ビットコインはこのまま無価値になってしまうのか?——1000万円を下回った原因を5つの角度から解剖する
Crypto Times 編集部

ビットコインが6万ドルを割り込み、一時58,000ドル台前半まで下落しました。BTCは昨年10月に付けた史上最高価格である12万ドルから考えると半値水準となっています。
SNSでは「BTCは死んだ」「ついにBTCが無価値になって終わる日だ」という声も飛び交っていますが、本当にその通りでしょうか。今回の急落には、マクロ環境の地殻変動、ストラテジー社の優先株問題、AI相場への資金流出という複数の力が同時に働いています。
本記事では「BTCはこのまま死んでしまうのか?」という問いに対し、5つの角度から構造的に検証します。結論から言えば——答えは単純な「YES/NO」ではありません。

2026年6月25日BTCの価格が58,000ドルまで落ちた日
目次
まず事実確認:何が起きたのか
ビットコインは2026年6月25日21時半頃にに61,000ドル台をつけた後に急落し、一時58000ドル前半まで下げました。これは2024年9月以来、約21カ月ぶりの安値です。2025年10月6日につけた史上最高値・約126,000ドルからは、価格が半値の水準まで調整が進んだことになります。
下落のスピードも特徴的でした。一部の場面では約30分で5%下げ、24時間ベースでは10億ドルを超えるポジションが清算されました。20万人を超えるトレーダーがこの値動きに巻き込まれたとされます。
注目すべきは、この下落がビットコイン市場単独の出来事ではなかった点です。同じ時間帯にアジア株も急落し、韓国KOSPIは8%超下げてサーキットブレーカーが発動、日経平均も大きく下落しました。BTCがリスク資産として株式と歩調を合わせて売られたこと。これが今回の急落を読み解く最初の鍵です。
6月26日現在、BTCは59,000ドル台後半から60,000ドル前後で揉み合っており、わずかに反発する場面も見られます。ただし60,000ドルの明確な奪回には至っておらず、依然として不安定な地合いが続いています。
これより先は、なぜこのような事象が起きたのかを一つずつ紐解いていきます。
タカ派に転じたFRBとインフレ再燃
今回の下落の最大の引き金は、マクロ環境の変化です。
米商務省が6月25日に発表した5月のPCE物価指数(FRBが最重視するインフレ指標)は、前年比4.1%と、約3年ぶりの高水準を記録しました。市場予想を上回る伸びで、インフレが再び加速していることが鮮明になっていいます。コアPCEも3.4%と高止まりしました。
これを受けて、これまで期待されていたFRBの利下げ観測は大きく後退しています。6月のFOMCでは金利が据え置かれましたが、参加者の金利見通し(ドットプロット)はタカ派方向に転換し、一部では年内の利上げすら織り込まれ始めました。フェデラルファンド先物では、年末までの利上げ確率が1カ月前の2割台から7割超へと跳ね上がっています。
Polymarketの「2026年の利下げが何回起こるのか」という予測市場においても、0回というのが伸びており、市場にも表れています。参加者の集合知として、2026年12月末までに0回が現在79%まで上がっています。なお予測市場の数値は将来の結果を保証するものではなく、あくまで現時点の市場参加者の見方を映したものです。
ここで重要なのは、金利上昇とドル高は「利回りを生まない資産」にとって逆風になるという点です。現金や米国債の利回りが上がれば、配当も利息も生まないビットコインの相対的な魅力は低下します。同じ理由で、安全資産の代表である金も同時期に一時4,000ドルを割り込みました。BTCと金がそろって売られたのは、両者が「無利回り資産」という共通点を持つからです。
ストラテジー社の優先株「STRC」に走る亀裂
ビットコイン市場に固有のリスク要因として、いま最も警戒されているのが、ビットコイン財務企業ストラテジー社の動向です。
同社は変動利率の永久優先株「STRC」を、ビットコイン購入や事業運営の資金を支える柱と位置づけてきました。投資家に毎月の配当を支払う代わりに資金を集め、それでBTCを買い増すという仕組みです。STRCはBTCそのもので担保されているわけではなく、額面100ドル付近で取引されるよう設計された「クレジット商品」である点が、まず押さえるべきポイントです。
ところが、BTCの下落に連動するように、STRCは額面100ドルを大きく割り込み、6月25日には一時74ドルまで急落し、過去最安値を更新しました。普通株のMSTRも100ドルを割り込み、2年超ぶりの安値圏に沈んでいます。資金調達の生命線である優先株が額面を割ったことは、市場が同社の配当維持能力に疑問を抱き始めていることを示唆しています。
この背景には、配当負担の急増があります。暗号資産リサーチ企業CryptoQuantのKi Young Ju氏によると、同社の優先株配当の年間負担は2026年初めの約3億ドルから約12億ドルへと約4倍になる一方、現金準備は年初から38%減少しています。元々あった配当カバー率は7年超から約14カ月にまで悪化したとされており、市場はこれを見て危険視しています。CryptoQuantのKi Young Ju氏は、現金準備と配当カバー率を回復するまでビットコイン購入を停止すべきだと指摘しています。
‘@Strategy‘s BTC buying here looks more like a liquidity sink than a price catalyst.
