推定1000万人が騙された「プラストークン」儲かるが謳い文句の高配当型ウォレットの闇
Crypto Times 編集部
※本記事は速報的な情報を多く含んでいるため、今後も追記・修正をしていきます。
AIを活用した自動裁定取引ツールで月利10%を約束する「Plus Token (プラストークン)」において、利用者が出金ができず資産を引き出せなくなっている事件が話題になっています。
ポンジスキームで30億ドル相当のBTCやETH、EOSを騙し取ったプラストークンの資産は複数ウォレットに流れ出ており、多数機関によるアドレス追跡が続いています。
被害者数は同スキャム発祥の中国や、日本・韓国を中心に1000万人にものぼり、そのうち多くは暗号資産やブロックチェーンに関する知識のない人たちであると推定されています。
目次
「500ドルからの出資で月利10%」を謳うプラストークン
2018年中旬ごろに登場したプラストークンは、AIを用いて暗号資産取引所間の裁定取引を自動で行い、「500ドルからの出資で月利10%」が稼げると謳っています。
配当額はプラストークンと呼ばれる仲介単位で配布され、利用者はそれをビットコインやイーサリアム、EOSなどに換金するか、複利で運用を続けるかを選べるという仕組みになっています。
また、紹介した人の運用額の9.5%に加え、そこから連鎖して招待されたユーザー9人までの運用額の1%の還元する「勧誘・アフィリエイト報酬」制度も設けられています。
ウェブサイトが提示する例では、100万円の原資がアフィリエイトの数次第で140万〜1610万円にまで膨らむとされています。
プラストークンのランディングページにはこういった投資情報が詳しく記載されており、終わりにはサービスへの登録方法やウォレットの使用方法などへのリンクも載せられています。
推定1000万人が資産引出し不可に!?被害額は30億ドル相当
今年7月に入り、運営者とみられる中国人6人がバヌアツで逮捕されたことが判明し、以降中国を中心に資産が引き出せないという利用客の声が目立ち始めました。
被害総額は現在30億ドル相当のBTCやETH、EOSで、中・日・韓を中心に推定1000万人が被害に遭っているとみられています。
SNS上では「運営ウォレットの資産がブロックチェーンエクスプローラで確認できない」ことが指摘されており、さらに、イーサリアムのエクスプローラ「Etherscan」では対象アドレスが「プラストークン・ポンジスキャムに使用されているアドレス」としてフラグされています。
運営関係者は他にもまだいる?顧客資産の行方
運営者とみられる6人がバヌアツで逮捕されているものの、記事執筆時点(2019年8月16日)もプラストークン運営のものとみられるウォレットから大量の暗号資産が送金されています。
新興ブロックチェーンセキュリティ企業のPeckShield Inc.が公開したデータによれば、プラストークンのウォレットから送金された資産は現在複数のウォレットに分散され、一部は取引所にも送られています。
また、プラストークンで実際に出金ができたケース(運営者逮捕前)のうち、ETH出金先アドレスの50%近くがHuobiのものであったことがElementusの調査から発覚しています。
こういった状況から、逮捕された6人以外にもプラストークン運営のウォレットにアクセスできる者が存在すると考えられます。
「儲かる」や「資産が増える」などの美味しい話は要注意!?
投資機会において、必ず儲かる・資産が増える・利益が出るものは存在せず、このようなうまい話を謳うプロダクトやサービスはスキャムである可能性がとても高いと言えます。
こういった「投資案件」は大体、友人の招待で固定・変動報酬がもらえるアフィリエイト制度を設けています。
アフィリエイトを設けた仕組みは、新規ユーザーの資産を初期ユーザーに「健全な資産運用(今回であれば自動裁定取引)の配当」として配布する、「ポンジスキーム(ねずみ講)」で成り立っているケースが多くあります。
また、今回のプラストークンの被害者の多くは、暗号資産やブロックチェーン技術に関する知識のない人々であると推測されています。
「人気の投機」へのFOMO(見逃すことへの恐怖)から、下調べをせずにこのような情報を鵜呑みにしてしまうケースが、今回も多くあったのではないかと考えられます。
プラストークン以外にも高配当型ウォレットは類似のものが多く出てきているため、注意が必要です。
ポンジスキームに関しては下記の記事で解説しているので併せてお読みください。
過去の事例: Bitconnect
新ユーザー流入により得られる収入を古参ユーザーに回すことで非現実的なリターンを謳っていたプロジェクトは過去にも存在しました。
その中でも特に有名なのは、暗号通貨レンディングと称して高リターンのビットコイン投機を装っていたBitconnectがあります。
Bitconnectは、BCCと呼ばれる独自トークンをプラットフォームに貸し出すことで高報酬が得られるというもので、ユーザーに専用の取引所を介してビットコインをBCCと交換するよう促していました。
このようにポンジ系スキャムは、顧客資産を報酬獲得の権利を表すものと交換させ、新規ユーザーの資産を正当な事業で得た配当と装ってピラミッド型に再配分するため、初期ユーザーは実際に配当が出るものと錯覚してしまう構造になっています。
2016年にサービスを開始したBitconnectは、2018年に米テキサス州から業務停止命令を受けプラットフォームを閉鎖し、以降BCCの価格は92%暴落しました。
閉鎖直後の調査ではBitconnectが法人として正式に存在しなかったことも明らかになり、関係者とみられるひとりが逮捕されています。
まとめ
プラストークン問題のより正確な被害統計や顧客資産の行方は、未だ詳しい調査を待つ段階となっています。現段階では中国系ソースを中心に、資産の追跡や実情の確認が進んでいます。
「儲かる高配当型ウォレット」は近頃多く登場しており、今後似たような事例が起こってしまう可能性も大いに考えられるため、入念な下調べに基づいた投資の必要性が求められます。
日本では、国民生活センターのような独立行政法人もマルチ商法や関連する勧誘などへの注意を呼びかけています。
参考リンク: