紙の本100万冊がAI学習用に裁断か|NFTが通った道の再演

2026/07/29・

よきょい

紙の本100万冊がAI学習用に裁断か|NFTが通った道の再演
ct analysis

書籍データベースを運営するISBNdbが最大100万タイトル規模の紙の書籍調達をAI開発企業向けに売り込んでいることが、米メディア404 Mediaの報道で明らかになりました。

対象にはデジタル化されていない書籍や稀少本、絶版本も含まれるとされています。同社は装丁を外して裁断・スキャンし、その後に検証可能な廃棄またはリサイクルを行うと説明しており、原本を消して記録だけを残すというWeb3が2021年に一度通った構図がAI学習データの領域で再現されつつあります。

背景には2025年6月23日の連邦地裁命令があります。同命令はAnthropicが適法に購入した紙の書籍を裁断・スキャンしてPDF化した行為について、図書館の保有部数を増やさずに購入書籍を置き換えたとしてフェアユース(公正利用)に当たると判断。裁判所は廃棄を義務付けてはいないものの、本とスキャンの双方を保持すれば部数の前提が変わるため、保存が法的に不都合になりやすい構造が残ります。海賊版由来の複製については判断が分かれ、争点は裁判に持ち越されています。



同じ問いに仮想通貨業界は先に直面していました。2021年、Injective Protocolがバンクシーの版画「Morons」を購入したうえで焼却し、それを表象するトークンを販売したとBBCが伝えています。焼いたのはバンクシー本人ではなくInjective側であり、ブロックチェーンは所有と来歴を記録した一方、作品そのものは残りませんでした。

破壊的スキャンの目的はテキストの抽出にあり、NFT化とは狙いが異なります。それでもデジタルの記録を残す判断と、物理的な原本を存続させる判断が切り離される点は共通しています。

もっともISBNdb経由で稀少本が実際に失われたことを示すタイトル単位の証拠は公開記録に存在しません。Anthropicの調達とISBNdbの営業活動は別系統であり、7月27日のSNS投稿が両者と判決を一つの物語としてまとめて拡散したものの、裏付けは乏しいとみられています。

著作権法が問うのは複製と利用のあり方であり、装丁や版、来歴といったモノとしての価値は制度の枠外に置かれがちです。NFTが所有の証明を与えても作品を保存しなかったように、スキャンは情報を残しても対象の存続までは保証しなさそうです。

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