HYPEトークンが急騰で約4,500億円が永久消滅、その仕組みとは|ATH更新の深層
アラタ | Shingo Arai

分散型の仮想通貨取引プラットフォームとして世界的な注目を集めるHyperliquid(ハイパーリキッド)の独走相場が、全く新しい段階へと突入した。
基軸トークンであるHYPEは、ここ数日で史上最高値(ATH)を更新するという驚異的なパフォーマンスを見せている。アルトコイン市場全体が弱含む局面が続く中でのこの「全方位ATH」は、HYPEという特定銘柄が持つ構造的な強さと、エコシステムの成熟を如実に示す動きである。直近の価格推移を見ても、2025年9月に記録した最高値を約8ヶ月ぶりに塗り替え、価格は最大64ドル付近にまで達する急騰を見せた。
HYPEはその収益の99%を使って、Buybackを行っており、すでに約4500億円分のトークンがBurnされていて非常に注目がされている。
本記事では、2026年のDEX(分散型取引所)市場において出来高シェア上位の地位を確固たるものにしたHyperliquidの設計思想、機関投資家の動向、そして裏付けとなる詳細なオンチェーンデータを基に、HYPE急騰の深層にある「Growth Strategy(成長戦略)」を徹底的に解剖していく。
本動画の内容は、Crypto TimesのYoutubeでも公開済みなので、是非とも合わせてみてほしい。
機関マネーの怒涛の流入と「米国スポットETF」の絶大な影響力
現在のHYPEの価格上昇を構造的に裏付けている最大の要因は、機関アクセス路の急速な整備と、それに伴う莫大な資金フローである。現在、米国市場におけるHYPEのスポット(現物)ETFには記録的な規模の資金が流れ込んでおり、これが強力な価格上昇の起爆剤となっている。単日で過去最大となる2550万ドル(約38億円)もの莫大な資金流入が確認されており、米国内で現物のHYPEが猛烈な勢いで買い漁られている状況だ。
さらに、仮想通貨の資産運用で世界最大級の規模を誇るグレースケール(Grayscale)も、新たにHyperliquidのETF申請を行っていると報じられている。もしこのグレースケールのETFが正式に承認されることになれば、これまでの記録をさらに塗り替える「過去最大の資金流入」が現実のものとなる可能性が高く、HYPEの価格は現在の63ドル台から70ドル台の大台も射程圏内に入ってくると予測されている。
ビットコインやイーサリアムのETFから流出した資金がHYPEやXRPに回転する動きが鮮明になる中、機関マネーは明確にHYPEを「次のメインテーマ」として位置付け始めている。
規制当局との対話と「イノベーション免除」という強力な追い風
機関投資家からの評価を底上げしているのが、Hyperliquid運営陣による積極的なロビー活動と伝統金融(TradFi)への接近である。
Hyperliquidの代表的存在であるJeff氏などは、米国進出に向けたロビー活動を積極的に展開しており、米規制当局との直接会談を行うなど本格的な動きを見せている。NYSE(ニューヨーク証券取引所)の親会社であるICEのCEOが、Hyperliquidチームと複数回会談している事実を公にしたことは記憶に新しい。また、ICEとCMEがHyperliquidに対する何らかの規制要請を行ったとされるなか、取引所側は透明性を強く主張し、毅然とした対応を見せている。
さらに、6月12日に予定されているSpaceXの正式IPOに向けて、Hyperliquid上で先行して取引されている未上場株デリバティブが「価格発見の試金石」として機関投資家から極めて高い注目を集めている。
これに拍車をかけるように、米SEC(証券取引委員会)が最近打ち出した「イノベーション免除」という新たな制度の方向性が市場を沸かせている。これは、プレマーケット銘柄、株式、ゴールドなどの現実世界資産(RWA)をトークン化して取引する際の規制を緩和しようという動きである。もしこの制度が承認され本格稼働すれば、後述するHyperliquidのRWA統合システムにさらなる莫大な資金が流れ込むことは確実視されており、プラットフォームの価値を根底から押し上げる強力な追い風となる。
関連記事 : SEC、トークン化株式の「イノベーション免除」発表へ|米株式市場に歴史的転換点 – CryptoTimes
全取引高の46%を占める「HIP-3」の破壊的イノベーション
Hyperliquidのエコシステムにおいて、現在最も爆発的な成長を遂げているのが「HIP-3」と呼ばれる独自のプロトコル機能である。
HIP-3は、50万枚のHYPEをステーキングすることで、自分自身で全く新しい任意の取引市場(マーケット)を構築できるという画期的なシステムだ。この仕組みと裏側のシステム統合により、クリプト資産だけでなく、原油、株式、ゴールド、プレマーケット銘柄といった伝統的な資産までもがHyperliquid上に乗せられ、シームレスに取引されるようになっている。
