中国YMTCがNAND出荷量で3位浮上、キオクシアは4位に後退

2026/08/13・

よきょい

中国YMTCがNAND出荷量で3位浮上、キオクシアは4位に後退

引用元: T. Schneider / Shutterstock.com

ct analysis

香港の調査会社カウンターポイントリサーチは8月12日、2026年4〜6月期のNAND型フラッシュメモリ市場に関する調査結果を公表しました。中国の長江存儲科技(YMTC)が出荷量シェア14%でキオクシアを僅差で上回り、四半期ベースで初めて世界3位に浮上したとされています。首位は韓国サムスン電子の25%、2位は同SKハイニックスの22%でした。

一方、同じ四半期の出荷金額シェアでYMTCは5位にとどまり、マイクロン・テクノロジーとキオクシアの後塵を拝しています。出荷量と金額で順位が逆転するこのねじれは、AIサーバー向けの高単価品を握るメーカーとコンシューマー向け汎用品を数量で押し出すメーカーとの間に、収益構造の断層が生じていることを示すものと見られます。



出荷量シェア14%、前年同期比22%増でトップ3入り

YMTCの4〜6月期の出荷量は前年同期比22%増、前四半期比でも5%増と供給制約下にありながら二桁成長を維持しました。同社はマイクロン(13%)とサンディスク(11%)を上回り、キオクシアと並ぶ14%を確保。実数値ではYMTCがわずかに上回り、順位で3位に立っています。YMTCが出荷量で3位となるのは2025年4〜6月期以来、1年ぶりとされています。

メーカー拠点出荷量シェア備考
サムスン電子韓国25%32%(24年4〜6月期)から低下、DRAM優先
SKハイニックス韓国22%子会社ソリダイムが前四半期比40%増
YMTC中国14%前年同期比22%増、初のトップ3入り
キオクシア日本14%実数値でYMTCを僅かに下回り4位
マイクロン米国13%サーバー向け先端品に注力
サンディスク米国11%上位6社で全体の大半を占める

首位のサムスンは、2024年4〜6月期には32%のシェアを持っていましたが、この2年で7ポイント低下しました。収益性の高いDRAMへ生産リソースを寄せた結果、NANDの出荷量そのものを抑制しているためです。2位のSKハイニックスは、子会社ソリダイムのビット出荷が前四半期比40%増と伸びたことがシェアを押し上げました。

上位2社が「作らない選択」を進めるなかで空いた数量の受け皿に、中国勢が入り込んだ構図といえます。

サーバー向けeSSDが出荷ビットの48%へ

4〜6月期のNAND市場を規定したのは、AIワークロードの学習から推論への移行でした。推論処理ではKVキャッシュや大規模データセットを高速かつ低消費電力で保持する必要があり、エンタープライズSSD(eSSD、データセンター向けの大容量ストレージ)の需要が急増しています。サーバー向けeSSDが総出荷ビットに占める比率は48%に達し、前年同期の26%から22ポイント上昇しました。同調査会社は年末までにこの比率が過半を超えると見込んでいます。

この結果、業界全体の売上高は前年同期比で5倍に膨らんだとされています。ただし恩恵は均等ではありません。YMTCの製品構成はスマートフォンやPCなどコンシューマー向けが中心で、高単価のデータセンター向けeSSDの比率が低いままです。同じ1ビットを出荷してもサーバー向け先端品と汎用品では実現できる単価が大きく異なるため、出荷量3位・金額5位という乖離が生まれました。

数量シェアが競争力の指標として機能しにくくなっている点が、今回のデータの本質と言えそうです。



キオクシアは「金額」で優位 2026年生産分はすでに完売

順位を明け渡したキオクシア側の事情も、単純な後退とは言えません。同社は出荷ビットの30%超をサーバー向けに振り向けており、2026年の生産分はすでに完売しているとされます。価格上昇局面で一部顧客が調達を手控えた結果として数量の伸びが鈍り、前四半期に維持していた3位の座を失った形です。

業績面では2026年4〜6月期の連結純利益が前年同期比46倍となり、7〜9月期は約31倍の1兆2700億円を見込んでいます。同社は上限8000億円の自社株買いと1対3の株式分割も併せて発表しました。数量を追わずに単価と製品構成で稼ぐ戦略が、財務数値として明確に表れています。

もっとも、この高収益が構造的な成長によるものか、供給制約下での重複発注を含む一時的な需要の先食いによるものかについては市場の評価が定まっていません。

今後の展望

YMTCは2026年下期に製品構成をeSSD側へ寄せ3位の座を固める方針とされています。同社は267層のQLC 3D NANDを量産済みで、独自のXtacking構造をベースに300層超の積層技術も開発しています。世界シェア15%という自社目標の達成可否は、エンタープライズ向けへの転換をどれだけ速く進められるかにかかっていると見られます。

ただし、サーバー向けeSSD市場では供給実績や品質認定、長期供給契約の履行能力といった参入障壁が数量とは別の次元で存在します。認定取得には相応の時間を要するため、出荷量の3位が金額の3位に直結する保証はありません。

サーバー向けがNANDビットの過半を占める2027年に向けて、業界の収益性を決めるのは「誰が最も多く出荷したか」ではなく「誰が正しい構成で出荷したか」になりそうです。

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