They should pause Bitcoin purchases, rebuild cash reserves, and adopt a systematic framework for purchase timing.
In a low-selling-pressure environment, that demand can move price meaningfully.… https://t.co/77MKgZMrv0 pic.twitter.com/TnkUJD10Eb
— Ki Young Ju (@ki_young_ju) June 24, 2026
そして市場が最も警戒しているのが、同社が保有ビットコインの売却に踏み切る可能性です。実はストラテジー社は5月末、配当を賄うためにこれまでNever sellを掲げていた発言を破り32BTCの売却をすでに実施しています。「決して売らない」という市場の前提が一度崩れた以上、再び売却に動けば、相当な売り圧力をもたらすことが想定されます。
ただし、この「デススパイラル」論には反論もあります。ストラテジー社のセイラー会長は「BTCとドル準備が負債を約480億ドル上回っている」「BTCが2万ドルだった2022年も乗り越えた」と強気を崩していません。Benchmark社など一部のアナリストも「STRCはステーブルコインではなく『デペッグ』する性質のものではない」「強制売却論は数段階を飛ばしている」と指摘しています。つまりこれは今すぐの破綻リスクではなく、BTC安が長引いた場合に効いてくる構造的リスクと捉えるのが妥当です。
ビットコインからAI株への「マネーシフト」
投資家心理の面でも、大きな変化が起きています。これまでビットコインやゴールドに向かっていた投機的なマネーが、AI関連株へと流れ込んでいるのです。
足元の株式市場では、マイクロン・テクノロジーが記録的な四半期決算を発表しました。次の四半期に売上高約500億ドル、粗利益率約86%という強気のガイダンスを示し、AI向け広帯域メモリ(HBM)の需要が供給を上回り続けるとの見通しが市場の強気を後押ししています。マイクロン株は時間外で15%以上上昇し、その流れはキオクシアやSKハイニックスにも波及しました。
関連記事 : マイクロン史上最高の四半期決算でメモリ株絶好調、AI相場は最高潮——それでもビットコインだけが下がり続ける理由 – Crypto Times
クラウド大手4社(Google・Amazon・Microsoft・Meta)の2026年の設備投資は合計7,000億ドル超とされ、この巨額のマネーが半導体産業全体を潤しています。AI・半導体セクターは「実需に裏打ちされた確定的な収益成長」を評価され、金利上昇局面でも資金を集めているのです。
逆に言えば、メモリ株が同じ金利上昇局面でも買われたのは、金利上昇を打ち消すだけの材料を持っていたから。確定的な成長ストーリーを持たないビットコインとの間で、明暗が分かれた構造がここにあります。

SoSoValue BTC Spot ETF Flow
実際、ビットコインの現物ETFからは数週間にわたって純流出が続き、30日間の流出規模は過去最悪水準に達したとの分析もあります。BlackRockのIBITを中心に機械的な売りが続いており、新規資金の流入が細っていることが、相場の上値を重くする直接的な要因となっています。
オンチェーン指標は「底圏」のサインも示している
ここまでは弱気材料が中心でしたが、視点を変えると、過去のサイクル底と酷似した指標も浮かび上がってきます。
オンチェーンデータを見ると、現在は流通するビットコイン供給の過半が「含み損」の状態に転落しています。これは一見ネガティブですが、実は2015年、2019年、2022年といった過去のすべての弱気相場の底で繰り返し観測されてきた現象でもあります。市場の割安・割高を測るMVRV-Zスコアも底圏に沈んでいます。
1. Bitcoin MVRV Z-Score
One of the most widely followed Bitcoin valuation indicators.
