米財務省が量子対策組織を新設|仮想通貨に期限は課されず

2026/08/26・

よきょい

米財務省が量子対策組織を新設|仮想通貨に期限は課されず
ct analysis

米財務省は2026年8月24日、量子コンピューターへの備えを検討する「Quantum-Readiness Task Force」を立ち上げました。

3つある作業部会のうち1つがデジタル資産と新興技術のリスクに充てられており、仮想通貨のカストディ事業者やインフラ提供者が、政府と同じテーブルで移行計画を議論する場が用意されたことになります。残り2つは、耐量子暗号の広範な導入と、第三者ベンダーの対応状況を扱います。

期限が課されたのは政府システムのみ

注意すべきは、この枠組みが民間に移行期限を課すものではないという点です。財務省はビットコインやイーサリアム、民間のデジタル資産企業に対して期限を設定していません。2026年6月の大統領令が定める期限は、重要度の高い連邦システムについて2030年12月31日までに耐量子の鍵共有、2031年12月31日までに耐量子の電子署名へ移行するというもので、対象は特定の連邦システムであり民間のブロックチェーンではありません。

ブロックチェーンの署名方式を変更するには、各ネットワークごとに別途の技術検討とガバナンス上の合意が必要になります。



日本の時計は2035年に合わせられている

日本では別の時間軸で準備が進んでいます。内閣官房の国家サイバー統括室は2025年11月に「政府機関等における耐量子計算機暗号(PQC)への移行について(中間とりまとめ)」を公表し、2026年度に具体的な移行工程表を策定したうえで、2035年に政府機関等の移行を完了させる目標を示しました。米国の連邦システム向け期限が2030年から2031年に置かれているのと比べると、4年から5年遅い設定です。

金融分野では、金融庁が「預金取扱金融機関の耐量子計算機暗号への対応に関する検討会」の報告書を2024年11月26日に公表しています。技術面ではCRYPTRECが2025年3月に耐量子計算機暗号のガイドライン2024年度版を公開し、2026年1月には移行期における既存暗号との併用構成を整理した技術動向調査も出ています。

移行は暗号方式を差し替える作業ではなく、どこでどの暗号を使っているかを棚卸しする作業から始まる、という位置づけが共通しています。

仮想通貨だけが取り残されやすい理由

政府システムや銀行システムは、管理主体が更新を決めれば移行できます。ブロックチェーンはそうはいきません。署名方式の変更は仕様変更であり、利用者、開発者、マイナーやバリデーターの合意が要ります。しかも露出済みの公開鍵に紐づく資産は、所有者が能動的に移動させない限り守れません。所有者不明のまま長期間動いていないコインは、その対象からこぼれます。

量子コンピューターが現行の暗号を破る時期は、依然として幅のある予測でしかありません。それでも政府が期限を書き込み、業界が資金を出し始めた事実は、議論の段階が変わったことを示しています。

移行の号令がかかってから完了までに何年かかるかを知る者にとって、2035年という数字は決して遠くない目標に映りそうです。

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