企業のビットコイン保有量は「いつでも売れる枚数」ではない

2026/09/01・

よきょい

企業のビットコイン保有量は「いつでも売れる枚数」ではない

企業のビットコイン保有量は、そのまま「いつでも売れる枚数」を意味しません。CleanSpark、PowerCompute、USBCの直近の提出書類を並べると、オプション、カラー取引、担保付ローンが保有コインに権利や決済義務を割り当てている様子が見えてきます。見出しの保有量だけを追うと、この層が丸ごと視界から落ちます。

CleanSparkの例が分かりやすいでしょう。4〜6月にビットコイン換算で9,400枚分のコールオプションを売却し、プレミアム801万7,000ドルを得ています。ただしこれは四半期の取引フローであって、残高ではありません。時点の数字は別で、6月30日の保有は12,205BTC、デリバティブの相手方に差し入れた分は1,719BTCとして別建てで開示され、7月の運営アップデートではこれらを合わせた13,924BTCが示されました。同じ「BTC」という単位が、まったく違う意味で並んでいます。

期日が決まっている「条件付き供給」

PowerComputeは契約条件の重要性を示す例です。8月25日、307BTCを担保に2,189万ドルのノンリコース型カラーローン(年6.5%)を組みました。フロアは7万1,112ドル、シーリングは7万5,000ドル、ノックイン水準は9万3,500ドル。判定は9月24日のリセット時点で行われ、それ以前の値動きは考慮されません。



この設計だと、8月末に7万8,000ドル台でシーリングを超えていても上振れは失われません。リセット時に9万3,500ドル未満なら上限は作動せず、値上がり分は同社に残ります。逆に9万3,500ドル以上ならキャップが発動し、7万5,000ドルを超える部分は貸し手へ支払う義務になります。担保のビットコインで支払うことも、現金で払うことも、元本に積み増すこともできる設計です。売り圧力は連続的ではなく、日付で区切られています。

合算できない数字が並ぶとき

USBCはさらに複雑です。8月24日時点の保有は約1,029.25BTC。うち約478BTCがPayward Interactiveからの1,800万ドル借入(年8.5%、2027年7月28日満期)の担保に入っています。これとは別に、財務残高の34.1%がオプション取引の担保として差し入れられ、秘密鍵は相手方が管理しています。両者が重複しているかどうかは、書類に記載がありません。

本誌の計算では、478BTCは総保有の約46%に相当します。仮に34.1%と重ならなければ8割を超える部分が拘束されている計算になりますが、重複の有無が不明な以上、合計値は算出できません。企業のビットコイン保有を読むときは、フローか残高か、鍵を誰が持つか、契約がいつ・いくらで起動するか、決済は現物か現金か。この四つを分けて確認する必要がありそうです。

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