ロシアは義務化、日本は保留|デジタル通貨で分かれた設計思想とは
よきょい

中央銀行デジタル通貨をめぐって、対照的な二つの進め方が同じ時期に可視化されました。ロシアは9月1日、デジタルルーブルを接続済み銀行の顧客に開放。システム上重要な12行がすべて対応可能で、これらは同国の決済市場の8割超を占めます。前年売上高が1億2000万ルーブルを超え、対象銀行と電子決済の契約を結んでいた小売事業者には受け入れ義務が課されます。
ただし利用そのものは任意です。銀行や雇用主が本人の同意なくウォレットを開設することはできません。義務を負うのは供給側であり、使うかどうかは消費者が決める。個人の入金には月30万ルーブルの上限が設けられ、これは入金への制限であってウォレット内の資金の支払いや送金には適用されません。法律で受け皿を先に作り、実際の普及は後から待つという設計です。
日本は発行するかどうかを決めていない
日本銀行の進め方は逆順です。2023年4月から一般利用型のパイロット実験を続け、6月10日に進捗報告書を公表しました。性能試験では同一口座に取引が集中した場合でもレコード分割の仕組みにより1口座で6,000TPSを処理できることを確認し、更新系1万TPSと参照系4万TPSを合わせた計5万TPSの負荷にも耐えたとしています。社会実装時には計50万TPSを一旦想定した設計上の示唆も整理されました。
実務側の議論も積み上がっています。民間事業者と論点を詰めるCBDCフォーラムは2023年7月の設置以降84回開かれ、延べ163社が登壇しました。台帳の構成、本人確認、認証と認可、オフライン決済、プログラマビリティといった論点が扱われ、7つの作業部会は3つのディスカッショングループへ再編される方針です。それでも発行するかどうかの判断は下されていません。
その間に民間の円建てが先を行く
この判断の保留は結果として別の展開を生んでいます。日本では民間の円建てステーブルコインが先に実用段階へ入りました。JPYCが2025年10月に発行を開始し、三菱UFJ、みずほ、三井住友の3行は2027年3月までの共同発行を目指しています。6月1日施行の改正資金決済法では、信託型の裏付資産を発行額の50%まで国債などで運用できるようになり、事業として成り立つ道筋も見えました。
整理すると、ロシアは中央銀行が上から基盤を敷き、日本は民間が下から積み上げる形になりつつあります。ロシア型は普及が速い代わりに使う側の選択が制度の外側に置かれます。日本型は遅い代わりに使われなければ広がらないという規律が働きます。
どちらの通貨が日常に根を張るのかは制度が出来上がった時点ではなく、その数年後にしか分からないことになりそうです。
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