Measures how far market value deviates from realized value, helping identify historically overheated or undervalued periods.
GET /v2/community/bitcoin-mvrv-z-score pic.twitter.com/EloeopA1Cm
— CryptoQuant.com (@cryptoquant_com) June 22, 2026
さらにCryptoQuantのデータによれば、5年超保有する長期ホルダーの売却は近年で最も低い水準にまで縮小しており、価格下落のなかで「強い手」がむしろ静かに積み増している様子がうかがえます。短期の投機マネーが逃げる一方で、長期保有層は動じていない——この構図は、過去の底値圏でよく見られたパターンであると分析がされています。
ただし、これはあくまでも過去のデータをもとにしたオンチェーン指標なだけで、確実にそのとおりではないので注意は必要です。
テクニカルと過去サイクルとの比較
最後に、長期チャートとサイクル論の視点です。
🚨 BITCOIN BREAKS BELOW ONE OF MOST IMPORTANT LEVELS IN HISTORY!
THE 200 WEEKLY MOVING AVERAGE.$BTC IS TESTING THE WATERS BELOW THIS LEVEL NOW.
HISTORICALLY, A 30% CRASH FOLLOWS…
NO CONFIRMATION OF THE WEEKLY CLOSE YET! pic.twitter.com/2c7jIONDdB
— Crypto Rover (@cryptorover) June 25, 2026
注目されているのが200週移動平均線です。2015年、2019年、2022年のすべての弱気相場で底を支えてきた節目で、現在おおむね58,000〜62,000ドル付近に位置します。BTCは6月、まさにこのラインをテストしました。市場平均取得単価、約56,000ドルとも近接しており、歴史的には長期投資家の参入ゾーンとされてきた価格帯です。
ただし慎重な見方も必要です。過去4回の200週移動平均テストは、いずれもFRBが金融緩和に動いていた局面でした。利上げが視野に入る現在とは前提が異なる、という指摘もあります。
過去の暴落との「質の違い」も重要です。2014年のMt.Gox、2018年のICOバブル崩壊、2022年のTerra-Luna・FTX破綻——過去の弱気相場はいずれも暗号資産に固有の事件が原因でした。
しかし2026年の今回は、取引所破綻もステーブルコイン崩壊も詐欺もありません。原因はあくまでマクロ(金利・地政学・AIへの資本回転)です。下落幅も過去(2011年-93%、2018年-84%、2022年-78%)と比べて約-53%と縮小傾向にあり、ETFや機関投資家の参入による市場の成熟を示すという見方もあります。
まとめ:BTCは「死んでいない」、ただし痛みはマクロ次第
「BTCはここから死に向かうのか?」という問いに対する現時点の答えはプロトコルとしても、機関採用の流れとしても死んでいない。ただし、いつ底を打つかは断言できない、というものになります。
いまビットコインが下落を続けているのは、①タカ派に転じたFRBとインフレ再燃、②ビットコインからAI株へのマネーシフト、③ストラテジー社の優先株問題、という3つの大きな力に、レバレッジ清算が拍車をかけた結果です。一方で、オンチェーン指標や200週移動平均線は過去のサイクル底と重なる水準を示しており、強気・弱気の論拠が拮抗しています。
注目すべきは、現在のビットコインが「デジタルゴールド」としてではなく、「ハイベータなリスク資産」として動いている点です。株式市場が好調なときにはリスク資産として買われ、不安定なときには安全資産として買われる、そのどちらの顔も、いまのBTCは見せられていません。
最後に、今後の判断材料として注視すべき水準を挙げておきます。
- 58,000〜59,000ドルの週足終値:明確に割れば次の下値メドは55,000〜56,000ドル近辺
- ETFフローの反転:日次でプラス転換が続けば機関の売り圧力一巡のサイン
- FRBの姿勢:今後のPCE・CPI・雇用統計とFOMC。ハト派転換が最大の上昇カタリスト
- STRCの額面回復:100ドル付近へ戻ればストラテジー懸念が後退。割れ続ければ強制売却懸念が再燃
- 60,000〜68,000ドルの奪回:出来高を伴って超えれば短期の弱気構造が崩れる
とりわけストラテジー社が保有ビットコインのさらなる売却に踏み切るのか、そしてFRBが利上げに動くのかは、市場全体の地合いを左右しかねない重大な分岐点として、引き続き注視が必要です。
※本記事は特定の暗号資産の売買や保有を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。価格・数値は出所により差異がある場合があります。
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