驚くべきことに、現在プラットフォーム全体の総取引高のうち、実に約46%をこのHIP-3関連の市場が占めている。さらに、プラットフォーム全体の未決済建玉(OI)を見ても、その23%(約4分の1)が非クリプト資産(現実世界資産)で占められているというデータが示されている。この事実は、Hyperliquidが単なる仮想通貨の分散型先物プラットフォームという枠組みを超え、「オンチェーン版のウォールストリート(ウォール街)」へと劇的な進化を遂げつつあることを証明している。
市場を魅了する究極のトークノミクス:99%のバイバック&バーン
エコシステムの拡大とともに、HYPEトークンの価格を強力に下支えしているのが、他に類を見ない過激とも言えるトークノミクス(経済圏設計)である。
Hyperliquidは、プロトコルが生み出す莫大な手数料収益のうち、なんと99%を使用して市場からHYPEを買い戻し(バイバック)、それらをすべてバーン(焼却)するという究極のデフレメカニズムを採用している。5月23日時点のデータによれば、単日のデイリーレベニュー(プロトコル収益)は約2.01ミリオン(約201万ドル)に達しており、毎日数億円規模の強烈な買い圧力が機械的に発生している計算になる。
この結果、すでに総供給量の約4.56%に相当するHYPEが市場から永遠に消滅(バーン)しており、金額ベースに換算すると約29億ドル(約4500億円)という途方もない規模のトークンが燃やされている。
HYPEの強さは、HIP-3市場作成のための「50万枚ステーキングによるトークンのロック」と、この「収益の99%を用いたバイバック&バーン」という、2段構えの供給絞り込み機構によって確固たるものとなっている。市場から現物がどんどん枯渇していく仕組みが、強烈な価格上昇圧力を生み出しているのだ。
一方で、急騰するトークンには常に「アンロック(権利確定による供給増)」に対するFUD(恐怖・不確実性・疑念)が付き纏う。HYPEに関しても、直近では6月6日に大規模なアンロックが控えており、毎月992万枚ものトークンが市場に放出されて大暴落を引き起こすのではないか、と危惧する声が一部の投資家から上がっていた。
しかし、オンチェーンデータの詳細な実観測結果は、この悲観論を完全に否定している。 データによれば、毎月配布されるトークンのうち、実に89%が即座に再ステーキングされるか、コールドストレージに移動して長期保有(ガチホ)されていることが判明している。その結果、実際に市場に売りに出される実質的な売り圧力は月間でわずか46万枚程度であり、金額にして約240万ドル〜300万ドル(約5万5000トークン相当の流動性影響)に過ぎない。
この程度の売り圧力であれば、前述した「毎日201万ドル規模で実行されるプロトコルのバイバック」によっていとも簡単に吸収・カバーできてしまう。絶対量としての「992万枚」という数字だけを見て恐怖に駆られるのではなく、オンチェーンデータを正しく読み解くことで、アンロックが致命的な価格下落をもたらすリスクは極めて限定的であることが理解できるだろう。
結論:個人投資家が直面する短期需給と中長期シナリオの交差点
これまで見てきたように、Hyperliquidの成長は「HIP-3によるRWAの統合と実需要」「99%バイバックによるデフレ機構」「米国規制当局・機関投資家との直接的な連携」という、極めて強固なファンダメンタルズに支えられている。
一方で、オンチェーンの動向からは、Galaxy Digitalのような初期の大口機関プレイヤーがステークしていた100万枚のHYPE(約6100万ドル、約90億円相当)をアンステークし、利益確定の売却を開始したことも確認されている。機関投資家による保有層の入れ替えが進行しており、短期的にはこうした大口の利確売りが市場のボラティリティを生む局面もあるだろう。
しかし、現物ETFを通じた米国市場からの記録的な資金流入と、機関マネーの「次のテーマ」としての現物需要はそれを上回る規模で維持されている。日本の個人投資家にとって現在は、極めて重要な判断が求められる局面だ。 「伝統金融最大手(ICEやCME、SpaceX関連)との接触や米国規制(イノベーション免除)の緩和がもたらす、中長期的なプラットフォーム価値の劇的な上昇シナリオ」。
そして「Galaxy Digital等の機関投資家による利益確定売りがもたらす短期的な需給の波」。 この両者を冷静に分析し、短期的な価格のブレに翻弄されることなく、ウォレット統合やHIP-4などの今後のロードマップを含めた本質的な「オンチェーン金融インフラとしての価値」にどこまでベットできるか。その長期的な保有判断こそが、今まさに問われている。
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