでしょう。 BNB 今年に入ってから「Binance Launchpad」による需要が急激に加速し、主要アルトコインの中でもダントツの上昇を見せました。 先日の発表によれば、今後のLaunchpad参加権は「BNBの保有数量」などを元にした抽選になるそうなので、大口の売り圧は減るかもしれませんが、そうでない投機勢は長期チャネル上限+フィボ161.8%上ということもあり、そろそろ撤退時期なのでは?と見ています。 Binance Launchpadが次期プロジェクトのトークン購入者を抽選で選ぶ方針を発表 - CRYPTO TIMES XMR XMRは前回も綺麗なチャートを描いているとしてご紹介させていただきましたね。 現状としては、前回同様保ち合い内にて推移しているものの、引き続き出来高も十分・・・と、比較的期待できる状況です。こちらもBTCが大きく下に垂れることがなければ、注目しておくべき1通貨でしょう。 総評(まとめ) さて、最後にまとめに入りましょう。 BTCは上値も重く、厳しい印象 →上抜けのためには、S急増orアルト祭り継続が必須 アルト祭りの中心ADA、BNBの推移に要注目 →これらから資金が抜けると、現物BTCも難航 アルト市場だけを見れば、「まだまだこれから!」というような印象を受けますが、BTC単体ではあまり芳しくない状況ですね。 非常に迷うところではありますが、すでにアルトコイン側である程度の利益が出ているのであれば、それらを一部利食いし、残りは建値SL+BTCにヘッジS、という立ち回りがもっとも妥当だと思います。 さて、今回はここまでにさせていただきます。最後まで読んでいただき、ありがとうございました。 現在、私えむけんが制作した初心者~中級者向けの有料note、『7日間でマスター!テクニカル分析とそれを元にしたトレード戦略』、好評販売中です!今回のような、BTC分析やアルトコイン投資などの立ち回り方についても解説しておりますので、是非ご覧ください!(詳しくはコチラ)
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2019/03/25【最新版】セキュリティトークンとは?定義と仕組みを徹底解説
近頃、「セキュリティトークン」という分類に属されるデジタルアセットがSTO(セキュリティトークンオファリング)という新たな資金調達法など共に注目を集めています。 セキュリティトークンとは、正確には株式などの証券(セキュリティと呼ばれる)をブロックチェーン上にトークンとして表したもののことを指しますが、最近のニュースなどではこの定義が曖昧に使われており、様々な意味が混在しているのが現状です。 本記事では、混乱しがちな「セキュリティトークン」という言葉の意味を詳しく解説し、そのメリットや、ユーティリティトークンとの違いなどを紹介します。 セキュリティトークンと比較される「ユーティリティトークン」を簡単におさらい [caption id="" align="aligncenter" width="492"] イーサリアムはユーティリティトークンの代表例として挙げられる。[/caption] ユーティリティトークンとは、ブロックチェーンネットワーク(エコシステムと呼ぶ)の利用・参加権を表すトークンのことを指します。 例えば、EthereumのネイティブトークンであるETHは、スマートコントラクトの実行にかかる手数料(Gasと呼ばれる)やネットワーク維持の報酬として取引されるユーティリティトークンです。 言い換えれば、Ethereumネットワークの利用・維持費は、日本円や米ドルではなく、最終的にはETHでのみ支払われる(=トークンが利用権を表す)ということです。 ちなみに、ユーティリティトークンは現在存在する暗号資産の大半を占めており、その多くがEthereumのERC-20と呼ばれるトークン規格に準拠したものとなっています。 ユーティリティトークンの多くはICOを通して販売され、その投機的価値はプロジェクトのマーケティング方法や投資家の注目度によって異なります。 [caption id="attachment_34549" align="aligncenter" width="800"] BNBが利用できるサービス/プロジェクト一覧[/caption] また、Binanceが発行するBNBもユーティリティトークンの一つですが、現在、BNBが利用できるサービスは非常に多くあります。BNBはDApssでの受け入れにも利用されているだけでなく、CryptoATMでも受け入れられていたりリアルサービスとの関わりも非常に大きいです。 BNBが利用できる範囲が大きいということはBinanceのエコシステムが成長している証拠であると言えるでしょう。 