米国で過熱するトークン化預金議論|日本は制度で先行
よきょい

米国では銀行がトークン化預金の整備を急いでいます。保有者から見れば、トークン化預金も準備資産型ステーブルコインも過剰担保型の合成ドルも同じように見えます。違うのは資金の置き場所です。
トークン化預金では1億ドルが発行銀行のバランスシートに残り、銀行が貸出で運用します。保有者はその銀行の信用リスクを負いますが位置づけは付保預金のままです。FDICもトークン化は預金の形式を変えるが実質は変えないという整理を示しています。
準備資産型ステーブルコインでは同じ1億ドルが発行体の準備資産へ移り、利回りは発行体側に帰属します。GENIUS法が保有者への利回り支払いを禁じているため、保有者は上振れの取り分を持たないまま発行体の運営リスクと準備資産リスクを負います。預金保険は後ろにありません。
実装も進んでいます。ウェルズ・ファーゴは法人向けトークン化預金を今秋から開始する計画で、まず米ドルと英ポンドの取引から始め2027年に拡大する方針です。JPモルガンはすでにJPM Coinを預金トークンとしてBase上で稼働させ、公開チェーン上での資金移動と担保差入れを可能にしています。
日本は「三層」で先に答えを出していた
この対立軸は日本では制度設計の段階で緩和されています。2023年6月に施行された改正資金決済法は、法定通貨を裏付けとするものを「電子決済手段」として仮想通貨と区別し、発行を銀行、資金移動業者、特定信託会社の三者に限定しました。米国が今まさに議論している「預金として扱うのか、発行体の準備として扱うのか」という問いに発行主体の免許区分という形で先に線を引いた格好です。
実際の顔ぶれも三層に対応しています。JPYCは2025年10月に資金移動業者として国内初の円建て発行にこぎつけ、裏付けの8割を国債、2割を現預金などで供託する構成です。三菱UFJ信託銀行などが中心のProgmat Coinは信託型、SBIホールディングスとStartale Groupが手がけるJPYSCも2026年度の立ち上げを予定しています。
三メガバンクは共同発行の枠組みで2026年3月から限定的に稼働させ、2028年に1兆円規模の流通を目標に掲げています。銀行が発行体に立てば、資金は銀行セクターの内側にとどまりやすくなります。
争点は「償還時の本人確認」へ移った
米国の次の焦点は、発行体から直接ドルを受け取る場面の扱いです。米国銀行協会は、発行体と直接売買・償還するすべての利用者に口座開設と本人確認を求めるべきだと意見を提出しました。これに対しBlockchain Associationは、規制対象の仲介業者経由や一回限りの償還までを自動的に口座開設とみなすべきではないと主張しています。
連邦準備制度の意見公募R-1885に寄せられた双方の主張はまだ提言であり、最終規則は出ていません。安い調達手段の奪い合いは、最終的に誰が資金の所在を把握するのかという制度の話へ収れんしていきそうです。

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