ジャクソンホール初の「決済」テーマ|ステーブルコインはどうなる?
よきょい

毎年8月末、ワイオミング州の山あいのロッジに世界の中央銀行関係者が集まります。1978年から続くジャクソンホール経済政策シンポジウムです。市場はいつも金利の話を待ちますが、今年掲げられたテーマは「金融イノベーション:決済と政策への含意」でした。決済と金融技術がこの会合の組織原理に据えられたのは、これが初めてです。
理由は積み上がっています。ステーブルコインの発行残高は集計方法によって幅がありますが、2,300億ドルを超える水準に達しました。JPモルガンは法人顧客向けに公開ブロックチェーン上でドル建ての預金トークンを稼働させています。米国では2025年7月に成立したGENIUS法が2027年1月に施行され、決済用ステーブルコインについて連邦レベルの枠組みが初めて整います。
中央銀行の本当の心配は「金利が効くか」
中央銀行にとっての問題は、価格の乱高下ではなく伝わり方です。政策金利は通常、銀行預金とMMFの利回りを経由して経済全体へ波及します。ところがドル建ての価値のうち、利息のつかないステーブルコインに滞留する割合が増えると、政策金利と金融環境の関係そのものが変わります。この経路はまだ十分にモデル化されておらず、研究が始まったばかりです。
銀行側の懸念はもっと直接的です。安く安定した預金がステーブルコインの準備資産へ移れば、銀行はより高いホールセール資金で穴埋めせざるを得ません。貸出量が減るより先に利ざやが縮み、そのあとで貸出条件が動きます。FRBとBISはいずれも、この預金移動から資金調達コスト上昇、そして与信の値付けへという道筋を別々に指摘しています。銀行がトークン化預金を急いで用意しているのは、決済を近代化したいからだけではありません。
会合そのものは招待制の閉じた場であり、カンザスシティ連銀は開幕前夜まで完全な議題を公表しません。27日木曜午後の登録とジャクソン・レイク・ロッジでの夕食が実質的な出発点で、28日金曜の午前にウォーシュ議長の基調講演が置かれています。
日本から見た読みどころ
米国がこれから議論する「誰が発行し、資金がどこに残るのか」という問いに、日本はすでに制度として答えを出しています。2023年6月に施行された改正資金決済法は、法定通貨を裏付けとするものを「電子決済手段」と位置づけ、発行を銀行、資金移動業者、特定信託会社の三者に限定しました。発行主体の免許区分で線を引くという設計は、米国の議論から見れば一つの実験結果です。
もちろん市場の関心は別のところにあります。9月16日のFOMCを19日後に控え、7月の会合では3人の地区連銀総裁が利上げを主張して反対票を投じました。一方でウォーシュ議長はフォワードガイダンスに否定的で、声明文も従来より短くしています。決済がテーマの年に金融政策の合図を読み取ろうとする市場と、それを避けたい議長。その距離感こそが、今年のジャクソンホールで最も注目される点になりそうです。
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出典:カンザスシティ連銀

























