米クリプトATM提供業社CoinFlipがバイナンスコイン / $BNB に対応 - CRYPTO TIMES セキュリティトークンの定義は色々と曖昧 ここまででは、ユーティリティトークンの定義を解説してきました。 ここからは、セキュリティトークンの解説に入りますが、面倒なことに、「セキュリティトークン」という言葉はとても曖昧に使われており、ここではさらに「場合分け」をしていく必要があります。 2019年3月現在では、「セキュリティトークン」というと次の3つのどれかを指すことが多いです。 トークナイズドアセット(Tokenised assets) [caption id="" align="aligncenter" width="491"] 貴金属や石油などのコモディティをトークン化したアセットは近年注目を集めている。[/caption] トークナイズドアセット(Tokenised assets:トークン化された資産)とは、特定の(物的)資産の所有権を表す暗号資産または通貨のことを指します。こういったトークンのことをアセットバックトトークン(Asset-backed tokens)とも呼びます。 ここでいう「特定の資産」とは一般的に株式、債券、不動産、通貨、コモデティ(貴金属、石油等)などの金融商品や、絵画、ブランド品などのコレクタブルのことも指します。この例のうちセキュリティ(証券)であるのは株式と債権のみです。 よってコモデティやコレクタブルなどの所有権を表すものは正確にはセキュリティトークンではありません。しかし、全てを総称してセキュリティトークンと呼んでしまうことが多々あります(TA≒セキュリティトークン)。 株式や債券は、電子化されるまでは紙として配布され、その紙自体が資産の所有権を表しました。同様に、アセットバックトトークンとは1枚1枚が特定の資産の所有権を表すトークンのことを意味します。 例えば、Digixというプロジェクトでは「1トークン=金1グラム」となるDGXトークンを発行しています。 Tetherが発行する$USDTやTrueCoin社が発行するTrue USD ($TUSD) のようないわゆる「ステーブルコイン」も、広義ではトークナイズドアセットと考えることができます。USDTやTUSDは「1トークン=1ドル」となるトークンです。 エクイティトークン(Equity Tokens) トークナイズドアセット(TA)うち、株式(企業の所有権)を表すトークンのことを特別に「エクイティトークン(Equity tokens: トークン型株式)」と呼ぶことがあります。株式は証券ですから、エクイティトークンは必然的にセキュリティトークンであると言えます(ET=セキュリティトークン)。 なぜ株式だけが特別扱いされているのかというと、株式のトークン化には既存のシステムの非効率性を大幅に改善することが期待されているからです。 株式は「企業の所有権」を表す資産で、保有量に応じて配当や株主総会への参加などといった色々なファクターが織り込まれたものです。 エクイティトークンでは、証券発行、ブローカレージ、コンプライアンス遵守などといった従来であれば時間のかかるプロセスをブロックチェーンとスマートコントラクトの活用し自動化できることが見込まれています。 既に自社株式をETとして発行した企業はいくつか存在しており、諸々の手続きを手助けするプラットフォームも登場してきています。 法律上セキュリティにあたる暗号資産 「セキュリティトークン」という言葉は、上記で解説したトークナイズドアセット、特にエクイティトークンを指すことが一般的でした。 これらに加え最近では、セキュリティトークンを「(特に米国の)法律上で証券(セキュリティ)とみなされる暗号資産」という意味で使っている例が多く見受けられます。 これは、どういうことかというと、暗号通貨は「ユーティリティトークンであるか、また、アンダーライイングアセットがあるかどうかに関係なく、投資契約を定義する法律に引っかかれば証券、つまりセキュリティである」ということです。 したがって、この意味でのセキュリティトークンは、上記で解説したユーティリティトークンやトークナイズドアセット、エクイティトークンとは異なるスペクトラムの話になります。 特定の暗号資産が金融資産かどうかを判断する機関として世界から注目されているのが、米国証券取引委員会(SEC)です。同国では、「ハウイ・テスト」と呼ばれる以下の基準に当てはまるトークンは全てセキュリティ(証券)であり、米国投資家を対象に含むICOを行う際当局に届け出を行う必要がある、としています。 金銭や資産を投資する行為であること 投資家が利益を見込んでいること 投資先が法人団体であること 資産の成長は第三者に託されていること 米国が制定するこの基準では、ほとんどの暗号資産がセキュリティトークンに分類されます。 