イチからわかるマイニング事情【第1回】: マイニングとは?
2019/10/02

イチからわかるマイニング事情【第1回】: マイニングとは?

shimada

Takahiro

経済学・金融論、また統計学をはじめ数学の分野にも興味があり、勉強しています。

こんにちは、Takahiroです。

「マイニング」という概念は、ブロックチェーンや仮想通貨に興味があれば誰でも聞いたことがあると思います。

こちらでは、ビットコインなど主要ブロックチェーンのネットワーク維持や価格形成に欠かせないマイニングについて、基礎概念から過去データの解析、近況などを4回に分けて解説したいと思います。

第1回では、マイニング事情の理解に不可欠なハッシュレートとマイニングの難易度、そしてマイニング設備の遍歴を見ていきたいと思います。

こちらを読めば、ハッシュレートや難易度という概念はマイニング産業の基軸で、ひいてはビットコインの価格形成にまで影響を及ぼすことがお分かりいただけると思います。

また、マイニング機器の進化に伴ってマイニング事情が大きく変動していることが見て取れると思います。

第2回では、BitMEXが発表したリサーチを元に、去年のビットコインの価格下落に関する実際の統計を見ていきたいと思います。

価格下落とマイニング産業との関連性が実際のデータから理解できると思います。

第3回・第4回では「マイニングプールの巨大化は防げるのか」を題材に、マイニングを行うインセンティブを経済学的視点から分析した二つの論文:The Miner’s DilemmaMajority is not Enough:Bitcoin Mining is Vulnerableの内容をご紹介します。

様々な疑問に答えることで、マイニング事情を包括的に理解できるようなコンテンツとなっております。少し専門的な部分もありますが、できる限りわかりやすく説明していきます。

また今回の一連の記事では主にビットコインを題材にしていますが、お伝えする内容はProof of Work(PoW)コンセンサスを採用している仮想通貨全般に通じます。

それでは、早速見ていきましょう。

マイニングってなに?

マイニングとは、ブロックチェーン上のトランザクションを管理するシステムで、ビットコインなどのPoWブロックチェーンで円滑な仮想通貨経済を保つための仕組みです。

マイニングではコンピューター(ノード)に膨大な計算をさせて、その中で「当たり」の計算をしたノードがブロックチェーンの新しいブロックを生成することができます

以下では、このマイニングの詳しいプロセスを解説します。

マイニングの仕組み

マイニングは、「ハッシュ値」と呼ばれる、一定の桁数のランダムな値を算出する作業です。

ハッシュ値は「B74D18C0BAB527A9A97B42B1AC5611D01D5436F41373B9B233F25B56C8345978」のように、アルファベットの混ざった16進数で表されることが一般的です。

試しに、コチラからSHA-256と呼ばれる「ハッシュ関数」に適当な文字や数字を入力してみてください。すると、毎回同じ桁数で値の異なるハッシュ値が出てくるはずです。

マイニングでは、この「ハッシュ関数」に取引データ、ナンス値、前ブロックのハッシュ値を入力して、次のブロックのハッシュ値を計算します。

上記で述べた「当たりの計算」とは、このハッシュ関数を用いて、一定以下の大きさのハッシュ値を見つける計算のことを指します。

取引データと前ブロックのハッシュ値というのは決まった値ですから、ここをいじくって当たりのハッシュを出すわけにはいきません。

なので、ナンス値を「総当たり方式」で変えて、ハッシュ値の計算を重ねて、当たりの計算を見つけにいくのがマイニング作業なのです。

当たりの計算を最初に見つけた人が、ブロックを生成することができます。ビットコインは、このブロック生成が約10分に一回起こるようになっています。

なぜマイナーはマイニングをするのか?

マイニングには莫大な計算力が必要で、処理のためのコンピューターを稼働させるには電気代がかかります。マイニングをする「マイナー」はどうして電気代を支払ってまでこの作業に携わるのでしょうか?

マイニング作業の結果新たなブロックの生成に成功したマイナーは、報酬としてビットコインを得ることができますこれがマイナーにとってマイニングを続ける動機(インセンティブ)となるのです。

この報酬は、新たに発行されるビットコインによって支払われます。市場にすでに流れているビットコインがマイナーに循環するのではなく、新規に発行されるビットコインがマイナーの手に渡り、世の中に出回ることになります。

このように、膨大な計算の末ビットコインが新たに発行される様を、金などを掘り出す作業になぞらえて「マイニング(採掘)」と呼ぶわけです。

ですから、マイニングやマイナーの数はビットコインの価格やネットワークの円滑化に大きな影響を与えうるのです。

マイニングの難易度とは?

マイニングには、「難易度(ディフィカルティ)」と呼ばれる、ターゲットとなるナンス値の見つけにくさが設定されています

上の項目で、ビットコインは10分に一度新しいブロックが生成される、と解説しました。

ここで難易度の調整が行われないと、マイナーの数やコンピューターの計算能力が増えることで「一定期間内に打てるハッシュの数(ハッシュレート)」が増加し、ブロック生成の時間(ブロックタイム)が短縮されます。

そうすると、一定期間内に市場に流れ込むビットコインの枚数は増えますから、その価値がインフレしてしまいます。

そこでビットコインでは、2016ブロック毎に一度マイニングの難易度を自動で調整して、人の手を加えずにインフレ率を安定させているのです。

2016ブロック×10分間は2週間となるので、2016個目のブロックが生成されてから難易度の再調整が行われるまでに2週間の間隔があるということです。

マイニングの難易度は以下の算出式から求められます。

次の2016ブロックを掘り出す難易度 = (前回の難易度 × 2週間) / 最新の2016ブロックを掘り出すためにかかった時間

つまり、直近2016ブロック分の難易度の総量を直近2016ブロックを掘り出した総時間で平均化した値ということになります。

このように決定された難易度で再調整が行われ、ブロックの生成速度はだいたい10分に保たれます

難易度と価格の関係性

マイニングの難易度は、どのような条件で上下するのでしょうか?

以下の時系列統計では、去年2018年12月3日から12月31の間で難易度が低下しているのが見て取れます。

この背後には、ビットコインの価格が下がり、電気代などの可変費用に対して割りが合わなくなってきたマイナー達が市場退出をしたことが考えられます。

マイニングの難易度を決定する処理速度にはマイナーの人口も関係するため、このように難易度の低下が起こっているものと考えられます。

そして結果的にビットコインの機能に欠かせないマイナーが減り、またビットコインの価格を低下させるという事態を招いているのです。

これは、一般に「死のスパイラル」と呼ばれている現象で、ちょうど経済学のデフレスパイラルと同じような構造を持っています。

景気が悪化すると(ビットコインの価格が下がると)、家計の収入が減ってしまい(マイナーが得られる報酬が少なくなってしまい)、消費を抑えることで(マイナーがマイニングを控える・やめることで)、より一層景気が悪化する(ビットコインの価格がより一層下がってしまう)という悪循環に似ているのではないでしょうか。

早稲田大学大学院商学研究科の岩村充教授は、ビットコインは価格変動に合わせたマイニングに対するインセンティブの付け方を変えなければいけないと指摘しています。

また、サンタクララ大学の財政学教授であるAtulya Sarin氏は、ビットコインは「死のスパイラル」に突入し終焉を迎えるだろうという述べていました。

難易度とは、マイナーのインセンティブ、そしてビットコインの価格形成などと切っても切り離せない重要なものだということですね。

ハッシュレートとは

続いて重要になるのが、ハッシュレートと呼ばれるものです。

ハッシュレートとは、1秒間にハッシュ値を何回計算できるのか(hash/s)という単位です。

通常ハッシュレートと言うと、マシン一つ当たりのハッシュレートか、ビットコインなどネットワーク全体のハッシュレート(各マイナーのハッシュレートの合計)のどちらかを指します。

2019年10月時点のビットコインのハッシュレートは 、秒間86,263,993テラハッシュ(TH/s)となっています。

1TH/sとは1秒間に1,000,000,000回(1兆回)の計算するということですから、現在のハッシュレートでは1秒間に86,263,993×1兆回の計算が行われていることになります。

(Blockchainから引用)

ハッシュレートの数値は、より多くのマイナーが参加すれば当然上がります。

マイニング機器の歴史

また、マイニング機器の性能もハッシュレートに大きく関わってきます。

まずは、マイニング機器の遍歴を見ましょう。

一番初めにマイニングをするために用いられてきた装置は、CPUです。

1秒に約2000万ハッシュを計算する能力をもつといわれているCPUですが、現在の難易度のマイニングを行おうとしても全く歯が立ちません。

CPUの処理速度の欠点を補うために、続いて使われるようになったのがGPUでした。

しかし、GPUはマイニングには使えないビデオ処理をするハードウェアがたくさん組み込まれており、効率性にはまだ改善の余地がありました。

その後、FPGA(field-programmable gate array)、ASIC(application-specific integrated circuit)というようなマイニング専用のハードウェアが生まれました。

CPU, GPU, FPGA, ASICの比較

市場原理に導かれて多くのマイナーが利益を得るために労力を費やした結果、CPUからASICに至るまでかなりの処理能力の向上が見られました。

処理装置の性能が上がれば新たにブロックが生成されるまでの時間が短くなり、マイニングの難易度が上がらなければならないということが分かりますね。

しかし一方で、マイニング機器がより高価になっていったことや設備に高度な専門知識を要することなどが原因となり、誰もが参加でき、分散化された非中央集権的システムという理想から遠のいていると言えるのではないでしょうか。

一旦高性能で処理の速い装置が世に送られると、その装置を使ってマイニングが行われることになります。

仮にCPUやGPUで計算できるほどにまでマイニングの難易度が落ちたとしても、高性能なマイニング機器を持つ者が圧倒的に有利であることには変わりありません。

したがって現在の枠組みでは、専門知識を持たない、また高価な設備を備える資本を持たない人がマイニングに参入する隙が存在しないことになります。

まとめ

シリーズ第一回目となる今回は、難易度やハッシュレートに焦点を当てて、それらが理論上ビットコインの価格形成にどのように影響するのかということをお伝えしました。

マイニングに関する基本的な知識をつけておけば、仮想通貨ニュースの理解度も増します。

マイニング事情はビットコインの価格変動にも影響を与え、結果的に仮想通貨が掲げる理念にも影響することが見て取れた思います。

次回は、BitMEXから出ているリサーチとともに実際のデータを見ながら、マイニングの難易度・ハッシュレート、そしてビットコインの価格下落の関係性についてお伝えします。

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