伝統金融がビットコイン保管に参入も、量子リスクは依然くすぶる

2026/06/15・

よきょい

伝統金融がビットコイン保管に参入も、量子リスクは依然くすぶる

大手銀行がビットコインの保管(カストディ)事業への参入を本格化させています。5月には保管・管理資産59兆4,000億ドルを抱える世界最大のカストディアン(保管機関)であるBNYが、アブダビでビットコインとイーサリアムの保管サービスを提供すると発表しました。かつては仮想通貨ネイティブ企業の裏方業務だった保管事業が、世界最大級の銀行にとって戦略的優先事項となっています。

しかし、リスク管理に長けたはずの銀行がビットコインのインフラに参入するのは、業界が暗号技術上の未解決の問題を抱えていると認めているまさにそのタイミングです。スイスのデジタル資産技術企業タウルス(Taurus)の新たな報告書は、現在市場にあるすべてのカストディアンが将来の量子コンピューターへの移行リスクにさらされており、特に普及している保管アーキテクチャの一つがブロックチェーンが量子耐性のある署名方式に移行する際に構造的な限界に直面する可能性があると論じています。

ビットコインの保有は秘密鍵(長い秘密の数字)の管理を意味し、カストディアンの役割はその鍵を守り、取引が本物であることを証明するデジタル署名を生成することにあります。



ビットコインやイーサリアムの署名は楕円曲線暗号に依存していますが、量子コンピューターの発展次第では公開鍵から秘密鍵を導き出し取引を偽造できる恐れがあります。現在はまだ仮説の段階となっているものの、米国の標準化機関NISTは2024年8月に最初の耐量子暗号標準を公表し、現行の署名方式を2030年以降は非推奨、2035年以降は使用禁止としています。

報告書が最も注目すべき指摘として挙げるのが、ブロックチェーン特有の制約です。銀行は自社の内部セキュリティを今すぐ更新できますが、ビットコインは単一の機関の管理外にあります。カストディアンが今日、耐量子署名を導入してもネットワークの共有ルールが従来の方式しか認識しないため、その取引は無効として拒否されてしまいます。

報告書はさらに複数のマシンに鍵を分散させるMPC(マルチパーティ計算)方式が、新しい署名方式への対応で困難に直面する可能性を指摘しています。銀行やETFのカストディアンが、どの耐量子方式が採用されるか分からないうちに数十億ドルの顧客資産を特定のアーキテクチャに集中させている点が、今後の課題として残りそうです。

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