SECは、未申請のままICOを行なった企業の摘発なども行なっており、多くの暗号資産をセキュリティとして扱うスタンスを固めています。 しかし同局は、元々セキュリティとしてみなされていたトークンのうち、投機的価値の落ち着いたものをセキュリティとみなさないという見解も示しています。直近の例でいうと、SECの会長はETHは証券とはみなさないという可能性も示唆しています。 米SEC会長がETHなどを証券とみなさない可能性を示唆 - CRYPTO TIMES ここまでのおさらい ここまでで、セキュリティトークンという言葉が一般的に含みうる意味を3つ解説してきました。 正確には、セキュリティトークンとは2番目に紹介した「エクイティトークン (Equity Tokens)」のことを指します。 しかし、結局のところ、3つとも全て「セキュリティトークン」と総称されることが多いのが現状です。 セキュリティトークンの3つのメリットとは トークナイズドアセット(TA)やエクイティトークン(ET)は、既存の金融商品市場を自動化・透明化することで効率性を大幅に改善できるものとして期待が集まっています。 具体的には、以下のような改善点が挙げられます。 発行・流通プロセスの効率化 金融商品(特に株式)の流通には、発行母体、カストディアン、ブローカー・ディーラー、取引所、法律・コンプライアンス顧問といった様々な機関が関係しています。 これらの機関のコミュニケーションは、従来では紙面やフォーマットの異なる電子文書を通して行われているため、たいへんな時間と労力を要するものとなっています。 しかし、法整備が整うとともに、このプロセスの大部分はブロックチェーンとスマートコントラクトの活用で自動化することができます。 例えば、商品の買い手・売り手をつなぐブローカー・ディーラーの役割をスマートコントラクトが担うことで、より効率の良い(≒手数料の低い)市場を作り出すことができます。 また、株式を取り扱うエクイティトークンでは、株主による投票プロセスの透明・効率化も期待されています。 市場障壁の排除 金融商品をトークンとしてブロックチェーン上で管理することで、24時間無休の取引や、国・地域をさかいに隔てられた市場へのアクセス、同じ商品を異なる価格で取引している市場の統合などを確立することができます。 例えば、中国などでは米株式市場へのアクセスが難しいなどと言われていますが、株式の所有権がトークン化されることで法律・配当管理など諸々を自動化し、より多くの国の投資家が参入できる環境を作り出すことが期待されています。 所有権の細分化 (フラクショナル・オーナーシップ) モノの所有権の単位としてトークンを設けることで、資産ひとつを複数人で所有する(フラクショナル・オーナーシップ)といったことが可能になります。この利点は、特に不動産取引の分野での活用が期待されています。 例えば、ある物件の5%を所有し相応の賃貸所得を受け取る、などといった従来であれば複雑な処理も、トークン化された物件であれば容易に行うことができます。REITIUMやBlockimmoなどはこういった事業を運営する企業の一例です。 ゴールドバーや不動産物件のように、物理的にそれ以上細かく分けることのできない資産も、その所有権自体はトークンという単位を使うことで細分化でき、取引することができます。 これのメリットは、ひとつの資産がより細かい単位で取引できるようになることで、市場の流動性を高めることができるという点にあります。 セキュリティトークンについて考察すべき点 ここまででは、セキュリティトークンがもたらしうるメリットについて詳しく解説してきました。 セキュリティトークンやSTOは、様々な側面で従来のユーティリティトークンやICOとは異なる点があるため、両者を比較した上で知っておくべき事項を紹介します。 エクイティトークンの流通は従来の暗号通貨より手間がかかる 株式などの証券をトークン化したエクイティトークンの発行(STO)は、米国を中心としたほとんどの国では数多くの法的プロセスを経ていく必要があります。 エクイティトークンは、元となる資産(アンダーライイングアセット)が証券なわけですから、各国の法規制に則って発行する義務があり、取引の場を提供する側も必要なライセンスを取得しなければなりません。 そういった意味合いでは、STOは従来のICOのような自由度の高い資金調達法ではないという点は知っておくべきでしょう。 また、本来セキュリティトークンは、伝統的なアセットのセカンダリ市場での流動性を向上できる可能性があるとして注目されてきたものです。 STOはすでにアメリカやスイスなどで行われていますが、どれも適格投資家(プライマリ市場)のみを対象としているのが現状です。 