株主名簿をブロックチェーンで管理可能に|SEC改定案で日本との差拡大か

2026/09/03・

よきょい

米証券取引委員会(SEC)が9月1日、名義書換代理人(トランスファーエージェント)に関する規則の全面改定案を公表しました。1970年代後半から1980年代初頭に整備された規則の本格的な見直しは約40年ぶりで、421ページに及びます。ブロックチェーンなどの分散型台帳を、会社の公式株主名簿(マスター・セキュリティホルダー・ファイル)そのものとして使うことを明示的に認める内容です。

対象は米国内の約273社の登録名義書換代理人です。改定案では、記録を担う1社が公式名簿を排他的に管理し、正確性や安全性、当局への提出に責任を負う枠組みは維持されます。技術は義務づけられず、従来型データベースでも分散型台帳でも構いませんが、記録は安全かつ最新で参照可能である必要があります。

日本はすでに紙をなくしているが、話は別

日本の読者には「今さら電子化か」と映るかもしれません。日本では2009年1月に上場会社の株券が廃止され、株主の権利は社債株式等振替法に基づく振替口座簿で管理されています。証券保管振替機構と証券会社が階層的に口座を持ち、株主名簿管理人は信託銀行などが担う仕組みです。紙の証券という前提は17年前に消えました。

ただし、日米で問われている論点は同じではありません。日本の振替制度は法律で仕組みそのものが定められており、そこにブロックチェーンを差し込む余地は制度上ありません。日本のセキュリティトークンは2020年5月施行の改正金商法で「電子記録移転有価証券表示権利等」として位置づけられましたが、これは上場株式の振替制度とは別建ての枠組みです。

米国の案は公式の所有記録そのものを公開ブロックチェーンに置けるかを問うており、射程が異なります。

ウォレットアドレスは氏名の代わりにならない

もっとも、米国の案も本人確認までは踏み込んでいません。公式名簿には保有者の氏名と郵送可能な住所の記載が引き続き求められ、ウォレットアドレスは識別情報の一部にはなり得ても、氏名や住所を置き換えるものではありません。SECはこの要件を撤廃した場合の影響を意見募集の論点に挙げており、ピアース委員は状況によってメールアドレスやウォレットアドレスを使う余地に言及しています。

登録済み名義書換代理人で運用資産40億ドル超のセキュリタイズは、公開ブロックチェーンを証券記録に組み込む方向を支持してきました。意見募集は連邦官報掲載から60日間で、9月1日時点で掲載日は未定です。制度が動けば、日本の振替制度との差はむしろ広がります。

トークン化証券の議論は、技術ではなく「誰が名簿を持つか」の設計論に移っていきそうです。

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