トロンの量子耐性化に落とし穴?一部アカウントで鍵交換不能も
よきょい
TRON(トロン)で検討されている量子耐性署名の導入設計について、ガバナンスが特定の署名方式を無効化した場合、一部のアカウントで鍵の交換ができなくなる可能性が指摘されています。量子耐性署名とは、将来の高性能な量子コンピューターでも破られにくいとされる暗号方式です。
提案「TIP-899」は9月12日時点でドラフト段階にあり、Falconを基にした「FN-DSA-512」と「ML-DSA-44」の2方式に、それぞれ個別の有効化スイッチを設けています。
TRON is building for the quantum era now.
With post-quantum security already being tested on the Nile Testnet, our goal is clear: become the first quantum-resistant blockchain network. https://t.co/yW4YP51l9U— H.E. Justin Sun 👨🚀 🌞 (@justinsuntron) August 8, 2026
TRON創設者のジャスティン・サン氏は8月8日、TRONを初の量子耐性ブロックチェーンにする目標を掲げ、テストネット「Nile」での試験に言及していました。Nileでは6月30日のリリースに両方式が実装され、9月12日の確認ではFN-DSA-512の設定値が「1」だった一方、ML-DSAの値は確認できませんでした。メインネットではどちらの設定も見当たらず、7月15日の開発者会議では導入時期は未定とされています。
問題の核心は権限の仕組みにあります。TRONでは鍵ごとに重みが割り当てられ、有効な署名の重みの合計がしきい値を満たす必要があります。アカウント設定を変更できる「オーナー権限」と、送金など特定の操作に限られる「アクティブ権限」は分かれており、権限の更新にはオーナー権限の署名が必要です。参照実装では無効化された方式の署名が含まれると取引が拒否されるため、残った署名だけで取引を組み立てなければなりません。
米国立標準技術研究所(NIST)は2024年8月13日にML-DSAを規定するFIPS 204を確定しましたが、Falconの標準化は現在も進行中です。TIP-899はメインネット有効化の前に外部の暗号・実装監査やバグ報奨金を求めていますが、完了した独立監査の報告は示されていません。
ウォレットやカストディ事業者の対応も残っており、送金の継続性だけでなく、鍵を交換できる経路をどう確保するかが移行設計の焦点となりそうです。
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