セキュリティトークンはあくまでブロックチェーン技術を既存の金融システムに応用したものである セキュリティトークンは、ビットコインのように独自の通貨として機能することや、ユーティリティトークンのようにネットワークの維持をすること使われる暗号通貨ではありません。 このコンセプトはあくまでも、モノの所有権をブロックチェーンで管理することで既存の金融システムをより効率の良いものにしていくというブロックチェーン技術の応用例である、ということです。 したがって、セキュリティトークンを「価値をアンダーライイングアセットで紐付けた通貨(アセットバックトトークン)」として捉えることはできても、それ自体は既存の集権的な経済圏からの脱却を目的としたものではない、ということになります。 まとめ 本記事では、セキュリティトークン(ST)の定義やメリットについて詳しく解説しました。 「セキュリティトークン」という言葉には、以下の3つの意味が混在していると解説しました。 トークナイズドアセット(TA): あらゆるモノの所有権をブロックチェーン上にトークンとして表したもの。 エクイティトークン(ET): トークナイズドアセットのうち、株式(企業の所有権)を表したもの。 法律上セキュリティに当たるトークン: ユーティリティトークンも含む。 TA≒セキュリティトークン、ET=セキュリティトークン 正確には、セキュリティトークンとはエクイティトークン(ET)のことを指す。 結局のところ、全部(誤って)セキュリティトークンと総称されることが多い。 そして、TAおよびETには、以下のようなメリットがあると解説しました。 スマートコントラクトの活用による発行・流通プロセスの効率化 市場障壁の排除: 取引の24時間化、市場の統合 所有権の細分化(フラクショナル・オーナーシップ) ブロックチェーン技術はこれまで「政府や中央銀行を必要としない分散型経済圏」などといったスケールの大きいプロダクトを新しく作るテクノロジーとして期待されてきた側面があります。 この期待が各国の規制強化とともに薄れる中、トークナイズドアセットやエクイティトークンはブロックチェーン技術がいかに既存のプロダクトや産業の効率化に役立つものかを示す良い例だと考えられます。 STOハイプの未来は、今後セカンダリ市場でのセキュリティトークン流通が整い始めた段階で、どれだけ世間の理解が得られるかに大きくかかってくるでしょう。 STO(セキュリティ・トークン・オファリング)とは?ICOとの違いを徹底解説 - CRYPTO TIMES 参考記事一覧 Digital Securities Market Research 2019 by Kepler Finance - Kepler Finance What are Security Tokens? - Blockgeeks Mapping out the Security Token Ecosystem - THE BLOCK Will STOs (security token offerings) rule over ICOs in 2019? - Hackernoon Security Token Offerings (STOs) — What You Need To Know - Hackernoon
特集・コラム
2019/03/23OKExが独自のブロックチェーン「OKChain」を発表 OKBは自社IEOプラットフォームの基軸通貨に
香港に拠点を置く大手暗号資産取引所・OKExが、独自のブロックチェーン「OKChain」のテストネット公開が近づいていることを公式ブログで明かしました。 OKChainの開発はすでに最終段階に突入しているといい、今年6月にもテストネットを公開する予定となっています。ネイティブトークンには自社通貨のOKBが採用されています。 OKBは今年の4月からERC-20トークンとしてチェーン上で管理されることになっており、OKChainの安定性が確立されると共にメインネットへ移行する予定だといいます。 OKChainの開発に伴い、同社は分散型取引所(DEX)をローンチすることも発表しました。OKBは同DEXでの手数料支払いやスーパーノードへの投票などに利用することができるとされています。 また、同社はトークンローンチプラットフォーム「OK Jumpstart」でのやり取りをOKBに限定することも明かしました。 有名取引所と連携したプラットフォームからトークンを発行するIEO(イニシャル・エクスチェンジ・オファリング)は近頃人気を集めており、Binance(バイナンス)やHuobi(フォビ)はすでに自社プラットフォームの運営を開始しています。 記事ソース: OKEx